COMPOSITIONS-1 「スムーズ・ジャズ NO.1 アーティスト」松居慶子がアメリカで大ヒットした理由は,スムーズ・ジャズ専門ラジオ局でのパワープレイにあると言われている。
 アメリカとラジオ。カーステレオから流れる音楽と窓から流れる風景。ドライブにロックを大音量で流すのは今の時代に似合わない。現代アメリカの車社会に最も似合う音楽がスムーズ・ジャズ,そして松居慶子なのであろう。

 松居慶子ソロ・ピアノで綴るセルフ・カヴァーの『COMPOSITIONS』(以下『コンポジションズ』)は,単なる“癒し系”を越えた「音で作る映像作家」松居慶子の面目躍如な大ヒット・アルバム。

 セルフ・カヴァーソロ・ピアノで綴るコンセプトが大成功! そう。白と黒だけで描く墨絵のような『コンポジションズ』には,日本の“ワビサビ”のモチーフが取り入れられている。
 松居慶子が“俳句を詠んでいるがごとく”ピアノで美しいソロを自然な形で紡ぎだしている。日本人でも“とろけそう”になるのだから,アメリカ人にはかなり新鮮なアプローチに聴こえることと思う。

 白と黒の2色を濃淡だけで描き出す“ジャズ・ピアニスト松居慶子のタッチに引き込まれてしまう。控えめな左手の音色,メリハリのある右手のニュアンスの与え方が素晴らしい。
 そうして生み出されたピアノ1台による音空間のスペース。ゆっくりと流れるメロディー・ライン。松居慶子が「音楽は祈り」と語っている理由が伝わってくる“崇高な音楽スピリッツ”に感動してしまう。

 日本のカーステレオから流れ出るラジオ番組は,基本軽快なトーク番組ばかりになってしまった。『コンポジションズ』が流れることはまずないし,松居慶子がラジオから流れることがあってもトークのBGMとしてであろう。

 管理人は年に数回しか車を運転しないのだが,運転席に座る場合は『コンポジションズ』を1枚仕込んで出かけている。アメリカと日本の交通事情は同じではないだろうが『コンポジションズ』のソロ・ピアノが静かに流れ出すと,車窓から流れる景色が「アメリカン」するのだから暗示って恐い?

COMPOSITIONS-2 白と黒で描かれたピアノを聞きながら,日本の原風景を眺める幸福感。一人静かにエンジン音と『コンポジションズ』のソロ・ピアノに“浸る”喜び。

 ただし,やっぱり松居慶子ソロ・ピアノスムーズ・ジャズであって,ジャズともフュージョンとも異なっている。
 『コンポジションズ』をリスニング・ルームで聴くのはちょっと辛い。『コンポジションズ』は“カーステレオで最も輝くスムーズ・ジャズ”の名盤”である。

  01. White Castle
  02. Trees
  03. Mystic Dance
  04. Precious Time
  05. Crescent Night Dreams
  06. The Next Plateau
  07. Midnight Stone
  08. Beyond The Light
  09. Prism
  10. Forever, Forever

(プラネットジョイレコード/PLANET JOY RECORDS 2005年発売/PJCD-1020)
(HDCD仕様)
(ライナーノーツ/松居慶子)

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