SADAO WATANABE-1 渡辺貞夫の2枚目の自己名義『SADAO WATANABE』は「NEW」渡辺貞夫ではなく,渡辺貞夫の「再デビュー」盤でもなく,これぞ「渡辺貞夫の音楽の完成形」である,との気概に満ちている。

 とはいえ『SADAO WATANABE』に,渡辺貞夫の気合いは感じられない。それどころか,かなりリラックスした演奏である。
 「素」の渡辺貞夫,「ナチュラル」な渡辺貞夫“そのまんま”なアルトサックスの記録なのである。

 2枚目の自己名義『SADAO WATANABE』は「渡辺貞夫の本格的なアフリカの第一弾」というのがファンの共通認識である。しかし管理人的には,アフリカではなく“もろ”日本,である。

 確かに『SADAO WATANABE』の中にアフリカが含まれている。それは『SADAO WATANABE』が放つ,自由で伸び伸びとした雰囲気の演奏にあると思う。

 『SADAO WATANABE』は,渡辺貞夫がアフリカから帰国して40日後に吹き込まれたアルバムである。アフリカ人の素直で素朴な人間性と広大な自然のこだましている野性味のあるリズムに接して,より一層,自由で伸び伸びとしたジャズを指向した成果なのだと思う。

 しかし,それって日本の音楽の特徴なのではなかろうか? 渡辺貞夫アルトサックスフルートソプラニーニョパーカッションが,楽し気に歌っている。
 福村博トロンボーンパーカッション板橋文夫ピアノエレクトリックピアノパーカッション高柳昌行ギターが,楽し気に訴えかけている。
 古野光昭ベース倉田在秀ドラムが,楽し気に踊っている。

 これって日本の祭りの特徴である。大都会でも片田舎でも共通して流れてくる祭りのBGM。日本古来の伝統音楽が有する,牧歌的で田園的なJ−ジャズの王道そのものである。なんの気取りもなく根源的で自然発生的なJ−ジャズの王道そのものなのである。

SADAO WATANABE-2 管理人の結論。『SADAO WATANABE批評

 『SADAO WATANABE』とは「渡辺貞夫の本格的なアフリカの第一弾」であり,J−ジャズの王道の1枚でもある。
 いいや『SADAO WATANABE』とは,ナベサダ“その人”の王道の1枚なのである。

PS その後の渡辺貞夫の「キーワード」は,ニューヨークでありロサンゼルスでありブラジルでありフュージョンです。多くの経験を経て,現在のナベサダの音楽は『SADAO WATANABE』からすれば“もっともっと”個性的なジャズフュージョンが流れ出しています。

  01. SASA
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  03. MTELENKO
  04. POROMOKO LA MAJI
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  07. MOMBASA
  08. UPEPO
  09. UMEME

(ソニー/SONY 1972年発売/SICP 20153)
(☆BLU−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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