SANBORN-1 “サンボーン・キッズ”だからこそ,全世界に向けて公言したい事柄がある。
 ズバリ,デヴィッド・サンボーンの事実上のファーストソロは『SANBORN』(以下『メロー・サンボーン』)である(英文原題も『SANBORN』なのだし,実はワーナー・ブラザーズもそのつもりだったりする?)。
 この「中年の主張」を,これからフュージョンを聴いてみよう,これからデヴィッド・サンボーンを聴いてみようと思う皆さんには,是非とも真剣に受け止めてほしいのだ。

 別に“公式”デビューCDである『テイキング・オフ』の出来が悪いわけではない。
 ただ純粋に『テイキング・オフ』を聴いて,あれがデヴィッド・サンボーンの音楽のルーツだと誤解してほしくはないだけ…。管理人の愛するデヴィッド・サンボーンを共に楽しんでほしいだけ…。

 こう力説してしまいたくなるくらいに『テイキング・オフ』と『メロー・サンボーン』の間には大きな隔たりがある。それこそ,デヴィッド・サンボーン「人形」と「生身」のデヴィッド・サンボーンぐらいの違いある。「雲泥の差」があるのだ。

 『テイキング・オフ』は「借りてきた猫」であった。つまりデヴィッド・サンボーン自身の意思など制作会議では通してもらえず,用意されたコンセプトの一部として機能するために,あの“サンボーン節”だけが詰め込まれていた感じ。
 それがどうだろう? 2ndである『メロー・サンボーン』からは「こうしたい」という“サンボーンらしさ”がビシビシと伝わってくる。

 そんなデヴィッド・サンボーンが「自分で仕切った」『メロー・サンボーン』は,やったね,デヴィッド・サンボーンのワン・ホーン編成。しかもサイドメンは旧知のセッション仲間で固められている。
 そう。『メロー・サンボーン』からは「楽器で歌いたい」「こう表現したい」というデヴィッド・サンボーン自身の言葉がアルトサックスから漏れ出している。

SANBORN-2 『メロー・サンボーン』の音楽の中身は「メロウ」などではない。ダイナミックで,ファンクネスで,パワフルで,ダンサブル!
 アップ・テンポでノリノリのアルトサックスが,白人ファンクでR&Bに跳ねまくる“サンボーン節”は流石である。

 これである。ストレートなブローで,ブラスの響きを煌めかせていた『テイキング・オフ』は「スタジオ・ミュージシャンのまんま」なデヴィッド・サンボーンであって,ソロ・アーティスト=デヴィッド・サンボーンのアルバムには非ず。
 まっ,泣きっぷりとか洗練度で言えば「まだまだ」ではありますが『メロー・サンボーン』で,ついに,ソロ・アーティスト=デヴィッド・サンボーンが世界デビュー

 非常にメリハリの効いた,いい意味でよくコントロールされたダンシング!こそが“泣きのブロー”完成以前のデヴィッド・サンボーンの“味”である。

  01. Indio
  02. Smile
  03. Mamacita
  04. Herbs
  05. Concrete Boogie
  06. I Do It For Your Love
  07. Sophisticated Squaw
  08. 7th Ave.

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1976年発売/WPCP-3548)
(ライナーノーツ/上田力)

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