RERA-1 小野塚晃の2ndソロRERA』(以下『レラ』)を聴くと,小野塚晃DIMENSIONの“キーボード・プレイヤー”ではなく,DIMENSIONの“頭脳”と呼ばれる理由がよく分かる。

 『レラ』は基本,ピアノ小野塚晃ベース納浩一ドラム鶴谷智生による「3分の2が渡辺貞夫グループ」のアコースティックピアノ・トリオ編成。+ギター増崎孝司がゲスト参加した「4分の2がDIMENSION」編成。

 そこへ小野塚晃の「エレクトリックなエッセンス」が“ほんの一滴”散りばめられただけなのに,軽やかで爽やかで華やかな“キラキラ・サウンド”へと見事に昇華を果たしている。なんなんだ,この輝く透明感は〜!

 それこそがDIMENSIONの“頭脳”と呼ばれる,小野塚晃の秀でたトータル・バランスの才能であろう。
 アコースティックエレクトリックを一音で切り替え,それがピアノだとしても,シンセだとしても,ベースだとしても,パーカッションだろうと一音で調和させてしまう。
 小野塚晃が加えた“微量の一滴”が『レラ』を,実に心地良いライト感覚のジャズ・アルバムへと仕上げている。う〜む。このハイセンスな音造り。なんだか,上質な映画を見せられている気分になってしまう。

 そう。キャンプが趣味という小野塚晃らしく『レラ』を聴いていると旅先で出逢った風景が目に浮かぶような曲ばかり。大都会・東京もあれば,雄大な北海道を感じる。紅葉の渓谷もあれば,新緑の風景や鳥のさえずりまでもが聴こえてくる。淡い色で描かれた優しいタッチの「音の情景」である。

 小野塚晃の“天才”とは,ブラシを鍵盤に持ち替えた「画家」にある。大全紙いっぱいに細部まで書き込まれた1枚の音楽が素晴らしい。小野塚晃CD1枚分の「映像作家」なのであった。

 加えてアルバム・ジャケットの影響なのか,何と!新緑の香りを伴っている。香りだけではない。アルバム・タイトルの『レラ』とは,アイヌ語で“風”を意味する言葉だそうだが,何と!風までが吹き出している。アロマの香りで癒されたオーディオ・ルームに“そよ風”が吹き込んでくる。

RERA-2 ズバリ,小野塚晃の立体映像作品=『レラ』の真髄とは「音と映像と香りと風」の「4Dテクノロジー・ジャズ」。
 でもそれなのに,肌触りはアナログ一色。モノラルのリッチなミッドレンジ・スピーカが鳴っているかのようである。
 ドイツからレコーディングのために取り寄せたという,べヒシュタインの「優しく温かで艶やかな」ピアノの音色が華!

 DIMENSIONの「近未来フュージョン」は,時に聞く者の膨大なエネルギーを消費させてしまう。大好きなのだが聴き疲れてしまうこともある。そんな時こそ「一服の清涼剤」として『レラ』を「DIMENSIONディメンションの間に」挿み聴きすると丁度良い。

 『レラ』を聴いて,もっともっとDIMENSION! もっともっと小野塚晃! 小野塚晃の設計図を越えてつつも,音源の全てを小野塚晃の手に委ねてしまうDIMENSIONが大好きです!

  01. Rera
  02. Green Flash
  03. Owl's Eye
  04. High Grown Cafe
  05. Land Breeze
  06. High Wind
  07. Moon's Path
  08. Kakinokibata Street
  08. Gift from GOD

(ザイン/ZAIN RECORDS 2010年発売/ZACL-9045)

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