AFRICAN PIANO-1 ダラー・ブランドの『AFRICAN PIANO』(以下『アフリカン・ピアノ』)は,できれば紹介したくなかった。
( アドリブログは現在アルファベット順にて紹介中。ABCD…DO )

 願わくばアドリブログの全投稿の最後の記事として紹介したかった。本気でそう思う,管理人「とっておきの一枚」にして,厳選の中の厳選“秘蔵盤”なのである。

 『アフリカン・ピアノ』をまだ聴いたことのない人は「幸せ者」である。知らないのが,正直,うらやましくてたまらない。
 これから先,何千枚とジャズを聴き漁り「もうジャズなんて聴き飽きた」という日が来たとしても,それでも絶対に「脳天をカチ割られるような衝撃」を受けることであろう。

 そう。『アフリカン・ピアノ』の真髄とは「マンネリ打破の1枚」「日常を非日常でリセットしてくれる1枚」「頭の中をクリーンにしてくれる1枚」である。
 『アフリカン・ピアノ』を聴けば,また次の日からジャズが好きになる。昨日よりもっともっとジャズが好きになる。だから「最後の1枚」なのである。

 リスナーは『アフリカン・ピアノ』が流れ出すとすぐに「打楽器」としてのピアノの強さを“嫌と言うほど”思い知らされることになる。
 ダラー・ブランドの左手から繰り出される執拗なアフリカン・ビートの“バケモノ”が音符を踊り喰いしていく。メロディーがリズムに“呑み込まれていく”。メロディーが「現われては消え,現われては消え」てゆく。

 結果『アフリカン・ピアノ』は,いつまでもいつまでも,どこまでもどこまでも,同じ曲想の演奏がまるでDJによるノンストップ・ミックスのようにつながっていくと思わせて,最後の最後だけストンと落とする。突然,大きな穴に落とされてしまう。あの瞬間が「た・ま・ら・な・い・快・感」なのである。

AFRICAN PIANO-2 そう。『アフリカン・ピアノ』の真実とは“音のブラックホール”!

 書きたいことはたくさんあるが,ここから先は是非,自分自身の目で見て,耳で聞いてみてほしい。ブラックホールの中に頭と体を突っ込んでみてほしい。新しい音世界,誰も見たことのない未知の世界,深く黒い穴の中に「吸い込まれる」ことが,いかに「心地良い体験」なのかを味わってみてほしい。

 意識の全てが「失われ,消え,呑み込まれていく」。こんな体験,そう滅多に出来るものではない。これこそが『アフリカン・ピアノ』のハイライトなのである。

  01. bra joe from kilimanjaro
  02. selby that THE ETERNAL SPIRIT IS THE ONLY REALITY
  03. THE MOON
  04. xaba
  05. sunset in blue
  06. kippy
  07. jabulani - easter joy
  08. tintiyana

(ECM/ECM 1973年発売/UCCU-6122)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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