DROP HOP-1 かつてキース・ジャレットアメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットという2つのバンドを同時並行で運営していたことがある。それは「美女と野獣」のような性格の異なる音楽表現のためには2つのバンドが必要だったからだ。

 キース・ジャレットに限らず,ジャズメンが同時期にバンドを2つ運営する場合,その2つは性格が異なるものであろう。既存のバンドでは表現できない音楽欲求があるからこそ,今とは別の第二のバンドを結成する。今と同じ音楽を続けるのなら,第二のバンドは必要ない。今のバンドに不満があるなら,解散あるいはメンバー・チェンジ。無理に2つのバンドを運営する必然性などないのである。

 管理人はこれまでそう思っていた。アラン・エヴァンストリオの『DROP HOP』(以下『ドロップ・ホップ』)を聴くまでは…。

 ソウライヴオルガン・ジャズトリオである。アラン・エヴァンストリオオルガン・ジャズトリオである。
 ソウライヴのバンド・リーダーであるアラン・エヴァンスが,ソウライヴを解散するわけではなく,ソウライヴとは違うメンバー,オルガンボウ・サッサーギターダニー・メイヤーと組んでソウライヴと同じオルガン・ジャズ・フォーマットの新バンドを運営する。

 なぜ? どうして? その疑問に見事に『ドロップ・ホップ』が答えてくれる。『ドロップ・ホップ』を聴いてみると,同じバンドを2つ同時進行したくなる気持ちが分からないでもない。
 いいや,アラン・エヴァンスにとってはソウライヴも,アラン・エヴァンストリオも,どっちも必要なのだ。アラン・エヴァンスとしては2つのバンドあっての1つの音楽=「アラン・エヴァンスオルガン・ジャズ」をやっているように思う。

DROP HOP-2 管理人の結論。『ドロップ・ホップ批評

 ソウライヴが「POP」であるなら,アラン・エヴァンストリオは「HOP」である。息着く暇もなく刻まれるGROOVYなリズムに興奮しっぱなし。ゴリっとした王道ファンクがハードコアに響いている。

 理知的なソウライヴとストレートなアラン・エヴァンストリオ。この違いこそが『ドロップ・ホップ』におけるアラン・エヴァンスの“狙い”なのであろう。

 つ・ま・り・分かりやすく例えると,アラン・エヴァンスにとってのソウライヴアラン・エヴァンストリオの位置付けは,野呂一生にとってのカシオペアと「野呂一生インスピリッツ」のような位置付けなのである。

  01. AUTHORITAY
  02. CHECK YOUR LUGNUTS
  03. WHISTLIN' WILLIE
  04. DROP HOP
  05. RUM RUNNER
  06. IF YOU WANT MY LOVE (GIVE IT UP)
  07. THE METER'S RUNNIN'
  08. CROOOOZ
  09. AFTER EVERYONE'S GONE
  10. DROP HOP (LIVE VERSION)
  11. THE LAY DOWN (LIVE VERSION)
  12. CROOOOZ (LIVE VERSION)

(Pヴァイン/P-VINE 2012年発売/PCD-93596)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/松永誠一郎)

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