KEEP ALIVE-1 『DG−581』と『ROCK’N ROCKED ROCK』の超名盤2枚を有する「KEEP」の,J−フュージョンのスーパー・バンドとしての認知度が低いのは『KEEP ALIVE』の存在にあると思っている。

 「KEEP」とは,キーボード深町純ギター和田アキラベース富倉安生ドラム山木秀夫から成るセッション・バンド。
 バンドのカラーは深町純の音楽世界であるが「KEEP」の“売り”である「リアルな存在感と精神性」は和田アキラのものである。和田アキラ深町純のサウンド・メイクに陶酔しては没入し,やがては和田アキラの言語で2人が一体化している。
 深町純和田アキラが融合した「リアルな存在感と精神性」は,深町純が在籍していた頃の「PRISM」では鳴らすことのできなかった「KEEP」でしか聴くことができない「アーティスト志向」の賜物だと思っている。

 だから「KEEP」の本領発揮は緻密なスタジオ・ワークに分があるのであってライブは別物。ライブでは再現不可能。どうしても深町純和田アキラの絶妙なバランスが崩れてしまう。

 ライブ盤『KEEP ALIVE』の演奏が凄い。凄いんだが残念なことに,それが目の前の観客には訴求していない。それも当然のことであってスタジオ・ワークで凄みを発揮する深町ワールドは内向きな演奏であって,メンバーも観客も共感を覚える一歩手前で白けてしまう…。
 完全にマニアックで玄人志向のライブ演奏は,ヒリヒリするくらいの濃密なインタープレイの応酬であって,聴衆は置いてけぼりを喰わされている…。

 そんな「気合いの空回り」は『KEEP ALIVE』のために準備された「KEEP」10年振りの再結成に理由にある。
 そう。「空白の10年」が「昔のようには演奏しない」という「リアルな存在感と精神性」「アーティスト志向」が「KEEP」の誇り。かつての名曲が全て新曲であるかのような「新鮮な響き」を有している。もうこれ以上上達するはずがないと思っていた“超絶技巧”のテクニックが上がっている。
 ゆえに『KEEP ALIVE』での10年振りの再演は,我々「KEEP」にとっては「奇跡の1枚」となった。

 ただし,その「新鮮な響き」を得るために「KEEP」のメンバー4人が,ライブ会場を舞台とした「疑似スタジオ・セッション」へと向かわせている。得るものもあれば失うものもある。

KEEP ALIVE-2 管理人は思う。もしも『KEEP ALIVE』が“熱狂のライブ盤”であったなら「KEEP」は,多くの音楽ファンに支持された“伝説のフュージョン・バンド”として永遠に語られるユニットになったであろう。

 しかしこの全てが「完璧主義者」深町純の性分なのだから仕方がない。個人的にはライブの舞台で張り切りすぎて,結果として「KEEP」から“1人離れたところで燃え上がる”和田アキラのプログレッシブなギターにシビレ上がります。

 『KEEP ALIVE』での演奏力は真に素晴らしい。しかし楽曲の世界観にズレが生じている。深町純和田アキラの絶妙なバランスに歪みが生じている。
 完璧だった昔のアレンジと即興での新アレンジを心底楽しめないでいる「KEEP」の「アーティスト志向」が内向きな修正にパワーを使っている。

 管理人は「KEEP」の代表曲として,セットリストに並べられた「奇跡の1枚」『KEEP ALIVE』での新アレンジよりも『DG−581』と『ROCK’N ROCKED ROCK』のオリジナルのスタジオ録音の方に愛着を覚えます。

 
01. DEPARTURE IN THE DARK
02. MODJA
03. BATTERIA SOLO
04. DANCE OF PARANOIA OPUS 3
05. OWL FLIGHT
06. MOON BEAM
07. DANCE OF PARANOIA OPUS 2
08. ROCK'N ROCKED ROCK

 
KEEP
JUN FUKAMACHI : Keyboards
AKIRA WADA : Guitar
YASUO TOMIKURA : Bass
HIDEO YAMAKI : Drums

(イースタンゲイル/EASTERNGALE 1995年発売/EGCJ-8002)

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ヤコブ1章 鏡を見る人
松居慶子 『イン・ア・ミラー 〜鏡の中へ〜