
しかし『LIBERTANGO』(以下『哀愁のリベルタンゴ』)のヨーロピアン・ジャズ・トリオは“やり過ぎ”である。
『哀愁のリベルタンゴ』でのヨーロピアン・ジャズ・トリオはヨーロピアン“スムーズ”ジャズ・トリオのようである。
おおっと,スムーズ・ジャズという表現は管理人も“やり過ぎ”だけれども,もはやヨーロピアン・ジャズ・トリオをジャズというジャンルで推し量るには無理がある。
まずは選曲である。【エンドレス・ラヴ】【マイ・オール】【哀愁のリベルタンゴ】【マホガニーのテーマ】【ディア・ハンターのテーマ】【タイタニック愛のテーマ】【涙のパヴァーヌ】【バラ色の人生】【ボディーガードのテーマ】【シンプル・ソング】【エンジェル・アイズ】の全11曲。
これって絶対にヨーロピアン・ジャズ・トリオのメンバーの選曲ではないことだろう。有名曲がずらり。ほぼ映画のサントラ集にしてそのカヴァー・アルバム的な作りである。
EJT批評については,毎度“落としては持ち上げる”文章になってしまって申し訳ないのだが,演奏内容はいいのだ。完全にEJTのオリジナルになっている。
アメリカ・ハリウッドの映画音楽がヨーロピアンして聴こえてくる。『哀愁のリベルタンゴ』を聴いているとおフランスの映像が見えてくるような気分になる。
往年のEJTファンは『哀愁のリベルタンゴ』をどんな気持ちで耳にしたのだろう…。
ここまで美しく酔わせてくれるピアノ・トリオもそうないことは認めるが,どうしても管理人的にはジャズ・ピアノを弾くのを止めて,スムーズ・ジャズを弾くピアノ・トリオに身を売ったように思えてならない…。
悪魔に魂を売ってしまったのかなぁ…。だから『哀愁のリベルタンゴ』以降,EJTのCDを買ってはいないのです。

で,結論。ヨーロピアン・ジャズ・トリオは「ヨーロピアン・ジャズ・カルテット」として機能した瞬間が最高である。
アート・ファーマーとの『風のささやき』とは一味違った,でもやっぱりピアノ・トリオが主導する音楽の佇まい。
マーク・ヴァン・ローンというピアニストは管楽器が入ると豹変する男である。
01. ENDRESS LOVE
02. MY ALL
03. LIBERTANGO
04. DO YOU KNOW WHERE YOU'RE GOING TO 〜THEME FROM
MAHOGANY〜
05. THE DEER HUNTER
06. MY HEART WILL GO ON 〜TITANIC LOVE THEME〜
07. PAVANE LACHRYME 〜DER FLUYTEN LUST-HOF〜
08. LA VIE EN ROSE
09. I WILL ALWAYS LOVE YOU
10. SIMPLE SONG
11. ANGEL EYES
(M&I/M&I 1999年発売/MYCJ-30029)
(ライナーノーツ/小西啓一)
(ライナーノーツ/小西啓一)