LET'S TOUCH THE SKY-1 新作のレコーディングが始まったわけでもないのに,ラリー・カールトンフォープレイから脱退することがアナウンスされた。『ENERGY』の発売から2年後ですよ。唐突すぎやしませんか?

 それからというものフォープレイのことを考え出すと,誰が次のギタリストを務めるのか? 個人的な第一希望&妄想はリー・リトナーの復帰であったのだが…。
 これとない大役を引き受け,のしかかるプレッシャーをはねのけて? いえいえ。こんな大チャンスをジャケット写真ばりに「天を掴んで」ものにしたフォープレイ三代目のJ−SOULギタリスト! その人の名はチャック・ローブ

 チャック・ローブは適任である。リー・リトナーラリー・カールトン・クラスの超大物ではないが,スムーズ・ジャズ界を広く見渡してもチャック・ローブ以上の人材は絶対に見つからない。
 新作を聴く前からすでに大正解のメンバー・チェンジを確信した管理人であったのだが,でもやっぱり新作が気になって気になって…。

 そんなもやもやを吹き飛ばすニュー・アルバム『LET’S TOUCH THE SKY』(以下『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』)がついに完成した。
 やっぱりチャック・ローブは「いぶし銀」な仕事人であった。これより音数が多くても少なくてもだめだろうというギター・ワークに魅了されてしまった。どこか浮ついた感じのラリー・カールトンよりもチャック・ローブの方が“しっくりくる”!

 …って,チャック・ローブにしても『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』にしても,全て後出しジャンケンだったのだから…。
 そう。チャック・ローブパット・メセニーの弟子ですよっ。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』の【A NIGHT IN RIO】と【ABOVE AND BEYOND】はパット・メセニー・グループ調ですよっ。
 遡れば『』の【EASTERN SKY】の時点から,このシナリオが始まっていたのですよっ。この4年越しの「伏線と回収」のマジックにボブ・ジェームス恐るべし!

( もう一つの勘ぐりの裏話を。フォープレイは2008年に「ヘッズ・アップ」へ移籍したのだが,チャック・ローブも2007人に「ヘッズ・アップ」へ移籍済。これって将来のフォープレイ合流を見据えての事だった? 大人の事情ってジャズフュージョン界にもあるの? )

 おおっと『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』で,評価すべきはチャック・ローブでもパット・メセニーでもボブ・ジェームスでもなくフォープレイ。評価軸は“フォープレイ・サウンド”がどうかであろう。

LET'S TOUCH THE SKY-2 管理人の結論。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ批評

 フォープレイとは「清く・正しく・美しい」フォープレイなので,革新的な演奏とか超弩級のスリルといった「劇薬」とは無縁である。どこまでもクリアでフォーキーで心地よく,そして非常に落ち着いた大人の音楽である。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』においても,土台としての“フォープレイ・サウンド”は健在であって,スタイリッシュなチャック・ローブの個性を見事に飲み込んでいると思う。

 相変わらず相当に完成度が高い。エレガントで美しくて深い。そして新鮮でキャッチーなナンバーが続いている。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』を聴き終えてまず感じたのは,活動休止中のパット・メセニー・グループの穴を埋めるのはフォープレイである,という思いであった。
 本来ならチャック・ローブの座った椅子にはパット・メセニー? 今度こそ「4度目の正直」はパット・メセニー

 それはそれとしてチャック・ローブ新加入のキーワードは“アコースティック”である。
 “アコースティックフォープレイ”を牽引するブライトでインテリジェンスなチャック・ローブが渋い!

  01. LET'S TOUCH THE SKY
  02. 3RD DEGREE
  03. MORE THAN A DREAM
  04. PINEAPPLE GETAWAY
  05. I'LL STILL BE LOVIN' YOU
  06. GENTLE GIANT (FOR HANK)
  07. A NIGHT IN RIO
  08. LOVE TKO
  09. ABOVE AND BEYOND
  10. GOLDEN FADERS
  11. YOU'RE MY THRILL
  12. WHEN LOVE BREAKS DOWN

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2010年発売/UCCT-1225)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/原田和典)

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