ESPRIT DE FOUR-1 『LET’S TOUCH THE SKY』で「フォープレイ=活動休止中のパット・メセニー・グループ」が擦り込まれてしまった管理人。
 フォープレイパット・メセニー・グループを求めるのは間違いだと分かったはいても,パット・メセニー・グループの新作は出そうにない。パット・メセニー・グループと似たグループと言えば「e.s.t.」ぐらいだったのに,エスビョルン・スヴェンソンの不慮の事故によりこちらも新作のリリースは望みようがない。
 フォープレイに活動休止中のパット・メセニー・グループを重ねたくなるこの気持ち〜!

 多分,真っ当なフォープレイ・ファンからは一蹴されて終わるのだろうが,ボブ・ジェームスだけは管理人のこの気持ちを分かってくれた! 『ESPRIT DE FOUR』(以下『エスプリ・ド・フォー』)は,フォープレイが創り上げたパット・メセニー・グループ路線の最新作!

 ECMでの若さと清らかさ,ゲフィンでの派手でやり過ぎた下品さ,ノンサッチでのアーティスト志向がバランス良く顔を出すチャック・ローブPMG
 先代の超大物2人と比べればチャック・ローブは小粒だが,その分灰汁が出ない。こんなにも使い勝手の良いギタリストだったとは管理人的にも新発見である。

 『エスプリ・ド・フォー』では,これまでのお洒落でハイセンスな“フォープレイ・サウンド”に温かさと雄大さが加わりつつ,逆説的だが,俯瞰から眺めて冷静に計算され尽くしているようなアレンジが印象に残る。これほど長く活動してきたバンドであるにも関わらず,明らかに新しいサウンドの息吹き,方向性の模索を感じる取ることができる。
 プロデューサーとしても活躍するチャック・ローブだから,作り込まれた感が強いフォープレイとマニアで有名なパット・メセニー・サウンドにマッチしているのだと思う。

( ここで決して公には出来ない裏事情を書いておくと,フォープレイパット・メセニー・グループして聴こえる一番の理由はパット・メセニーの弟子であるチャック・ローブの参加ではありません。ズバリ,ボブ・ジェームスライル・メイズに意識的に“寄せている”からなのです。その辺りを見誤らないで! )

 さて,管理人がチャック・ローブを評価する理由は“ギタリスト”としてのチャック・ローブだけではない。リー・リトナーラリー・カールトンは持ち合わせていないかった“名コンポーザー”としてのチャック・ローブの存在である。

 フォープレイというグループはメンバーの4人全員が曲を書くことをポリシーとしている。一番の多作家でありバンドの代表曲を書き上げてきたのはボブ・ジェームスであるが,超キャッチーなキラー・チューンはハービー・メイソンの場合が多く,ネイサン・イーストも佳曲をズライと並べてくる。その部分ではリー・リトナーラリー・カールトンはあまり貢献してきたとは言えないであろう。

 そ・こ・で“名コンポーザーチャック・ローブの加入である。チャック・ローブは感動モノの曲を書く。【DECEMBER DREAM】は何度聴いても涙が止まらない。心の震えが止まらない。
 そんな“名コンポーザーチャック・ローブの加入が,他の3人の“名コンポーザー”の創作意欲を大いに刺激したのだろう。『エスプリ・ド・フォー』にはマンネリと謳われたラリー・カールトン期にはなかったヒットパレードのオンパレード。

 これまでのフォープレイは世界最高峰の演奏力でスムーズ・ジャズ界の頂点に君臨してきた。だから管理人のフォープレイに対する一つの夢とは「名曲のカヴァー・アルバム」の制作だった。ジャズっぽいものではなく,コンテンポラリーやAOR系のカヴァー演奏を聞いてみたかった。
 しかし“名コンポーザーチャック・ローブの加入でその夢は必要なくなった。それくらいに捨て曲なし。美メロばかりがザックザク〜!

ESPRIT DE FOUR-2 管理人の結論。『エスプリ・ド・フォー批評

 『エスプリ・ド・フォー』は,演奏の名手にして作曲の名手がついに4人揃った,フォープレイの理想の完成形だと思う。「絆」を表現したであろうジャケット写真通りの快作である。

 『エスプリ・ド・フォー』には【DECEMBER DREAM】【LOGIC OF LOVE】【ESPRIT DE FOUR】の神曲の3曲が入っている。特に【DECEMBER DREAM】については,チャック・ローブ時代の代表曲として指名する。
 その実,管理人のフォープレイ一番の愛聴盤が『エスプリ・ド・フォー』なのであった。

 管理人の一個人の気持ちとしては星6つの大名盤。ただし,純粋に他の人にお勧めするジャズ批評家目線で評価すると『エスプリ・ド・フォー』の総合評価は星4つ。その理由は「SEIKO MATSUDA」のヴォーカル入りにある。
 【PUT OUR HEARTS TOGETHER】はアルバム全体と調和した曲なのに【PUT OUR HEARTS TOGETHER(VOCAL TRACK)】となると,どうにも違和感を感じて気持ち悪くなる。これがボーナス・トラックだというのならご愛嬌で済んだであろうに…。
 もしやボブ・ジェームスって,隠れ“聖子ちゃん”ファンだったのか? 別に管理人は松田聖子のアンチというわけではありませんので…。

  01. DECEMBER DREAM
  02. FIREFLY
  03. VENUS
  04. SONNYMOON
  05. PUT OUR HEARTS TOGETHER
  06. ALL I WANNA DO
  07. LOGIC OF LOVE
  08. ESPRIT DE FOUR
  09. SUGOI
  10. PUT OUR HEARTS TOGETHER (VOCAL TRACK)

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2012年発売/UCCT-1241)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/フォープレイ,成田正)

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