ANDROGRAFFITI-1 坪口昌恭というキーボード・プレイヤー。それは「東京ザヴィヌルバッハ」の人であり「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」の人だった。
( 現在では「菊地成孔ダブ・セクステット」の坪口昌恭が一番のお気に入り! )

 「東京ザヴィヌルバッハ」にしても「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」にしても,坪口昌恭は初めから前面に出るタイプではなく,ここぞという時に後ろから横から斜めから攻め上げてくるタイプ。
 サッカーで言えばスーパーサブであって,一度前に出た坪口昌恭をもはや誰も止められない。一番身近な菊地成孔こそが,そんな坪口昌恭の大ファンの1人だと思う。

 菊地成孔は知っている。坪口昌恭の本当の魅力は「キレッキレ」の一発勝負師ではないことを…。坪口昌恭の本当の魅力はバランサーであり全体を見渡せる10番。つまりは司令塔タイプであることを…。
 だからこそ菊地成孔坪口昌恭をスーパーサブではなく先発として,そしてフォワードではなく中盤として毎回起用しているのだろう。

 坪口昌恭についての菊地成孔の見立ては当を得ている。『ANDROGRAFFITI』が坪口昌恭の“バランサー資質”を見事に証明してくれている。

 『ANDROGRAFFITI』は前作『VIGOROUS』と同一録音のセッション音源にオーバーダビングさせた最終完成盤。『VIGOROUS』以上に坪口昌恭ジョー・ザビヌル化して聴こえる。
 サックスパーカッションが入っている曲では,もろザビヌルを想起して“ウェザー・リポートっぽい”音が鳴っている。坪口昌恭ジョー・ザビヌルのように自らシュートを決めに行く。

 しかしそこにトランペットが入った曲では,完全なるバランサーとして鍵盤中心のシフトではあるが,濃厚なファンクネスと即興性が前面に出たポリリズミック電化ジャズが鳴っている。
 『VIGOROUS』に続き『ANDROGRAFFITI』でオラシオ・エルネグロ・エルナンデスドラムを叩く意味とか必然性があるような展開に持ち込んでいる。

ANDROGRAFFITI-2 『ANDROGRAFFITI』の同一にして2つのセッションに色を付けたのは1年がかりで行なわれたオーバーダビングであることを忘れてはならない。これは逆説的な意味である。意識しなければ生演奏に聴こえてしまう。

 オラシオ・エルネグロ・エルナンデスが参加したキューバの路地裏でセッションされていたストリート・ミュージックが,坪口昌恭の手に掛かればNYのスタジオで録音されたかのように聴こえてしまうのだ。

 坪口昌恭の完璧なる補修作業。これこそが『ANDROGRAFFITI』なのだろう。これこそが「アンドロイドの落書き」なのだろう。

  01. M.T. Swallow
  02. Space Mbira
  03. Equator Civilization
  04. Water Moon
  05. Groove Continent
  06. Vanilla Beans
  07. Swinging Weather

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2006年発売/EWBE-0019)
(紙ジャケット仕様)

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