GARY BURTON & KEITH JARRETT-1 ゲイリー・バートンキース・ジャレット名義の『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』)が1971年。
 チック・コリアゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。

 1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみるとチック・コリア優位は明白である。

 そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のレコーディングは,実はゲイリー・バートンキース・ジャレットデュオではなく,ヴィブラフォンゲイリー・バートンギターサム・ブラウンベーススティーヴ・スワロードラムビル・グッドウィンから成るゲイリー・バートン・グループにゲスト・プレイヤーとしてキース・ジャレットが一人参加した「ジャズ・ロック」である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの電化マイルスのバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデンポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。
 そう。目指す方向性はゲイリー・バートンキース・ジャレットは“同士”であった。

 つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。気軽で興味本位が共演の理由。

 …が,しかし…。ここがゲイリー・バートンの凄さなのだと思うが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
 特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。

 そう。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。ゲイリー・バートンキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。

GARY BURTON & KEITH JARRETT-2 ゲイリー・バートンが託したキース・ジャレットへの「裁量権」は,音楽的に大きな成功を収めている。
 その1つは,キース・ジャレットギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のみであるが,案外相性は悪くはないという証明してくれている。サム・ブラウンパット・メセニーであったなら,もっとギタリストとの共演アルバムが増えたであろうに…。

 もう1つは【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしに【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミーは受賞できなかった。

 ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニーチック・コリア小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
 そうなれば,その話の結論はこうであろう。ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい! 

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者であった。
 代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットスタンダーズ・トリオも当然手付かず。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットとは,ゲイリー・バートンよりもチック・コリアよりも格下な若手有望株の1人にすぎなかったという事実。

 管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい…。

  01. GROW YOUR OWN
  02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
  03. COMO EN VIETNAM
  04. FORTUNE SMILES
  05. THE RAVEN SPEAKS

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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