REUNION-1 『REUNION』(以下『リユニオン』)は100%パット・メセニーのためのアルバムである。
 でもこれってパット・メセニーの意志ではない。全ては“大将”ゲイリー・バートンが仕組んだ「フィーチャリングパット・メセニー」な名企画。
 ズバリ『リユニオン』の真実とは,ゲイリー・バートンパット・メセニーを“神輿に担いだ”アルバムなのである。

 ゲイリー・バートンが『リユニオン』で「フィーチャリングパット・メセニー」を制作できた理由は,ゲイリー・バートン・グループから独立した後もパット・メセニーのことを気にかけチェックしていたからに他ならない。
 …というよりもパット・メセニーの音楽を,いつしかファンの立場で追いかけてきたからに他ならない。

 元来が「ジャズ・ロック」出身のゲイリー・バートンである。『STILL LIFE(TALKING)』『LETTER FROM HOME』『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』で“天下を獲った”パット・メセニーのPOPな音楽性に魅了されて「オファー・レター」に至ったように想像する。

 かつては共同で音楽を創造してきたゲイリー・バートンパット・メセニーであるが,今となっては2人の立ち位置に相当な開きが生じている。この結果は両者の音楽性の違いでもなければ,パット・メセニーの音楽の嗜好の変化が原因でもない。
 単純に方法論の違いによるものである。同じ対象物に違うベクトルでアプローチをかけている。ヴィブラフォンギターという楽器特性の違いもあることだろう。

 ただし,そんなことは重要ではない。違っているのが当然のこと。根幹にある共通イメージを擦り合わせる作業を通して,1人では到達することはできなくても2人でなら到達できる新たな音風景を見つけたい。そんな意欲が創造力を駆り立てている。実に素晴らしいパートナーシップ。実に素晴らしい師弟関係。

 『リユニオン』の「新しいのに懐かしい響き」は,あのままパット・メセニーゲイリー・バートンと活動を共にしていたのでは完成することはなかった。一旦,離れて「やっぱり好き」を再確認できたからこそ,最愛の音を奏でる歓びが爆発したのだろう。ユニゾン,ハーモニー,チェイス,どれもが良い響きで惚れ惚れする。

REUNION-2 『リユニオン』でゲイリー・バートンが選んだ「フレンズ」とは,ピアノキーボードミッチェル・フォアマンベースウィル・リードラムピーター・アースキンの面々。
 いずれもパット・メセニー・ファンなら聴いてみたいGRPだから実現できた組み合わせ。もはや公私混同レベルで“最良のパット・メセニー”をゲイリー・バートンが引き出している。

 パット・メセニーとしてもゲイリー・バートンの隣りで演奏するのが大好きなのだろう。ゲイリー・バートンとぶつからない和音を探し出すのが楽しくてたまらない感じのギターであって,パット・メセニーが「若手」に戻ったイメージがある。事実,楽曲のサビの部分で「前へ前へ」と突進してくる。美味しい部分は全てパット・メセニーが持って行っている。実に楽し気で雄弁なギターが鳴っている。

 ゲイリー・バートンパット・メセニーは「歌の恋人」。お口の恋人はロッテである。

  01. Autumn
  02. Reunion
  03. Origin
  04. Will You Say You Will
  05. House On The Hill
  06. Panama
  07. Chairs And Children
  08. Wasn't Always Easy
  09. The Chief
  10. Tiempos Felice (Happy Times)
  11. Quick And Running

(GRP/GRP 1990年発売/UCCR-9009)
(ライナーノーツ/ニール・テッサー,前田圭一,成田正,悠雅彦)

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