SEVEN DOORS-1 『SEVEN DOORS』(以下『七つの扉』)は“ジャズ・ギタリスト加藤崇之からの「第二の衝撃波」だった。

 「第一波」は加藤崇之を初めて聴いた「CO2」の『TOKAI』だった。「リアル・フリージャズ・オールスターズ」の「CO2」にあって,あの片山広明が,あの林栄一が,あの早川岳晴が,あの芳垣安洋が,加藤崇之1人に“喰われている”。

 あの“百戦錬磨”な名手たちを向こうに回して,あそこまで自分なりのジャズ道を貫き通せるとは…。「CO2」にパット・メセニーが入っても,ジョン・スコフィールドが入ってもあそこまで上手くはいかない…。
 そう。加藤崇之からの「第一波」を例えるならグラント・グリーン級の衝撃だった。

 そうして「第二波」となった『七つの扉』は,加藤崇之エレクトリックギターソロ・アルバム。しかも「完全即興」の触れ込み付き。
 凄い演奏が記録されている,ということはクレジットの情報から予想がつく。しかしここまで凄いとは…。

 加藤崇之エレクトリックギターが洪水のように一気に押し寄せてくる。しかし,それで終わるのではなく引き波がこれまた凄いのだ。ここまでスムーズに音を調和よく引かせるテクニシャンはそうはいない。
 当然,ギターから放たれる音は,その場その場のインプロヴィゼーション。セオリーもあれば経験もある。順当な音選びもあればリスナーを驚かせる音選びもある。

 加藤崇之クラスにもなると,きっとアウトプットは簡単な作業なのだと思う。“七色レインボー”な超絶ギター&エフェクター・ワークも寝起き直後でも完璧に出来る人なのだと思う。
 自分の中の引き出しからフィーリングで気に入った音をコーディネイトするのは割と楽。でもここまで風呂敷を広げた直後に,きれいに包みをたたむのはそう簡単なことではない。

 なぜならば『七つの扉』とは【第一の扉】が【第二の扉】へとつながり,その流れを受けて続く【第三の扉】が演奏されるという「組曲」風。スタートの一音だけは決まっているが,最終的に【第七の扉】でどこに連れられていくかは誰も知らない。当然,加藤崇之本人も知らない。
 これって,短編小説作家になった近年のキース・ジャレットと同じじゃねぇ?

SEVEN DOORS-2 そう。『七つの扉』と真実とは,1つ1つの音のがパーツとなり,音のパーツの連鎖がやがてはセクションを成し,7つのセクションが完成するとその日のテーマが浮き彫りとなるスタジオ・セッション「組曲」なのである。

 一瞬一瞬の音選びのセンスとそのわずかコンマ数秒先を読む構成力。全体の主題は最後の最後まで分からない探求の旅。頭を真っ白にして音を出し,出した音をどう懐に収めていくか,を繰り返しながら全体のモチーフを形成していく。「完全即興」の成功の秘訣は“考えないこと”ではなかろうか?

 キース・ジャレットの手法を身に着けた加藤崇之恐るべし! 管理人は加藤崇之を「アングラ界の王様」に指名する!

  01. 第一の扉
  02. 第二の扉
  03. 第三の扉
  04. 第四の扉
  05. 第五の扉
  06. 第六の扉
  07. 第七の扉

(フルデザインレコード/FULLDESIGN RECORDS 2013年発売/FDR-2016)
(スリムケース仕様)

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