WHEN EVERYONE HAS GONE-1 2004年に国内盤としてリマスタリングされて再発された「e.s.t.」の公式デビュー盤『WHEN EVERYONE HAS GONE』(以下『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』)。

 『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の国内盤のリリース1つ前のアルバムは『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』。順番からいけば“あの”『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』の後なのだから『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』は落ちるはずだ。

 それがどうだろう。『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』がこれまた最高だ。デビュー当時の「純ジャズピアノ・トリオ」である。原点回帰盤として受け入れることができる。
 つまり「e.s.t.」とは『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の時点で,すでに完成されたピアノ・トリオであったということ。
 「e.s.t.」は初めから完成している状態でスタートし,完成体を中核に置きながら,全く異なる新しい音楽へと,全方向へと拡散し,変貌していったピアノ・トリオだったということ。

 ピアノエスビョルン・スヴェンソンがすでにキース・ジャレットしているし,ベースダン・ベルグルンドがすでにゲイリー・ピーコックしているし,ドラムマグヌス・オストラムがすでにジャック・デジョネット改めポール・モチアンしている。
 デビュー当時の「e.s.t.」の音楽性は,キース・ジャレットトリオのそれであった。内省的で実にいい音楽を鳴らしている。

 『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の最高を聴き終えて,ふと考えたのはエスビョルン・スヴェンソンの「迷い」である。
 まだエスビョルン・スヴェンソンも若者だったのだから,自分の将来について,あれやこれやと迷って当然。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』以降の「モデル・チェンジ」があったからこそ『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』まで辿り着くことができた。

 管理人が“引っ掛かった”のは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在である。
 『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】ってどこかで聞いたか?と考えた時【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在に気付いた。
 そう。【VIATICUM】とは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の焼き直しだったのだ。

WHEN EVERYONE HAS GONE-2 どうですか!? これに気付いた時の衝撃! 伝わりますか!? 「e.s.t.」が改名せずに「エスビョルン・スヴェンソントリオ」を名乗り続け,エスビョルン・スヴェンソンが「電化」せずにアコースティックピアノにこだわり続けていたらどうだろう?
 その「別の道」を歩み続けていたと仮定した結果が“最高傑作”『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】で提示されていたことに気付いた。

 【WHEN EVERYONE HAS GONE】を元ネタとして【VIATICUM】を再び演奏することに決めたエスビョルン・スヴェンソンの心の内とは如何ばかりだろう…。

 管理人は「e.s.t.」であろうと「エスビョルン・スヴェンソントリオ」であろうと,ジャズであろうとポップスであろうと,アコースティックであろうとエレクトリックであろうと,または他のどんな一面を見せるとしても,エスビョルン・スヴェンソンの創造する音楽に付いて行きます。もはや叶わぬ夢だけど…。

 とにかくデビュー当時の「純ジャズピアノ・トリオ」=「エスビョルン・スヴェンソントリオ」も素晴らしい。

  01. WHEN EVERYONE HAS GONE
  02. FINGERTRIP
  03. FREE FOUR
  04. STELLA BY STARLIGHT
  05. 4 am
  06. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 1
  07. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 2
  08. WALTZ FOR THE LONELY ONES
  09. SILLY WALK
  10. TOUGH TOUGH
  11. HANDS OFF

(ドラゴン/DRAGON 1993年発売/DIW-480)
(ライナーノーツ/瀧口譲司)

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