RING-1 純粋にゲイリー・バートンが好きだし,ECMも好きだし,パット・メセニーが大好き!
 しかし『RING』(以下『リング』)については評価しない。ゲイリー・バートンの“らしさ”が感じられないし,パット・メセニーの“らしさ”が感じられない。唯一,ECMの“らしさ”だけはガンガン来る。

 そう。『リング』を聴いて感じるのは,この時点ではヘボイ,パット・メセニーに着目したマンフレート・アイヒャーの選眼力である。よくぞ,こんな状態のパット・メセニーにリーダー作を録音させたものだ。アッパレ,マンフレート・アイヒャー

 お前は本当にパット・メセニー・ファンなのか?と叩かれようとも『リング』でのパット・メセニーの演奏はひどい。ちょい役もちょい役としての淡々とした演奏である。
 ゲイリー・バートンとしても,パット・メセニーへの期待は高くなかった。パット・メセニーの述べた「ゲイリー・バートンさんのファンです」の言葉とゲイリー・バートンの曲を暗譜で弾けた事実だけでレコーディングに参加させた,それだけのこと。
 ゆえにパット・メセニーをコンプリートする気がないのであればメセニーファンであってもスルーして構わない,と断言しよう。

 そもそも『リング』とは,ゲイリー・バートンエバーハルト・ウエーバーとの共演企画盤。
 ヴィブラフォンベースだけでは難しいから,当時のゲイリー・バートン・グループも全員参加させることにしよう。そうなるとベーシストエバーハルト・ウエーバースティーブ・スワローのツイン・ベースになるから,バランスを取る意味でギタリストも2人にしよう。だからミック・グッドリックともう1人を起用しよう。ミック・グッドリックは曲も書けるし,グループの看板ギタリストとして外せない。だからもう1人は無名の新人ギタリストを起用しよう,的な流れの中でパット・メセニーの参加が決定した!?

 だから,そんなポンコツ・メセニーのサイド・ギターに着目したマンフレート・アイヒャーが凄いのだ。
 もしもマンフレート・アイヒャーパット・メセニーの才能を見逃しソロ・アルバムを録音させることがなかったなら,現在のパット・メセニーはいなかったかもしれない。そうなれば現在のジャズフュージョン・シーンも今とは全く違った様相を見せていたはずである。

RING-2 『リング』を聴き終わって感じる,圧倒的なECMの世界観。ゲイリー・バートンがアメリカではなくヨーロッパのジャズを演奏するとこうなる,の図式。

 すでに『リング』の時点でマンフレート・アイヒャーの頭の中には,ゲイリー・バートンチック・コリアデュエットがあったのかもしれない。パット・メセニーソロパット・メセニー・グループのイメージがあったのかもしれない。

 とにかく『リング』は,これまでのゲイリー・バートン・グループの音ではない。ジャズ・ロックを駆け抜けてきたゲイリー・バートンフュージョン寄りな作風に亜流の違和感を感じる。
 ゲイリー・バートンが内向きである。そして歯切れが悪い。なのでフワフワとした浮遊感ある音が流れ続けている。

 もしやこれがECMレーベルの大勢のジャズメンから尊敬されるエバーハルト・ウエーバーの効果なのでしょうか?

 
01. Mevlevia
02. Unfinished Sympathy
03. Tunnel Of Love
04. Intrude
05. Silent Spring
06. The Colours Of Chloe

 
GARY BURTON : Vibraphone
MICK GOODRICK : Guitar
PAT METHENY : Guitar, Electric 12-String Guitar
STEVE SWALLOW : Bass
BOB MOSES : Percussion
EBERHARD WEBER : Bass

(ECM/ECM 1974年発売/J25J-20323)
(ライナーノーツ/黒田恭一)

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