
前作『ANSWER』がファン投票によるリクエスト・アルバムであったから,純粋なオリジナル・アルバムとしては実に5年振りのことである。
あの勢いを,毎年毎年アルバムをリリースしていた頃の矢野沙織を知るファンとしては,本当に待ちくたびれてしまった。危うく矢野沙織の存在を忘れてしまうところであった。
矢野沙織さんちの沙織さん,一体どうしてしまったのだろう?
『バブル・バブル・ビバップ』を聴いて,その答えが分かった。矢野沙織には迷いがある。この5年もの間,自分の進むべき道の分岐点で立ち止まっていたのだろう。
その分岐点とは,1つが『BEBOP』への道であり,もう1つが『BUBBLE BUBBLE BEBOP』への道であった。矢野沙織は今回『BUBBLE BUBBLE BEBOP』への道を選択した。
果たしてこれから先『BEBOP』への道へ引き返す勇気を持ち合わせているのだろうか? “バッパー”としての矢野沙織愛するがゆえに心配に思っている。
『バブル・バブル・ビバップ』は,間口の広いジャズ・アルバムに違いはないが,正しく“BUBBLE”である。泡として消え去るべき“一過性のジャズ”止まりであって“バブリーに弾けたビバップ”までは達し得ていない。
だから『バブル・バブル・ビバップ』は,矢野沙織のアルバムとしては初めてヘビーローテーションにはならなかった。

『YANO SAORI』での“衝撃の”【CONFIRMATION】と聴き比べると“ジャズメン”矢野沙織としての成長を実感する。
好きな方はデビュー・アルバムの方の【CONFIRMATION】である。しかし『バブル・バブル・ビバップ』での【CONFIRMATION】も悪くはない。
ノリとかスピード感では『YANO SAORI』での大名演に劣ってしまうが,演奏の質とか音の深みでは断然上である。大人な【CONFIRMATION】である。こういう【CONFIRMATION】も悪くはない。
続いてはキャノンボール・アダレイの【MERCY,MERCY,MERCY】! こちらも「日本のキャノンボール・アダレイ」と呼ばれた矢野沙織の,少女時代では演奏できなかった,実にファンキーで実に豪華な【MERCY,MERCY,MERCY】に身を乗り出してしまう名演である。
3曲目はスローでムーディーなフランス映画「ベティ・ブルー」のテーマ【BETTY ET ZORG】! 妖しいアルト・サックスに妖艶な口笛がエモーション!
特にアルト・サックスの音色一発にやられてしまう。矢野沙織の“音の個性”が強く感じられる。名演である。以上!

これ以上!は矢野沙織の興味の“てんこ盛り”風な演奏ばかりであって興味が湧かない。
矢野沙織よ,早く迷路から抜け出して来い! ジャズ一本を貫け! 『BUBBLE BUBBLE BEBOP』ではなく『BEBOP』を選択せよ!
いろいろとマイナスな感想を書き連ねてきましたが,それでも矢野沙織・ファンは辞められません。
矢野沙織・ファンを辞める時=ジャズ・ファンを辞める時。地獄に落ちるその日まで矢野沙織を応援し続けたいと思います。
PS 「BUBBLE BUBBLE BEBOP-3」は販促用の特製アーティスト写真です。
01. Blowin' The Blues Away
02. Bluebird
03. Puerto Rico〜砂とスカート
04. Betty Et Zorg
05. Mercy, Mercy, Mercy
06. Bayou
07. Avalon
08. Bye Bye Babylon
09. Confirmation
(サヴォイ/SAVOY 2015年発売/COCB-54166)
(ライナーノーツ/馬場雅之)
(ライナーノーツ/馬場雅之)