
そんな大の苦手で,でも本当は大好きな夏の訪れを感じる瞬間は気温の上昇以外にも多々あるのだけれども,管理人の中で“夏スイッチ”が入るCMがある。それが「SEA BREEZE」。持田香織とか深田恭子とか倉木麻衣とか堀北真希とか北乃きいとか川島海荷とか…。
そんでもって「SEA BREEZE」のCMを見た瞬間,同じ『SEA』繋がりで頭の中で流れ出す『SEA IS A LADY』→【SEA LINE】。ミンミンゼミではなく【SEA LINE】の到来が管理人に夏の始まりを告げてくれる!
そう。角松敏生のインスト・アルバム『SEA IS A LADY』の代表曲【SEA LINE】に「SEA BREEZE」と同じミントの爽快感を感じるのだ。ゆえに夏を感じるのだ。これは理屈ではない。
“シティ・ポップ”の角松敏生が作ったギター・フュージョンの大名盤=『SEA IS A LADY』。成功の秘密は角松敏生が「フュージョン専業」ミュージシャンではないからこそ!
ズバリ『SEA IS A LADY』は,歌詞のない“歌もの”である。アドリブではない起承転結なメロディー・ラインなのである。
しか〜し,この『SEA IS A LADY』批評で,管理人はこれだけは言いたい。
『SEA IS A LADY』の聴き所は,メロディーではなくリズムにある。角松敏生がギター・フュージョンにこだわっているのはメロディーではなくリズムの方なのだ。ここだけは読者の皆さんに分かってほしいと願ってしまう。
『SEA IS A LADY』のハイライトは,角松敏生のシャープなカッティング・ギターにスペースを与える青木智仁のベース。“スラップ”にしてこの音空間がフュージョン・ベースの王道。
そう。角松敏生が“日本のマーカス・ミラー”青木智仁との共演を「思う存分楽しむ」ための「インスト仕上げ」なのだと思う。
同じプロデューサー資質のミュージシャンとして角松敏生はマーカス・ミラーを意識している。こだわりのリズム隊=ドラムの村上“ポンタ”秀一にしてもパーカッションの斉藤ノブにしてもベースの櫻井哲夫と高水健司にしても,それら超大物全員を角松敏生自身のギターを活かすために“いいように使っている”。
ただし,角松敏生にマーカス・ミラーの影響を感じるのは,それが必要であれば,という方法論。そう。ギター・フュージョンなのにギターが主役ではなかったりする。足し過ぎない“引き算の演奏スタイル”が“歌もの”フュージョンの真骨頂。
『SEA IS A LADY』の“角松節”に,角松の他のボーカル・アルバム以上に“ボーカリスト”角松敏生が強く感じられるのだ。
角松敏生は『SEA IS A LADY』で,自身の内に湧き上がるメロディーに一番似合う言葉=ギターで語りたかった。言葉では伝えきれないメロディーがギターでなら伝えることができる。【SEA LINE】の,あの大サビまでの完璧な展開はギターでしか表現できやしないのだ。

逆に【SEA LINE】でのギター・フュージョンを聴けば,言葉がないのに<夏=女=海>が伝わってくる。【SEA LINE】こそが夏の超・定番。外房とか内房とか平戸の海ではなく,湘南,茅ケ崎,三浦海岸なドライブ・ミュージック。
専業のカシオペアの夏歌もスクェアの夏歌もDIMENSIONの夏歌も【SEA LINE】の<夏=女=海>を未だ超えきれていない。【SEA LINE】こそが「日本の夏ソング」の最高峰である!
PS1 「夏CM→角松敏生」の紹介となってしまいましたが,正直【SEA LINE】が流れれば,真冬であっても夏気分が味わえる『SEA IS A LADY』はハワイみたいなアルバムです。
PS2 でも“夏”をイメージするギター・フュージョンと来れば角松ではなくタカナカですよね?
01. WAY TO THE SHORE
02. SEA LINE
03. NIGHT SIGHT OF PORT ISLAND (NIGHT FLIGHT
OF DC10)
04. SEA SONG
05. SUNSET OF MICRO BEACH
06. OSHI-TAO-SHITAI (MEMORIES OF DUSSELDORF)
07. 52ND STREET
08. THE BASS BATTLE
09. MIDSUMMER DRIVIN'
10. LOVIN' YOU
11. SEA SONG (REPRISE)
12. JUNE BRIDE (INSTRUMENTAL)
(BMGビクター/BMG 1987年発売/BVCR-1526)
(ライナーノーツ/角松敏生)
(ライナーノーツ/角松敏生)