アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:クリス・ポッター

クリス・ポッター / サーキッツ5

CIRCUITS-1 あのパット・メセニーが「30年振りに指名した木管奏者」なのだから,クリス・ポッターが「世界一」の称号で呼ばれたとしても,別段気に留めることはなかった。
 ただし自分自身の中で,お奨めのサックス奏者は?と尋ねられてもクリス・ポッターと答えたことは一度もなかった。クリス・ポッターの存在が頭の中に入っていないという事実。

 事実,クリス・ポッターの演奏は“新・帝王”ポール・モチアンの「TRIO2000」「ジ・エレクトリック・ビバップ・バンド」で数枚シンドメンとして耳にしてきた程度。
 クリス・ポッターをメインとして聴き出したのは『UNITY BAND』『KIN(←→)』『THE SIRENS』の3枚しかなかったので“1枚聴いたら追加でもう1枚”という反応も起こらなかった。
 思うに,クリス・ポッターにはコレと言った“味”がないのだろう。ノブが言うところの「クセが強い!」の反対なのだろう。

 クリス・ポッターサックスが強力だ。他の誰もが立ち向かえないほど強力だ。しかし,どの曲においてもサックスが主役のはずなのに嫌味なく曲の雰囲気に溶け込んでしまっている。サックスがどうのこうのというよりは“メロディーが鳴っている”と感じてしまう。

 そう。クリス・ポッターの無機質でテクニカルなサックスには,曲全体を聴かせてしまう稀有な魅力があると同時に,人間=クリス・ポッターのメカニカルな演奏スタイルには感情移入がし難いのだ。

 元来・常識人なクリス・ポッターには,ECM的なCOOLで理知的な演奏など似合わない。超絶系で絶唱系でグルーヴ路線で攻めて初めて,クリス・ポッターの持ち味が自然と中和されていい塩梅に仕上がるタイプ。
 クリス・ポッター瞬発力と即興の力強さは,あのマイケル・ブレッカーについに肉薄したように思う。

 『サーキッツ』とは「回路」の意味。PCボードでエレクトリックな基盤のことを連想するが「サイバーで無機質もの」と捉えるのは短絡的かもしれない。
 各曲をよく観察すると,この「回路」とは人間の神経や循環器であり,また都市や交通といった人々の営みでもあり,ひいてはクリス・ポッターが奏でる“空気を送り込む楽器”の比喩でもある。

CIRCUITS-2 『サーキッツ』でのクリス・ポッターの演奏は,マルチ・リードだけではなくサンプラー等を用いたオーバーダブが施されており,もはやテナー云々を語るレベルにはとどまらない,高度なテクニックを駆使したエネルギッシュなプレイに満ちている。
 そう。やっぱりクリス・ポッターサックス奏者というよりも「音楽家」として『サーキッツ』に参加している。

 だから『サーキッツ』の聴き所は“メロディー”である。イケイケなのに複雑な構造を持つクリス・ポッターオリジナルがしっかりと耳に残る。クリス・ポッターの作る美メロは,変拍子の上に乗せると“キャッチー”に鳴ってしまうのだから,クリス・ポッターのハイセンスに舌を巻くばかり。

 だから管理人の潜在意識の中に,お奨めのサックス奏者=クリス・ポッターのイメージがないんだろうなぁ。
 その意味でマイルス・デイビスパット・メセニージャコ・パストリアスマーカス・ミラーマイケル・ブレッカーと同じ種類の存在である。

 そう。クリス・ポッターとはサックス奏者を超えたところで語られるべき存在である。クリス・ポッターとは稀代の「音楽家」なのである。 

  01. Invocation
  02. Hold It
  03. The Nerve
  04. Koutome
  05. Circuits
  06. Green Pastures
  07. Queens of Brooklyn
  08. Exclamation
  09. Pressed For Time

(エディション・レコーズ/EDITION RECORDS 2019年発売/AMIP-0148)
(☆直輸入盤仕様)

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クリス・ポッター / ザ・サイレンズ4

THE SIRENS-1 管理人がクリス・ポッターの存在を知ったのは,パット・メセニークリス・ポッターを『UNITY BAND』のフロントマンに指名したことに始まった。

 クリス・ポッターって誰? ネットで調べてみると情報が出るわ出るわ。えっ,結構,有名なの? えっ「ポスト・マイケル・ブレッカー」と呼ばれていたの?
 …と言うことで,天神のタワーレコードへ直行してGETしてきたのが『THE SIRENS』(以下『ザ・サイレンズ』)であった。

 初めて聴いたクリス・ポッターの印象は「テクニシャン」。確かに“超絶技巧”な「ポスト・マイケル・ブレッカー」である。マルチ・リード奏者として全ての楽器を完璧にコントロールしている。
 しかし『ザ・サイレンズ』を繰り返し聴き込んでいくうちに,クリス・ポッターの魅力は“超絶技巧”以外のところにあると思うようになった。

 クリス・ポッターは確かに“唯一無二の声を持つ”「ポスト・マイケル・ブレッカー」であった。
 かつてのマイケル・ブレッカーが,まずテクニックで注目され,その後,独特の“マイケル節”で人気を集めたように,クリス・ポッターも,まずはテクニック目当てで注目され,その後,独特の“クリポタ節”でブレイクしたように思う。

 なぜならば『ザ・サイレンズ』の中に存在する2つの縛り,1つは「オデュッセイア」のコンセプト・アルバムとしての縛り,もう1つはECMのレーベル・カラーという伝統の縛りを振り解いた,実にスケールの大きな“クリポタ節”がアルバム全体を支配していたからだ。

THE SIRENS-2 「オデュッセイア」とは,古代ギリシャの詩人ホメーロスが残した長編叙事詩。ECMとは,ご存じ,静寂で無調で温度低めのクリスタル・サウンド。

 コンセプト・アルバムの枠組みを呑み込み,ECMのサウンド・カラーをものみ込み,大きな懐構えのテナーサックスで“クリポタ節”を吹き上げている。

 『ザ・サイレンズ』の,抑制の効いたアグレッシブなフレージングの連続技に「静と動を行き交う」クリス・ポッターテナーサックスが「濃密な音空間」に“浮かんでいる”。

 個人的には『ザ・サイレンズ』の感想をパット・メセニーにも聞いてみたいと思う。きっとパット・メセニーも『ザ・サイレンズ』にご満悦!?

  01. Wine Dark Sea
  02. Wayfinder
  03. Dawn (With Her Rosy Fingers)
  04. Sirens
  05. Penelope
  06. Kalypso
  07. Nausikaa
  08. Stranger At The Gate
  09. Shades

(ECM/ECM 2013年発売/UCCE-1137)
(スリーブケース仕様)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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