アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

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CD批評:アンソニー・ブラクストン

アンソニー・ブラクストン / イン・ザ・トラディション VOL.25

IN THE TRADITION VOL.2-1 『IN THE TRADITION VOL.1』『IN THE TRADITION VOL.2』(以下『イン・ザ・トラディション VOL.2』)の発表はアンソニー・ブラクストンにとって,自身のこれまでのキャリアを自分で否定するような困難な作業だったことだろう。
 いいや,そうではなく,初めて経験するクリエイティブな作業であった。産みの苦しみを経験したと表現するのが適切か?

 ジャズスタンダードをかなり崩して吹いているとはいえ,定速ビートやコード進行,あるいは決まった小節数といった制限を守って演奏が進んでいく。
 いいや,そんな制限を課されたセッティングだったからこそ,新鮮味溢れるフレージングが創造されたと言えるだろう。アンソニー・ブラクストンの潜在能力,今までとは全く別の蛇口がひねられた形である。

 アンソニー・ブラクストンが伝統的なスタンダードに新たな命を吹き込んでいる。フリー育ちだから演奏できる4ビートが音空間に拡散されている。
 フリーに走りそうで走らない演奏というのは,得てして不完全燃焼で終わる,聴いていてつまらない演奏が多い。その点で『イン・ザ・トラディション VOL.2』でのアンソニー・ブラクストンは,ギリギリのところを攻める緊張感を失わない。
 成功の要であるテテ・モントリューピアノ・トリオも,時に寄り添い時に煽り続ける,超絶系のいい演奏だと思う。

 ゆえに『イン・ザ・トラディション VOL.2』のハイライトとして,管理人は異色の【DONNA LEE】を指名したい。
 ビ・バップを代表する急速調の【DONNA LEE】をアンソニー・ブラクストンアルトサックスではなくコントラバスクラリネットで料理する。

IN THE TRADITION VOL.2-2 一般的なクラリネットより2オクターヴ下の音程でウネウネ演るものだから,テーマならまだしもアドリブとなると,一体何を演奏しているのか聴き取り不能。

 この超低音域でブリブリ鳴ってる品のない地響き?に合わせて(と言うより無視するかのように?)テテ・モントリューピアノ・トリオがバッキングが実に見事なバップの演奏を繰り広げている。下手なフロントをめちゃくちゃ上手いリズム・セクションがバッキングしているような演奏になっている。アンソニー・ブラクストンを圧倒するテテ・モントリューピアノニールス・ペデルセンベースに萌えるのです。

 まるで「正義と悪のせめぎあい」のように聴こえる【DONNA LEE】の奇異なコントラストに接して「醜悪」と感じた人は正常な感覚の持ち主であろう。逆に美しいと感じた方は「こっちの世界」の方です。仲良くいたしましょう。

  01. WHAT'S NEW
  02. DUET
  03. BODY AND SOUL
  04. MARSHMALLOW
  05. DONNA LEE
  06. MY FUNNY VALENTINE
  06. HALF NELSON

(スティープルチェイス/STEEPLECHASE 1976年発売/VACE-1072)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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アンソニー・ブラクストン / イン・ザ・トラディション VOL.15

IN THE TRADITION VOL.1-1 『IN THE TRADITION VOL.1』(以下『イン・ザ・トラディション VOL.1』)の購入目的はアンソニー・ブラクストンではなかった。
 尤もアンソニー・ブラクストンの演奏を1度も聴いたことがなかったので,どんなものかという興味もあった。しかし管理人にとってアンソニー・ブラクストンは“おまけ”であって,主たる購入目的はテテ・モントリューピアノであり,ニールス・ペデルセンベースであり,アルバート・ヒースドラムである。要は超絶系のテテ・モントリューピアノ・トリオスタンダード集が聴きたかった。

 アンソニー・ブラクストンコントラバスクラリネットが強烈! 危ういノリのアルトサックスの表は好きだし裏はもっと大好き!
 そう思えるのも,正統派気取りでアヴァンギャルド丸だしなアンソニー・ブラクストンアルトサックステテ・モントリュートリオが見事にまとめ上げている。
 ズバリ,テテ・モントリューあってのアンソニー・ブラクストン名演集なのである。

 事実『イン・ザ・トラディション VOL.1』を聴いた後,アンソニー・ブラクストンの有名フリー・ジャズを幾枚か購入してみたのだが,どうにも気に入らずに中古CD屋送り。
 たまたま出会ったテテ・モントリューあっての『イン・ザ・トラディション VOL.1』が,管理人とアンソニー・ブラクストンの偶然にして幸運な出会いだったのだと,後から思い知らされた次第である。そういうことで『イン・ザ・トラディション VOL.2』には即・飛びついてしまった。

 そう。異端と正統派が組した“異種格闘技盤”『イン・ザ・トラディション VOL.1』の挑戦者とは,初めてスタンダードに取り組んだアンソニー・ブラクストンの方ではない。真の挑戦者とは暴れ馬の手綱を握ったテテ・モントリューの方なのである。

 『イン・ザ・トラディション VOL.1』におけるアンソニー・ブラクストンの何がそこまで管理人を魅了するのか? その答えはアート・ペッパーである。ストレート・アヘッドなハードバップを演奏するアンソニー・ブラクストンを聴いているとアート・ペッパーを感じるのだ。
 剃り込みアイパーのアンソニー・ブラクストンが七三分けに転じてスタンダードで押し込もうとすると「あら不思議」アート・ペッパーへと変身してしまう。「どうして,こういうことになったのか?」という意味で,このまさかの化学反応を面白いとは思いませんかっ!?

 尤もこれには秘密があってコントラバスクラリネットの【GOODBYE PORK PIE HAT】の後でアルトサックスの【JUST FRIENDS】。再びコントラバスクラリネットの【ORNITHOLOGY】の後でアルトサックスの【LUSH LIFE】。
 この硬軟織り交ぜた「バケモノとクソマジメ」の展開が,管理人の頭の中のアート・ペッパーを浮かび上がらせるのだ。特に後期のアート・ペッパーのあの凄み。

IN THE TRADITION VOL.1-2 いや〜,スティープルチェイスニルス・ウインターのマジックにやられてしまった。ライナーノーツを読むと,元々この企画はアンソニー・ブラクストンのためではなくデクスター・ゴードンのためのものだったそうだが,デクスター・ゴードンの代役としてアンソニー・ブラクストンを指名した企画力に恐れ入ってしまう。

 ジャズ・マニアの常識では想像できなかった極上の音がニルス・ウインターには想像できたのだ。アンソニー・ブラクストンの中の後期アート・ペッパーが吹き上げるスタンダードの音を…。そうしてテテ・モントリュートリオが見事にまとめ上げた,前人未到の化学反応の音を…。

 テテ・モントリューニールス・ペデルセンが組めば,アンソニー・ブラクストンが垂れ流す,音楽的とは呼べない,何とも表現し難い異次元のスタンダードが,ちゃんと音楽として聴こえてしまう。

 テテ・モントリューが好きで後期アート・ペッパーが好き。この条件に当てはまるジャズ・マニアであるならば,スタンダードの基本を押さえた上で,音楽的にアヴァンギャルドしてしまうアンソニー・ブラクストンに必らずや魅了されることをここに保証する。

  01. MARSHMALLOW
  02. GOODBYE PORK PIE HAT
  03. JUST FRIENDS
  04. ORNITHOLOGY
  05. LUSH LIFE
  06. TRANE'S BLUES

(スティープルチェイス/STEEPLECHASE 1974年発売/VACE-1011)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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