
個人的にエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』はイマイチだと思っているからなのか,痛快パロディー盤とは認めつつも『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』も聴いていて楽しい演奏ではない。
そもそも大友良英の側に『OUT TO LUNCH』完コピする気など更々なかったように思う。大友良英にとって『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』とは,大友良英流・エリック・ドルフィーへのリスペクトではなくネタの1つにしかすぎない。
「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」脱退後,活動の中心となった「ONJO」の自慢の音。この音で菊地成孔と勝負してみたい。そして「DCPRG」を見返してみたい。
菊地成孔が電化マイルスでいくのなら,大友良英はエリック・ドルフィーでいく。エリック・ドルフィーの奇抜な音なら,電化マイルスとも十二分に戦える。あくまでもノリでありネタなのである。
エリック・ドルフィーと大友良英の『OUT TO LUNCH』の違いは,ボビー・ハッチャーソンが,いるかいないか,の違いである。
それくらいに本家『OUT TO LUNCH』の個性の半分はボビー・ハッチャーソンの硬質で幾何学的なヴァイブが担当していた。
大友良英が指名した『OUT TO LUNCH』のキーマンとは,SACHIKO Mの「サイン波」であろう。
エリック・ドルフィーよりも大袈裟にアウトしてく「ONJO」の中にあって,SACHIKO Mの「サイン波」と大友良英の「ノイズ」がサウンドの核を担っている。

大友良英が意図的にチューニングを狂わせれば,バンドが一斉に補正をかけてくる。そこに複雑なアンサンブルが完成する。緊張感のあるインプロが続くが,そこにはいつでも知性を感じる。
結果,本家『OUT TO LUNCH』で描かれていた音世界のスケール感が増している。なるほどね〜。
菊地成孔にしても大友良英にしても,マイルス・デイビスにしてもエリック・ドルフィーにしても,適当に即興演奏しているわけではない。言わば「計算ずくめの即興演奏」なのである。
01. Hat And Beard
02. Something Sweet, Something Tender
03. Gazzelloni
04. Out To Lunch
05. Straight Up And Down 〜 Will Be Back
(ダウトミュージック/DOUBTMUSIC 2005年発売/DMF-108)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/大友良英,殿山康司,カヒミ・カリィ)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/大友良英,殿山康司,カヒミ・カリィ)