アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD

ゲイリー・バーツ〜ソニー・フォーチュン / アルト・メモリーズ4

ALTO MEMORIES-1 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンである。この2人の名前の並びを見ると,ゲイリー・バーツ個人でもソニー・フォーチュン個人でもなく,一気に電化マイルス・モードへトリップしてしまう。

 それぐらいにマイルス・デイビスの信者にとってはパワーのある名前である。ゲイリー・バーツソニー・フォーチュン在籍時のマイルスのバンドこそが“帝王”マイルス・デイビスのキャリアの頂点と重なっている。

 そう。キース・ジャレット在籍時のゲイリー・バーツと『アガパン』でのソニー・フォーチュン。そんな2人の共演盤が発売されると聞けばマイルスのファンなら買わずにはいられないというもの。

 ただし『ALTO MEMORIES』(以下『アルト・メモリーズ』)は,非・電化マイルスジャズスタンダード集である。
 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが『アルト・メモリーズ』でトリビュートしたのは,マイルス・デイビスではなくアルトサックスの巨匠たちである。

 チャーリー・パーカーオリヴァー・ネルソンキャノンボール・アダレイジジ・クライスジャッキー・マクリーンオーネット・コールマンベニー・カータージョニー・ホッジズの名曲を,はみ出すことなく渋目の演奏でまとめ上げたアルバムである。

 それにしてもたまたまなのかどうなのか? 「これぞ,ツインアルト」と思わせるような演奏が1曲もない。ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが同時に音を鳴らす場面が極端に少ない。アルト2本のバトルがほんとんどないのが個人的に不満である。

 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが入れ替わりの交代形式でアルトソロを受け渡している。そこに2人の個性の違いを聴き分けることができるのは楽しいのだが,ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンってこんなにも似ていたっけ?

 ズバリ『アルト・メモリーズ』は「これぞ,ツインアルト」というよりも「これぞ,ツインテナー」の音であり,2人ともジョン・コルトレーンっぽいし,ケニー・ジャレットっぽくもあるし…。

 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンソロ・アルバムは1枚も聴いたことがないせいなのだろうし,逆にマイルス・デイビスジョン・コルトレーンケニー・ジャレットの演奏を今でも聴き続けているせいなのだろうし…。

 『アルト・メモリーズ』のハイライトは【LONLY WOMAN】である。この1曲でそれまでの穏やかな雰囲気をガラリと変えるオーネット・コールマンの破壊力。
 本当はなれるものならジョン・コルトレーンではなくオーネット・コールマンを真似したかったのでは? ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンの2人の手に届いたのがジョン・コルトレーンだったというだけで,制覇してきたチャーリー・パーカーオリヴァー・ネルソンキャノンボール・アダレイジジ・クライスジャッキー・マクリーンベニー・カータージョニー・ホッジズの発表会!?

ALTO MEMORIES-2 管理人の結論。『アルト・メモリーズ批評

 『アルト・メモリーズ』のリーダーはゲイリー・バーツでありソニー・フォーチュンはゲストである。
 『アルト・メモリーズ』のリーダーはソニー・フォーチュンでありゲイリー・バーツはゲストである。 

 『アルト・メモリーズ』のリーダーは常に2人ではなくどちらか1人。共同名義でケニー・バロンピアノを,バスター・ウィリアムスベースを,ジャック・デジョネットドラムをレンタルして乗り回している感じ。

 そう。『アルト・メモリーズ』とはゲイリー・バーツカルテットソニー・フォーチュンカルテットの「対バン」盤。
 似た者同士のアルトなのにテナーっぽい,ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンの合同事務所においでやす。

  01. STOLEN MOMENTS
  02. U.F.O.
  03. JEANNINE
  04. MINORITY
  05. BILLIE'S BOUNCE
  06. EMBRACEABLE YOU
  07. CAPUCHIN SWING
  08. LONELY WOMAN
  09. WHEN LIGHTS ARE LOW
  10. WARM VALLEY

(ヴァーヴ/VERVE 1994年発売/POCJ-1212)
(ライナーノーツ/ロブ・クロッカー)

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熱帯JAZZ楽団 / X 〜SWIG CON CLAVE〜4

X 〜SWIG CON CLAVE〜-1 『勝 腺咤廝稗裡如。達錬痢。達味腺孱邸』は,ウディ・ハーマンカウント・ベイシーグレン・ミラースイング・ジャズの定番曲に焦点を当てた正統派ビッグ・バンドとしての演奏集。

 スイング・ジャズの特長とはソロアドリブというよりアレンジ命。個性溢れる名アレンジャー陣が多数在籍する「熱帯JAZZ楽団」が,どこまで「TROPICAL」できるか?が「名盤か否か」の分かれ目であろう。

 手垢のついた【フォー・ブラザーズ】【ナイト・アンド・デイ】【茶色の小瓶】【ムーンライト・セレナーデ】の定番曲が「TROPICAL」している。予想以上にラテンジャズしていて面白いアレンジである。

 ラテンのリズムの心地良さの上にジャズらしいインプロビゼーションがスパイスされた,でもアンサンブルの醍醐味を楽しめるビッグ・バンドでないと絶対に出せない“味”がある。
 書き譜で演奏しているはずなのに「熱帯JAZZ楽団」を聞いていて受ける印象とは基本「自由」。曲の流れに合わせてメンバーが思い思いに自由にアンサンブルを重ねている印象を受けた。

 『勝 腺咤廝稗裡如。達錬痢。達味腺孱邸』として,スイング・ジャズの定番曲を1枚のアルバムとして聴かせてくれると,今までは曲単位で楽しんでいた「熱帯JAZZ楽団」のバンドとしての「まとまり」を感じるようになった。
 どんな曲調を演奏するにしても,いつでも「TROPICAL」という個性が表に出てしまうように感じる。これまで以上にアルバムに「TROPICAL」な「統一感」が出るようになった。

 だからビッグ・バンドの円熟期のタイミングで,大好きなジンサク時代の【スネークマンズ・シャッフル】を再演してくれたのが宝物!
 『WIND LOVES US』収録の【スネークマンズ・シャッフル】も,ジンサクラテンフュージョン期の大名演であり,神保彰がノリノリでアフロ・キューバンしていた大名演が素晴らしかった。

 だが『勝 腺咤廝稗裡如。達錬痢。達味腺孱邸』収録の【スネークマンズ・シャッフル】はそれ以上の大名演である。その要因こそが,先に書いた「自由」であろう。

X 〜SWIG CON CLAVE〜-2 神保彰のイメージする音をメンバー全員が共有できていない感じがする。全員が自分の思い思いの【スネークマンズ・シャッフル】を演奏している。つまりは微妙な部分が神保彰ドラミングとズレている。

 でもこれだから聴いていて面白いのだ。白にしても真っ白があれば,オフホワイトもあるし,生成りもある。それと同じで【スネークマンズ・シャッフル】の曲としての面白さも,人によっては前半であったり,サビだったり,リズムであったりするものである。

 「熱帯JAZZ楽団」の全員が全員,楽団員の頭の中に興味津々である。どこをどんなテンポでどんな音色で強調してくるのかと,他のメンバーの発する音に耳を傾けながらも,自分なりの譲れない部分を表現している。

 そんな人それぞれの感性を1つの完成形としてまとめ上げるのではなく,みんなが思う【スネークマンズ・シャッフル】の曲としての面白さを全部取り上げ,アクセントとしてバラバラに登場している。それでいて大枠としては全員ズレていないのだから何の問題もない。うん。これってジャズの面白さだよなぁ。 

  01. DINNER WITH FRIENDS
  02. ALBA BLANCA
  03. SNAKEMAN'S SHUFFLE
  04. FOUR BROTHERS
  05. NIGHT AND DAY
  06. LAMENTACION
  07. LITTLE BROWN JUG
  08. LA RUMBA PARA DEBBY 〜Waltz for Debby〜
  09. MOONLIGHT SERENADE
  10. ARRIBA! para los fantasistas
  11. NIGHT AND DAY (Inst.)

(ビクター/JVC 2006年発売/VICJ-61355)

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フューズ・ワン / フューズ5

FUSE-1 「CTIオールスターズ」が「CTIジャズオールスターズ」であるならば「フューズ・ワン」は「CTIフュージョンオールスターズ」である。

 フュージョンの老舗であるCTIの企画盤「フューズ・ワン」の『FUSE』(以下『フューズ』)は,フュージョン・ブームの末期に発売された,フュージョン・ブーム再燃を狙った起死回生盤。
 ゆえに『フューズ』の収録曲【DOUBLE STEAL】がTDKTVCM曲として採用されたのにも理由があったのです。

 話のついでに脱線するが,俗に【DOUBLE STEAL】を「フュージョン・ブーム最後の名演」と呼ぶことに抵抗はないが,どうせだったら【GRAND PRIX】か【TAXI BLUES】のどちらかがTVCMで流されていたならフュージョン・ブームも延命していたと管理人は信じている。

 「フューズ・ワン」のメンバーは,テナーサックスソプラノサックスフルートジョー・ファレルギタージョン・マクラフリンギターラリー・コリエルキーボードロニー・フォスターキーボードドン・グルーシンキーボードジェレミー・ウォールキーボードホルヘ・ダルトピアノヴィクター・フェルドマンハーモニカヒュー・マクラッケンベーススタンリー・クラークベースウィル・リードラムトニー・ウィリアムスドラムレニー・ホワイトドラムレオン・チャンクラーパーカッションポウリーニョ・ダ・コスタパーカッションロジャー・スキーテロ ETC

 『フューズ』の最高は,上記クリード・テイラー人脈の超豪華スーパースター軍団の演奏の良さに秘密があるのか? それとも名曲ばかりの選曲の良さに秘密があるのか? いやいや,演奏とメロディーの相乗効果にある!でしょう。

 とにかく曲がいいのだが「フューズ・ワン」の名手たちが,美メロをこれ以上ないハーモニーで表現しきっている。凄いんだけど聴き馴染みが本当に良い。頭の中でいつまでもリフレインする名曲&名演集の決定版の1枚である。

FUSE-2 …が,しかしである。以上が表『フューズ批評であり,上記の文章にウソ偽りなど混じってはいないのだが「フューズ・ワン批評には表と裏の2種類がある。
 ズバリ,裏『フューズ批評の真実とは「フューズ・ワンフィーチャリングスタンリー・クラーク」のことである。

 とにかくスタンリー・クラークベースのバカテクこそが『フューズ』最大の聴き所である。曲調にしてもソロ・スペースにしても全てがスタンリー・クラークベースのために“お膳立てされている”で間違いない。

 ここまであからさまに贔屓されているスタンリー・クラークのどの部分にクリード・テイラーが魅了されたのかは今もって不明であるが,クリード・テイラーの心の声は明らかである。

 ECMマンフレート・アイヒャーRTFチック・コリアよ,スタンリー・クラークを横取りしやがって〜。 

  01. GRAND PRIX
  02. WATERSIDE
  03. SUNSHINE LADY
  04. TO WHOM ALL THINGS CONCERN
  05. DOUBLE STEAL
  06. FRIENDSHIP
  07. TAXI BLUES

(CTI/CTI 1980年発売/KICJ 2169)
(ライナーノーツ/中原仁)

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熱帯JAZZ楽団 / IX 〜MAS TROPICAL!〜4

IX〜MAS TROPICAL!〜-1 『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』に渡辺貞夫がゲスト参加すると聞きつけた時,もしや「熱帯JAZZ楽団」が渡辺貞夫を喰ってしまうのでは?と期待したのだが,やっぱり渡辺貞夫渡辺貞夫
 ズバリ『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』の真実とは「渡辺貞夫 WITH 熱帯JAZZ楽団」であった。

 そう。『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』で渡辺貞夫と共演していた「熱帯JAZZ楽団」の立ち位置は「ビッグ・バンドならぬバック・バンド」!
 これを渡辺貞夫の凄さと取ったあなたは「熱帯JAZZ楽団」の真のファンである。同時に“善良の塊り”渡辺貞夫の大ファンでもある。間違っても「熱帯JAZZ楽団」の演奏が,イマイチだ,と取ってはなりません。

 そもそもビッグ・バンドソロ・オーダーは短いものです。だから全編渡辺貞夫が前面に出る【オレンジ・エクスプレス】と【ベサメ・ムーチョ】がバック・バンド風に聴こえるのも当然のこと?

 それと渡辺貞夫が「熱帯JAZZ楽団」の実力を高く評価しているからこその大熱演。『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』での渡辺貞夫の演奏がいつも以上に気合いが入っている。
 “百戦錬磨”のナベサダ自身【オレンジ・エクスプレス】も【ベサメ・ムーチョ】も,久しぶりに演奏したことだろう。だから新鮮味があったのだろう。
 でもそれ以上に,こんなにも深いアンサンブルで演奏されたら,フロントとして燃えなければウソだろうし,ジャズメンとしても名乗れないであろう。

 『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』における渡辺貞夫の“突出”は,裏を返せば「熱帯JAZZ楽団」の爆演のおかげである。
 渡辺貞夫抜きの「熱帯JAZZ楽団」のオリジナルでは,いつものノリとハーモニー満載でリラックスした演奏集。かなり小難しいこともやってきている。

IX〜MAS TROPICAL!〜-2 「熱帯JAZZ楽団」の10周年記念盤『宗 腺唯腺咫。圍劭錬丕稗達腺漫〜』は,カルロス菅野にとって初めての「挑戦作」であり「冒険作」である。

 敢えて猛者たちの自我を封印し,全員がパーツの一部として意識的に演奏してきた,安定とか落ち着きといった言葉は10周年を迎えた「熱帯JAZZ楽団」には似合わなくなってしまった。

 ボーナス・トラックの【コーヒー・ルンバ】が軽やかでウキウキで大好きです。抑制された美しさと自由奔放な表現手法に大物たちの「自己表現」が表われたように感じます。 

  01. Machete
  02. Orange Express
  03. El Futuro
  04. Casa Verde
  05. Cosa Latina
  06. Besame Mucho
  07. Mambeo Mareo
  08. Quien Sera
  09. Tu Pintura
  10. Almost There
  11. Moliendo Cafe

(ビクター/JVC 2005年発売/VICJ-61277)

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クリス・ポッター / サーキッツ5

CIRCUITS-1 あのパット・メセニーが「30年振りに指名した木管奏者」なのだから,クリス・ポッターが「世界一」の称号で呼ばれたとしても,別段気に留めることはなかった。
 ただし自分自身の中で,お奨めのサックス奏者は?と尋ねられてもクリス・ポッターと答えたことは一度もなかった。クリス・ポッターの存在が頭の中に入っていないという事実。

 事実,クリス・ポッターの演奏は“新・帝王”ポール・モチアンの「TRIO2000」「ジ・エレクトリック・ビバップ・バンド」で数枚シンドメンとして耳にしてきた程度。
 クリス・ポッターをメインとして聴き出したのは『UNITY BAND』『KIN(←→)』『THE SIRENS』の3枚しかなかったので“1枚聴いたら追加でもう1枚”という反応も起こらなかった。
 思うに,クリス・ポッターにはコレと言った“味”がないのだろう。ノブが言うところの「クセが強い!」の反対なのだろう。

 クリス・ポッターサックスが強力だ。他の誰もが立ち向かえないほど強力だ。しかし,どの曲においてもサックスが主役のはずなのに嫌味なく曲の雰囲気に溶け込んでしまっている。サックスがどうのこうのというよりは“メロディーが鳴っている”と感じてしまう。

 そう。クリス・ポッターの無機質でテクニカルなサックスには,曲全体を聴かせてしまう稀有な魅力があると同時に,人間=クリス・ポッターのメカニカルな演奏スタイルには感情移入がし難いのだ。

 元来・常識人なクリス・ポッターには,ECM的なCOOLで理知的な演奏など似合わない。超絶系で絶唱系でグルーヴ路線で攻めて初めて,クリス・ポッターの持ち味が自然と中和されていい塩梅に仕上がるタイプ。
 クリス・ポッター瞬発力と即興の力強さは,あのマイケル・ブレッカーについに肉薄したように思う。

 『サーキッツ』とは「回路」の意味。PCボードでエレクトリックな基盤のことを連想するが「サイバーで無機質もの」と捉えるのは短絡的かもしれない。
 各曲をよく観察すると,この「回路」とは人間の神経や循環器であり,また都市や交通といった人々の営みでもあり,ひいてはクリス・ポッターが奏でる“空気を送り込む楽器”の比喩でもある。

CIRCUITS-2 『サーキッツ』でのクリス・ポッターの演奏は,マルチ・リードだけではなくサンプラー等を用いたオーバーダブが施されており,もはやテナー云々を語るレベルにはとどまらない,高度なテクニックを駆使したエネルギッシュなプレイに満ちている。
 そう。やっぱりクリス・ポッターサックス奏者というよりも「音楽家」として『サーキッツ』に参加している。

 だから『サーキッツ』の聴き所は“メロディー”である。イケイケなのに複雑な構造を持つクリス・ポッターオリジナルがしっかりと耳に残る。クリス・ポッターの作る美メロは,変拍子の上に乗せると“キャッチー”に鳴ってしまうのだから,クリス・ポッターのハイセンスに舌を巻くばかり。

 だから管理人の潜在意識の中に,お奨めのサックス奏者=クリス・ポッターのイメージがないんだろうなぁ。
 その意味でマイルス・デイビスパット・メセニージャコ・パストリアスマーカス・ミラーマイケル・ブレッカーと同じ種類の存在である。

 そう。クリス・ポッターとはサックス奏者を超えたところで語られるべき存在である。クリス・ポッターとは稀代の「音楽家」なのである。 

  01. Invocation
  02. Hold It
  03. The Nerve
  04. Koutome
  05. Circuits
  06. Green Pastures
  07. Queens of Brooklyn
  08. Exclamation
  09. Pressed For Time

(エディション・レコーズ/EDITION RECORDS 2019年発売/AMIP-0148)
(☆直輸入盤仕様)

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フル・ムーン(ラーセン・フェイトン・バンド) / フル・ムーン・ライヴ5

FULL MOON LIVE-1 管理人はブートは買わない。と言いつつも,買ったことがないだけで友人から借りて聞いたことはある。ユーチューブもブートみたいなものと考えると時々ブートを聞いていることになる。でも(これからも絶対に買わないとは言い切れないが)基本的にブートは買っていない。

 こんなスタンスの音楽ファンはきっと多いと思う。海賊盤は悪である。世に出してはいけない。そのことを自覚すればこそ,好きなアーティストの音源は全部聴いてみたいしコレクションもしたい,という内面の葛藤と闘うことになる。
 レコード会社はそのことを分かっている。それで悪魔の囁き「やれ別テイクだ。やれ発掘盤だ」と誘ってくる。攻勢を仕掛けてくる。

 そんなレコード会社の近年の荒業の1つに「公式ブートレグ」の発売がある。公式であるからファンも良心が痛まない。公式であるから音質も一定基準を満たしている。いい時代である。

 …でっ,前置きが長くなってしまったが,今夜ご紹介するのは「フル・ムーン」の「公式ブートレグ」『FULL MOON LIVE』(以下『フル・ムーン・ライブ』である。
 この『フル・ムーン・ライブ』が真に最高である。諸手を挙げて推薦する屈指の名盤の1枚である。

 先に公式なら音質も一定基準を満たしていると書いたが『フル・ムーン・ライブ』の元ネタはバジー・フェイトンの個人所有の録音テープ。どんなに最高の編集技術を駆使しようと元ネタがカセットテープ・レベルであればどうしようもない。どれほどマスタリングで加工しようともチープな音質に変わりはない。音質としてはブートの中でも劣悪な部類に入るレベルであろう。

 でもでもでも,それでも『フル・ムーン・ライブ』が真に最高である。当然のことなのだがCDって音質の前に内容である。内容が良ければ音質が悪いという理由だけでCD未発売という選択肢はないのである。未発売は世界の大損失なのである。

 とにかく,冒頭の【MESSAGE FROM BEYOND】である。このヒートアップする観客の勢いに圧倒されてしまう。アドレナリンが止まらなくなる。
 ドラムパーカッションの最高の乱れ打ちに煽られた観客の熱狂的な叫び声が,続くバジー・フェイトンギターにパワーを与えている。
 流ちょうすぎるギターのテーマが重なり入ってきた瞬間の歓びと言ったら…。あの高揚感は他の何物にも代え難い。【MESSAGE FROM BEYOND】における出だしの数秒間がバジー・フェイトン名演の中の名演で間違いない。

 自分がライブ会場のど真ん中にいるような気になれる程「フル・ムーン」の演奏に没入できる。イントロが流れるとすぐにベイクド・ポテトへトリップできる。これほどの臨場感を感じられるのも「公式ブートレグ」の魅力であろう。

FULL MOON LIVE-2 とにかく『フル・ムーン・ライブ』はノリと選曲がいいんだよな。これがっ! 「フル・ムーン」のヒット曲が連続で大盛り上がりで演奏されていく!
 スタジオ録音ではヴォーカル優位の「フル・ムーン」であるが,編集の都合なのか?『フル・ムーン・ライブ』におけるバジー・フェイトンヴォーカル曲は1曲のみ。インスト曲ばかりなのが特にお気に入り!

 『フル・ムーン・ライブ』を聴く前から「フル・ムーン」が好きだったのだが『フル・ムーン・ライブ』を聴いてからというもの,以前の何倍も「フル・ムーン」が好きになったし,改めて聴き直した『FULL MOON』『LARSEN−FEITEN BAND』『FULL MOON FEATURING NEIL LARSEN & BUZZ FEITON』が好きになった。

 管理人の「フル・ムーン」のファン人生を変える転機となった『フル・ムーン・ライブ』にはそれだけ大きな力があるということです。ライブ盤にはそれだけ大きな力があるということです。

  01. MESSAGE FROM BEYOND
  02. LITTLE COWBOYS
  03. FUTURAMA
  04. AZTEC LEGEND
  05. FURTHER NOTICE
  06. SIERRA
  07. DEMONETTE
  08. PHANTOM OF THE FOOTLIGHTS
  09. SUDDEN SAMBA

(ドリ−ムズヴィル・レコード/DREAMSVILLE RCORDS 2002年発売/YDCD-0089)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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熱帯JAZZ楽団 / VII 〜SPAIN〜4

VII 〜SPAIN〜-1 管理人は基本的に大編成ものは好みではない。ビッグ・バンドを日常ではほとんど聴かない。それは「熱帯JAZZ楽団」に関しても同じこと。
 ハーモニーやアンサンブルもそれ自体は好きではあるが,どうにも演奏が鈍いというか「ジャズとはアドリブ芸術」人間なので「熱帯JAZZ楽団」は,すでに所有済の『掘 腺唯戞。藤腺孱錬劭稗圍邸』と『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』の2枚があれば十分事足りるものと思っていた。

 一方,管理人には好きな楽曲についてはいろんな人のいろんな演奏を聴いてみたいという欲求がある。『察 腺咤丕腺稗痢』の購入理由は収録曲の「ビッグネーム」に負けてこちら側の気持ちが勝った結果である。

 「熱帯」と来れば的なジャズ・メッセンジャーズの【チュニジアの夜】に,フュージョンの2大代表曲であろう,チック・コリアの【スペイン】とウェザー・リポートの【バードランド】。この3曲の並びに再び物欲が湧き上がる〜。

 【チュニジアの夜】こそ,ビッグ・バンドの重厚な大熱演が似合うというのに,おとなしいニューヨーク・ヴォイセスだとは…。【スペイン】こそ,ラテンのビートが似合うというのに,鈍い管楽器のアンサンブル重視だとは…。
 でもでも【バードランド】にはハマッタ! 高橋ゲタ夫ベースがビンビンで,仮にジャコパスが「ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンド」で【バードランド】を演ったら,こんな感じになったのだろうと想像させてくれる…。

 『察 腺咤丕腺稗痢』は買って良かった。ただし,購入して満足した理由は「お目当ての3曲」ではなく,それ以外の曲の出来が良かったから!
 そう。「熱帯JAZZ楽団」にとってカヴァー曲は単なる「看板」にすぎない。入り口とか間口にすぎない。

VII 〜SPAIN〜-2 【エディ・パル・モンテ】でのカルロス菅野ヴォーカルがカッコイイわ。サルサ調のムーディー・バラードの【グッドバイ・フィフス・アヴェニュー】のパーカッション・チームがカッコイイわ。【パランテ・パゴサール】はまたしても「JIMSAKU」の再来であって森村献神保彰の大仕事3。【スイングしなけりゃ意味ないね】での意表を突いたイントロがカッコイイわ。でも完全にSHIHO1人にモッテイカレテいる〜。【トロピジャム】は,きっとどこかで聞いたことがあるかのようなヘヴィロテ・ナンバーでして,こんな曲を死ぬまでに聞くことができた管理人は幸せ者です。

 「熱帯JAZZ楽団」を聴くのなら「カヴァーを超えるオリジナル」! オリジナルのクオリティの高さを聴き逃すな! 

  01. A NIGHT IN TUNISIA
  02. EDDIE PAL MONTE
  03. SPAIN
  04. BIRDLAND
  05. LA NOCHE EN EL BARRIO
  06. GOOD-BYE 5TH AVENUE
  07. PA'LANTE PA'GOZAR
  08. IT DON'T MEAN A THING (IF IT AIN'T GOT THAT SWING)
  09. TROPIJAM
  10. GET OUT AND GET UNDER THE MOON

(ビクター/JVC 2003年発売/VICJ-61118)

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フル・ムーン(ラーセン・フェイトン・バンド) / フルムーン・フィーチャリング・ニール・ラーセン&バジー・フェイトン5

FULL MOON FEATURING NEIL LARSEN & BUZZ FEITON-1 「フル・ムーン」と「ラーセン=フェイトン・バンド」は別物か否か? それって「ザ・スクェア」と「T−スクェア」は別物か否か?と尋ねているようなものなのに…。

 そう。ニール・ラーセンキーボードバジー・フェイトンヴォーカルギターがバンドの不動の2TOP。「フル・ムーン」も「ラーセン=フェイトン・バンド」も同じバンドなのです。安藤正容伊東たけしの2TOP然り〜。

 ただし,冒頭の質問が出て来る気持ちもうなずける。この混乱の一因はニール・ラーセンバジー・フェイトンの側にもある。
 それが「フル・ムーン」〜「ラーセン=フェイトン・バンド」の3作目『FULL MOON FEATURING NEIL LARSEN & BUZZ FEITON』(以下『フルムーン・フィーチャリング・ニール・ラーセン&バジー・フェイトン』)の存在にある。

 「フル・ムーン」ファンの間では,この「1st+2nd=3rd」のアルバム・タイトルの紛らわしさを笑い飛ばして終わらせるのが常であるが,音楽評論家の間では苦言と混乱が生じているようで,今回のライナーノーツでも高橋健太郎が長々とバンド名とアルバム・タイトルの矛盾について書き記しているが,そんな解説など全く意味がない。
 「フル・ムーン」とは,そして「ラーセン=フェイトン・バンド」とは,初めから「フルムーン・フィーチャリング・ニール・ラーセン&バジー・フェイトン」だったのだから…。

 ズバリ『フルムーン・フィーチャリング・ニール・ラーセン&バジー・フェイトン』の特長とは「1st+2nd=3rd」のアルバム・タイトル通りの素晴らしいAOR/フュージョンであって,ニール・ラーセンオルガンフュージョンバジー・フェイトンのサザン風味のギター・ポップ・ロックが曲順を含めて融合したインスト&歌ものアルバムの大名盤

FULL MOON FEATURING NEIL LARSEN & BUZZ FEITON-2 ニール・ラーセンキーボードが発するイマジーネーション豊かなのに人間味を感じさせるフレーズの間にバジー・フェイトンのゆったりしたヴォーカルとフェイザーたっぷりのギターが共鳴する瞬間の美しさは唯一無二。
 この快感はパット・メセニーライル・メイズか,ニール・ラーセンバジー・フェイトンか,という感じ。

 『フルムーン・フィーチャリング・ニール・ラーセン&バジー・フェイトン』は,JAZZYなのに,ウエストコースト・サウンドのような爽やかさをも併せ持つ,カラッカラに乾いた音のAOR/フュージョン
 都会的で洗練されたサウンドなのに“気分上々”なリラックスした雰囲気が最高に聴いて楽しい名演集の1枚である。

  01. PHANTOM OF THE FOOTLIGHTS
  02. THE VISITOR
  03. TWILIGHT MOON
  04. SIERRA
  05. BROWN EYES
  06. HERO'S WELCOME
  07. STANDING IN LINE
  08. LITTLE COWBOYS

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1982年発売/WPCP-3546)
(ライナーノーツ/高橋健太郎)

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熱帯JAZZ楽団 / IV 〜LA RUMBA〜4

IV 〜LA RUMBA〜-1 『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』に関しては「熱帯JAZZ楽団」というよりも「JIMSAKU」への思い出が強くなったアルバムとして今でも印象に残っている。
 というのも“掴み”の2曲【ドゥエニョ・デル・ソラール】と【ディア・ミスター・ジョーンズ】が強力すぎて,買うまでは一番楽しみにしていた3曲目,ジャコパスの【インビテーション】が霞んだくらい。

 そう。【ドゥエニョ・デル・ソラール】と【ディア・ミスター・ジョーンズ】は森村献の仕業である。
 正直【ドゥエニョ・デル・ソラール】と【ディア・ミスター・ジョーンズ】の2曲を聴いて,櫻井哲夫神保彰がなぜに森村献を重宝してきたかが初めて分かった。「JIMSAKU」解散後だというのにねぇ…。

 だから『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』以降,しばらくは「熱帯JAZZ楽団」を聴かなくなった。管理人のルーティーンはラテンを聴きたくなったなら森村献入りの「JIMSAKU」を聴く〜。
 その流れで「JIMSAKU」の神保彰ドラミングに注意がいって神保彰の凄さを改めて再認識〜。

 「JIMSAKU」時代の神保彰ドラミングって,音楽性重視のポジショニングに徹していて,テクニカルなこともいろいろと試していたとは思うが,小難しさなど全く感じさせないし,ラテンなのに常に正確無比な神保彰の“らしさ”が前面に出ていたと思う。
 対して「熱帯JAZZ楽団」での神保彰ドラミングは,もっと大らかであって,前面に出るのはドラム・ソロの時間位で,基本は後ろで全てをまとめ上げるドラミング
 
 ベース高橋ゲタ夫パーカッションカルロス菅野美座良彦コスマス・カピッツァの自由で個性的なビートが“ぶつかり合うことなく”聴こえるのも,ひとえに神保彰の無類のリズム感と構築力があればこそ!
 「熱帯JAZZ楽団」の命であるリズム隊が,コンファタブルであって,互いのビート感がぶつからない以上に,素晴らしくアンサンブルしてしまうのも,ひとえに神保彰の無類のリズム感と構築力があればこそ!

 特にテクニカル系のラテンフュージョン・ナンバー=【ロックス】と【イレブン】での神保彰ドラミングは,他のドラマーでは絶対にこうはならない,という完成度の高いダンサブル・ビート!

IV 〜LA RUMBA〜-2 神保彰って,世界一のフュージョンドラマーとしてではなく,もしや世界一のラテン・ドラマーとしても通用するのか? だから「JIMSAKU」だったのか? そんな神保彰が信頼するのが森村献だったのか?

 そんな「熱帯JAZZ楽団」と「JIMSAKU」の細かな音楽性を教えてくれたのが『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』なのです。
 『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』は「あ,こういうことなんだ」って「目から鱗」がどんどん落ちる。そしてそれがどんどん楽しくなってくるタイプの音楽なのです。

 『検 腺味繊。劭妝唯贈繊』では,森村献の【ドゥエニョ・デル・ソラール】と【ディア・ミスター・ジョーンズ】の連投に絶対に「モッテイカレル」経験ができるはず。【ネオ・ブガロジー】はシークレット・トラックなのか? 8分17秒からが「熱帯JAZZ楽団」の“エンターテインメント!”。

  01. Dueno del solar
  02. Dear Mr. Jones : Ironside〜Soul Bossanova〜Ai No Corrida
  03. Invitation
  04. Splash!
  05. Eleven
  06. Begin the beguine
  07. Lupin the third
  08. Reunan todos
  09. Neo boogalogy

(ビクター/JVC 2000年発売/VICJ-60642)

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ニール・ラーセン&バジー・フェイトン / ラーセン=フェイトン・バンド4

LARSEN-FEITEN BAND-1 「フル・ムーン」の『FULL MOON』。リリースしたのが時代に早すぎたがゆえにアルバムは売れずにバンドは解散してしまった。
 「フル・ムーン」の分身である「ラーセン=フェイトン・バンド」名義の『LARSEN−FEITEN BAND』(以下『ラーセン=フェイトン・バンド』)は,ニール・ラーセンの音楽性に,やっと時代が追いつきスマッシュ・ヒット。めでたしめでたし。

 しか〜し『ラーセン=フェイトン・バンド』の真実とは「時代が追いついた」だけではなく「近未来を預言したフュージョン・サウンド」。今聴いてもいつ聴いても新鮮な衝撃を受けてしまう。

 ただし,一般的に『ラーセン=フェイトン・バンド』について語られる場合は,フュージョン名盤としてではなくAORの名盤としてである。
 事実「フル・ムーン」〜「ラーセン=フェイトン・バンド」の時代は,メイン楽器がヴォーカルギターのパターンか,キーボードギターの2パターン構成である。

 『ラーセン=フェイトン・バンド』の場合も,インストの2曲が秀逸だというだけで,アルバムの全8曲中6曲が歌ものである。これをAORとジャンル分けされても致し方ない。
 だからどうにも「スティーリー・ダン」っぽく感じてしまうのだが,あちらが豪華ゲストを適材適所で起用した「作り込まれた」名盤であるなら,こちらはバンド・スタイルだから出せた名盤の“味”〜。

 「フル・ムーン」と「ラーセン=フェイトン・バンド」では,ニール・ラーセンバジー・フェイトン以外のメンバーは全員交代している。
 しかしそれでも(管理人はインスト曲しか聴かないので歌ものを含めた正確な違いについては語れないが)「フル・ムーン」と「ラーセン=フェイトン・バンド」のスタイルの違いはごくわずかなものだと思っている。
 つまり,それ位にニール・ラーセンバジー・フェイトンの音がバンドの中心として鳴っているのだ。

LARSEN-FEITEN BAND-2 ニール・ラーセンJAZZYでAORなキーボードバジー・フェイトンのROCKでR&Bなギターが実にまろやか!
 POPなメロディをキーボードがソウルフルに歌い,ファンキーなグルーヴに乗ったギターがメロディアスに歌うフュージョン・サウンド!

 『ラーセン=フェイトン・バンド』収録のインストの2曲。【FURTHER NOTICE】と【AZTEC LEGEND】が文句なしにカッコイイ!
 特にバジー・フェイトンギター・ワークの輝きっぷりは『ラーセン=フェイトン・バンド』での演奏が最高峰だと思わせる凄みがある。

  01. WHO'LL BE THE FOOL TONIGHT
  02. DANGER ZONE
  03. FURTHER NOTICE
  04. OVER
  05. SHE'S NOT IN LOVE
  06. MORNING STAR
  07. MAKE IT
  08. AZTEC LEGEND

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1980年発売/WPCR-732)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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熱帯JAZZ楽団 / III 〜MY FAVORITE〜4

III 〜MY FAVORITE〜-1 「熱帯JAZZ楽団」(「TROPICAL JAZZ BIG BAND」)。それは「熱帯」を名乗っているがラテンではない。「JAZZ」を名乗っているがジャズではない。「楽団」を名乗っているがビッグ・バンドはない。

 管理人は「熱帯JAZZ楽団」=ラテン・ジャズ・ビッグ・バンドで当たりだと思っていたが,どうやら公式にはそうではない。
 リーダーであるカルロス菅野が説明する「熱帯JAZZ楽団」のコンセプトとは“エンターテインメント”!

 管理人の初めての「熱帯JAZZ楽団」である『掘 腺唯戞。藤腺孱錬劭稗圍邸』を聴いて“エンターテインメント!”という説明が腑に落ちた。
 ジャズあり。フュージョンあり。映画音楽あり。ラテンあり。ポップスあり。ソウルあり。そしてオリジナルもある。

 そう。「熱帯JAZZ楽団」の音楽性とはボーダレス。すなわち“エンターテインメント!”。「楽しくなければテレビじゃない。楽しくなければ『熱帯JAZZ楽団』じゃない」なのだ。TVは没落してしまったが「熱帯JAZZ楽団」は永遠に“エンターテインメント!”。

 フランクな設定のビッグ・バンドにしてビッグ・バンド・メンバーは全員カルロス菅野の友人と来ている。問題が起こるとすれば,メンバー全員が超多忙ゆえにビッグ・バンドとして活動するためのスケジュール調整だけであろう。
 その点も考慮してなのか,塩谷哲に限らずカルロス菅野の出戻りOKのスタンスには「先見の明」があったと思う。

 ただし,そんな緩い条件ゆえに,メンバーが入れ替わっても毎度変わらず「熱帯JAZZ楽団」の音!ブレのない統一感!が鳴るためのアレンジの苦心には称賛の言葉を惜しんではならない。
 「熱帯JAZZ楽団」のバンド・メンバーは全員が日本を代表するファースト・コール・ミュージシャンばかり。その気になれば「超テクニカルな」ラテン・ジャズ・ビッグ・バンドも演れてしまうが,カルロス菅野は敢えてマニアックな方向には敢えて,大衆から愛される「熱帯JAZZ楽団」を目指したように思っている。

III 〜MY FAVORITE〜-2 管理人にはその理由が(イメージとしては余り結び付きにくいが)「オルケスタ・デ・ラ・ルス」での活動が影響しているように感じている。
 サルサ・バンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」での成功の軌跡が,今度はラテン・ジャズ・ビッグ・バンドを広めたいと願う際の方法論として生かされている。

 サルサ・バンド以上にインストのラテン・ジャズ・ビッグ・バンドって“とっつきにくい”ものだと思う。
 だ・か・ら・インストの間口を広めるための有名曲のカヴァーなのだ! ジャズあり。フュージョンあり。映画音楽あり。ラテンあり。ポップスあり。ソウルあり。そして最後の最後にアルバムに数曲入れているオリジナル勝負なのだ〜!

 『掘 腺唯戞。藤腺孱錬劭稗圍邸』では,硬派JAZZYな【マイ・フェバリット・シングス】と軟派JAZZYな【シング・シング・シング】。ディスコな【ガット・トゥ・ビー・リアル】と「オールナイト・ニッポン」のテーマ曲【ビター・スイート・ボンバ】。クインシー・ジョーンズとは「似て非なる」【アイ・キャント・ストップ・ラビング・ユー】が「熱帯JAZZ楽団」の“エンターテインメント!”。

  01. EPOCA DE ORO
  02. MY FAVORITE THINGS
  03. GOT TO BE REAL
  04. SING, SING, SING
  05. POR QUE NO?
  06. ROCKS
  07. BITTER SWEET BOMBA (BITTER SWEET SAMBA)
  08. RUINAS
  09. CHERRY PINK AND APPLE BLOSSOM WHITE
  10. I CAN'T STOP LOVING YOU
  11. PRENDE EL FUEGO

(ビクター/JVC 1999年発売/VICJ-60389)

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フル・ムーン / FULL MOON4

FULL MOON-1 「フル・ムーン」のバンド名の変遷の歴史。最初のバンド名が「フル・ムーン」。次が「ラーセン・フェイトン・バンド」。その次が「フル・ムーン」。

 バンド名が復活した理由はまたの機会に書くとして,要するに「フル・ムーン」とは「ラーセン・フェイトン・バンド」。則ち,ニール・ラーセンバジー・フェイトンの双頭バンド。
 インスト・フュージョンニール・ラーセンと歌ものロックのバジー・フェイトンの混成バンド。則ち,そのまんまの「フル・ムーン」の1stが『FULL MOON』なのである。ちゃんちゃん。

 1st『FULL MOON』と来れば,ジャズとロックが融合した“クロスオーヴァー”ミュージックの走りとして名高い「伝説」の1枚である。
 ニール・ラーセンバジー・フェイトンだから生み出せた,唯一無二の音楽性+唯一無二のバランス感覚。これが『FULL MOON』の「伝説」たる最大の理由である。

 商業的には不発に終わったものの,山下達郎を筆頭に“早すぎたクロスオーヴァー・サウンド”として,バンド解散後に高く再評価された名盤FULL MOON』。
 『FULL MOON』の形容詞“早すぎた〜”であるが,時代が追いついた今の耳にも新鮮さ抜群。というよりもニール・ラーセンの“早すぎた〜”時代を先取りしミスマッチしているフュージョン・センスには驚きさえ感じてしまう。

FULL MOON-2 『FULL MOON』の“クロスオーヴァー”な音楽性は,ジャズとロック,そしてフュージョンだけでには留まらない。ファンク,ソウル,ラテン,AORのエッセンスまでもが融合されている。
 そう。全ての音楽ファンを魅了し,受け入れる“懐の深さ”が『FULL MOON』にはあるのです。ニール・ラーセンにはあるのです。

 …とここまで書いてきたが,管理人の正直な評価は『FULL MOON』の出来の良さを心から認めるが,実際に『FULL MOON』を引っ張り出して聴くのはインストの4曲だけ。個人的にはミニアルバムっぽい扱いなのです。

  01. THE HEAVY SCUFFLE'S ON
  02. TO KNOW
  03. MALIBU
  04. TAKE THIS WINTER OUT OF MIND
  05. MIDNIGHT PASS
  06. NEED YOUR LOVE
  07. SELFISH PEOPLE
  08. HREE STEP DANCE

(ダグラス/DOUGLAS 1972年発売/YDCD-0033)
(ライナーノーツ/バジー・フェイトン,高橋健太郎)

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21世紀に残したいジャズBEST&BEST100 ジャズ・フュージョン名盤篇-5

 「スイングジャーナル」誌,2000年10月号掲載,岩波洋三,大村幸則,小川隆夫,小西啓一,杉田宏樹,高井信成,中条省平,成田正,藤本史昭,村井康司,田中伊佐資,淡谷幸次の12名のジャズ評論家が選んだ「21世紀に残したいジャズBEST&BEST100ジャズ・フュージョン名盤篇 名盤ベスト100」。
 今回は6〜10位の発表です。

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スティル・ライフ★10.スティル・ライフ
パット・メセニー・グループ


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ワード・オブ・マウス★9.ワード・オブ・マウス
ジャコ・パストリアス


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オン・ザ・コーナー★8.オン・ザ・コーナー
マイルス・デイビス


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ヘビー・メタル・ビ・バップ★7.ヘビー・メタル・ビ・バップ
ブレッカー・ブラザース


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ブリージン★6.ブリージン
ジョージ・ベンソン


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 おおっ,マイルス・デイビスの問題作『オン・ザ・コーナー』がランクインするとは,選者であるプロ評論家軍団は本物だと認める。
 個人的にはマイルス・デイビスと来れば『イン・ア・サイレント・ウェイ』が上であるが,突然変異的に発生した“マイルス・デイビス一流のブラック・ファンク・ミュージック”『オン・ザ・コーナー』の佇まいも「21世紀に残したいジャズ」にふさわしい。

 『オン・ザ・コーナー』というアルバムは,とにかくポリリズムである。しかも難解で予測不能なリズムの上でポリリズムが鳴っている。マイルス・デイビストランペットの出番などほぼないに等しい。
 それでも,この破綻した音楽こそがマイルス・デイビスである,という“帝王の濃度”が他のどんなアルバムよりも色濃いと思う。

 『オン・ザ・コーナー』の“孤高”が突出している。前作『ライヴ・イヴル』からの流れもなければ『オン・ザ・コーナー』の続編も存在しない。
 そう。『オン・ザ・コーナー』の代わりとなる音楽は,マイルス・デイビスの全ディスコグラフィーの中に1つもなければ,世界のどこにも存在しやしない。

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野獣王国 / スイート&ザ・ビースト4

SWEET & THE BEAST-1 何だか1度野獣王国を経由したら,野獣以降の是方博邦野獣以降の難波弘之野獣以降の鳴瀬善博野獣以降の東原力哉の聴き方が変わってしまったようでして…。

 野獣王国の良い所は,メンバー全員がフュージョン界の重鎮ながら,バンドとしてはまだ走り出したばかりの「新人バンドの1つ」に所属。他の仕事との掛け持ちにして,定期練習を欠かさない趣味バンドのポリシーとして,バンド・サウンドを固めていく過程が聴ける所。

 もう成長するも何も関係ないレベルの完成されてしまっている4人の野獣メンバー。個人としては「押しも押されぬ大御所」の4人の演奏だが,野獣メンバーの一人として耳を傾けると,ウソか誠か,成長して聴こえてしまうのだからタマラナイ。

SWEET & THE BEAST-2 野獣以降の是方博邦野獣以降の難波弘之野獣以降の鳴瀬善博野獣以降の東原力哉が全員,年齢が10歳は若返ったように聴こえてしまう。

 これもやっぱり,フュージョンの洗練されたしなやかさはもちろん,ロックの野趣溢れる醍醐味も押し出した野獣王国のバンド・サウンドは,まさしく“パワー・フュージョン”と呼ぶに相応しい。
 音楽にパワーを注入しながら自分自身のパワーもチャージできる。そんな良い循環が野獣王国のバンド・サウンドにはあるのだろう。

 野獣王国の第三作『SWEET & THE BEAST』(以下『スイート&ザ・ビースト』)は,濃厚なのにうっとうしくはなく,勢いがありながらも実に繊細な音楽言語で表現されている。オヤジたちが成長している部分である。

SWEET & THE BEAST-3 『スイート&ザ・ビースト』の「SWEET」担当曲は,スロー・バラードというよりも,紳士的でエレガントに演奏されるロマンティック系から来た「甘さ」が感じられる。
 『スイート&ザ・ビースト』の「THE BEAST」担当曲は,アイアン・メイデンばりのヘビィ・メタルというよりも,難波弘之お得意のプログレから来た“パワー・フュージョン”仕上げである。

 管理人の結論。『スイート&ザ・ビースト批評

 『スイート&ザ・ビースト』の聴き所は,メンバー個人のフレッシュな演奏力とバンド・サウンドの真新しさ&新鮮さにある。
 通常のバンド運営であれば,時間を共有するにつれ,暗黙の了解のうちに演奏がまとまる良さがあるのだが,野獣王国に関しては,時間を共有するにつれ,暴れて良いギリギリの線で勝負できる良さがある。そうしてどんなに暴れようとも,決して外さない信頼感関係がある。

SWEET & THE BEAST-4 フュージョン・バンドとは本来,野獣王国のように長く活動するにつれ,重責から解放されて,若々しく自由な音楽が演奏できる場所であってほしい。

 出でよ「THE BEAST」! 出でよ,第二の野獣王国

PS 普段インナーはスキャンしないのですが「SWEET & THE BEAST-3」「SWEET & THE BEAST-4」の封入漫画は読者の皆さんにも読んでほしいと思いました! 拡大して見て&楽しんで!

  01. THREE FUNK BEARS
  02. THE COURT OF THE BEAST KING
  03. MAHOROBA '99
  04. RIPPLET
  05. HURRICANE-Z
  06. EUROPEAN RATS
  07. VIOLET PAPILLON
  08. MY FOOLISH HEART
  09. ORBIT
  10. JINGLE JANGLE JAM
  11. THEME FROM “E.T.”

(パドルホイール/PADDLE WHEEL 1999年発売/KICP-695)
(ライナーノーツ/吉留大貴)
(ライナー・コミック/とり・みき)

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チャーネット・モフェット / モフェット&サンズ4

MOFFETT & SON'S-1 ウイントン・マルサリスジョシュア・レッドマンチャーネット・モフェット。その共通項とは「2世ジャズメン」となる。
 しかし,この3人に限っては単なる「2世ジャズメン」という言葉では言葉でが足りない。今や“親の七光り”を超えて,ジャズ界全体にまで影響を及ぼす「真打ち」の立場に座している。市川海老蔵級なのである。

 そんな「2世ジャズメン」の活躍ぶりを見聞きする時,親の顔(親の音)が気になってくるというもの?
 ウイントン・マルサリスの父親とはブランフォード・マルサリスの父親でもある「ニューオーリンズ・センター・フォー・クリエイティブ・アーツ」のエリス・マルサリスジョシュア・レッドマンの父親とはキース・ジャレットの「アメリカン・カルテット」のデューイ・レッドマンチャーネット・モフェットの父親とは「オーネット・コールマントリオ」のチャールズ・モフェット

 見事な血統! 優秀なサラブレット!
 NO! エリス・マルサリスデューイ・レッドマンチャールズ・モフェットが育てたのは自分の実の息子だけではない。
 その良い例がチャーネット・モフェットチャールズ・モフェットと親子共演を果たした『MOFFETT & SON’S』(以下『モフェット&サンズ』)の中に「師弟の音」が色濃く出ている。

 そう。『モフェット&サンズ』におけるチャールズ・モフェットの息子とはベースチャーネット・モフェット1人だけではない。
 言わば「義理の息子」であろう,トランペットフィリップ・ハーバーウォレス・ルニーテナーサックスビル・ピアスデビッド・サンチェスジョシュア・レッドマンピアノジェームス・ウィリアムスの超一線級の面々たち。

MOFFETT & SON'S-2 流石に『モフェット&サンズ』の音楽全体は“天才”チャーネット・モフェットのカラーで染められている。アルバム冒頭の【IMPRESSIONS】での,ベースを転がし続ける大激演に頭の中がガーン。

 ただし,そんなチャーネット・モフェットに指示を送るのがチャールズ・モフェットドラムであった。チャールズ・モフェットが子供世代の新感覚に付いていっているだけではなく,安定感を保ちながらも新世代を“煽っている”。
 オーネット・コールマントリオフリージャズドラマーの本領発揮にして,やすやすと叩き出された極上のリズムに貫録が漂っている。

 そう。この凄腕世代をひとまとめにして“モフェット・ファミリー”へと迎え入れたチャールズ・モフェットドラミングが“旗頭”である。

  01. IMPRESSIONS
  02. TICO TICO
  03. HOE DOWN
  04. SUGAR
  05. STOLEN MOMENTS
  06. DELILAH
  07. WORK SONG
  08. 81

(スイート・ベイジル/SWEET BASIL 1995年発売/APCZ-8031)
(ライナーノーツ/土倉明)

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野獣王国 / パワー・ジャングル4

POWER JUNGLE-1 ギター是方博邦キーボード難波弘之ベース鳴瀬善博ドラム東原力哉から成るセッション・バンドの野獣王国

 野獣王国というバンド名に“名前負けしない”フュージョン界の重鎮4人組。バンド活動レギュラー化のきっかけは是方博邦の「KOREKATA SESSION」。
 超大物としての強烈な個性がバンド内の4方向でぶつかり合っているが,それでいて反発せずにフィットするアンサンブルを耳にすると,超多忙のスケジュールの中でレギュラー・バンドに時間を割こうと考えた理由がダイレクトに伝わってくる。

 「KOREKATA SESSION」で共演を重ねて“相性チリバツ”であることを肌で感じた4人が4人。
 要するに野獣メンバーが「本当に自分のやりたい音楽」での共演者を考えていくと,4人が4人とも「是方博邦難波弘之鳴瀬善博東原力哉」というメンバーに落ち着いたというわけ。
 そして方向としてはセッションを重ねるだけでは生み出せないレギュラー・バンドでの表現で行こうというわけ。

POWER JUNGLE-2 だから1 本当に個人的な趣味で始めた野獣王国とは,例えるなら「マンディ・ナイト・オーケストラ」みたいなライフ・テーマ・バンドの位置づけなのであろう。力哉さん,事情ですぐにバンド辞めちゃったし…。

 だから2 野獣王国の1stCDはインディーズ発売。それがそこそこ売れたし,大きな会場でライブをするためなら,ということで,2ndはメジャー発売『POWER JUNGLE』(以下『パワー・ジャングル』)という流れ。

 そう。生計手段が別のところにある「プライベート録音」としての性質と「絶対に良いものを作る」というプロ・ミュージシャンとしてのプライドが良い意味でブレンドされたアルバムが『パワー・ジャングル』最大の魅力である。よくある「実験作」とも「冒険作」とも違うし「マンネリ」が入る余地など微塵もないし…。

POWER JUNGLE-3 管理人の結論。『パワー・ジャングル批評

 『パワー・ジャングル』には,もの凄い音の熱さ,もの凄い音の厚み,もの凄い音の深さ,もの凄い音の優しさ,もの凄い音の包容力が記録されている。これこそ相性チリバツで相思相愛の4人が見事に音を重ねた様は,セッション・ワークではなくレギュラー・バンドとして活動してきた最大の成果であろう。

POWER JUNGLE-4 野獣王国が演奏するのはテクニカル・フュージョンに違いないが,終始,楽曲の世界観を大事にした,その時に必要なテクニックが織り込まれているのが大変好印象なバンド・サウンド。
 とは言えそこは野獣メンバー。どの曲にも凄腕4人の「自己主張」がさり気ない仕方で鳴っている。いいよねぇ。応援したくなるよねぇ。

 野獣王国とは全部の仕事が全部趣味!

PS 普段インナーはスキャンしないのですが「POWER JUNGLE-3」「POWER JUNGLE-4」の封入漫画は読者の皆さんにも読んでほしいと思いました! 拡大して見て&楽しんで!

  01. JUNGLE
  02. BAKU'S DREAM
  03. ALICE
  04. SKELETON CREW
  05. SUMMER PLACE
  06. SAVANNA RUN
  07. PINK WOLF
  08. FOUR FLOWERS
  09. SUKIYAKI

(パドルホイール/PADDLE WHEEL 1998年発売/KICP-650)
(ライナーノーツ/熊谷美広)
(ライナー・コミック/とり・みき)

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ブラッド・メルドー / エレゲイア・サイクル5

ELEGIAC CYCLE-1 ブラッド・メルドーの“芸術”にハマッタ。しばらくは抜け出せそうにない。ブラッド・メルドーにはもっとピアノ・ソロを出してほしい。

 ブラッド・メルドー初のピアノ・ソロELEGIAC CYCLE』(以下『エレゲイア・サイクル』)を1週した時には,こんな感想など抱かなかった。
 それどころか書き譜のピアノ・ソロはダメだ。面白くないとさえ思った。頭の中にキース・ジャレット即興ピアノ・ソロのイメージがあるためなのだろう。そろそろブラッド・メルドーキース・ジャレットと比較しながら聴くのをやめなければならない。

 ブラッド・メルドー批評の中でキース・ジャレット批評を展開するのは良くないが,後述する『エレゲイア・サイクル批評に関係してくると思うのでご理解願いたい。

 キース・ジャレットピアノ・ソロは,そのほとんどがライブ録音である。だからダイレクトにキース・ジャレットの感情の動きが音に出て来る。キース・ジャレット独特の「唸り」なしでも,キース・ジャレットの感情の高まりを聴き分けることが出来る。
 そんな“絶対王者”キース・ジャレットピアノ・ソロの中に,数は少ないがスタジオ録音盤が幾作かある。そしてこれが超名盤揃いなのである。

 ではなぜキース・ジャレットは,ピアノ・ソロのスタジオ録音をやめて,ライブ録音だけを発表するようになったのか? それは練習し過ぎてキース・ジャレット本人が新鮮味を失うことを嫌ったからだと管理人は考える。要はキース・ジャレットは「創造の瞬間」を今まで以上に大切に扱うようになった。
 あるいは…(自分の中でも諸説を持っております。この続きはいつかキース・ジャレット批評の中で書かせていただこうと思います)。

 この一発勝負の場だから生み出せる「創作」のピアノ・ソロと構成を練り上げて完成した「作品」としてのピアノ・ソロ。聴いて圧倒されるのは,恐らくライブ盤であるが,繰り返し聴き込み愛聴盤になるのはスタジオ盤の方に分がある。
 かのキース・ジャレットピアノ・ソロのスタジオ盤『FACING YOU』と『STAIRCASE』における「これしかない」と思わせる完成度の高さは“作曲家”キース・ジャレットの“天武の才”を証ししている。

ELEGIAC CYCLE-2 『エレゲイア・サイクル』の『サイクル』とは「循環」の意。『エレゲイア・サイクル』の全9曲が1枚のトータル・アルバムとして「循環」している。
 『エレゲイア・サイクル』はブラッド・メルドーの「美の循環」の音階で満ちている。

 『エレゲイア・サイクル』は,視聴を重ね,理解が深まり,イメージが具現化されて初めて楽しむことのできるアルバムである。抽象的なイメージのまま聴き続けている間はジャズではない。クラシック寄りの現代音楽のピアノ・ソロであろう。
 しかし,一旦イメージが固まったなら『エレゲイア・サイクル』はジャズのど真ん中に位置しており,他の誰の真似でもないブラッド・メルドー・オリジナルなピアノ・ソロに愛着を覚えることだろう。

 だから“作曲家”ブラッド・メルドーとしての『エレゲイア・サイクル』なのである。だから『エレゲイア・サイクル』はブラッド・メルドーの“芸術作品”なのである。

 ブラッド・メルドーの彩りが深い。次々と現われては消えていく『エレゲイア・サイクル』の感動の大波が幾度も周期をなして巡ってくる。

  01. Bard
  02. Resignation
  03. Memory's Tricks
  04. Elegy for William Burroughs and Allen Ginsberg
  05. Lament for Linus
  06. Trailer Park Ghost
  07. Goodbye Storyteller (for Fred Myrow)
  08. Ruckblick
  09. The Bard Returns

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1999年発売/WPCR-10338)
(ライナーノーツ/ブラッド・メルドー)

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テザード・ムーン / プレイ・クルト・ワイル5

PLAY KURT WEILL-1 クルト・ワイルという作曲家など良く知らない。だからテザード・ムーンによる「クルト・ワイル集」『PLAY KURT WEILL』(以下『プレイ・クルト・ワイル』)の,どこがどう凄いかはうまく説明できない。
 ただこれだけは言える。『プレイ・クルト・ワイル』を毎回聴く度に悶絶してしまう。音数の少ない3人の音符が腸にまで達し,内臓が震えて口から飛び出してきそうな感じがする。

 テザード・ムーンの『プレイ・クルト・ワイル』は,耳とか頭で感じる前に,身体の内部が反応するジャズ・ピアノの音がする。快感が超音波のように到達する。こんな音体験,生涯中に滅多に出来るものではない。
 凄いぞ,菊地雅章! 凄いぞ,ゲイリー・ピーコック! 凄いぞ,ポール・モチアン! 凄いぞ,テザード・ムーン

 …と書き出してみたが,管理人のジャズコレクションの中にはクルト・ワイルの作品がチラホラ。慌てて2000枚のコレクションの中から【モリタート】【スピーク・ロウ】【マイ・シップ】の演奏を聴き直す。

 ズバリ『プレイ・クルト・ワイル』の衝撃とは,先の超音波の波動を超えて,腎臓結石を砕石するレーザー級の破壊力! テザード・ムーン名演は,無類のジャズ・ジャイアンツたちの名演より「一枚も二枚も上手」を行く!

 こんな【モリタート】なんか聴いたことがない。こんな【スピーク・ロウ】なんか聴いたことがない。こんな【マイ・シップ】なんか聴いたことがない。と言うかこんなアプローチがあったのかいっ!

 クルト・ワイルの「歌」を音の元素に還元し,主従関係どころか楽器のキャラクターからも離れ,それを自由に交換する即興演奏の場の中で始原のリズムとハーモニーを浮かび上がらせる。

 ピアノ・トリオのこのような在り方はテザード・ムーンが初めてだったし,今でもテザード・ムーンの他に似たようなのピアノ・トリオが在るとは思わない。
 深い。深すぎる…。潔い。潔よすぎる…。ギリギリのところで発せられる音。そのエッジの鋭さ。スペイシーで緊張感と安らぎが同居する不思議な感覚に神経が研ぎ澄まされていく…。

 菊地雅章は本当に弾いていない。その菊地雅章が空けたスペースをゲイリー・ピーコックが天才的に埋めていく。そしてやっぱりモチアンである。モチアンドラミングが全てだと思う。
 完璧な3人のコンビネーション&完璧な3人のソロ。こんなにもスローなのにテンションの高いインプロが聴けるとは,大袈裟ではなく「生きてて良かった」の思いがする。

PLAY KURT WEILL-2 管理人の結論。『プレイ・クルト・ワイル批評

 今回,名曲揃いと初めて認識したクルト・ワイルの譜面がもたらす,独特の緊張感と構造美が素晴らしい! 無意識の領域まで解放しながら,それでいて3人とも共鳴できる“崩しまくった”インタープレイが素晴らしい! 原曲のモチーフの美しさに魅せられてしまった3人の“喰いつきぶり”が素晴らしい!

 『プレイ・クルト・ワイル』とは,テザード・ムーンの厳かな解釈で生まれ変わった「新クルト・ワイル集」にして「新スタンダード」集である。
 こんなにも内省的なスタンダード集はそうは聴けやしない。菊地雅章と同時代に生まれたことを心から幸運に思う。

  01. ALABAMA SONG
  02. BARBARA SONG
  03. MORITAT
  04. SEPTEMBER SONG
  05. IT'S NEVER WAS YOU
  06. TROUBLE MAN
  07. SPEAK LOW
  08. BILBAO SONG
  09. MY SHIP

(バンブー/BAMBOO 1995年発売/POCJ-1264)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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フルーツケーキ / フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス4

FRUITCAKE 3 SUMMER REMINISCENCE-1 『FRUITCAKE 3 SUMMER REMINISCENCE』(以下『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』)を聴いて思うこと。
 それはフルーツケーキはなぜこうも音楽スタイルを変えるのか? 売れているのに急ぎ過ぎではなかったのか?

 『FRUITCAKE』から『FRUITCAKE 2』への音楽スタイルの変化が想像以上の激変であって,そしてガックリ来たのだったが『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』を聴いた時の衝撃は『FRUITCAKE 2』の衝撃以上!

 ズバリ『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』の真実とは“シャカタクの二番煎じ”に尽きる。
 ついにコーラス隊が入った。サックスも入った。シャッフル・ビートも入った。その結果,フルーツケーキは純粋なフュージョン・バンドではなくなってしまった。アーバンでAORな洋モノ・バンドのコンテンポラリー・サウンドが前面に出てきている。

 あぁ,かってのシンプルな美メロ一発の爽やかフュージョン・バンドとしての面影はどこへ消えてしまったのだろう。ライトでポップで耳当たりのよい「不思議の国のBGM」なイマジネーションが感じられない。
 フルーツケーキも当時のシャカタクが歩んだように,ヨーロピアンを捨てアメリカンを身にまとったように感じてしまった。そっちに行ったらライバルは五万といるというのに。勿体ないよなぁ。

 フルーツケーキフルーツケーキとしてのアイデンティティを失った『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』。その中で管理人が評価したのは【BREAKPOINT 100】【RHYTHM+SHOES】【MELLOW MOVES】の3曲のみ。
 この評価軸の中に,管理人が聴き狂ったフルーツケーキの“らしさ”は感じられない。かつてのフルーツケーキを聴きたいと思っていたファンからすると,正直さみしかった。でもそれだけではなく逆の意味でうれしさも感じたことを記憶している。

 そう。管理人にとって『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』というアルバムは「新生フルーツケーキ」の第一作である。
 フルーツケーキが新スタイルで放った射矢が管理人のハートに刺さった意味が大きかった。そもそもシャカタクが好きなんだもん。

FRUITCAKE 3 SUMMER REMINISCENCE-2 光の速さで変貌していくフルーツケーキの新しい音楽の旅を受け入れようと決意を固めた。『FRUITCAKE 4』でますますシャカタク化して,商業音楽化していく過程を楽しもうと決意を固めた。

 なのに,待てど暮らせど『FRUITCAKE 4』は発売されずじまい。
 限界の一歩手前で綺麗に身を引いたのが,フルーツケーキが今も“幻のフュージョン・バンド”であり“伝説のフュージョン・バンド”として,酒の席で語られ続ける理由なのであろう。

 フルーツケーキは『FRUITCAKE』の1枚だけ聴けば良い。そして『フルーツケーキ 3 サマー・レミニスンス』はシャカタクを一周してから聴けば良い。

  01. TRAVELLIN'
  02. KEEP IT UP
  03. BREAKPOINT 100
  04. LITTLE CHAKA
  05. PARTLY CLOUDED
  06. EVOLUTION
  07. RHYTHM+SHOES
  08. GIRLS
  09. PIT INN
  10. MELLOW MOVES
  11. DREAM ON
  12. HANDS FOR SALE

(ビクター/JVC 1986年発売/NCS-748)
(ライナーノーツ/苦楽健人,熊谷美広)

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山中 千尋 / プリマ・デル・トラモント5

PRIMA DEL TRAMONTO-1 山中千尋の『PRIMA DEL TRAMONTO』(以下『プリマ・デル・トラモント』)は「ミセス・山中千尋」のものであって「ちーたん」のものではない。

 管理人がこう宣言するのは(こう宣言しなければならなくなったのは)『プリマ・デル・トラモント』のCDジャケットの破壊力のせいである。
 まず『プリマ・デル・トラモント』について語らねばならないのは(不本意ながら)ビジュアルである。これまでの歴代のCDジャケット山中千尋の美しさ,キュートでチャ−ミングな容姿を“売り”にしてきたに違いない。
 『プリマ・デル・トラモント』における山中千尋の美しさが「桁違い」。圧倒的である。それにしても男目線だよなぁ。本当はこんなジャケットが大好きなんだけど,どことなくアイドルの写真集を買うことに似た“ためらい”を感じた。ネット通販って便利な世の中です。はい。

 さて,話を本論に戻そう。世の男性の中には『プリマ・デル・トラモント』を“ジャケ買い”した人がいるかもしれない。買いたくなる気持ちは分かる。でも,正直
プリマ・デル・トラモント』を“ジャケ買い”などしてほしくはない。山中千尋をビジュアル系の一人のような扱いで聴いてほしくはない。

 可能なら『プリマ・デル・トラモント』は内容とジャケットを切り離して聴いてもらいたい。ジャケットが星5つならば内容は星6つの超名盤だからだ。

PRIMA DEL TRAMONTO-2 そう。『プリマ・デル・トラモント』は,これが例えば,ブサイク系の写真のジャケットとか,あるいは真っ黒や真っ赤なジャケットであっても購入すべき超名盤である。
 だから本当は『プリマ・デル・トラモント』の紹介としてジャケットの話なんかは書きたくなかった。でもブルーノート側が,絶対に避けて通ることのできない大インパクトの写真を使ってきたのだからお許しを〜。

 …と言うことで,ジャケットの賛否抜きに,演奏内容を大絶賛する『プリマ・デル・トラモント批評のはじまりはじまり〜。

 『プリマ・デル・トラモント』のテーマは2つある。1つはブルーノート所属アーティストとしてのブルーノート創立80周年としてブルーノートのヒット曲(と言っても【CHEROKEE】【SWEET LOVE OF MINE】【BLUE MINOR】の3曲だけ。【C JAM BLUES】はブルーノート“馴染みの”1曲ということで)を取り上げたアルバムである。
 もう1つは山中千尋の愛するミシェル・ペトルチアーニ没後20周年として,ミシェル・ペトルチアーニの愛奏曲(と言っても【PASOLINI】【LOOKING UP】の2曲だけ)を取り上げたアルバムでもある。

PRIMA DEL TRAMONTO-3 まっ,ミシェル・ペトルチアーニブルーノートの契約アーティストだったから強引にブルーノート・クラシックとして扱うのもありなのだが,残りの5曲はいつも通りの山中千尋オリジナル集。
 結局のところ山中千尋の魅力とは,元ネタあっての“絶品のアレンジ力”にあるのだが,最近の傾向として,ちょっと落ち着いてきた「ちーたん」というか,オリジナルの雰囲気を大切にした“絶品のピアノ・トリオ”の方に主戦場があるように思う。

 その意味で『プリマ・デル・トラモント』は「ちーたん」ではなく「ミセス・山中千尋」によるストレートなジャズ・アルバム。
 こういう「淑女系のピアノ」が,これまたたまらなくよいし,エレピで狂喜しない,真面目で素直な「ちーたん」の真骨頂でもある。1人の“ジャズ・ピアニスト”としてのシンプルな立ち振る舞いが実にお見事である。
 成熟した雰囲気と新機軸が同居している。肩の力が抜けていながらも新しい展開が垣間見える。小気味の好いジャズピアノが2つのリズム・セクションの個性に合わせてスイングし続けている。自然と音楽に没頭できる。実に素晴らしい。

 『プリマ・デル・トラモント』をフラゲしてから聴きまくったこの1ヶ月間。【GENNARINO】【PASOLINI】【NEVER】【LOOKING UP】の神曲3曲に,身も心も首ったけのメロメロ状態が続いている。

PRIMA DEL TRAMONTO-4 あれれっ? この4曲を選曲したことに自分自身で驚いている。管理人はこれまでずっと山中千尋と来れば,アレンジを崩しまくった,誰にも真似することのできない孤高の“変態サウンド”が大好きだった。
 それって大抵の場合はエレピの「ちーたん」が代名詞であった。なのに『プリマ・デル・トラモント』のお気に入りはアコースティックピアノばかり。

 『プリマ・デル・トラモント』のリズム隊には,レギュラー・トリオである脇義典ジョン・デイヴィスに加えて,今を時めくロバート・グラスパートリオヴィセンテ・アーチャーダミオン・リードが参加している。
 これまでの管理人ならロバート・グラスパートリオのリズム隊に耳が行くはずなのだが,耳に付くのは脇義典ジョン・デイヴィス組の緩急自在なリズムの方。

 山中千尋の音楽性を数年後に振り返った時『プリマ・デル・トラモント』が「ミセス・山中千尋」の転換点になった,と評価するかもしれません。
 どうやら管理人は制御不能なエレピの「ちーたん」よりも,安定の本格路線「ミセス・山中千尋」が好きになってしまったようなのです。

PS 「PRIMA DEL TRAMONTO-4」は販促用のクリアファイルです。

   CD
  01. Gennarino
  02. Pasolini
  03. Thinking Of You
  04. Never
  05. Cherokee
  06. Sweet Love Of Mine
  07. Looking Up
  08. Blue Minor
  09. Solitude/C Jam Blues
  10. Prima Del Tramonto

   DVD
  01. Cherokee
  02. Cucciolo
  03. Sweet Love Of Mine

(ブルーノート/BLUE NOTE 2019年発売/UCCJ-9218)
★【初回限定盤】 UHQCD+DVD

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フルーツケーキ / フルーツケーキ 24

FRUITCAKE 2-1 耳タコのように『FRUITCAKE』を聴きまくって,友達にフルーツケーキを勧めていたら「新しもの好き」が評判となり,学年中で株が高騰していた?セラビー。
 みんなに勧めていた手前,ポシャッタらおしまいという気持ちの中で『FRUITCAKE 2』(以下『フルーツケーキ 2』)がリリースされた。

 自分の中では『フルーツケーキ 2』は4曲だけだった。それこそ全曲大好きな『FRUITCAKE』からすると駄盤に思えて「ちょっとまずい」と思っていたが,友達はみんな『フルーツケーキ 2』も気に入ってくれた。
 不安から解放されて「そうだろう」的に得意気に自慢していた自分が今もって恥ずかしい。それが『フルーツケーキ 2』についての一番の思い出である。

 さて,上記の大当たりの4曲とは【CASINO JUMP】【BREAKFAST AT BENNY’S】【GAME FOR TWO】【MARIMBA】。
 この4曲の共通項。それこそ全4曲がシンセ曲。つまりはベニー・バンの世界観である。管理人にとってフルーツケーキの魅力とはベニー・バンの美メロであり,ベニー・バンキーボードである。あっ,打ち込みっぽい8ビートもかなりの好物でした。

 実はフルーツケーキ。『フルーツケーキ 2』からはバンドのメンバーが入れ替わって,レギュラー・メンバーはキーボードベニー・バンギターロブ・タエキマによるユニット体制へと変化している。
 それだけではなく『フルーツケーキ』のメイン・コンポーザーはベニー・バンであったが『フルーツケーキ 2』のメイン・コンポーザーはロブ・タエキマになっている。

 フルーツケーキのバンド内の事情は知る由もないが,当時中学生だった管理人の耳にもフルーツケーキの音楽性の変化については隠せない。
 キーボードギター以外はサポート・メンバーという立ち位置のせいなのか,カチカチとしたビートからグルーヴ感あるリズムへと変化しているように聞こえる。 スカ,ボサノヴァ,サンバを上手く取り入れた多彩なアプローチが飽きさせない。総勢7人ものサポート・ベーシストとサポート・ドラマーの参加効果ありあり〜。

FRUITCAKE 2-2 そうして何と言っても『フルーツケーキ 2』と来ればリズム・ギターの突出について語らねばならない。ストレートなギターフュージョンにはオランダではなく日本の遺伝子を重ねてしまう?

 ギターの妙なアーチキュレーションが気になってしまう『フルーツケーキ 2』。だから長らく『フルーツケーキ』からすると落ちるという印象であったが,今回『フルーツケーキ 2批評のために何回も聴き直す行為がそれはそれは楽しくて楽しくて…。

 『フルーツケーキ 2』が落ちることはなかった。『フルーツケーキ 2』は駄盤ではなかった。
 『フルーツケーキ 2』も管理人「青春の1枚」だったことを自分自身で再認識してしまいましたとさ。

  01. HEARTBEAT
  02. WASHINGTON SQUARE
  03. COOL AND GENTLE
  04. LOBSTER FUSION
  05. CASINO JUMP
  06. BREAKFAST AT BENNY'S
  07. KAYO
  08. SCREEN MUSIC
  09. YOU CAN MAKE ME
  10. GAME FOR TWO
  11. MARIMBA
  12. BEN'S BOSSA
  13. SUPER STRUTT

(ビクター/JVC 1984年発売/NCS-747)
(ライナーノーツ/苦楽健人,熊谷美広)

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フルーツケーキ / フルーツケーキ5

FRUITCAKE-1 ヨーロッパ発のフュージョン・バンドの四天王。それがシャカタクレヴェル42メゾフォルテフルーツケーキである。

 そのうちシャカタクレヴェル42は「ブリティッシュ・ファンク」と称される,上物はお洒落なロマンティック系なのに下物はビンビン・ビートがたまらない。共に歌ものが大ヒットしたのでフュージョン界の人気バンドとして現役活動中のバンドでもある。
 残るメゾフォルテフルーツケーキだが,こちらは同じヨーロッパでもメゾフォルテがアイスランドでフルーツケーキがオランダである。ヨーロッパの小国でニッチな市場を荒らしまくったフュージョン・バンドである。

 アメリカン・フュージョンに近い「ブリティッシュ・ファンク」とは一線を画す,クラシック王国,ヨーロッパ発のアドリブ偏重ではなくメロディー・ラインとアレンジを重視した「親しみやすいポップ・フュージョン」に身も心も癒される。
 未だスタイルを変えながら活動を続けるメゾフォルテとは違い,全精力を3枚のアルバムに捧げて解散したフルーツケーキだが,その3枚の魅力を絞ると,デビュー・アルバム『FRUITCAKE』(以下『フルーツケーキ』)1枚の音に集約されると思う。

 フルーツケーキの七不思議。フュージョン・バンドなのに一番“バンドっぽい”のがデビュー・アルバムであって,2枚目はユニットっぽいし,3枚目はセッションっぽい。時が進むにつれてバンドが崩壊していく印象を持つ。時代にもニーズにも逆行していく“ブラック・ホール・バンド”の1つだと思っている。

 そんな一番端正なフュージョン・サウンドがアルバム1枚,丸ごと楽しめる『フルーツケーキ』。
 1曲1曲の出来が最高に素晴らしい。全曲イントロが流れ出すと,ワクワク・ドキドキ・ウキウキ・たまに涙。お洒落で透明で癖がないので,直にメロディーが耳に,頭に,身体全体に沁み渡っていく。ベニー・バンの美メロがダイレクトに入ってくる。
 レヴェル42のように「ファンク」するのではなく,明るく軽快にステップしながら階段を登る気分? 実に爽快で快感である。

 そんなフルーツケーキの個性がちょっとしたBGMに最適であった。商用利用されまくった。80年代のある時期,管理人だけでなく全日本国民の耳に,頭に,身体全体に,TVやラジオ番組のBGMを通して浸透した。
 あのバブル景気の明るい未来の印象操作に『フルーツケーキ』が一役買っていたのだ。管理人は本気でそう思っています。ペコリ。

 だから管理人は宣言する。『フルーツケーキ』を1枚聴き通して,この中の1曲すら聞いたことのないという人は,ジャズフュージョンに限定されない「音楽モグリ」である(帰国子女は除く〜)。

FRUITCAKE-2 大ヒット・シングル【I LIKE THE WAY】で一気に持っていかれた後に流れるチャーミングすぎる【A LITTLE PLACE IN MY HEART】の後で流れる【PARTY IN BRASIL】のボコーダーシンセに押し倒された後に【WE’RE HERE TO PLEASE YOU】で百貨店かファッション・ビルにショッピングに行き【YOU’VE GOT ME GROOVIN’】でダンシング。【RIO DREAM】で一休みしておセンチ気分で聴き入った後は【WHEELIN’ AND DEALIN’】でピクニック。【SUMMER MELODY】が“無垢に”また聴かせてくる。【IN THE RIGHT DIRECTION】の波が押し寄せてくる。大波である。ラストの3曲はキャッチー・フュージョンカシオペアを意識したのが【SHORT TIME】でシャカタクを意識したのが【TRY SIX】でメゾフォルテを意識したのが【MELTING POT】。おしマイケル。あ〜,楽しかった!

  01. I LIKE THE WAY
  02. A LITTLE PLACE IN MY HEART
  03. PARTY IN BRASIL
  04. WE'RE HERE TO PLEASE YOU
  05. YOU'VE GOT ME GROOVIN'
  06. RIO DREAM
  07. WHEELIN' AND DEALIN'
  08. SUMMER MELODY
  09. IN THE RIGHT DIRECTION
  10. SHORT TIME
  11. TRY SIX
  12. MELTING POT

(ビクター/JVC 1984年発売/NCS-746)
(ライナーノーツ/苦楽健人,熊谷美広)

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カシオペア・サード / PANSPERMIA5

PANSPERMIA-1 カシオペアの40周年記念盤『PANSPERMIA』が出た。
 カシオペアの40周年記念は,手放しに「めでたい」限りではあるが,継続して活動してきたスクェアとは違ってカシオペアには活動休止の期間が6年もあるし,個人的にもカシオペアから離れていた期間が4,5年はあるし個人的には40周年のメモリアルに特別な感情は抱いていない。

 しかし,40周年記念というよりは別の意味で『PANSPERMIA』にはリキが入ってしまった。そもそも管理人はカシオペアに変化など期待してはいない。いい意味でのマンネリを心から受け入れることができている。
 だから野呂一生特有のメロディー・ラインが新曲でも聴けるというだけで,いつでも幸せに満たされてしまう。管理人のようなカシオペア・ファンは多いように肌で感じている。そんなカシオペア・ファンにとって『PANSPERMIA』は極上品の1枚に成り得ると思う。

 カシオペアというバンド名は星座の名前であり,野呂一生櫻井哲夫のユニットはペガサスであり,代表曲は【SPACE ROAD】【STARS OF THE STAR】【GALACTIC FUNK】【太陽風】だし(まだまだあるし)。

PANSPERMIA-2 その意味で「宇宙からの贈り物」というテーマで制作された『PANSPERMIA』は「宇宙」つながりというカシオペアの原点に還った40周年記念にふさわしいコンセプト・アルバムであり,これが往年のカシオペア・ファンのツボを押してくる。

 そう。「宇宙」とカシオペアの組み合わせは「ごはんと味噌汁」級の“永遠の鉄板”! 野呂一生一流の「アウト・オブ・ザ・ワールド」!
 いや〜,名曲集だし名演集だし,曲単位なら【DAYS OF FUTURE】【EVERY MOMENT】の神曲収録の『TA・MA・TE・BOX』には迫れなかったが,アルバム単位なら『PANSPERMIA』が3rdになってから一番のアルバムだと思う。

 『PANSPERMIA』のようなコンセプト・アルバムは1stや2ndでは表現できなかった音楽である。くすんだ暗く深いネイビー・ブルーのような宇宙色の音楽である。【BEYOND THE GALAXY】は3rdの“看板を張れる”超名曲である。

PANSPERMIA-3 「スリル・スピード・テクニック」的な【APPROXIMATION】。大高清美の“らしさ”爆発【ENCELADUS】。お決まりのソロ廻しが楽しい【LOOSH】と【THE UNIVERSE OF LOVE】もヘビロテ中〜。

 コンセプト・アルバム『PANSPERMIA』の出来の良さ。それにはコンセプト・アルバムとなると異次元の天才的な才能を発揮するチック・コリア並の野呂一生の作曲能力に尽きる。だって『PANSPERMIA』は「宇宙」そのものの音だもん。
 そして,まるで野呂一生の“頭の中を覗いたかのような”鳴瀬喜博大高清美神保彰の「野呂さん寄せ」の提供曲がどれも一級品。

 昔は向谷実シンセこそがカシオペアだと思っていたが,今では大高清美オルガンこそがカシオペアだし“古いSF”のような『PANSPERMIA』には大高清美オルガンが欠かせない。

PANSPERMIA-4 そして『PANSPERMIA』成功のキーマンに指名されたナルチョベースが絶好調。野呂一生の意図を掴んだ“古いSF”にはナルチョの「年の功」が見事に表現されている。

 先にカシオペアに変化は期待しないと書いたが,野呂一生カシオペアを変革していこうと算段している? まさかの某ト〇ックス方面?

 野呂一生のチャレンジが「特典DVD」での【BEYOND THE GALAXY】のMVの中に記録されている。これが必見でした!
 「AIR CASIOPEA」って管理人がいつも自宅でやっていることじゃないかっ! 本家本元にこれをやられたらこちらは終わりではないかっ! 何とも微笑ましくて,見ているこっちがニッコニコ!

  CD
  01. BEYOND THE GALAXY
  02. APPROXIMATION
  03. ENCELADUS
  04. SOME WHEN SOME WHERE
  05. THE WARP
  06. LOOSH
  07. SPACE LOCOMOTION
  08. A HERO OF THE PLANET
  09. STAR SEEDS
  10. THE UNIVERSE OF LOVE

  DVD
  01. BEYOND THE GALAXY [MV]
  02. BONUS
#1 MAKING OF PANSPERMIA
#2 BEYOND THE GALAXY PERFECT CASIOPEA 3rd
#3 BEYOND THE GALAXY AIR CASIOPEA 3rd

(ハッツ・アンリミテッド/HATS UNLIMITED 2019年発売/HUCD-10284/B)
(☆BLU−SPEC CD2+DVD仕様)
(☆スリップ・ケース仕様)
★16Pブックレット

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フレディ・レッド / シェイズ・オブ・レッド5

SHADES OF REDD-1 管理人は昔は完全に「演奏派」であったが,最近,自分は「演奏の前に曲が好きなんだ」ということを自覚している。上原ひろみピアノ科ではなく作曲科に進んだのは正解だよなぁ。

 ジャズ界にも名作曲家が幾百人と存在するが,有名どころの名前が挙がって出尽くしたと思うタイミングで名を挙げると「おお,やるな」と思われる作曲家がいる。言わば管理人のとっておきの名作曲家がフレディ・レッドである。

 ズバリ,フレディ・レッド紹介の枕詞はピアニストではなく作曲家である。管理人はフレディ・レッドは若さの盛りを過ぎてオジサンになってから聴いた。つまりジャズ名盤なるものを一通り聴いて後で,1000枚以上は聴いていたはずの耳にして「こんなにもキャッチーなジャズがあるなんて!」と感動したことを覚えている。

 こうは書いてもフレディ・レッドの作る曲はホレス・シルヴァーとかベニー・ゴルソンのような「分かりやすい系」ではない。
 事実『SHADES OF REDD』(以下『シェイズ・オブ・レッド』)の聴き所は,ジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスの「陰りのあるフロントの味」であろう。このムードで吹けるフロントは,この組み合わせでないと出て来ないと思う。
 ジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスの音色が重なった瞬間の幸福感を何と表現すれば良いのだろう。語彙の乏しい管理人は,言葉になる前に涙腺から涙がこぼれてくる感覚が実感としてある。

 しかし,ジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスの2人が揃えば,いつでもこんなムードで演奏できるというわけではない。曲である。
 フレディ・レッドの作る曲があればこそ,ジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスの「陰りのあるフロントの味」が爆発する。派手さやキャッチーさこそ物足りないが,じっくりと耳を傾けると全曲ドラマティックな展開で大サビが動いていく。
 明るいテーマの中に何故か常に哀愁が漂うフレディ・レッドの世界観があるからこそ,粋でロマンティックでミステリアスなムードだからフロントの名演アルフレッド・ライオンも魅了されたのだろう。

 ジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスというマイナー調の音色とフレージングを想定したかのようなズバ抜けた作曲センス。
 仮にフレディ・レッドが「泣きの2管」の存在を想定していなかったとしても,個性の塊のようなジャッキー・マクリーンティナ・ブルックスを結果“飲み込んでしまう”作曲能力は“桁外れの天才”である。

 …って,ここまで“ジャズピアニスト”としてのフレディ・レッドについては書いてこなかったが,正直,ピアニストとしてのフレディ・レッドは“味わい勝負”。
 この辺りは先の上原ひろみとは差がありすぎる。ジャッキー・マクリーンと来ればマル・ウォルドロンだから,フレディ・レッドマル・ウォルドロン・クラスとだけ書いておこう。

SHADES OF REDD-2 “味わい勝負”のフレディ・レッドピアノは曲全体のアレンジの一部として機能していくピアノである。
 音数の少なさが生み出す絶妙の間というかスペースが『シェイズ・オブ・レッド』を都会的なフレイバーで包み込んでいる。フロントが何処となくお洒落にまとまっているのは,和声と旋律をギリギリまで溶け合わせてしまった中性的なピアノによるところが案外大きい。

 繊細で孤高なピアノマンのフレディ・レッドフレディ・レッドが光り輝いているのは,プレイング・マネージャーとしてピアノを弾いている時間ではなく,ピアノの指を止めている「作・演出の裏方稼業」の時間なのである。

 ブルーノートの大量名盤群の中でも独特の光を放っている『シェイズ・オブ・レッド』。
 管理人は確信している。フレディ・レッドの大仕事とは,単なるピアニストでもなく単なる作曲家でもなく,共演者が生き自分も生きレーベルの個性も生きる「ブルーノートの総合演出家」であったと確信している。

 あのデューク・ピアソンがいなければブルーノートのプロデューサーの椅子にはフレディ・レッドが座っていたと思っている。

  01. THESPIAN
  02. BLUES-BLUES-BLUES
  03. SHADOWS
  04. MELANIE
  05. SWIFT
  06. JUST A BALLAD FOR MY BABY
  07. OLE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6530)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典)

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West/Rock/Woods / JAMZZ#34

JAMZZ#3-1 『JAMZZ#1』は「和製EJT」。『JAMZZ#2』はクラブ・ジャズ。『JAMZZ#3』にもなるとジャンルレスでボーダーレス。

 『JAMZZ#3』は,ただただ気持ちの良い音楽である。ただただ西嶋徹がクリエイトし,ただただ岩瀬立飛がエモーションし,ただただ林正樹が軽やかな音楽なのである。

 だから『JAMZZ#3』は,じっくり入り込んでもよし。流し聴きをしてもよし。聞き終わるとジーンと来る何かがある。その何かはその日の聴き方やその日の気分や体調にもよる。だって『JAMZZ#3』はジャンルレスでボーダーレスなのだから…。

 「WESTROCKWOODS」がグイグイくる。ベースピアノもいい演奏だが,管理人には岩瀬立飛ドラムに尽きる。

 実は所々でピアノではなくドラムがリードを取っている。「WESTROCKWOODS」最大の魅力は,ドラムによるベースピアノの“踊り喰い”である。

JAMZZ#3-2 勿論,アップテンポでもミディアムテンポでも強弱があって,ただのクラブ系と同じではないのだが,バラードを聴くと「WESTROCKWOODS」のオリジナリティがよく伝わってくる。

 「WESTROCKWOODS」は5年後10年後,クラブ・ジャズが淘汰された後の再評価でどこまで登り詰められるか?だと思う。
 大物が多いドラム業界だから,大声では言えないが,管理人の胸の内を小声で書くと「岩瀬立飛が日本一のジャズドラマー」です!

  01. 9 space
  02. 晴れ水
  03. Route246
  04. 緋色の道
  05. Safety Net
  06. Arconics
  07. Janamdin
  08. 幻灯
  09. memory tree
  10. Waking
  11. 滲む
  12. プレーケストーレン
  13. 9 space (reprise)

(ヴィレッジ/VILLAGE 2009年発売/IVCL-5)
(ライナーノーツ/菊地成孔,須永辰緒,葉加瀬太郎)

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チック・コリア・トリオ / トリロジー25

TRILOGY 2-1 ピアノチック・コリアベースクリスチャン・マクブライドドラムブライアン・ブレイドによる,チック・コリアの何代目かの新ピアノ・トリオによるライブ盤『TRILOGY 2』(以下『トリロジー2』)が真に素晴らしい。

 リスナーのすぐ目の前でチック・コリアクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイドのビッグネームの3人が“最高の音楽の会話”を交わしているかのような臨場感に圧倒されてしまう。

 「CD2枚組」の圧倒的ボリューム。そのほとんどが10分を超える長尺集。“最高の音楽の会話”が止まらないのだ。ジャズ界の最高峰に君臨する3人だからこそ,分かりあえる&語り合える“最高の音楽の会話”が詰まっている。
 だから(『トリロジー2』では『トリロジー』のように「総収録時間3時間20分以上」とCD帯に謳われてはいないが)躍動感に溢れたタイトな演奏に引き込まれ,ふと聴き始めたが最後。一気に2時間の長丁場を完走してしまった。
 そう。『トリロジー2』の真実とは,長時間聴いても聴き飽きないピアノ・トリオ。それどころかまだまだ聴きたくなる。

 あの『トリロジー』から5年も経っているというのに『トリロジー2』の出だしの一音を聴いて,5年前の『トリロジー』の興奮が湧き上がってくる。正真正銘の続編である。

 …というよりも『トリロジー』の3枚に続く『トリロジー2』の2枚が,それぞれディスク4とディスク5のように感じる。
 そう。『トリロジー』+『トリロジー2』=5枚組『TRILOGY LIVE』で間違いない。

 すなわち『トリロジー2』は『トリロジー』のアウト・テイク集などではない。演奏のクオリティは同じか,あるいはそれ以上! ますますレベルアップして聴こえる瞬間がある&ある×ある。

 ジャズメンといえども年齢を重ねるにつれ,手慣れた表現方法に留まり,英知や機知に頼り,自身の栄光の中に安住するようになると思うのだが,チック・コリアの場合は違う。
 チック・コリアは年齢を重ねるにつれ,ますます冒険的で大胆になっていく稀代のジャズメンである。

 尤もクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイドの圧倒的な創造力を一番近くで浴びているのだから,チック・コリアも過去の栄光の上に胡坐をかいてなどいられない。
 2人に負けじと,最先端のジャズに乗り遅れまいと,必死に真剣にピアノをドライブさせている。“鬼のような”ジャズ・ピアノの連続にはもうひれ伏すことしかできない。

TRILOGY 2-2 ベースクリスチャン・マクブライドドラムブライアン・ブレイドも凄いのだが『トリロジー2』のハイライトはチック・コリアの「横綱級」のピアノに尽きる。
 チック・コリアの,瞬時のインタープレイ&怒涛のアドリブに燃えまくる!

 『トリロジー』+『トリロジー2』=5枚組『TRILOGY LIVE』までが世に出ましたが,当然『トリロジー3』の発売予定もありますよねっ。『COMPLETE TRILOGY LIVE』なるボックス・セットの発売予定もありますよねっ。

 お願いです。超名演の「お宝音源」を絶対に手元で眠らせないでください。管理人は『TRILOGY』シリーズが最終的に10枚組になろうとも全部買って全部聴き込みます! 素晴らしい!

  CD1
  01. How Deep Is the Ocean
  02. 500 Miles High
  03. Crepuscule with Nellie
  04. Work
  05. But Bueautiful
  06. La Fiesta

  CD2
  01. Eiderdown
  02. All Blues
  03. Pastime Paradise
  04. Now He Sings, Now He Sobs
  05. Serenity
  06. Lotus Blossom

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2018年発売/UCCJ-3038/9)
(☆SHM−CD仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ロビン・D.G.ケリー,原田和典)

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West/Rock/Woods / JAMZZ#25

JAMZZ#2-1 「WESTROCKWOODS」については『JAMZZ#1』が普通すぎて期待外れだったので,もう買うつもりはなかったのだが,某ジャズ友から「セラビーだったら絶対好きなはずだから!」と猛プッシュを受け,お金をドブに捨ててもよいと思ったので『JAMZZ#2』を購入。

 でもこれが大正解! すごくいい! この音大好き! やっぱり西嶋徹ベースであった。流石は岩瀬立飛ドラムであった。めちゃめちゃ林正樹ピアノであった。
 「WESTROCKWOODS」の演奏力を見直した!

 『JAMZZ#1』からレーベル移籍&レコード会社移籍の現実。世評的にも「和製EJT」路線はちょっと違ったのだろう。
 そ・こ・で「WESTROCKWOODS」復権の全ては「レコード番長」須永辰緒の大仕事!

 実は『JAMZZ#2』。アドリブログでは『JAMZZ#2』と統一表記しておきますが,正式には『JAMZZ#2』ではなくて『JAMZZ#2 SONG SELECTED BY TATSUO SUNAGA』だったのです。

 そう。DJ/プロデューサーでもある須永辰緒が「WESTROCKWOODS」をクラブ系へとプロデュース。

JAMZZ#2-2 前作『JAMZZ#1』はロック集であったがゆえに「和製EJT」止まりであったのが『JAMZZ#2』ではジャンルの枠を広げて,クラブ・シーンの元ネタを素材に再構築したジャズ・ピアノが「EJT」を軽々と越えている。

 「WESTROCKWOODS」の第4の男=須永辰緒の敏腕が,刺激的なアートの薫り高い独特のムードを生み出している。ダークでスタイリッシュなサウンドがイマジネーションを掻き立てている。

  01. Tetrahedron
  02. Moonlight Shadow
  03. Each and Everyone
  04. The Love Cats
  05. Living Through Another Cuba
  06. Only Love Can Break Your Heart
  07. Oh Yeah
  08. Black, Brown and Gold
  09. Dr.Mabuse
  10. Dark Adaptation

(ポリスター・ジャズ・ライブラリー/P.J.L. 2005年発売/MTCJ-3033)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/須永辰緒)

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ベニー・ウォレス / ベニー・ウォレス&チック・コリア5

THE BENNIE WALLACE TRIO & CHICK COREA-1 『THE BENNIE WALLACE TRIO & CHICK COREA』(以下『ベニー・ウォレス&チック・コリア』)は,サイドメンとして参加した“チック・コリア買い”であった。

 …というか,テナーサックスベニー・ウォレスって誰? お恥ずかしながらベニー・ウォレスについてはこのアルバムで初めて知った。
 だからなのだろう…。チック・コリア以上に,初めて耳にしたベニー・ウォレスの個性に魅了されてしまった。

 ベニー・ウォレステナーサックスの特徴は,豪放でエモーショナルなブロウ。しかし,これがストレートな表現ではないのだ。決して難しい表現ではないのだが,余り聴き慣れない音階での大らかなブロウ。
 トリッキーで引っ掛かるフレーズが淀みなく出てくるプレイ・スタイルが,どこかエリック・ドルフィーっぽい感じというか,サックスではないがどこかセロニアス・モンクっぽいというか…。

 そんなベニー・ウォレスだから,いつもはベースエディ・ゴメスドラムダニー・リッチモンドとのピアノレス・サックストリオでブイブイ言わせている。
 そんな完成されたピアノレス・フォーマットに「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を解散し,再びアコースティックジャズと向き合い始めたチック・コリアがゲスト参加している。とてもゲスト参加とは思えない4人の連動ぶりに何度驚かされたことであろう。

 そう。『ベニー・ウォレス&チック・コリア』は一期一会のセッション・アルバムにして,出会うべくして出会ったベニー・ウォレスチック・コリアのバンド演奏のフロントマンの音で満ちている。

THE BENNIE WALLACE TRIO & CHICK COREA-2 管理人は『ベニー・ウォレス&チック・コリア』でのチック・コリアピアノを聴いていると,何度も『スリー・カルテッツ』のピアノが脳裏に浮かんだことがある。

 『スリー・カルテッツ』が1981年録音。『ベニー・ウォレス&チック・コリア』が1982年録音。この論理,案外当たっている!?

 あのマイケル・ブレッカーベニー・ウォレスチック・コリアを介してシンクロしている! チック・コリアの硬質でモダンで不協和音的なピアノ響きが2人のテナー・タイタンを躍らせている! 狂わせている!
 凄いぞ,チック・コリア

  01. THE BOB CROSBY BLUES
  02. MYSTIC BRIDGE
  03. MY ONE AND ONLY LOVE
  04. FOXTROT
  05. 'LLOWED
  06. OUTLINE

(エンヤ/ENJA 1982年発売/K30Y 6234)
(ライナーノーツ/上蔭彰太)

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フレディ・ハバード / レッド・クレイ5

RED CLAY-1 【レッド・クレイ】に関しては,フレディ・ハバードの決定的な代表曲になったばかりか「CTIオールスターズ」や「V.S.O.P.」のレパートリーにもなった。
 ズバリ,フレディ・ハバードの“最高傑作”が『RED CLAY』(以下『レッド・クレイ』)である。

 『レッド・クレイ』の成功の秘訣は,新主流派の創作で得た高度で多彩なアプローチを,CTI独特のポップな意匠で包み込んだエイト・ビートのクロスオーバー・ジャズ
 こんなクロスオーバー・ジャズを演奏できたのは『レッド・クレイセッションに集まったメンバー全員が新主流派の重鎮だったからであろう。この非フュージョンの独特なノリは新主流派をリアルタイムで経験しないと出て来ないように思う。

 トランペットフレディ・ハバードテナーサックスジョー・ヘンダーソンエレクトリックピアノハービー・ハンコックエレクトリックベースロン・カータードラムレニー・ホワイトがエレクトリック・コンセプトで熱演している。
 そう。ハービー・ハンコックエレクトリックピアノを弾いている以外は,ゴリゴリの「王道ジャズ」な1枚である。

 フレディ・ハバードの突き抜けるハイトーンと,エレクトリックベースでぐいぐい引っ張るロン・カーターのドライブ感にヤラレテしまう → フォードのV8エンジン的な8ビートに削られてしまう → 重量級の4WD的な4ビートに鷲掴みされてしまう。
 『レッド・クレイ』には,パワフルで色彩豊かでポピュラリティなフレディ・ハバードの個性が投影された大名演なのである。

RED CLAY-2 モードからフリーまでのショーケース的なイントロから一転して,抑揚の効いたリズム隊が一度前に出てからのホーン隊のユニゾン&アドリブ合戦がCOOLでHOTなのがCTI印な【レッド・クレイ】が最高なのだが,今の耳で聴き直してみると8ビートの表題曲より4ビートの2曲のほうが遙かに活きがよい。
 ハービー・ハンコックのメロウなエレピが入ると,単なるオールド・ジャズの焼き直しではなくなる大名演

 ハービー・ハンコックにとって「V.S.O.P.」への伏線は『レッド・クレイ』にあった。
 マイルス・デイビスを担ぎ出せずとも,マイルス・デイビスの後継者=フレディ・ハバードを担ぎ出せればそれで十分だった。フレディ・ハバードトランペットの何とも言えぬイメージング!

  01. Red Clay
  02. Delphia
  03. Suite Sioux
  04. The Intrepid Fox

(CTI/CTI 1970年発売/KICJ 2332)
(☆BLU−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/小川充)

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West/Rock/Woods / JAMZZ#14

JAMZZ#1-1 西嶋徹WEST岩瀬立飛ROCK林正樹WOODS。それぞれの頭文字を取って結成されたピアノ・トリオの「WESTROCKWOODS」。

 木住野佳子との西嶋徹ベース国府弘子アキコ・グレースとの岩瀬立飛ドラム菊地成孔との林正樹ピアノが頭の中でいつでも完コピできる体質の管理人としては,この西嶋徹岩瀬立飛林正樹の超硬派で変態チックなジャズ・ピアノを期待して購入した。

 …が,しかし。「WESTROCKWOODS」のジャズ・ピアノとは「和製EJT」スタイルであった。正直ガッカリ。

 EJTがそうであるように演奏については文句なしに素晴らしい。アレンジもアドリブも面白いと思う。でもどこかで耳にしたことがあるようなないような…。
 厳密には違うのだろうけど雰囲気が“もろ”EJTのアレしている?

 1人1人は相当凄いのに,西嶋徹岩瀬立飛林正樹の三人寄れば,コーヒーのお供か読書のお供!

JAMZZ#1-2 管理人の結論。『JAMZZ#1批評 

 「ロックの名曲をジャズにアレンジした,革新的ピアノ・トリオ」のコピーは過大広告である。非革新的な『JAMZZ#1』を真剣に聴いたら疲れてしまった。繰り返し聴いたら疲れてしまった。

 その意味でも「WESTROCKWOODS」は「和製EJT」と思ってほぼ間違いない。エロジャケにも反対である。

  01. Hush
  02. Eat The Rich
  03. Black Dog
  04. With Or Without You
  05. Layla
  06. Enter Sandman
  07. 21st Century Schizoid Man
  08. Every Breath You Take
  09. Bohemian Rhapsody
  10. Theme Of West Rock Woods

(ターゲット・エンタテインメント/TARGET ENTERTAINMENT 2005年発売/TQCQ-3001)

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フレディ・ハバード / ブルー・スピリッツ4

BLUE SPIRITS-1 フレディ・ハバードにとって『BLUE SPIRITS』(以下『ブルー・スピリッツ』)は,ハービー・ハンコックの『エンピリアン・アイルズ』『処女航海』やウエイン・ショーターの『スピーク・ノー・イーヴル』録音の時期と重なる「油の乗り切った」最良の時代の演奏である。

 仮に『ブルー・スピリッツ』が『エンピリアン・アイルズ』『処女航海』『スピーク・ノー・イーヴル』と同じく,トランペットフレディ・ハバードテナーサックスウエイン・ショーターピアノハービー・ハンコックベースロン・カーターの布陣で制作されていたならば「偉大なるサイドメン」としてのフレディ・ハバードの人生も大きく変わっていたことと思う。

 それくらいの重要な時期にフレディ・ハバードが発表したのが,4管編成アンサンブル集の『ブルー・スピリッツ』であった。
 なぜこのタイミングで『ブルー・スピリッツ』だったのか? 『ブルー・スピリッツ』は新主流派というよりも,管楽器でベース・ラインを膨らませたジャズ・ロックに分類される。

 結果として駄盤認定の『ブルー・スピリッツ』であるが,フレディ・ハバードとしては4管編成アンサンブル集の『ブルー・スピリッツ』こそが「一番の自信作」なので当然のことに過ぎない。

 「人生を賭けた大勝負」で,旧いジャズ・ロックから最先端の新主流派までを1枚で表現している。作曲と編曲をこなしている。分厚いくせに軽いアンサンブルが聴き所。
 そう。『ブルー・スピリッツ』のようなアルバムは,世界で唯一人,フレディ・ハバードでないと作ることのできなかったアルバムなのだった。

 ただし,持てる力を全部発揮したからと言って,それだけではいい音楽は作れない。やっぱりここはハービー・ハンコックウエイン・ショーターに「頼み込んででも」参加してもらうべきだった。
 そして『エンピリアン・アイルズ』『処女航海』『スピーク・ノー・イーヴル』の続編を歩むべきだった。

 『ブルー・スピリッツ』の制作は3年後がベストであった。実は3年後に『ブルー・スピリッツ』と同じアプローチで制作されたアルバムがある。ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』である。

BLUE SPIRITS-2 4菅編成の『ブルー・スピリッツ』と3管編成の『スピーク・ライク・ア・チャイルド』は,共にギル・エヴァンスの影響を受けたであろう壮大なオーケストレーションが聴き所である。

 しかし両者が決定的に異なるのは『ブルー・スピリッツ』がアンサンブルを聴くためのジャズなのに対して『スピーク・ライク・ア・チャイルド』のアンサンブルはおまけであって,主役はあくまでもハービー・ハンコックピアノなのである。

 3管には柔らかなムードだけを求めたハービー・ハンコックが一枚上手である。フレディ・ハバードの『ブルー・スピリッツ』での失敗は,とことん4菅にこだわりすぎたこと。4菅に音楽的な必然性を持たせることは難しかったかなぁ。

  01. SOUL SURGE
  02. BLUE SPIRITS
  03. OUTER FORCES
  04. CUNGA BLACK
  05. JODO

(ブルーノート/BLUE NOTE 1965年発売/TOCJ-4196)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典,ケニー・ワシントン)

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本多 俊之 / リード・マイ・リップス4

REED MY LIPS-1 デビュー当時は“フュージョンサックス・プレイヤー”として鳴らしていた本田俊之だったが『マルサの女』の大ヒット以来,多国籍音楽のリリースばっかり。
 そんなルーティーンを打ち破って,本田俊之が久々にリリースしたフュージョン・アルバムが『REED MY LIPS』(以下『リード・マイ・リップス』)である。

 しかも『リード・マイ・リップス』は,単なるフュージョン・アルバムではない。真にワールド・クラスのセッション・ミュージシャンが「本田俊之フュージョン」のために集結している。

 ドラムヴィニー・カリウタベースニール・スチューベンハウスギターマイケル・ランドウパーカッションマイケル・フィッシャートランペットジェリー・ヘイトランペットゲイリー・グラントアルトサックスラリー・ウイリアムステナーサックスピート・クリストリーブギター梶原順パーカッション横山達治 ETC

 『リード・マイ・リップス』は,LAフュージョンとJ−フュージョンの2つのセッション・チームに分かれて録音されているのだが,どっちがLAでどっちが国内だとか,そんな切れ目など感じられない。
 そう。『リード・マイ・リップス』の全9曲が,全て「本田俊之フュージョン」としか語れない。

REED MY LIPS-2 『マルサの女』と『リード・マイ・リップス』。音楽の出発点も終着点も雰囲気もまるっきり異なっている。でもそのどちらにも本田俊之サックスが色濃い。

 本田俊之サックスは,ハードに吹いてもソフトに吹いても,まろやかでいつも優しさに包まれる。
 なんだか,あのヴィニー・カリウタマイケル・ランドウでさえ,本田俊之と“笑顔で”セッションしている様子が音から伝わってくる。

  01. CRASH COURSE
  02. LA JOLLA
  03. INASE NIGHT
  04. MIND GAMES
  05. SIESTA
  06. FANCY FREE
  07. COMME CI, COMME CA
  08. HIGH SPEED CHASE
  09. 約束の夏〜Farewell my summer

(東芝EMI/WHO RING 1992年発売/TOCT-6702)

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フレディ・ハバード / ブレイキング・ポイント4

BREAKING POINT-1 フレディ・ハバードジャズ・メッセンジャーズから独立し,自分のグループで活動を始めたのが『BREAKING POINT』(以下『ブレイキング・ポイント』)からである。
 これまでは何だかんだと称賛されても,所詮雇われ稼業。自分の音楽を追及したかったフレディ・ハバードとしては遅咲きのスタートとなった。

 フレディ・ハバードソロとして活動するに当たり,意識したのは作曲であろう。初期のアルバムではさっぱりだったオリジナル曲が,次第にぽつぽつと入って来るようになり,フレディ・ハバードの体内で起きている変化を感じていたわけだが『ブレイキング・ポイント』を聴いて,完全に“作曲家”フレディ・ハバード推しなのが分かる。

 そう。フレディ・ハバードジャズトランペッターとしては超一流の人。コンポーザーとしてもなかなかの一流の人であろう。
 しかし,どうにもフレディ・ハバードには悪い意味での「軽さ」がつきまとう。紛れもない天才でありジャズ・ジャイアントの一人であるのに,いつでも選外。TOP10ではなくTOP20に位置する男。

 『ブレイキング・ポイント』を聴いていつも感じるのはフレディ・ハバードのマイナス面である。フレディ・ハバードは決定的にリーダー・シップが欠けている。
 『ブレイキング・ポイント』を録音していて「上手くいかない感。しっくりいかない感」をフレディ・ハバードは感じたのではなかろうか?
 ジャズ・メッセンジャーズと同レベルのメンバーと楽曲が揃っているのに,思い通りにまとまらない…。

 ここが超一流止まりのフレディ・ハバードと「マイスター」のアート・ブレイキー,あるいはマイルス・デイビスとの「差」なのであろう。
 バンドを締め付けないアート・ブレイキーとバンドを締め上げるマイルス・デイビス。それぞれタイプは真逆であるが強力なリーダーシップでバンドを引っ張り上げる“稀有な”存在感で共通する。
 嘘か誠か,これは真実なのだが,自分が演奏を休んでいる時間にもアート・ブレイキーマイルス・デイビスの音が聴こえるというものだ。

 『ブレイキング・ポイント』におけるフレディ・ハバードはどうだろう? 残念ながら,やっぱり存在が「軽い」。よく表現される実験盤にも達していない「中途半端なカッコ良さ」で終わっている。あと一歩突き抜けそうで突き抜けきれない。
 『ブレイキング・ポイント』を聴いて,これをフレディ・ハバードのアルバムだと認識できる人は少ないことだろう。フレディ・ハバードに欠けているのは,リーダー・シップの1点だけだが,これがジャズメンの資質としては想像以上に大きいのだ。

 だから管理人はメインを張るではなく,サイドメンに回った時のフレディ・ハバードの演奏が好きだ。フレディ・ハバードに関してはリーダー作ではなくゲスト参加のアルバムばかりを聴いてしまう。
 つまりはフレディ・ハバードの天賦の才とは「演奏する人」なのだ。演奏に特化された時のフレディ・ハバードトランペットは間違いなく最強であろう。

BREAKING POINT-2 極論を書けば『ブレイキング・ポイント』の真実とは,フレディ・ハバードが世間で受けそうだと思ったものを寄せ集めてきた「当時の流行最先端」なアルバムである。
 そこにフレディ・ハバードなりの明確なビジョンやコンセプトがあれば大ヒットとなったであろう。しかし『ブレイキング・ポイント』のベースにあるのは,まだまだジャズ・メッセンジャーズのメンバー,フレディ・ハバードとしてのジャズなのだ。

 管理人の結論。『ブレイキング・ポイント批評

 『ブレイキング・ポイント』には良くも悪くも“モーダルなフレディ・ハバード”がそこにいる。
 アート・ブレイキーとは違う“モーダル”を目指したのだろうが,表面上は新しいが根っ子の部分は伝統のジャズに支配されていて振り切れていない。

 一気に音楽性を変える難しさ。そして継続的に新鮮味を打ち出す難しさ。フレディ・ハバードも脱退して初めてアート・ブレイキーの「偉大さ」に気付いたに違いない。

  01. BREAKING POINT
  02. FAR AWAY
  03. BLUE FRENZY
  04. D MINOR MINT
  05. MIRRORS

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/TOCJ-4172)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典,田原悠)

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富樫 雅彦 / スピリチュアル・ネイチャー5

SPIRITUAL NATURE-1 今では一般の日常語となった「スピリチュアル」という言葉はいつ頃から世間に定着したのだろう。恐らくは美輪明宏のあのTV番組のせいなのだろう。この世は「スピリチュアル」の花盛り。猫も杓子も「スピリチュアル」の文字を見る。

 しかし,巷に「スピリチュアル」がどんなに溢れようとも,管理人的には「スピリチュアル」と来れば『SPIRITUAL NATURE』(以下『スピリチュアル・ネイチャー』)一択! もはや30年以上前から「スピリチュアル」は来ていたのだ!

 そうして『スピリチュアル・ネイチャー』と来れば,次は富樫雅彦と来るのだろうが,管理人の場合は違う。
 確かに『スピリチュアル・ネイチャー』は富樫雅彦のリーダー・アルバムではあるが,このアルバムを「日本のジャズの金字塔」と紹介されることがあるように『スピリチュアル・ネイチャー』は,すでに富樫雅彦の手を離れて,70年代のフリージャズを総括したような1枚に位置にある。

 ズバリ『スピリチュアル・ネイチャー』の真髄とは,組曲にして,真にあらゆる束縛から解放されたジャズ。だからクリエイティブで自由なジャズ。つまりはフリージャズの範疇を超えている。

 専門的な書き方をするとフリージャズと『スピリチュアル・ネイチャー』のようなクリエイティブで自由なジャズとは別物である。
 フリージャズという言葉の響きからか,フリージャズとは「何でもあり」のように思えて,実はそうではない。インプロヴィゼーションとは違うのである。

 そう。『スピリチュアル・ネイチャー』は,フリージャズを出発点としたインプロヴィゼーションの組曲である。
 もう少しフリーに寄ってもインプロに寄っても,これほどまでに“崇高なジャズ”とはならなかったことであろう。難解さなど微塵も感じられない。組曲となる5曲の主旋律は全部,池田芳夫ベースが弾いているのだから…。

 管理人は思う。『スピリチュアル・ネイチャー』が成功したのはフリージャズを出発点としたしたからだと思う。
 富士登山にしても須走ルートとか御殿場ルートとかの登山口がある。勿論,登山口から出発しなくても頂上を目指すことは可能だが実際にはどうなのだろう。途中で下山することばかりであろう。
 それと同じで『スピリチュアル・ネイチャー』のような音楽は,ハード・バップやモード,新主流派から出発しても決して登頂できやしない。これまでジャズはそうやって多くの獣道を作ってきたわけであるが,そのどれもが8合目か9合目まで止まりだった。

 キース・ジャレットにしてもパット・メセニーにしても,そして富樫雅彦にしても,人生の中で一度は本気でフリージャズと格闘したからこそ,その上を経験することができた。9合目の「その先」を見ることができたのだ。

 『スピリチュアル・ネイチャー』のライナーノーツの中に富樫雅彦が見た「その先」についての記述がある。
 「フリー=自由は,演奏する側よりも聴く側にある。そしてその時点で,奏者と聴衆が一体となって創造し,また想像しうるとき,両者の断絶は取り除かれるはず。このことは,すべての音楽の形式を問わず<コミュニケートする>ための一番大切な条件ではないか」。

 うーむ。「聴く側に委ねられる自由」。様々な情報や経験で自分に合うテンプレートに照らして聴くことしか出来ないから,フリージャズを難しく感じてしまうものなのだろう。

SPIRITUAL NATURE-2 富樫雅彦が『スピリチュアル・ネイチャー』で提示したものとは「沈黙」ではなかっただろうか?
 『スピリチュアル・ネイチャー』を聴いていると,自然と想像している自分,黙想している自分に気付くことがある。と同時にライブ盤なのに,無観客のホールで演奏しているような雰囲気とのGAPを意識することがある。

 この異様な無歓声のライブ録音。最初は管理人も編集によるものだと考えていたが,ここ数年あまりは,これって本当に観客全員が静かに座って聴いていた結果なのかも,と思うようになった。
 富樫雅彦の狙い通りの「沈黙」である。「腕組み瞑目して音楽に没頭する」。当時のジャズ・ファンなら有り得なくもない?

 さて,冒頭の「スピリチュアル」ブームに戻る。「スピリチュアルスピリチュアル」って大騒ぎして,結局は自由で自然な精神世界を自分自身で縛っているのでは?

 その意味で「スピリチュアル」ブームはニセモノである。真にあらゆる束縛からの解放は『スピリチュアル・ネイチャー』のインプロヴィゼーションの組曲の中で既に提示されていた。“崇高なジャズ”こそが真に「スピリチュアル」なのである。

  01. THE BEGINNING
  02. MOVING
  03. ON THE FOOTPATH
  04. SPIRITUAL NATURE
  05. EPILOGUE

(イースト・ウィンド/EAST WIND 1975年発売/EJD-3050)
(ライナーノーツ/清水俊彦)

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フレディ・ハバード / ボディ・アンド・ソウル4

THE BODY & THE SOUL-1 『THE BODY & THE SOUL』(以下『ボディ・アンド・ソウル』)の主役はフレディ・ハバードではない。ウェイン・ショーターである。

 そんな主役の2人は共にジャズ・メッセンジャーズの同僚として活動中。共演を重ね,新しいアンサンブルを重ねながらフレディ・ハバードの方からウェイン・ショーターを誘ったのかな? 『ボディ・アンド・ソウル』にはそんな“ウェイン・ショーター印”の音が鳴っている。

 『ボディ・アンド・ソウル』のレコーディング・メンバーは,トランペットフレディ・ハバードテナーサックスウェイン・ショーターアルトサックスエリック・ドルフィートロンボーンカーティス・フラーピアノシダー・ウォルトンベースレジー・ワークマンドラムルイ・ヘイズ

 そう。『ボディ・アンド・ソウル』は,アート・ブレイキー抜きのオール・ジャズ・メッセンジャーズによるスモール・コンボ+拡大されたビッグ・バンド&オーケストラ編成。
 ジャズ・メッセンジャーズの亜流にして,こちらこそが本流と思わせる“HOTな”フレディ・ハバードと“COOLな”ウェイン・ショーターの方向性が一致が名演である。

 『ボディ・アンド・ソウル』の印象を一言で書けば,大編成なのに「全くうるさくない」。フレディ・ハバードにだけは自由に吹かせておいて,バックには抑制を求めているから,音楽全体がなめらかで,知的な響きがする。
 これほどの大物メンバーが個性を抑えてビッグ・バンドのアンサンブル吹きで満足させることができたウェイン・ショーターの“天才”ぶり。ストリングスについても,よくある甘すぎるムードもなく,アーティスティックに鳴らし過ぎることもない。

 “音楽監督”ウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』のようなアレンジ・アルバムの制作は,おおよそ30年後となる『HIGH LIFE』や『ALEGRIA』の登場まで待たなければならない。
 それくらいにウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』は快心の出来だったのだろう。世界指折りのトランペッターフレディ・ハバードがアンサンブルの核を張っているのだから,アレンジ・アルバムは『ボディ・アンド・ソウル』で完結したとしても当然だと思う。

THE BODY & THE SOUL-2 『ボディ・アンド・ソウル』のソロイストフレディ・ハバードエリック・ドルフィーの2人。
 ただし,2人とも編曲の流れを壊さないようなソロであって勿体ない。特にエリック・ドルフィーウェイン・ショーターの共演は,恐らく録音物としては『ボディ・アンド・ソウル』の1作だけだと考えられている。

 その意味で『ボディ・アンド・ソウル』の没テイク。それもエリック・ドルフィーの突飛なソロがオクラの原因となったトラックが残ってはいないのだろうか?

  01. BODY AND SOUL
  02. CARNIVAL (MANHA DE CARNAVAL)
  03. CHOCOLATE SHAKE
  04. DEDICATED TO YOU
  05. CLARENCE'S PLACE
  06. ARIES
  07. SKYLARK
  08. I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
  09. THERMO

(インパルス/IMPULSE! 1963年発売/UCCU-5278)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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松岡 直也 / DANCE UPON A TIME4

DANCE UPON A TIME-1 松岡直也の「音楽活動40周年」祭りのテーマは「東京発ラテン・ダンス・ミュージック」。
 いつものラテン・フュージョンをベースに,ブラスストリングス,さらにはヴォーカルコーラスが加わった“マンボ・ナオヤ”の世界が広がるのが『DANCE UPON A TIME』である。

 『DANCE UPON A TIME』の豪華で豪奢な音が真にスペシャル感漂っている。ダンサブルだがメロディアスで,濃密だが聴きやすい作品へと昇華されている。ジャケットのイラストから連想される『ハートカクテル』に似た,松岡直也のお洒落感覚にも脱帽である。

 『DANCE UPON A TIME』の音が重厚なのに軽快なのには理由がある。
 松岡直也の大編成コンボと来ればWISINGがあるが『DANCE UPON A TIME』ではWISINGの手法を封印させた,王道のビッグ・バンド・チックな「東京発ラテン・ダンス・ミュージック」。

 『DANCE UPON A TIME』の肝は“伝家の宝刀”パーカッション。16ビートでゆったり裏拍を強調するラテン・パーカッションが曲をリードし,そこに美しいコードのピアノが絡み合い,ディストーション・ギターがうねりまくる。
 再録の3曲を含めて選曲はメロディアスなものが多い。パーカッションを前面に出すために,敢えてねっとりと絡みつくような美メロとの対比で上手にバランスをとっている。

 『DANCE UPON A TIME』が狙うは従来のラテン・フュージョン・ファンではなく,お洒落なダンス・ミュージック・ファンである。ただし,それって流行りのユーロでもトランスでもなく(もちろんパラパラでもなく)ダンス・ホールである。

DANCE UPON A TIME-2 なんだか最先端なのに松岡直也の懐古趣味が利いているというか『DANCE UPON A TIME』には“古き良き時代”の郷愁を感じさせるものがある。

 あっ,だから40周年記念盤なわけね〜。昔の松岡直也も良かったと思わせいわけね〜。
 個人的には本田雅人のゲスト参加が最大のハイライト〜。個人的にはペッカー津垣博通のゲスト参加が懐かしい〜。

  01. AMANECER TROPICAL
  02. I'VE GOT MY LOVE TO KEEP ME WARM(Big Band Version)〜
     恋に寒さを忘れ

  03. CANCION DE MAREA
  04. THE CONFESSION
  05. MAMBO NAOYA '92〜マンボ・ナオヤ '92
  06. POOLSIDE LOVE AFFAIR(Big Band Version)
  07. NO TE VAYAS〜とっても好きだから
  08. YOU'VE GOT IT BAD GIRL
  09. LIKE A VOLCANO
  10. LADY IN THE SHADE(Orchestra Version)

(ワーナー・ミュージック・ジャパン/WARNER MUSIC JAPAN 1992年発売/WPCL-678)

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フレディ・ハバード / ハブ・トーンズ5

HUB-TONES-1 『HUB−TONES』(以下『ハブ・トーンズ』)でフレディ・ハバードが一皮むけた。
 『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードジャズ・ジャイアントの仲間入りを果たした。

 『ハブ・トーンズ』以前のフレディ・ハバードの強みとは「超一流トランペッター」の1点のみ。作曲や編曲やリーダーシップの面ではまだまだであった。
 それがどうだろう。『ハブ・トーンズ』では突進するトランペットも過去最高の出来であるが,作曲も編曲もリーダーシップも含めて全ての面において同世代のトランペッター以上に秀でている。
 ついに『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードジャズ・シーンの先頭を走るトランペッターとして躍り出たのだ。

 フレディ・ハバードの内面が成長している。具体的にはトランペットから,味気のないフレージングや深みの無い音色が流れることがなくなった。それどころか“情状派”への転身とも取れるトラックが並んでいる。

 例えば【YOU’RE MY EVERYTHING】というジャズスタンダードを,ふくよかな音色で歌心たっぷりに歌いきる。
 そして特筆すべきはミュートではない繊細な表現にある。フレディ・ハバードはテクニカルなトランペッターだあるが,ハイテクニックが嫌みでなく,最良の塩梅に仕上がっていると思う。

 【HUB−TONES】での音響の隅々までなめて踊るよう素晴らしいアドリブに燃え上がる。
 フレディ・ハバードトランペットと来れば「世界一のフィンガリング」であろうが【HUB−TONES】での演奏と来れば,内なる感情表現に「世界一のフィンガリング」でさえ追いついて行けない印象を受ける。それだけ内に秘めたものが圧倒的なのだ。
 あくまで会話をするような調子で,猛烈なインプロヴィゼーションが放出される。それを一瞬でアドリブ構成するセンスが群を抜いて現代的で格好良い。

HUB-TONES-2 【LAMENT FOR BOOKER】では打って変わって,陰影のあるトランペットを聴かせてくれる。クリフォード・ブラウンの死後,彗星のように現われてはブラウニー同様に夭逝した,若き名トランペットブッカー・リトルに捧げたフレディ・ハバードバラード
 誰もが認める【I REMEMBER CLIFFORD】の様な名曲ではないかもしれない。だがどこか幽玄的で灰色な雰囲気を醸し出すこのバラードブッカー・リトルにピッタリの曲調がお見事!

 さて,そんなフレディ・ハバードの“覚醒”請負人がピアノハービー・ハンコック
 『ハブ・トーンズ』で初共演を果たしたフレディ・ハバードハービー・ハンコックのコンビがその後「新主流派」というジャズの歴史を創っていくことを互いにまだ知る由もないのだが,やっぱり相性チリバツ! ハービー・ハンコックのバッキング最高!

  01. YOU'RE MY EVERYTHING
  02. PROPHET JENNINGS
  03. HUB-TONES
  04. LAMENT FOR BOOKER
  05. FOR SPEE'S SAKE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-4115)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,原田和典,菅原正晴)

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坪口 昌恭 / ANDROGRAFFITI5

ANDROGRAFFITI-1 坪口昌恭というキーボード・プレイヤー。それは「東京ザヴィヌルバッハ」の人であり「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」の人だった。
( 現在では「菊地成孔ダブ・セクステット」の坪口昌恭が一番のお気に入り! )

 「東京ザヴィヌルバッハ」にしても「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」にしても,坪口昌恭は初めから前面に出るタイプではなく,ここぞという時に後ろから横から斜めから攻め上げてくるタイプ。
 サッカーで言えばスーパーサブであって,一度前に出た坪口昌恭をもはや誰も止められない。一番身近な菊地成孔こそが,そんな坪口昌恭の大ファンの1人だと思う。

 菊地成孔は知っている。坪口昌恭の本当の魅力は「キレッキレ」の一発勝負師ではないことを…。坪口昌恭の本当の魅力はバランサーであり全体を見渡せる10番。つまりは司令塔タイプであることを…。
 だからこそ菊地成孔坪口昌恭をスーパーサブではなく先発として,そしてフォワードではなく中盤として毎回起用しているのだろう。

 坪口昌恭についての菊地成孔の見立ては当を得ている。『ANDROGRAFFITI』が坪口昌恭の“バランサー資質”を見事に証明してくれている。

 『ANDROGRAFFITI』は前作『VIGOROUS』と同一録音のセッション音源にオーバーダビングさせた最終完成盤。『VIGOROUS』以上に坪口昌恭ジョー・ザビヌル化して聴こえる。
 サックスパーカッションが入っている曲では,もろザビヌルを想起して“ウェザー・リポートっぽい”音が鳴っている。坪口昌恭ジョー・ザビヌルのように自らシュートを決めに行く。

 しかしそこにトランペットが入った曲では,完全なるバランサーとして鍵盤中心のシフトではあるが,濃厚なファンクネスと即興性が前面に出たポリリズミック電化ジャズが鳴っている。
 『VIGOROUS』に続き『ANDROGRAFFITI』でオラシオ・エルネグロ・エルナンデスドラムを叩く意味とか必然性があるような展開に持ち込んでいる。

ANDROGRAFFITI-2 『ANDROGRAFFITI』の同一にして2つのセッションに色を付けたのは1年がかりで行なわれたオーバーダビングであることを忘れてはならない。これは逆説的な意味である。意識しなければ生演奏に聴こえてしまう。

 オラシオ・エルネグロ・エルナンデスが参加したキューバの路地裏でセッションされていたストリート・ミュージックが,坪口昌恭の手に掛かればNYのスタジオで録音されたかのように聴こえてしまうのだ。

 坪口昌恭の完璧なる補修作業。これこそが『ANDROGRAFFITI』なのだろう。これこそが「アンドロイドの落書き」なのだろう。

  01. M.T. Swallow
  02. Space Mbira
  03. Equator Civilization
  04. Water Moon
  05. Groove Continent
  06. Vanilla Beans
  07. Swinging Weather

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2006年発売/EWBE-0019)
(紙ジャケット仕様)

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フレディ・ハバード / ハブ・キャップ4

HUB CAP-1 『HUB CAP』(以下『ハブ・キャップ』)自体の出来はイマイチである。
 しかし『ハブ・キャップ』には,ジャズ界のその後,を先取りしたフレディ・ハバードの功績について語られるべきであろう。フレディ・ハバードは一介のトランペッターではない。

 フレディ・ハバードが『ハブ・キャップ』で試みた3管ユニゾン・セクステットが真価を発揮したのは,フレディ・ハバード自身もプレイヤーとして創作に参加した,ウェイン・ショーターを擁するジャズ・メッセンジャーズであった。
 “天才”ウェイン・ショーターの手を借りた『MOSAIC』で,ついにフレディ・ハバードのアイディアが「UPDATE」され花開いた。

 そんなジャズ・メッセンジャーズの『MOSAIC』への「原石セッション」となった『ハブ・キャップ』には,もう1つ,フレディ・ハバードの音楽観が秘められている。
 フレディ・ハバードはこれまで『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』と豪華な先輩たちの胸を借りてソロ・アルバムを制作してきたが,第3弾となる『ハブ・キャップ』での大物はフィリー・ジョー・ジョーンズぐらい(まっ,後にみんなBIGになったのだけど)。

 トロンボーンジュリアン・プリースターテナーサックスジミー・ヒース,そして後にジャズ・メッセンジャーズでもコンビを組むこととなるピアノシダー・ウォルトンを迎えたフレディ・ハバードの3管ユニゾン・セクステットの人選は,いつものアルフレッド・ライオンではなくフレディ・ハバード本人であった。

 念願のメンバーで念願の3管ユニゾン。『ハブ・キャップ』こそがフレディ・ハバードが本当に演りたかったジャズだった,と言い切ってしまおう。
 フレディ・ハバードにとって3管とは,自分自身が一番輝く理想の編成である。なぜならばフレディ・ハバードの持ち味であるメタリックなトランペットは言ってみれば「淡泊」。そこへトロンボーンテナーサックストランペットの両隣りで「味わい深い陰影」をつけてくれる。

HUB CAP-2 NO。ここまで啖呵を切ってきたが,思いの外,出来上がった『ハブ・キャップ』の印象は地味である。これってフレディ・ハバードのせいではなくアート・ブレイキーフィリー・ジョー・ジョーンズの実力差?
 フレディ・ハバードトランペットにもジャズ・メッセンジャーズの時のような伸びは小さく,アンサンブルの要を担うというミッションを全うしようとしている印象である。

 それもこれも全ては念願の3管ユニゾン達成のため。アンサンブル・ハーモニーのためである。『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』では1曲だけだったオリジナルも『ハブ・キャップ』では4曲作曲。
 そう。『ハブ・キャップ』の録音時にフレディ・ハバードに足りなかったのはアレンジ力の1点だけ! そのアレンジ力も才能の欠如ではない。モードという新しいジャズの言語にまだ馴染めていなかっただけ!

 管理人の結論。『ハブ・キャップ批評

 フレディ・ハバードは従来のハードバップ・スタイルに範を求めながらも『ハブ・キャップ』で確実に新しい時代への布石を打っている。
 フレディ・ハバードの新しい地平を目指そうとする意気込みと発展途上の魅力がたまらない。

  01. HUB CAP
  02. CRY ME NOT
  03. LUANA
  04. OSIE MAE
  05. PLEXUS
  06. EARMON JR.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4073)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,後藤誠,小林貢)

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坪口 昌恭 / VIGOROUS5

VIGOROUS-1 『VIGOROUS』を買ったのは東京ザヴィヌルバッハの『A8V(ON THE EARTH)』を買った3日後のことだったことを覚えている。
 『A8V(ON THE EARTH)』にハマッタ。そして坪口昌恭にハマッタ。そしてよく調べもせずにアマゾンで坪口昌恭の最新作だった『VIGOROUS』をポチッ。

 たまたま選んだ『VIGOROUS』が,管理人の東京ザヴィヌルバッハへハマル流れを止めたのは皮肉な結果。だって機械ではなく生身の人間の方が凄いということを再確認出来たから!

 そう。『VIGOROUS』のドラマーとは“あの”オラシオ・エルネグロ・エルナンデス
 これが並みのドラマーだったら「M」の連勝街道一直線だったのかもしれないが,オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングの「グルーヴの波」が,坪口昌恭が書いた美メロと「ハモる瞬間の波」が最高に気持ちいい。

 管理人が『VIGOROUS批評で書きたいことは,人力ドラムの優越性,というか,元々,人間と機械を比べてはいけないということ。
 音楽シーンはこの後「ドラムンベース」に流れていったが,JIMSAKUを例に出すまでもなく,音楽のテクニック,もっと言えば音楽の世界でコンピュータが人間を超えるのは遠い先の事であって,個人的に機械は人間を永遠に超えられないと思っている。

 そう感じているのは管理人だけではない。坪口昌恭もまたその中の1人である。
 仮に『VIGOROUS』のリズム隊を「M」で演奏していたなら面白くも何とない音楽で終わっていたように思う。終始正確でそしてプログラミングによって予想だにしないリズムを打ち叩いてくる「M」は本当に凄いと思う。

 しかし,ジャストではない前ノリとか後ノリの感覚。譜面では決して指示出来ないノリを坪口昌恭は『VIGOROUS』で表現している。
 『VIGOROUS』の楽曲はどれもが速攻前のめりテクニカル。こんな楽曲群を演奏するには打ち込み系が向いているのだが,それは坪口昌恭の音楽を理解した機械演奏の話なのだ。

VIGOROUS-2 『VIGOROUS』のハードな演奏は「複雑なメロディ・ライン」にある。キャッチーなメロディではない。テクニックひけらかしでもない。“器楽的に”メロディアスなのだ。

 これである。“器楽的に”メロディアスな表現は人力でしか表現できない。だからドラムオラシオ・エルネグロ・エルナンデスなのである。オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングが演奏に“強度と味”を加えている。

 主役である坪口昌恭エレピは終始奥で鳴っている間違った印象操作。
 坪口昌恭が意識的に後ろに下がって弾いているわけではない。よく聴けば主軸は鍵盤にあるのだが,躍動感あるリズムと冷静にグルーヴする鍵盤の対比が不思議なストイックさを醸し出している。

 『VIGOROUS』で耳に付くのは構成の複雑さとたやすく弾きこなすテクニック。個々の演奏の猛烈な確かさと歌心にシビレまくる名盤だと思う。

  01. African Eagle
  02. Southern Cross
  03. Tasogare Boomerang
  04. Power Rose
  05. Nostalgica
  06. Pastel Yogurt

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2004年発売/EWBE-0012)
(紙ジャケット仕様)

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フレディ・ハバード / ゴーイン・アップ4

GOIN' UP-1 フレディ・ハバードのリーダー・アルバムである。フレディ・ハバードデビュー盤である。なのに“からっきし目立っていなかった”『オープン・セサミ』でのフレディ・ハバード
 ティナ・ブルックスである。マッコイ・タイナーである。当時はまだ無名の2人との共演である。

 ハンク・モブレーである。フィリー・ジョー・ジョーンズである。2ndアルバム『GOIN’ UP』(以下『ゴーイン・アップ』)では前作から一転して「ジャズ界のレジェンドたち」との共演である。

 『ゴーイン・アップ』でのベテラン組との対比によりフレディ・ハバードの“フレッシュさ”が際立って聴こえる。なので個人的には「若き日のフレディ」と来れば『オープン・セサミ』ではなく『ゴーイン・アップ』を連想してしまう。
← ちなみにフレディと聞けば,管理人にはフレディ・マーキュリーではなくフレディ・ハバードのことなのです! 愛輝くん!

 …と,この流れでついでに書けばフレディ・ハバードの場合,年代を遡るにつれ年を取って聴こえてしまうから不思議である。
 管理人の「初めてのフレディ・ハバード」がハービー・ハンコックの『処女航海』だったせいでもあるだろう。『オープン・セサミ』『ゴーイン・アップ』がコテコテのハード・バップだったということもあるだろう。

 NO! フレディ・ハバードの“耳年寄り”の理由とはフレディ・ハバードの“早熟”にある。同じ“早熟のトランペッター”でもリー・モーガンフレディ・ハバードではタイプが異なる。

 フレディ・ハバードの“早熟”の意味とは,圧倒的なテクニックを活かした演奏スタイルのことを指す。『ゴーイン・アップ』の時点ではブリリアントなフレーズは残念ながら出て来ていない。フレディ・ハバードが「ロックの洗礼」を受けたのはもう少し先のことである。
 事実『ゴーイン・アップ』の聴き所はフレディ・ハバードの“ブルース・フィーリング”にある。

 例えば,ケニー・ドーハムの代表曲として名高い【LOTUS BLOSSOM】をフレディ・ハバードは【ASIATIC RAES】という題名でアレンジして演奏しているのだが,これが“本家以上の”大名演仕上げ! 【LOTUS BLOSSOM】の“熱風ブルース・バージョン”の完成であった。

GOIN' UP-2 【ASIATIC RAES】の聴き所は,フィリー・ジョー・ジョーンズの高速パッセージに負けない,フレディ・ハバードの“超絶技巧”高速パッセージによる“ブルース・フィーリング”の交歓にある。

 フィリー・ジョー・ジョーンズの爆裂ドラミングに煽られて疾走するのだが,高速運転中なのに余裕溢れるブルースを吹き上げるフレディ・ハバードのテクニックは流石! 演奏が進行するにつれフィリー・ジョー・ジョーンズドラムが落ち着いていく様がハイライト!

 【BLUES FOR BRENDA】では,野太く重心の低い中低域のトランペットでスタートから攻めていたがフレディ・ハバードが,終盤のハイノートで「天へと昇る」あの甲高い音色が忘れられない!
 旧い時代のバッパーを演じきったハード・バップ・スタイルのトランペットハンク・モブレーのマイルド・テナーを抑えつけた瞬間のカッコ良さが忘れられない!

  01. ASIATIC RAES
  02. THE CHANGING SCENE
  03. KARIOKA
  04. A PECK A SEC
  05. I WISHED I KNEW
  06. BLUES FOR BRENDA

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6575)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,土倉明)

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大槻“KALTA”英宣 / VERTICAL-ENGINE4

VERTICAL-ENGINE-1 “凄腕ドラマー大槻“KALTA”英宣については小沼ようすけ繋がりで追いかけるようになった。
 「TKY」「AQUAPIT」のドラマー大槻“KALTA”英宣以外には務まらなかったと思っている。管理人世代を熱狂させてくれる沼澤尚の次世代を担うJAMドラマーである。

 大槻と来れば「筋肉少女帯」だし,KALTAと来ればカルマだし,大槻“KALTA”英宣が芸名であることを知った時「こんな芸名を付けるとはさぞやイカレたドラマー」だと危険を感じていたものだ。

 しかし,実際の演奏はそうではない。大槻“KALTA”英宣のスタイルはイカレたの正反対であって,楽曲のツボを突きまくる端正なドラミングは理性的に思えた。
 大槻“KALTA”英宣JAM系が最高だと知りつつも,もっとジャズ系に寄ってきてほしい。そう思わせるバックから攻め上ってくる「迫るビート感」が大槻“KALTA”英宣の最大の武器だと思う。

VERTICAL-ENGINE-2 大槻“KALTA”英宣ソロCDVERTICAL−ENGINE』に飛びついてビックリ! 大槻“KALTA”英宣のオリジナルは難曲ばかり! ただし,単に難しいだけではなく,テクニカルなアンサンブルが機能すれば,印象的なリズムとメロディーが浮き上がって来る「二段ロケット」仕掛け!
 その意味で『VERTICAL−ENGINE』は演者を選ぶ(聴き手を選ぶではない。そこが重要!)難度の高いアルバムであった。

 そんな難度高めの『VERTICAL−ENGINE』に大槻“KALTA”英宣が選んだメンバーは,ドラム大槻“KALTA”英宣アルトサックスソプラノサックス太田剣テナーサックス鈴木央紹ギター小沼ようすけ天野清継鈴木よしひさオルガン金子雄太キーボード新澤健一郎ピアノ秋田慎治田中信正ベース鈴木正人鳥越啓介岡田治郎のツワモノたち。一癖もふた癖もある言うことなしの豪華演奏メンバー。

VERTICAL-ENGINE-3 大槻“KALTA”英宣のオリジナルが綺麗に磨き上げられている。だからこそ名演奏が光って聴こえる。楽曲に演奏がシンクロしている。繊細なハーモニーなのに自由で縛りがない感じがする。大きなコンセプトを全員が共有し,全員が他の人の演奏をよく聴いている。

 ズバリ『VERTICAL−ENGINE』には「バンド・リーダー」大槻“KALTA”英宣の“HOTでCOOLな”統率力が刻まれている。

  01. STRATEGY
  02. ALTERNATOR
  03. SNARL (VERSION)
  04. MOON LOST
  05. ARITHMETIC
  06. BACH-LOGY SHIFT
  07. IMAGE
  08. LEGWORK AND CHASE
  09. CLOUD CASTLE
  10. ICON
  11. EPISTROPHY

(JAZZZ/JAZZZ 2008年発売/MAIR-2001)
(☆スリップ・ケース仕様)
(ライナーノーツ/松永誠一郎)

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フレディ・ハバード / オープン・セサミ4

OPEN SESAME-1 ジャズの王者はトランペットである。そんな「王様のトランペッター」を語っていくとフレディ・ハバードの名前は外せない。
 しかし,フレディ・ハバードトランペットが本当に良いのは「新主流派」以降である。加えてフレディ・ハバードトランペットが本当に良いのはサイドメンとしての演奏である。

 だからフレディ・ハバード初期の演奏は聴いても聴かなくてもどちらでもよい。聴かないよりは聴いた方がよいとお奨めしている。
 現に管理人はフレディ・ハバードデビュー盤『OPEN SESAME』(以下『オープン・セサミ』)ではフレディ・ハバードの演奏は聞いてはいない。

 そう。『オープン・セサミ』はフレディ・ハバードトランペットを聴くためのアルバムではなく,ティナ・ブルックステナーサックスマッコイ・タイナーピアノを聴くためのアルバムなのである。

 ズバリ『オープン・セサミ』の主役はティナ・ブルックスである。演奏もそうなのだがアルバムが醸し出す雰囲気はティナ・ブルックスの個性そのものである。
 結局のところ『オープン・セサミ』の顔である【オープン・セサミ】と【ジプシー・ブルー】はティナ・ブルックスあってこそ!

 一聴するとホレス・シルヴァーっぽい曲調だが,元気いっぱいのマイナー調で哀愁してしまうのがティナ・ブルックスの腕前なのである。
 多弁で安定感のあるフレディ・ハバードと朴訥で線が細いけれど黒っぽいティナ・ブルックスの組み合わせが強い印象を残している。ティナ・ブルックスの繊細かつソウルフルな味が絶妙に臭い立ってくる。ティナ・ブルックスが好きだ〜。

OPEN SESAME-2 そうしてマッコイ・タイナーピアノである。マッコイ・タイナーの洗練されたピアノがあるから,ティナ・ブルックスの演歌チックで昭和レトロな雰囲気にドップリ浸れるというものだろう。
 リリカルで小気味良いピアノ・タッチの流ちょうなフレージングが,フレディ・ハバードティナ・ブルックスの両雄を自由に転がしていく。

 『オープン・セサミ』の後もしばらくフレディ・ハバードを支えることになるマッコイ・タイナーフレディ・ハバードの成功は“名脇役”マッコイ・タイナーのサポート抜きには語れない。

  01. OPEN SESAME
  02. BUT BEAUTIFUL
  03. GYPSY BLUE
  04. ALL OR NOTHING AT ALL
  05. ONE MINT JULEP
  06. HUB'S NUB
  07. OPEN SESAME (alternate take)
  08. GYPSY BLUE (alternate take)

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7075)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,原田和典)

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T-SQUARE / HORIZON4

HORIZON-1 『HORIZON』を一聴して強く感じたことは“河野啓三の偉大さ”であった。
 河野啓三の不在が痛い。河野啓三がいないと「伝統のスクェア・サウンド」が成立しないことを思い知らされた気分がした。

 …と言うのも実はこんなエピソードがある。以前にどこかのLIVEのMCで河野啓三が「バンドに貢献できているかどうか分からない」と述べていた。当然そんなことなどない。ファン全員,天に誓って一度たりともそう思った人はいないことだろう。
 でも何だかとても不憫に感じてしまって,あの河野啓三の言葉が今でも管理人の記憶に残っている。河野啓三を擁護したい。応援したい。ただそのことを直接,口に出して伝えたら終わりな訳で…。

 結果,これは本当に残念なことではあったが,河野啓三抜きの『HORIZON』を聴いてみて,河野啓三に自分の存在価値の大きさに自信を持ってほしいと思ってしまった。
 河野啓三の代役は「超大物」のフィリップ・セスである。しかし,あのフィリップ・セスをしても河野啓三の代役など務まっていない。
 そう。『HORIZON』とは“大黒柱”河野啓三が自然な形で証明されてしまったアルバムなのである。

 久しぶりのスクェアフィリップ・セスの組み合わせ。フィリップ・セスの先鋭的なサウンドを求めた伊東たけし坂東慧ソロとは違い「ポップ・インストゥメンタル・バンド」として安藤正容のDNA=「歌うメロディー」が楽器と音色を支配するバンドとの組み合わせ。

 うん。フィリップ・セスの完勝である。河野啓三抜きの『HORIZON』の真実とは「フィーチャリングフィリップ・セススクェア・サウンド」であった。

 『HORIZON』に流れている「伝統のスクェア・サウンド」とは『REBIRTH』『CITY COASTER』のラインではない。
 そうではなくLAから流れる『FRIENDSHIP』『NEW ROAD, OLD WAY』のユニット期のサウンドなのである。

 もしや『HORIZON』はアメリカで発売したら売れるのかもしれない。そんな雰囲気の音楽である。スクェアが「ザ」から「T」へと改名した『WAVE』の頃よりもアメリカに近づいている。

 こんなにもアーバンでLAしててスムーズ・ジャズスクェアは『FRIENDSHIP』以来である。完璧なバックサウンドと要所要所でソロを取るフィリップ・セスキーボードが,2000年頃のドン・グルーシンの煌びやかなキーボードを連想させる。

 河野啓三の大ピンチとは則ちT−スクェアの大ピンチ。こんな大ピンチを救ってくれたフィリップ・セスには感謝しかない。
 しかしフィリップ・セスの良さがT−スクェアの良さと混じり合うのは「音楽監督」河野啓三が率いるT−スクェアであろう。

HORIZON-2 是非是非,フィリップ・セスとは河野啓三が復帰したT−スクェアと再度共演してほしい。きっと凄いことになると思うから。次作では坂東慧河野啓三向きの神曲をきっと準備してくれるはずだから…。
 『HORIZON』は【SKY DRIVE】【HORIZON】【LOVE GAME】の3曲だけだったかなぁ。

 最後に『HORIZON』でうれしかったことがある。
 それは河野啓三T−スクェアのメンバーとしてクレジットされていたこと。そして内ジャケットの中にもメンバー写真として1ページ分写っていたこと。完全に河野啓三の「復帰待ち」スタンバイ体制である。

 T−スクェアキーボード・プレイヤーの椅子は永久欠番って感じの空席扱い? 『HORIZONツアーでは白井アキトの怪演に超期待している自分も正直いる?
 管理人はスクェア・ファミリーの一員として「音楽監督」河野啓三の復帰を(一刻も早く。でも決して無理してほしくない)いつまでも待っております。

  DISC 1
  01. SKY DRIVE
  02. Kasareria
  03. Lonesome George
  04. 追憶の街
  05. Horizon
  06. Love Game
  07. Samba de Bantha
  08. Parallel World
  09. Some Other Time

  DISC 2 DVD
  01. T-SQUARE 84h in Los Angeles

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2019年発売/OLCH 10015〜16)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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今津 雅仁 / WHAT'S A MELODY?4

WHAT'S A MELODY?-1 デビュー・アルバム『MASATO』で“天下を獲った”今津雅仁! 日本中の全ジャズ・ファンが期待値MAXで迎えた2ndが『WHAT’S A MELODY?』。
( 『MASATO』はスイングジャーナル誌主催「ジャズ・ディスク大賞」【日本ジャズ賞】受賞! )

 演歌系のこぶし廻しというべきか? ブッカー・アービン風の癖というべきか? 今津雅仁テナーサックスは相変わらずのファンキー・サックス全開で『WHAT’S A MELODY?』も親しみやすいジャズ・アルバム仕上げ。
 ただし,結論から書くと『WHAT’S A MELODY?』で今津雅仁が没落した。『MASATO』路線を変更したわけでもないのに,こんなにも響かないのはなぜなのだろう…。

 思うに,何のプレッシャーもなく,自由気ままに,思う存分,自分の演りたいジャズを演奏したのが『MASATO』だとすれば,レコード会社からのオーダーとかプレッシャーとかで,あの「本能的に思いつくがまま」の最良の部分が薄れてしまって,平々凡々の…。
 一気に今津雅仁への関心が薄れてしまった…。

 一応,今津雅仁の名誉のためにフォローしておくと,管理人が『WHAT’S A MELODY?』にハマラなかったのは,アドリブ一発がどうにも事前に考えられていたかのようで気に障るから…。
 『WHAT’S A MELODY?』では,荒削りの部分が整えられて,曲単位での完成度は『MASATO』より上がっている。

 それは今津雅仁テナーサックスだけではなくて,吉岡秀晃ピアノ沼上励ベース屋代邦義ドラムについても当てはまる。

WHAT'S A MELODY?-2 そう。『WHAT’S A MELODY?』は今津雅仁ソロ名義ではなく「今津雅仁 & FUZZ MOTION」なるコンボ名義でのリリースになったのも,全員が自由に演奏するスタイルからアンサンブル指向に舵を切った「大義」なのだと思っている。

 仮に『WHAT’S A MELODY?』にハマッテいたら,アドリブログの一押しは矢野沙織ではなく今津雅仁だったのかもしれない。
 正直,2週間前に『MASATO』を10年振りに聴いて,大興奮して,そう思ってしまったんだもん。くまもん。

  01. But That's Impossible!
  02. Willful Drunkers
  03. Just One Time
  04. Lookin' Around The Bay
  05. Spring Tide
  06. The Girl Of My Heart

(ファンハウス/FUN HOUSE 1990年発売/FHCF-1056)
(ライナーノーツ/市川正二)

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エルモ・ホープ / エルモ・ホープ・トリオ4

ELMO HOPE TRIO-1 エルモ・ホープと来ればバド・パウエルの“バーター”というのが定説である。
 その心は「バド・パウエル崩れ」で語られるよりも「ソニー・クラーク系マイナー崩れ」の方が正しいと思っている。

 『ELMO HOPE TRIO』(以下『エルモ・ホープ・トリオ』)は,一聴すると確かにバド・パウエルっぽい。テンポとか音の間に関しては“もろ”バド・パウエル似で間違いない。

 しかし『エルモ・ホープ・トリオ』を繰り返し聴いて,耳が慣れてくると,聴こえてくるのは,劣化したバド・パウエルなのだが,あるレベルを越えてしまった瞬間,エルモ・ホープのマイナー・ピアノソニー・クラークっぽい。
 要するに日本人好みの“ジャズ・ピアニスト”の一人がエルモ・ホープで間違いない。

 ただし,エルモ・ホープ好きを名乗るのは,ちょっと「天の邪鬼なピアノ・ファン」が多いように思う。
 これには理由があってエルモ・ホープ好きとは前提としてのマイナー・ピアノ好き。マイナー好きの世界ではソニー・クラークが一番手だから,ソニー・クラークを敢えて外した集団がエルモ・ホープ・ファンを構成しているように思う。この世界を理解するのは難しいのだ。

 『エルモ・ホープ・トリオ』でのエルモ・ホープピアノが,なかなかに手強い。エルモ・ホープの中にいるバド・パウエル的な顔とソニー・クラーク的な顔が同居したうえで,エルモ・ホープの個性が出ている。

 パズルのように構築されたフレーズの集積は,非メロディアスというわけではないが,情緒的で甘い砂糖菓子のようなフレーズはほとんど出てこない。
 例えば,スローテンポで演奏される,砂糖菓子のようなメロディーの【LIKE SOMEONE IN LOVE】においても,ピリリと辛口のピアノである。

ELMO HOPE TRIO-2 そう。エルモ・ホープの個性とは「独特の構成能力」にある。あまりに断片かつ,フレーズとフレーズの“つながり感”が希薄ゆえ,演奏の全体像が掴みづらい。だから注意深く聞いていると難解に聞こえるが,サラッと聞き流していると,如何にも“ジャズ・ピアニスト”して聴こえてしまう。

 う〜む。『エルモ・ホープ・トリオ』はなかなかに手強い。上級者向けのピアノ・トリオである。
 平易な語り口で語りかけるので一瞬分かったつもりになってしまうが,エルモ・ホープは意図時にツボを外し核心を隠してくる。まるでリスナーに謎かけでもしているように…。

 エルモ・ホープ好きの中でも『エルモ・ホープ・トリオ』は「天の邪鬼なピアノ・ファン」には堪らないアルバムなのだろうなぁ…。

  01. B'S A-PLENTY
  02. BARFLY
  03. EEJAH
  04. BOA
  05. SOMETHING FOR KENNY
  06. LIKE SOMEONE IN LOVE
  07. MINOR BERTHA
  08. TRANQUILITY

(ハイ・ファイ/HIFI 1959年発売/VDJ-1649)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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今津 雅仁 / MASATO5

MASATO-1 難解なジャズの方が人気が發い里漏里であるが,誰が聴いても分かりやすいジャズこそが「本家本元のジャズ」であろう。底抜けに楽しいアドリブが延々と続くジャズこそが「世界一」楽しい音楽だと思っている。
 最右翼はやっぱりファンキージャズになるのかなぁ?

 管理人がそう思うのは実体験があるからだ。1989年に発売された今津雅仁の『MASATO』の強烈な印象が忘れられないのだ。
 新人と言ってもオッサンだった今津雅仁のセンセーションなデビューに衝撃を受けた。実際に『MASATO』を聴いた後,キャノンボール・アダレイの『THEM DIRTY BLUES』を買ってしまったっけ?
 とにもかくにも「一期一会」のアドリブ一発の魅力にメロメロになった記憶がある。

 今津雅仁はとにかく思いっ切りバリバリとテナーサックスを吹き上げる。そこに理性とか構成とかは感じられない。本能的に思いつくがままにテナーサックスをドライブさせている。
 流暢に言葉をつくすよりも,ぶっきらぼうな言い回しのほうが伝わることがあるように,今津雅仁の「出たとこ勝負」のメロディアスが「瞬間芸術的」で聴いていて気分が高揚してくる。いいフレーズを聴く度に,管理人もガッツ・ポーズしてしまっている。

 今津雅仁テナーサックスは,時折音程を外しているが,それもこれも全てが今津雅仁の“味”である。今津雅仁テナーサックスには“雰囲気”がある。

 これってなんだろう。人を惹き付けてやまない魅力がある。ガッと掴まれては思わず聴きいってしまう魅力がある。何だか今まで聴いたことのない音が聴こえている。調子の悪
い時のソニー・ロリンズといった感じ?

MASATO-2 今津雅仁というテナーマンは日本語でテナーサックスを吹き上げる。極太な音でブルージーに,またユーモアをもって吹き上げる。
 なるほど,使っている楽器,リズム,音階,イントネーションなど語法的にはアメリカの「真似」かもしれないが,今津雅仁の日本語でテナーを聴いていると,そこそこの演奏でも,なんかこう,しっくりくるものがある。「ははあ,なるほど」ってな感じ。

 思うに,優れた日本人ジャズマンの演奏するジャズは「音が日本語」だからなんでしょう。彼らは片言の下手な英語なんかじゃなく,魂のこもった日本語で堂々とジャズを会話している。

 今津雅仁の『MASATO』に説得されてしまった。今津雅仁の日本語テナーの真髄とは“広島弁”あるいは“博多弁”のあれなのである。

  01. FIRE BALL
  02. VIOLET LOVE
  03. ZOOM
  04. SO LONG
  05. LIKE FORREST
  06. BAGDAD
  07. DEAR HANK

(ファンハウス/FUN HOUSE 1989年発売/00FD-7126)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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パコ・デルシア/アル・ディメオラ/ジョン・マクラフリン / THE GUITAR TRIO4

THE GUITAR TRIO-1 世紀の大名盤フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』から15年。アル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアの3人組による「スーパー・ギター・トリオ」が帰ってきてくれた。

 ただし,自分たちが作り上げた『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』をそう簡単には超えられないことを「スーパー・ギター・トリオ」の3人は理解している。だから新しいアイディアが『THE GUITAR TRIO』という1枚のアルバムになるまでに15年もの年月が必要だったのだ。

← 注:『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』を,つい2年ほど前に聴いた管理人の感想はリアルに体感したアル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアのファンより熱情が劣っても致し方ありません。残念。

 『THE GUITAR TRIO』の第一印象は,随分と地味な演奏に感じられた。
 ズバリ『THE GUITAR TRIO』の聴き所とは,緻密なアンサンブルを鳴らす手段としてのギター・バトルにある。つまりアドリブ一発のギター・バトルが繰り広げられるものではなく,全てが計算された構成の一部としてギターが登場している。

 要はギターありきではなく音楽ありき。随分と大人なアコースティックギターの掛け合いがじわじわと来る! 奥行きのある構成と3人の共鳴するギターが心地よいバランスで押し寄せてくる!

 『THE GUITAR TRIO』の聴き始めは,とにかく超高速カッティング&ピッキングに耳が奪われる。そして次第に早弾きと早弾きの間を埋める“メロディアスな”バッキングやフレージングに耳が行く。

 そう。『THE GUITAR TRIO』は,アコースティックギター2本だけ,3本だけのジャズギターによるアンサンブル集。
 「スーパー・ギター・トリオ」におけるアル・ディ・メオラジョン・マクラフリンパコ・デ・ルシアの役所とは,アンサンブルの流れに合わせて,自分が主役を張った1秒後に脇役へ回っても,主役並みに光り輝くサイド・ギター・スタイル集。

 ズバリ,自分の陣地に相手を引き込もうというスタイルのアル・ディ・メオラ,逆に相手の陣地に入り込むスタイルのジョン・マクラフリン,そして一番の自信家=パコ・デ・ルシアの「ついて来れるものならついて来い」スタイルの違いが,目まぐるしく交錯しては絡み合う,白熱のアンサンブル「裏バトル」集。

THE GUITAR TRIO-2 管理人の結論。『THE GUITAR TRIO批評

 『THE GUITAR TRIO』は“売り”である,アクロバティックなギターの“名人芸”が聴き所に違いないがハイライトは「上質のジャズ・ギター」に違いない。

 そう。『THE GUITAR TRIO』は,一部のギター・キッズだけが楽しむためのアルバムではない。実に音楽的なジャズ・ギターの“鳴り”に毎回魅了されてしまう。素晴らしい。

  01. LA ESTIBA
  02. BEYOND THE MIRAGE
  03. MIDSUMMER NIGHT
  04. MANHA DE CARNAVAL
  05. LETTER FROM INDIA
  06. ESPIRITU
  07. LE MONASTERE DANS LES MONTAGNES
  08. AZZURA
  09. CARDEOSA

(ヴァーヴ/VERVE 1996年発売/POCJ-1350)
(ライナーノーツ/成田正)

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ノブ・ケイン / NOBU CAINE4

NOBU CAINE-1 角松敏生フュージョンの人である。いつの日か制作されるフュージョン・アルバムを売る目的でまずは歌を歌ってきた人である。

 そんな角松敏生の“本性丸出し”の1つがソロ・アルバムの『SEA IS A LADY』であるとすれば,もう1つがプロデュース・アルバムの『NOBU CAIN』である。
 『SEA IS A LADY』では表現できなかった,角松敏生の考える「もう1つのフュージョンの理想形」が『NOBU CAIN』には色濃い。

 「ノブ・ケイン」とは,パーカッション斎藤ノブを中心に集まった「オール・ジャパン・スタジオ・ミュージシャン・リズム・セクション・バンド」である。
 メンバーはパーカッション斎藤ノブドラム村上“ポンタ”秀一島村英二ツインドラムベース青木智仁,そこにキーボード難波正司小林信吾ギター松原正樹の上物が乗っている。

 そんな「ノブ・ケイン」の『NOBU CAIN』を初めて聴いた時の“ギャップ”が今も忘れられない。
 『NOBU CAIN』聴くまではその当時,世界を席巻していた「HIROSHIMA」的な音楽をイメージしていたのだが,聴いてビックリ! 耳に飛び込んできた音楽のイメージは「角松敏生のインスト」そのまんま!

 「ノブ・ケイン」の基本は“ドンシャリ”である。しかし,単調なリズムがループする後ろで鉄壁のリズム・セクションが「ザ・角松敏生」を表現していることに驚きを隠せなかった。
 あっ,そもそも「ノブ・ケイン」のメンバーとは角松敏生のバック・バンドの面々たちの集合体だったのですね? 自然とカドマツ・ナイズされている!

 管理人は「ノブ・ケイン」について7年間ずっとそのように思ってきた。「ジンサク」の『DISPENSATION』を聴くまでは…。

NOBU CAINE-2 ジンサクの『DISPENSATION』を聴いて初めて「ノブ・ケイン」が理解できたし「ザ・角松敏生」が理解できた。
 そう。角松敏生フュージョンを表現する上でギター以上にベースドラムパーカッションで表現することに長けている。素っ晴らしい才能である。
 あの「ジンサク」がPOPになるくらいだから「ノブ・ケイン」がPOPに振れるのも当然ではなかろうか!?

 管理人の結論。『NOBU CAIN批評

 『NOBU CAIN』は当時流行りのJ−POPのインストである。しかしインストなのに歌っている。これぞフュージョンの人の音楽である。これぞフュージョンの醍醐味である。

 角松敏生フュージョン愛,恐るべし! 角松敏生の才能,恐るべし!

  01. ASIAN WIND
  02. YOU ARE A GREAT GIRL〜interlude 香港の朝市
  03. SAVANNA MOON
  04. BAN-COCK
  05. JESSICA
  06. NIGHT IN KOZA
  07. CARIBBEAN PIRATES
  08. ソバカスのある少女
  09. I'M GONNA FORGET YOU〜BACK TO THE ISLAND

(オーン・レコード/OM RECORDS 1989年発売/M32D-1003)
(ライナーノーツ/小倉エージ)

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フランク・アヴィタビレ / ジャスト・プレイ5

JUST PLAY-1 フランク・アヴィタビレの『JUST PLAY』(以下『ジャスト・プレイ』)とは国府弘子の『PIANO TAPESTRY』〜『PIANO ANNIVERSARY』〜『PIANO VOICES』の続編となるピアノ・ソロ・アルバムである。

 騙されたと思ってこの順番で『ジャスト・プレイ』を聴いてみてほしい。絶対にそう思えるから!? ← 多分,リリース時期が近いせいでそう思ってしまったのかもしれません。

 そう。管理人にとってフランク・アヴィタビレとは「ミシェル・ペトルチアーニな人」ではなく「国府弘子な人」である。
 国府弘子がPOP寄りから本格ジャズを越えてきたように,フランク・アヴィタビレにもジャズ以外の要素の方が耳に残る。

 これがおフランスのせいなのかは定かではないがクラシックに近い感覚があってアメリカン・ジャズではない。しかし不思議とアルバムを1枚聴き終えた後には「これぞジャズ・ピアノ以外の何物でもない」と思ってしまうのだから素晴らしい。
 ジャズ評論の世界ではこれを「ミシェル・ペトルチアーニ直系」と定義するのだろうか?

 それにしても定番のピアノ・トリオではイマイチなのにソロ・ピアノになると表情が一変するピアニストに共通するのは,ジャズを弾こうとしていないことであろう。
 本人はジャズを弾くではなく,ピアノを弾くでもなく,ただ自分の好きなように音楽を奏でている。イマジネーション豊かな鍵盤音楽の世界にドップリである。

 『ジャスト・プレイ』はジャズの方法論で演奏されている。新しさというよりもオーソドックスな伝統を感じる。フランク・アヴィタビレはゼロからのクリエイターなどではない。
 そう考えると『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』がハービー・ハンコックっぽく仕上がったことにも合点がいくし『ジャスト・プレイ』での国府弘子にも合点がいく。

JUST PLAY-2 ズバリ,フランク・アヴィタビレの魅力とは「美しいものパッケージング」なジャズ・ピアニスト
 『ジャスト・プレイ』にはフランク・アヴィタビレが体験してきた「美」が全部詰まっている。「美」のピアニズムが持つカタルシスを感じてやまない。

 ところで『ボディ・アンド・ソウル批評の中で,長尺が苦手なフランク・アヴィタビレへの不満をちょっとだけ書いてしまったが,その理由も『ジャスト・プレイ』で回収できたことも記しておく。

 フランク・アヴィタビレが長尺が苦手でないことは11分12秒の【AUGUST IN PARIS】が証明してくれた。1曲の演奏時間が総じて短時間なのは,その曲の美しい部分だけにフォーカスした結果なのだと思っている。

  01. RESONANCE
  02. LITTRE A LOISE
  03. MY ROMANCE
  04. AUGUST IN PARIS
  05. MEMORIES
  06. MAGIC MIRROR
  07. SMILE
  08. MOODY PIANO
  09. MORNING STAR
  10. DREAMLAND
  11. ISOPOD
  12. REAL ADDICT
  13. CORPS & AMES
  14. NATURE BOY
  15. POINCIANA
  16. MEDLEY; MISS LAURENCE〜FACIN'UP〜REVERIE〜LOVERS

(ドレフュス・ジャズ/DREYFUS JAZZ 2005年発売/VACR-2072)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/アルノード・メルリン)

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