アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

CD

ボブ・ジェームス/アール・クルー / クール5

COOL-1 ボブ・ジェームス最大の「問題作」と書くと語弊があるよなぁ。言葉を選ぶと「衝撃作」と表現した方がピッタリくる。そんな「衝撃作」が『COOL』(以下『クール』)である。

 何が「衝撃」だったのか? ここは黙って『FOURPLAY』に続けて『クール』を聴いてみてください。これが今や「伝説」である『FOURPLAY』の次にボブ・ジェームスが作り上げた音楽なのか〜,とブッタマゲルはずである。

 『クール』のドラマーハービー・メイソンのままだから尚更「衝撃」を感じてしまう。ギターリー・リトナーからアール・クルーに変わっただけで,こんなにもボブ・ジェームスの音楽が変わるなんて〜。
 それも快心作の『FOURPLAY』をバッサリと捨て,アール・クルーとの「懐古趣味」に走るなんて〜。

 どう考えても『クール』のリリースの意味が理解できなかった。ボブ・ジェームスも好き。アール・クルーも好き。『クール』が悪いはずもない。
 しかし時代はバブルである。『FOURPLAY』はバブリーな音がする。一方の『クール』はチープな音が売りである。アール・クルーの「爪弾き+ナイロン・ストリングス」が素朴すぎて,バブルの時は正直,居心地が良くなかった。
 テンションが上げるどころか,聞けば聞くほどに“COOL DOWN”。だからタイトルが『クール』なのだろう。「時代の熱を冷ます」音楽が必要とされていたのだろう。

 そう。管理人は『クール』を購入した当時はほとんど聴かなかった。『クール』を聴くようになったのは30歳を過ぎてから,つまり若者ではなくなったという自覚を抱いた頃からである。30歳を過ぎてからジワジワと身体の深い部分に浸透してきた音楽の1枚である。

 実は『クール』は「COOL」ではない。妙にテンションの高い演奏が続いている。なのに聴いているリスナーは徐々に意識が遠のいていく…。
 そう。実はボブ・ジェームスが『クール』で演っていることは,基本的に『FOURPLAY』と同じ。『FOURPLAY』の続編としての『クール』に違和感はないのだった。

 ここまで来ると後は一気! リー・リトナーの個性とアール・クルーの個性の違いを,そしてその2人に合わせるボブ・ジェームスのメロディー・ラインと音楽構造の違いを楽しむだけ!

COOL-2 ボブ・ジェームス自身がリー・リトナーの個性とアール・クルーの個性の違いを楽しんでいる。両方どちらも優劣なしに楽しんでいる。間違いない。
 しか〜し『クール』でのアール・クルーの“味”を一番楽しんでいるのはハービー・メイソン! ハービー・メイソンがこんなにも前に出てドラムを叩いているのは『クール』以外に有りません。

 ははーん。ボブ・ジェームスさん。実は「懐古趣味」な『クール』での真の狙いは,リー・リトナーアール・クルーの個性の違いを表現することではなく,リー・リトナーアール・クルーと共演した時の「ハービー・メイソンの違い」を録音するのが目的だったりして…。

 ハービー・メイソンドラミングがとにかくカッコイイ! ハービー・メイソンの“味”を知ってしまったが最期,もう『クール』で寝落ちなど絶対にできなくなりますよっ。

 
01. Movin' On
02. As It hppens
03. So Much In Common
04. Fugitive Lite
05. The Night That Love Came Back
06. Secret Wishes
07. New York Samba
08. Handara
09. The Sponge
10. Terpsichore
11. San Diego Stomp
12. Miniature

 
EARL KLUGH : Guitars
BOB JAMES : Keyboards
HARVEY MASON : Drums
GARY KING : Bass
RON CARTER : Bass
LEONARD "DOC" GIBBS : Percussion
PAUL PESCO : Rhythm Guitar

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1992年発売/WPCP-4853)
(ライナーノーツ/上田力)

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チック・コリア / サンダンス4

SUNDANCE-1 通称「ロスト・クインテット」への参加で,あのハービー・ハンコックを“出し抜いた”チック・コリアが,アコースティックピアノで綴った「電化チック“マイルス”コリア」が『SUNDANCE』(以下『サンダンス』)である。

 『サンダンス』には“電化マイルス”からの影響がクッキリ。特に「ロスト・クインテット」から,そのまんまデイヴ・ホランドベースジャック・デジョネットドラムを譲り受けた,ヒタヒタと迫りくるアコースティック・セットの4ビートが爆発している。

 そんなイケイケのリズム隊をメロディアスにリードするのが,チック・コリアアコースティックピアノウディ・ショウトランペットヒューバート・ロウズフルートという大物3人の揃い踏み!

 この3人の個性が絶妙に混ざり合い『サンダンス』独自の色が楽しめる。楽曲のクセはチック・コリアの「そのものズバリ」であるのだが「電化チック“マイルス”コリア」の“売り”は,やはり「集団即興演奏」である。
 100%チック・コリアのテイストの中に,ウディ・ショウの切れ味とヒューバート・ロウズの妖しさが同居している。「電化チック“マイルス”コリア」のエレクトリックな表現をアコースティックピアノで「やり切った」実験なのであった。

 【THE BRAIN】の異常なほどのテンションの高さは「ビ・バップ」の再来を狙っているようにも聴こえるし【SONG OF WIND】では「新主流派」の再来を狙ったようにも聴こえるし【SUNDANCE】はキャッチーなテーマをモードで押し切った,後の「RETRUN TO FOREVER」の原型とも捉えることのできる名演である。

 さて,ここで『サンダンス』の問題児である【CONVERGE】の扱いである。
 マイルス・デイビスジャズの全てを作り出してきたことは間違いない。マイルス・デイビスが演ったからこそ,クールがあるわけだしモードがあるわけだしフュージョンが存在するのだ。
 そんなマイルス・デイビスが唯一手を出さなかったジャズ・スタイルがフリーであった。

 ズバリ【CONVERGE】は「電化チック“マイルス”コリア」によるフリージャズである。
 何と!【CONVERGE】で,マイルス・デイビスが唯一手を出さなかったフリージャズが“疑似体験”できる。

 要するにチック・コリアが“電化マイルス”をアコースティックで表現した理由は「集団即興演奏」が当時の流行だったいう1点のみ。
 チック・コリアマイルス・デイビスのアイディアである「ロスト・クインテット」の可能性を探っていたわけではない。それはチック・コリアにとっての“褒め殺し”と同じである。

SUNDANCE-2 チック・コリアは,人一倍流行に敏感なジャズメンである。それでシーンを席巻していたフリージャズチック・コリアも手を染めた。

 「ロスト・クインテット」のリズム隊がフリージャズを奏でるためには,トランペットマイルス・デイビスではダメだ。前衛も行けるウディ・ショウだったからこそ「ロスト・クインテット」もフリージャズにチャレンジできた。ここが【CONVERGE】を視聴する際のポイントである。

 「サークル」のフロントにウディ・ショウが加わっていたなら「サークル」の未来もフリージャズの未来もまた違ったものになったことだろう…。

 
01. The Brain
02. Song Of Wind
03. Converge
04. Sundance

 
CHICK COREA : Piano
HUBERT LAWS : Flute Piccolo
JACK DE JOHNETTE : Drums
DAVE HOLLAND : Bass
WOODY SHAW : Trumpet
HORACE ARNOLD : Drums

(グルーヴ・マーチャント/GROOVE MERCHANT 1972年発売/CDSOL-45947)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ボビー・マクファーリン&チック・コリア・スーパー・コンサート / スペイン5

PLAY-1 デュエット・アルバムが数十枚も存在するチック・コリア。そんなチック・コリアデュエット・アルバムの中で,チック・コリアの名前が後から出ているのは,後にも先にもボビー・マクファーリンとのデュエット・アルバム『PLAY』(以下『スペイン』)以外には存在しない。

( ハービー・ハンコックチック・コリア名義の『IN CONCERT』はチック・コリアハービー・ハンコック名義『AN EVENING WITH CHICK COREA AND HERBIE HANCOCK』の裏。その他はサイドメンとして参加した『THE BENNIE WALLACE TRIO & CHICK COREA』の例があるくらい )

 この事実こそがチック・コリアボビー・マクファーリンに対する「最上級の尊敬の気持ち」の表われである。
 そう。ボビー・マクファーリンだけはチック・コリアにとって「別格中の別格」。ボビー・マクファーリンはミュージシャンというよりも“大道芸人”のそれである。

 『スペイン』でのボビー・マクファーリンが“七色の声”を使って“百色の声”を出している。もはやこの音は声でもない。楽器の音のそれである。
 とはいえ,これこそがチック・コリアの凄さである。ボビー・マクファーリンが自由自在に表現出来るように,ボビー・マクファーリンの声の調子に即座に反応する“天才”チック・コリアの凄業!
 
 チック・コリアボビー・マクファーリンに反応すれば,そのチック・コリアボビー・マクファーリンが更に反応する。そんな“丁々発止”のやり取りがレイコンマ何秒の世界で展開する“瞬間芸術”。一瞬の閃きのセンスの何という素晴らしさ。

 音楽的な会話だけはない。そこにはユニークな笑いの要素もある。実に“チャーミング”な会話であって,2人だけの会話のはずが,会場の中から1人が加わり,またそこに2人3人と加わり,何だか自分もその会話に加わっているような不思議な気分になる。

PLAY-2 表向きは,そんなリラックスした「大道芸大会」を進行させながらも,ボビー・マクファーリンチック・コリアは大真面目である。
 今後共演できるチャンスはそう滅多にない。2人でタッグを組みながらジャズヴォーカルジャズピアノの可能性を探っている。

 ボビー・マクファーリンヴォーカルは,よくあるスキャットの類を越えている。真に超絶なヴォイスの連続であって,チック・コリアが旋律を弾けば,ボビー・マクファーリンヴォイスベース・ラインを担当する。

 そんなボビー・マクファーリンだからこそ,チック・コリアが自ら退いて,後方の名義を名乗っている。
 そう。『スペイン』のテーマとは「チック・コリア・プレゼンツ・ボビー・マクファーリン」なのである。

 インスト好きのジャズ・マニアの読者の皆さん。インストしか聴かないと決心するのは何とも勿体ないですぞ。

 
01. SPAIN
02. EVEN FROM ME
03. AUTUMN LEAVES
04. BLUES CONNOTATION
05. 'ROUND MIDNIGHT
06. BLUE BOSSA

 
BOBBY McFERRIN : Vocal
CHICK COREA : Piano

(ブルーノート/BLUE NOTE 1992年発売/TOCJ-5690)
(ライナーノーツ/市川正二,ボビー・マクファーリン,チック・コリア)

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山中 千尋 / ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン4

RUNNIN' WILD-1 『RUNNIN’ WILD』(以下『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』)とは,山中千尋による“キング・オブ・スイングベニー・グッドマントリビュート集。

 山中千尋が『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』で「ククッタ」のはベニー・グッドマンのスモール・コンボ。
 ジャネル・ライヒマンクラリネットベニー・グッドマンに見立てて“本邦初公開”となる木管楽器との大共演。

 そう。『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』の聴き所は“変態”アレンジャー=山中千尋が,あのベニー・グッドマンを「どう料理するか,しないか」ではない。山中千尋と「管楽器との相性がどうか」の1点のみ!

 管理人の評価はイマイチである。せっかくクラリネットヴィブラフォンを従えたのに,基本的にはピアノ・トリオの延長のまんま。
 流石にベニー・グッドマンは題材としては手強かった。なんてったってスイングジャズなのです。楽曲もアレンジも完成してしまっているし,編曲やビートのアイディアも大抵出尽くしている。

 山中千尋が,ベニー・グッドマンを演奏するには,地に足のついたピアノ・トリオが一番だったのだろう。クラリネットヴィブラフォンはセオリー通りに演奏させといて,ガンガン勝負するのはピアノ・トリオという図式が見える。

 うん。別所哲也が「ハムの人」であるように,山中千尋は「ピアノ・トリオの人」だった。
 山中千尋名義にて,幾枚ものコンパイル盤をリリースしているから,勝手に山中千尋=“雑食系”と勘違いしていただけのことである。

 とにかく個人的に『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』に対する期待値が高かったので,見事に裏切られてしまった? 『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』が個人的に好みでないのは,単純にベニー・グッドマンが,そしてスイングジャズが好きではないことが影響しているのかも?
 ジャズを聴き始めた頃はベニー・グッドマンをよく聴いていたというのに,ある時期から全く聴かなくなったんだもんなぁ。

RUNNIN' WILD-2 もしや『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』は今後の「しこり」として残る。山中千尋本人はダメージ受けていないのかなぁ。
 今後は山中千尋の非ピアノ・トリオ作,例えばトランペットサックスとの共演盤も期待薄? もしや待望のソロ・ピアノ集も期待薄?

 『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』を聴いて決心しました。管理人はジャズメンとしてではなく“ジャズ・ピアニスト山中千尋を全力で応援していきます。

 『ランニング・ワイルド〜トリビュート・トゥ・ベニー・グッドマン』のジャケット写真は超超クールビューティー!

 
01. If I Had You
02. Airmail Special
03. B.G.(Bad Girl)
04. G.B.(Good Boy)
05. Slipped Disc
06. Medley: Stompin' At The Savoy/Last Call
07. Get Happy
08. Smoke Gets In Your Eyes
09. Tico Tico No Fuba
10. Rose Room
11. Rachel's Dream
12. These Foolish Things
13. Rnnin' Wild
14. If I Had You

 
CHIHIRO YAMANAKA : Piano
JANELLE REICHMAN : Clarinet
TIM COLLINS : Vibraphone
AVI ROTHBARD : Guitar
YOSHI WAKI : Bass
LUCA SANTANIELLO : Drums

(ヴァーヴ/VERVE 2009年発売/UCCJ-2077)

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ドン・グルーシン / ゼファー4

ZEPHYR-1 普通なら「お兄ちゃんが習っているから僕も〜」と弟がお兄ちゃんの真似をしそうに思えるが,殊更,ジャズメンにおいては,肉の兄弟で同じ楽器を演奏するパターンは少ない。
 ランディー・ブレッカートランペットマイケル・ブレッカーテナーサックスブランフォード・マルサリステナーサックスウイントン・マルサリストランペットキャノンボール・アダレイアルトサックスナット・アダレイトランペット日野皓正トランペット日野元彦ドラム…。

 そう。兄弟ジャズメンはみんな揃って仲がいい。それって同じ楽器を演奏していないことが理由として寄与している? だって肉の兄弟がライバルになってしまうわけだし,一家に一台の楽器を兄弟ゲンカで「我先に!」と奪い合うこともなくなるから?

 そんな中,デイヴ・グルーシンドン・グルーシングルーシン兄弟は仲がいい。同じ楽器で同じジャンル。兄弟揃って同じ音楽性を追い求めている。趣味が一致した兄弟は最強なのである。

 デイヴ・グルーシンドン・グルーシンの違いを書けば,デイヴ・グルーシンが一般に受けているのに対しドン・グルーシンは玄人に受けている。ドン・グルーシンはスーパーなスタジオ・ミュージシャンが主戦場である。

 そんな「裏方稼業」の仕事が多いドン・グルーシンが,自ら前に出たソロ・アルバムが『ZEPHYR』(以下『ゼファー』)である。
 『ゼファー』の主役はドン・グルーシンピアノであるが,何となく主役のピアノが控え目に響いている。ハイライトとなるアドリブは共演者に任せきりでピアノはとにかくメロディー・ラインを弾き上げている。その部分が実にドン・グルーシンらしい!

 それどころか『ゼファー』では共演していないはずのデイヴ・グルーシンの演奏のようにも聴こえてしまう。自然とではなく“敢えて”ドン・グルーシンデイヴ・グルーシンに“寄せて”いるように聴こえてしまう。

 ここが最強の兄を持つ弟のサガなのか? ドン・グルーシンはいつの時代でもシーンの1.5列目に位置している。デイヴ・グルーシンリー・リトナー渡辺貞夫と,いい位置で目立っている人なのです。

ZEPHYR-2 管理人の結論。『ゼファー批評

 『ゼファー』とはドン・グルーシンがスーパー・サポートの傍らでコツコツと書き上げてきた作品の佳作集。
 演奏同様,上品で地味な『ゼファー』の中にあって【アニョランザ】だけは名曲中の名曲です。そしていつか詳しく書きますが【アニョランザ】は,後のデイヴ・グルーシンのスムーズ・ジャズ路線につながる名曲。弟が偉大な兄をリードすることもあるのです。

 最後にぶっちゃけ。管理人の中で『ゼファー』と来ればドン・グルーシンではなくラッセル・モカシン社のブーツのことです。

 
01. ZEPHYR
02. TONIGHT, PURE LOVE
03. STILL GOOD LOOKIN'
04. ANORANZA
05. HARDWOOD
06. STORYTELLER
07. CHICO
08. TRIBE
09. THE LAST TRAIN
10. HATTIE-MAE (DANCE ALL DAY)

 
DON GRUSIN : Synthesizers, Acoustic Piano, Electric Piano, Background Vocal, Vocal Chant
ABRAHAM LABORIEL : Bass
MARCUS MILLER : Bass
TOM BRECHTLEIN : Drums
ALEX ACUNIA : Drums, Percussion, Cymbals, Hi-Hat, Congas
CARLOS RIOS : Guitar
DORI CAYMMI : Voice, Acoustic Guitar
ERNIE WATTS : Alto Saxophone, Tenor Saxophone
ERIC MARIENTHAL : Soprano Saxophone
GARY HERBING : Tenor Saxophone
GARY GRANT : Trumpet
JERRY HEY : Trumpet
JERRY GOODMAN : Violin, Electric Violin
CARL ANDERSON : Lead Vocal, Background Vocal, Vocal Chant
LOU PARDINI : Lead Vocal, Background Vocal, Vocal Chant
KATE MARKOWITZ : Background Vocal, Vocal Chant
MARILYN SCOTT : Background Vocal, Vocal Chant

(ビクター/JVC 1991年発売/VICJ-73)
(ライナーノーツ/ドン・グルーシン)

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山中 千尋 / ローザ4

ROSA-1 山中千尋に(ビジュアル面を含めて)入れ込んでいる管理人。山中千尋のアルバムは全部持っている。だから『ROSA』(以下『ローザ』)も買うのは当然の儀式。でも本音を書くと今回ばかりは「ためらい」があった。

 『ローザ』の“売り”は「ピアノベースギター」のドラムレス・トリオの「アフター・アワーズ」の第3弾という触れ込みなのに,実際にはドラム入りのカルテット編成である。

 加えて『ローザ』の並びが?である。「ベートーヴェン生誕250周年,チャーリー・パーカー生誕100周年,さらに山中千尋デビュー15周年のトリプル記念盤」と来ている。
 1枚のアルバムの中に“極右と極左の代表のような”ベートーヴェンチャーリー・パーカーを同列でアレンジしてよいものなのか? その2人と同格扱いで自分を紹介してよいものか?」 ← いいんです。山中千尋ならそれが許されてしまうんです。

 ただし,すでに企画が破綻しております。もはや企画段階から年1ペースのお約束でしょ? お願いだから何でもいいからリリースして!の匂いがプンプン。ねっ,あなたも買うのを「ためらった」でしょ?

 そんな『ローザ』だったから,山中千尋お得意の“エグすぎる”アレンジは【交響曲 第5番】=【運命】での「カッコウの輪唱風」だけだったかなぁ。
 でも「カッコウの輪唱風」の【運命】が凄い! こんな【運命】は山中千尋の頭の中でないと絶対に成立しない! 超エグイ!

ROSA-2 「ザ・山中千尋」の代名詞である「異端のアレンジ」が爆発していない分,オリジナルに力が入っている。特に“跳ねに跳ね回っている”【ローザ】が超お気に入り!

 『ローザ』の発売日以降,管理人の2020年7月は【ローザ】と共にあります。新型コロナ=【ローザ】が記憶に刻まれそうで恐いです。パンデミックで暗いニュースのイメージだったのに【ローザ】の底抜けの明るさに励まされる毎日です。家の外では戦争が起こっているのに家の中だけは能天気な平和ボケなのが恐いです。こんな思い出を口にしようものなら全員から袋叩きで恐いのです。

 だから管理人は【ローザ】を5回聴きたいことろを4回に我慢して,その1回で【サムディ・サムウェア】を聴くようにしています。このローテーションがウルウル来ます。1人でド感傷に浸ってしまいます。
 山中千尋のメロディー・ラインと管理人の心がシンクロし始めています。こんな体験は初めてです。これがかの有名な「パーカー・ショック」なのか? いいや,これこそ「ちーたん・ショック」なのでしょう!?

 いえいえ,理由は分かっております。【ローザ】のサビの部分でピアノギターがユニゾンしているせいなのです。アヴィ・ロスバードギターがとっても気持ちよい。【ローザ】の名脇役改め影の主役はアヴィ・ロスバード“この人”なのでした。

ROSA-3 「アフター・アワーズ」の第3弾である『ローザ』を聴き終えて,アヴィ・ロスバードギターを主役と認めることができて,初めて「アフター・アワーズ」シリーズの真の面白さに接することができた気がしている。
 こうなったら勢いで『アフター・アワーズ〜オスカー・ピーターソンへのオマージュ』と『アフター・アワーズ2』を聴き直すモードかと思いきやそれはまだまだ。

 本日,管理人は「アフター・アワーズ」シリーズの第1弾と第2弾ではなくDVDリーニング・フォワード』を見ております。
 なぜって? それこそ【サムディ・サムウェア】! 恐らく【サムディ・サムウェア】がCDで音源化されたのは今回が初めてのことなのでは? そう言えば【サムディ・サムウェア】目当てで『リーニング・フォワード』を何回も見ていたよなぁ。
 『リーニング・フォワード』を見ていると,こちらもCD未収録の【MELO】と【SEJO】の存在が気になってきた〜。

PS 「ROSA-3」は販促用のクリアファイルです。

 
CD
01. My Favorite Things
02. Falling Grace
03. Sonata No.8 Third movement
04. Donna Lee
05. Old Folks
06. Rosa
07. Take Love Easy
08. Symphony No. 5
09. Yardbird Suite
10. Someday Somewhere

DVD
01. My Favorite Things
02. So Long
03. Take Love Easy

 
CHIHIRO YAMANAKA : Piano, Fender Rhodes
AVI ROTHBARD : Guitar
YOSHI WAKI : Bass
JOHN DAVIS : Drums

(ブルーノート/BLUE NOTE 2020年発売/UCCJ-9223)
★【初回限定盤】 UHQCD+DVD

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デイヴ・グルーシン / マイグレーション5

MIGRATION-1 フォープレイの前身がボブ・ジェームスソロ・アルバム『GRAND PIANO CANYON』にあったことは以前に書いたが,実は『GRAND PIANO CANYON』にも前身があった。つまりはフォープレイの元ネタの元ネタに当たる。

 それが何と!ボブ・ジェームスのライバルであるデイヴ・グルーシングラミー受賞作MIGRATION』(以下『マイグレーション』)である。
 そう。『マイグレーション』には,ライバルさえも魅了させる音,あのボブ・ジェームスさえも振り向かせる音がある。本当にいいアルバムだ。『マイグレーション』の音に,何年経っても憧れる自分が,いいや“恋焦がれる”自分がいる。

 『マイグレーション』の基本的な編成は,デイヴ・グルーシンキーボード(そこにドン・グルーシンプログラミングで多重録音を加えている),エイブラハム・ラボリエルマーカス・ミラーベースハーヴィー・メイソンオマー・ハキムドラムマイク・フィッシャーパーカッション。そこにサックスギターが数曲ゲストで参加している。ピアノ・トリオ+1。

 こんなにも小さな編成なのに,実に「艶やかな」演奏である。これ以上の音の厚みは『マイグレーション』には必要ない。
 『マイグレーション』で実証されたデイヴ・グルーシンのアイディアが『GRAND PIANO CANYON』でも実証されて,あのフォープレイの出発点に繋がったのだった。

 いいものはいい。ボブ・ジェームスだろうとデイヴ・グルーシンだろうと関係ない。
 かつて2人は「東のボブ・ジェームス。西のデイヴ・グルーシン」と呼ばれていた。しかしフォープレイは「東のボブ・ジェームス」に西海岸のリズム隊。
 そうなったのは『マイグレーション』で「西のデイヴ・グルーシン」が東海岸のマーカス・ミラーオマー・ハキムと組んでみせたから。

MIGRATION-2 やっぱり『マイグレーション』と来れば【FIRST−TIME LOVE】である。
 元々“素の”【FIRST−TIME LOVE】が大好きだったのだが,超最高に好きになったのには理由があった。

 それがTOKYO FM系「SELECT LIVE UNDER THE SKY」の生中継終わりで,ナジャが語るバックで流れるエンディング曲。あのシチュエーションが本当に素晴らしかった! 盛り上がりすぎた真夏の大興奮LIVEをCOOLに冷ます。
 自分の大好きな曲がラジオから流れ出した瞬間の,あのジンワリと来るうれしさは格別だった。その曲があの番組のあの余韻を語り合う最良の部分のシメを飾るうれしさ。

 【FIRST−TIME LOVE】のイントロが流れ出すと,あの時代の「最高の人生」の記憶が一気に甦る。ここは「ジャパフュー」ではなくデイヴ・グルーシンでなければならない。ボブ・ジェームスデイヴ・グルーシンと同時代に生まれてきて良かった。心からそう思う。

 
01. PUNTA DEL SOL
02. SOUTHWEST PASSAGE
03. FIRST-TIME LOVE
04. WESTERN WOMEN
05. DANCING IN THE TOWNSHIP
06. OLD BONES
07. IN THE MIDDLE OF THE NIGHT
08. T.K.O.
09. POLINA
10. SUITE FROM MILAGRO BEANFIELD WAR
  a. LUPITA
  b. COYOTE ANGEL
  c. PISTOLERO
  d. MILAGRO
  e. LITTLE DRUMMER GIRL EPILOGUE

 
DAVE GRUSIN : Keyboards
ABRAHAM LABORIEL : Bass
MARCUS MILLER : Bass
HARVEY MASON : Drums
OMAR HAKIM : Drums
MICHAEL FISHER : Percussion
CARLOS RIOS : Guitar
HUGH MASEKELA : Flugelhorn
BRANFORD MARSALIS : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
DON GRUSIN : Additional Synthesizer Programming
GERALD VINCI : Concertmaster

(GRP/GRP 1989年発売/VDJ-1221)
(ライナーノーツ/上田力)

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大西 順子 / バロック4

BAROQUE-1 『BAROQUE』(以下『バロック』)の大西順子が重い! 『バロック』の大西順子が強い! いや〜“女帝”大西順子が重くて強い! 大西順子がキビシーイッ!

 トランペットニコラス・ペイトンテナーサックスアルトサックスバスクラリネットフルートジェームス・カータートロンボーンワイクリフ・ゴードンベースレジナルド・ビールロドニー・ウィテカードラムハーリン・ライリーコンガローランド・ゲレロ

 このビッグネームが横並びする圧! 大西順子って,もしやウイントン・マルサリスご用達のピアニストだったのか?
 いやいやそんなことはない,と一旦は否定してみたが『バロック』を聴き進めるにつれ,大西順子が本当にウイントン・マルサリス級に感じてしまう。

 大西順子に信念を感じる。その信念のもとに「やるべきことをメンバーに強制させる」パワーを感じる。
 『バロック』なんて聴くんじゃなかった。もはや手放しで上原ひろみ山中千尋を称賛することなどできなくなった。
 大西順子こそが,J−ジャズの女性ピアニストの頂点にいる。この事実を再認識させられてしまった気分がした。

 まぁ,単純に大西順子上原ひろみ山中千尋を比較するのは無意味であろう。
 基本,上原ひろみは作曲家だし,山中千尋は編曲家である。そして大西順子ジャズの人である。それもセロニアス・モンクチャールス・ミンガスの人である。音楽的な「生まれも育ちも」全然違っている。

 そんな大西順子のアルバム・タイトルが『バロック』と来た。
 芸術の世界では「バロック的である」という言い方は,かなりの褒め言葉として通っている。芸術に造詣の深い大西順子のこと,そう軽々しく『バロック』を名乗れないことは承知している。
 その大西順子が自ら,アルバム・タイトルとして『バロック』と名付けたのは,かなりの自信作なのであろう。

 ズバリ『バロック』の真髄とは,2010年版「フルカラーのビ・バップ」である。話題となった蜷川実花撮影によるジャケット写真通りの「多色刷りの音楽」である。大西順子が,覚悟を決めて“百花繚乱”舞い踊っている。一曲一曲が強烈な原色カラーを放っている。
 『バロック』の楽曲のモチーフ,それは2010年のセロニアス・モンクであり2010年のチャールス・ミンガスであり2010年のウイントン・マルサリスである。
 そして,その光源こそが2010年版「フルカラーのビ・バップ」であり,2010年版の大西順子の“ジャズピアノ”なのである。

 『バロック』からは,生半可な気持ちでは弾けない,高度なビ・バップ理論が聞こえてくる。ビ・バップは手強い。聴いて楽しいのはハード・バップの方である。
 『バロック』で大西順子がチャンジした音楽とは“傾聴に値する”類まれなジャズの1枚だと思う。
 ただし,凄いことは分かるが,ちょっと意味が分からず,取り残される自分もいる。置いてけぼりな管理人は,ぶったまげて,腰を抜かして,お口ポカーン。

 だから管理人。『バロック』を1枚聴き通すのに10回はチャンジした。音楽に集中しようと思っても,何だか訳の分からない外国語口座を聴いている感じ? 冗談などではなく過去9回は途中で意識が飛んでしまった。

BAROQUE-2 事実『バロック』を聴いて楽しむには,ジャズについてのそれなりの知識や経験が必要とされる。仮にジャズについての知識や経験があったとしても,相当なエネルギーを必要とする。1回完走するのが「やっと」なのでヘビロテするのは難しい。
 そう。『バロック』は“聴き手を選ぶ”名盤である。管理人は愛聴できていないから,残念ながら「選に洩れた」口である。

 ここまで“高尚な”アルバムを作った大西順子のメンタルの強さに改めて圧倒されてしまう。1つの目標?理想?に向かって驀進している。
 『バロック』は,現代社会,ジャズも含めて小手先の技術に翻弄されてる世界に対して,何か啓示を突きつけたような重さを持つアルバムである。
 大西順子の重さと強さに,原始的な太古の昔からある力,生命力のような強さを感じてしまう。

 
01. Tutti
02. The Mother's
03. The Threepenny Opera
04. Stardust
05. Meditations for a Pair of Wire Cutters
06. Flamingo
07. The Street Beat/52nd Street Theme
08. Memories of You

 
JUNKO ONISHI : Piano
NICHOLAS PAYTON : Trumpet
JAMES CARTER : Tenor Saxophone, Bass Clarinet, Alto Saxophone, Flute
WYCLIFFE GORDON : Trombone
REGINALD VEAL : Bass
RODNEY WHITAKER : Bass
HERLIN RILEY : Drums
ROLAND GUERRERO : Conga

(ヴァーヴ/VERVE 2010年発売/UCCJ-2081)

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T-SQUARE / AI FACTORY4

AI FACTORY-1 『AI FACTORY』は『REBIRTH』〜『CITY COASTER』の延長線上で評価されるべきアルバムである。

 『AI FACTORY』の中に,所謂“キラー・チューン”は入っていない。『AI FACTORY』は楽曲単位で聴くアルバムではない。アルバム1枚,全9曲を聴き通して「どうですか?」と問われている感じのアルバムである。『REBIRTH』の最大の功績はその部分にある。

 CDが発売されて曲の選択と頭出しが一発でできるようになった。そしてアイポッドが発売されてシャッフル再生ができるようになった。
 ジャズなんてLPの時代はアルバム単位で評価されるのが普通だったというのに,デジタル時代になって,特に配信とダウンロードが1曲幾らになってからは,気に入った曲しか聴かなくなった。管理人もその1人になってしまった。

 『REBIRTH』と『CITY COASTER』の収録時間も短かったが『AI FACTORY』の収録時間は44分58秒。LP時代に舞い戻ったかのような短さである。潔い。
 ファンとしては「もう1曲入れて欲しい」なのだが,スクェアとしては「楽曲単位ではなくアルバム1枚を聞かせたい」。そんな狙いがあるのかも?

 思うに,T−スクェアがアルバム単位に戻ったのは【TRUTH】頼みという“コンプレックス”を乗り越えた自信から来ていると思う。
 勿論,今でもライブのラスト・ナンバーは【TRUTH】が定番である。でもそれは「お決まり」なだけであって,仮に【TRUTH】を演奏してくれなくても,観客の誰1人として何の不満も感じないと思う。

 事実,今は【RONDO】が【TRUTH】に取って変わっている。でも【RONDO】の一択で確定しているわけではない。【THE BIRD OF WONDER】にしても【THROUGH THE THUNDERHEAD】にしてもしかり。【RONDO】に変わる曲が何曲もストックされている。

 そう。現「河野坂東」時代のT−スクェアは,バンド史上初めて“キラー・チューン”不要の時代に入っている。
 メロディ・メイカーとしての安藤正容がいる。そこに坂東慧がいる。河野啓三もいる。信頼して待っていれば,何曲もいい曲が集まっている。それも“T−スクェアらしい”新曲がゴロゴロである。そのどれもが没に出来ない“スクェア印”が押されている。

 オープナーである【AI FACTORY】は,坂東チューンらしい,メカニックな実験作。近未来な「グイッグイッ」4ビートの手強いリズムが鳴っている。これぞ正しく“FACTORY”な楽曲である。
 続く【GEISYA】は,河野啓三の得意とする「胸に迫るマイナー調の佳曲」と思わせといて,ラスト一発でメジャーへとハジケルて終わる! 「お帰りなさい,河野啓三」!
 過去の自分を捨て去った安藤正容の【DAYLIGHT】が,新境地と思わせて,聞けば聞くほど安藤メロディー。伊東たけしがよく歌っているんだよなぁ,これがっ!

 この出だしの3曲で『AI FACTORY』のヘビロテ入りが決まったわけだが(管理人は『AI FACTORY』のハイライトとして6曲目と7曲目で連続するミディアム・バラードでの盛り上がりを指名します!)聞けば聞くほど“味わい深い”全9曲。そこには2年振りのレコーディングとなる「音楽監督」河野啓三の存在がある。

AI FACTORY-2 河野啓三不在の『HORIZON』は真にスペシャルなアルバムであった。LAのフュージョン・バンドを思わせる“キラキラした爽やかさ”が大好物だった。

 でもどこかが違う。何かが違う。いつもの,例えそれが名盤だろうが駄盤だろうが,現在進行形のスクェア・サウンドの変化をキチンと受け止めるべく,一心にスクェアと向き合うのとはちょっと気分が違っていた。客観的に『HORIZON』を聴いている自分に気付くことがあった。

 『HORIZON』の主役はフィリップ・セスだった。フィリップ・セスはサポートに徹してくれていたのだが,細かな最後の“塩加減”が河野啓三のそれとは明らかに違っていた。

 『AI FACTORY』には白井アキトが全面参加。フィリップ・セスばりの大活躍である。でもでもフィリップ・セスの場合とは違う。
 そう。『AI FACTORY』のキーボードの音は白井アキトではなく河野啓三の音なのだ。T−スクェアの音が鳴っている。河野啓三の音がT−スクェアの音なのだ。そう感じられた自分自身が好きになった。

 「ポップ・インストゥルメンタル」としか表現のしようがない「オール佳曲」集の『AI FACTORY』。河野啓三白井アキトの「豪華絢爛」ツイン・キーボードがこれからも続くとうれしいなぁ。

 
DISC 1
01. AI Factory
02. Geisha
03. Daylight
04. Rising Scope
05. 88/200
06. 残照
07. Colors Of The Smile
08. Darwin
09. Over The Border

DISC 2 DVD
01. HORIZONからAI Factoryへ! 〜激動の軌跡〜
  来日したPhilippe Saisse〜河野啓三・復帰ステージ〜新作レコーディング風景まで

 
T-SQUARE
MASAHIRO ANDOH : Guitars
TAKESHI ITO : Alto Sax, EWI, Flute
KEIZO KAWANO : Keyboards
SATOSHI BANDOH : Drums

Special Support:
SHINGO TANAKA : Bass
AKITO SHIRAI : Keyboards

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2020年発売/OLCH 100017〜18)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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クラーク・テリー / ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート4

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-1 クラーク・テリーとはマイルス・デイビスオスカー・ピーターソンからベタボメされた「偉大なるトランペッター」である。
 しかし,管理人がクラーク・テリーを聴こうと思う時,それはクラーク・テリートランペットを聴きたいからではない。管理人の中でクラーク・テリーとば“トランペッター”という認識は薄い。

 そう。クラーク・テリーと来れば“音楽家”である。クラーク・テリートランペットからは,様々な優れた音楽的要素が同時に鳴り響いている。
 決して最先端の音楽ではない。しかし,クラーク・テリーから発せられた音からは,いつでも「教養の高さや深み」を感じて幸福感で満たされてしまう。マイルス・デイビスオスカー・ピーターソンが目を付けていたのはその部分なのだろう。

 同じ「教養の高さや深み」を感じるとしても,クラーク・テリーを聴いて感じるのはウイントン・マルサリスのそれとは異なる。ウイントン・マルサリスの場合は,本当の「英才教育」であり“本物”感がバリバリである。ウイントン・マルサリスジャズトランペッターに必要な全ての要素を身に着けている。完全無欠であり,史上最高のトランペッターウイントン・マルサリスのことだと信じている。

 一方のクラーク・テリーの場合,これは長年の現場を経験してきたからこそ語ることのできる「説得力」。これである。
 酸いも甘いも,成功も挫折も幾度となく経験してきたからこそ理解できる真実がある。ウイントン・マルサリスが1年で学んだことをクラーク・テリーは10年かけて学んだのかもしれない。
 ある問題点の解決策としてウイントン・マルサリスクラーク・テリーも同じ答えを提出するかもしれない。出した答えは同じであっても,真実の答えは同一ではない。やはり経験を通して学んできた者の発言は重い。
 たった一音だけなのに,その簡潔な一音に込められた意味を察することができた時,参らされることがある。経験がお金では決して買うことのできない「生涯の宝物」と呼ばれる所以である。

 『THE SECOND SET−RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE』(以下『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』)は,単純に「聴いて楽しい」演奏である。普通に聴くと“平凡な1枚”である。そして“平凡な1枚”という評価のまま終わってしまうことがある。別にそれが悪いことだとは思わない。

 だが,偶然にも『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』の「楽しさの理由」に気付いてしまうと,それから先は「耳が止まってしまう」ことだろう。
 クラーク・テリーの一音一音にKOされるようになる。ビ・バップがあるしスイングさえも混ざっている。そんなジャズトランペットの歴史を聞かせつつも,結局最後は“エンターテイメント”である。アドリブ芸術からは最も離れた場所で,紛れもないジャズを感じることができるのだ。これぞクラーク・テリーのオリジナリティであろう。

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-2 『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』はライブ盤である。会場の雰囲気が最高で演奏も大いに盛り上がっているのだが,クラーク・テリーはどんなに盛り上がろうとも勢いだけで押し切ろうとはしていない。常にクールにスイングしている。

 世間一般ではクラーク・テリートランペットの特徴について“口笛を鳴らすように”と表現されているのだが,その表現に納得の,こちらも名うてのベテラン陣,ジミー・ヒーステナーサックスドン・フリードマンピアノマーカス・マクラーレンベースケニー・ワシントンドラムに“口笛の”ニュアンス1つで全体へ指示を飛ばしている。

 バンド全体がクラーク・テリーのフレーズをなぞるかのように演奏している。これってマイルス・バンドの運営手法?
 そう。マイルス・デイビスの「憧れのトランペッター」。それがクラーク・テリーという“音楽家”なのである。

 
01. One Foot in the Gutter
02. Opus Ocean
03. Michelle
04. Serenade to a Bus Seat
05. Joonji
06. Ode to a Fuglehorn
07. Funky Mama
08. "Interview"

 
CLARK TERRY : Trumpet, Flugelhorn
JIMMY HEATH : Tenor Saxophone
DON FRIEDMAN : Piano
MARCUS McLAUREN : Bass
KENNY WASHINGTON : Drums

(チェスキー・レコーズ/CHESKY RECORDS 1995発売/SSCJ-1010)
(ライナーノーツ/三崎光人)

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DIMENSION / 314

31-1 カシオペアからの神保彰櫻井哲夫が脱退した時のような無力感に襲われた。あの時,これからどうやってカシオペアと接していけばよいかが分からなくなった。カシオペアこそが,管理人の「ヒーロー」だったのだから…。

 バンドたるもの。メンバー・チェンジがいつかは必らず訪れる。あの鉄壁の4人組=カシオペアの分裂を目の当たりにして「理想と現実」について学ばされたように思っている。
 その後もメンバー・チェンジのニュースが次々と飛び込んで来たが,大好きな本田雅人スクェア脱退のショックさえも乗り越えてきた。管理人は「雨に濡れながら大人になって」きたのだ(by 山下達郎【さよなら夏の日】)。

 しか〜し,超久々に大ショック。世間的には不謹慎極まりないのを承知で,ここは敢えて比較として書いておく。本年,実の父を亡くしたのだが(父の命はGW前までと宣告されていたため心の準備は出来ていた)それ以上の大ショックだった。
 それこそが,大好きなDIMENSIONキーボード・プレイヤー=小野塚晃の脱退であった。

 『30』から『31』のリリースまで2年半。年に1枚以上のハイペースで新作を作り続けてきたDIMENSIONとしては異例の事だった。内部で何かが起きていることは容易に想像できた。管理人はてっきりソロ活動を加速させた勝田一樹に原因があると読んでいた。それがまさかの小野塚晃…。

 カシオペアの場合はジンサクの「以前以後」で割り切った。第2期の暗黒期には見放してみた。
 本田雅人の場合は本田雅人ソロ活動を追えばいい。却って伊東たけし復帰後のスクェアのメロディーが大好きだから「一挙両得」であった。

 ただし今回はダメ。小野塚晃の脱退は絶対にダメ。DIMENSIONこそが,大人となった管理人のアイドルの一番手だった。
 浮き沈みのあるカシオペアスクェアとは異なり,DIMENSIONは20年前と10年前と2年前との変化を純粋に測ることのできる「指標」のようなフュージョン・バンドであった。
 則ち,J−フュージョンの変化を,時代の変化を,音楽の流行を,メンバー3人の心境の変化を,一番体感できたのがDIMENSIONであった。「盤石な」DIMENSION王国の崩壊により,もはや「安定」という言葉が死語になる。

 それ以上に小野塚晃の脱退が絶対にダメな理由はサウンド面。小野塚晃の別名とは「DIMENSIONの頭脳」。
 増崎孝司勝田一樹小野塚晃の「完璧なトライアングル」とは演奏面に限ってのことであって,DIMENSIONサウンドの骨格は小野塚晃抜きには成り立たない。
 恐らくは,増崎孝司勝田一樹の2人だけではDIMENSIONの活動は長くはもたない。これならいっそ解散してくれた方が…。

 実に長い,曇りの日々が続いていた。4ヶ月間かかってやっと曇りが晴れた。無論,快晴ではない。でもとにかくホッとしたのだ。最悪の内容も覚悟していた。予想以上にまとまっている。新生DIMENSIONの“上々の船出”に拍手喝采である。

 DIMENSIONが完全に若返っている。DIMENSIONは“超絶技巧”で名を馳せてきたバンドであるが,特に『26』以降は壮大系で難解系なアーティスト・グループの色が濃くなっていた。きっと小野塚さんの好みだったのだろう。
 そんな小野塚さんがいなくなって,直感のイメージとしては『21』とか『23』の頃のサウンドを彷彿とさせてくれた。あの直線的でパワー系でメロディアスなDIMENSION! 『31』はいい曲ばかり!

 以前から情報がダダ洩れで,誰の曲かは大体察しがついていたのだが,二人体制のDIMENSIONになって,再び作曲者名がクレジットされるようになった。
 どうやら管理人。自分では気付いていなかっただけで増崎孝司小野塚晃以上に勝田一樹のメロディー・ラインが好きだったことが判明。勝田一樹は「とっておきのいい曲」を自分のソロのためではなくDIMENSIONのために提供し続けてきたことが判明。勝田一樹は“男”であります。

31-2 そういうことで小野塚さん,本当にお疲れ様でした。ラストの2年間,苦しみを抱えながらも,それをおくびにも出さず,全部のツアーを全力で盛り上げてくださったことに心から感謝いたします。

 そしてマスヤンカツオにも心から感謝いたします。大きくなりすぎたDIMENSIONの看板を2人で背負い続けることをよくぞ決断してくれました。
 それから安部潤さん。小野塚さんの後釜はあなたにしか務まりません。これからは則竹さんばりに末永いサポートをお願いできれば幸いです。

 『31』を聴いて管理人が思うこと。DIMENSIONって,増崎孝司勝田一樹小野塚晃が前面に出たバンドだとばかり思っていたが,実はそうではなかった。
 そう。DIMENSIONって,ギターサックスキーボードが前面に出たバンドであった。

 『31』の新生DIMENSIONがいいですねっ。小野塚晃の脱退を感じさせないくらいに,安部潤キーボードをフィーチャリングしているところが最高に好きッス!

 
01. Soul Jam
02. Loop
03. Change The Game
04. ZEBRA
05. Up From The Skies
06. Just For Now
07. Destination
08. Brand New Emotion
09. Silver Shell
10. Are You Ready?

 
DIMENSION
TAKASHI MASUZAKI : Guitar
KAZUKI KATSUTA : Saxophone

GUEST MUSICIANS
JUN ABE : Keyboard, Synthesizer, Programming
KOHSUKE OSHIMA : Keyboard, Synthesizer, Programming
HIROYUKI NORITAKE : Drums
TEPPEI KAWASAKI : Bass
RYOSUKE NIKAMOTO : Bass

(ザイン/ZAIN RECORDS 2020年発売/ZACL-9117)
(☆BLU−SPEC CD2仕様)
(☆スリップ・ケース仕様)

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ゲイリー・トーマス / ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ4

FOUND ON SORDID STREETS-1 『エグザイルズ・ゲイト』からここまで変わって来るか!? これがゲイリー・トーマスの「M−BASE」オルガンジャズの2枚目『FOUND ON SORDID STREETS』(以下『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』)を初めて聴いた時の感想である。

 悪い意味ではない。とにかく「黒い」のだ。所謂,黒人のファンキーオルガンジャズではない。今回のオルガニストジョージ・コリガン。白人である。
 にも関わらずジョージ・コリガンオルガンが,とことん「黒い」。ラップにも負けない,気合いとパッション漲るストレートアヘッドなオルガンが『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』の音場を支配している。
 ゲイリー・トーマスの目指す,最高のオルガンジャズジョージ・コリガンの手によって完成したように思う。

 ベース入りとベースレスの2つのセットが互いの魅力を引き立てていたのが『エグザイルズ・ゲイト』の魅力であったが『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』はベースレス編成のみ。
 つまりはギタリスト! つまりはポール・ボーレンバックである。ちなみにポール・ボーレンバックも白人にして,黒いツボを押してくる。1990時代のオルガンジャズギタリストって,ジョン・スコフィールドにしてもジョン・マクラフリンにしても,オルガンに合わせるのが「黒人以上に」実に上手い!

 そういう訳で?『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』の主役は,ジョージ・コリガンオルガンポール・ボーレンバックギターである。

 ゲイリー・トーマスの魅力とは,激しくもメカニックなフレージングだと思っている。「黒い」テナーサックスゲイリー・トーマスにとっては分が悪いのか?不器用でフリー・フォームしていないゲイリー・トーマスの演奏に何を思い浮かべるかと問われれば,答えは「特に印象に残っていない」となる。

 ズバリ『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』の聴き所は,ロング・ソロではない。ゲイリー・トーマスジョージ・コリガンポール・ボーレンバックの短いながらも何度も繰り返されるユニゾンにある。
 3人でテーマを重ね合わせた時の“快感”の余韻に浸りながら,やがて1人2人と朽ち果てていく男たち…。

FOUND ON SORDID STREETS-2 管理人の結論。『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ批評

 『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』とは「落ち目となった」ゲイリー・トーマス自身にとっての“癒しのアルバム”である。
 前へ前への革新作業に疲れを覚えていたのだろう。一旦立ち止まり,一歩退いたからこそ見せることのできたゲイリー・トーマスのバックボーン。

 そう。『ファウンド・オン・ソーディッド・ストリーツ』とは,ゲイリー・トーマスが思い描く「故郷ボルティモアの音楽伝記」のコンセプト・アルバムである。
 『エグザイルズ・ゲイト』から“バック・トゥ・ザ・フューチャー”してきた,ゲイリー・トーマス初めてとなる,非「M−BASE」で脱「M−BASE」なジャズ・アルバムなのである。

  01. Spellbound
  02. Treason
  03. The Eternal Present
  04. Exile's Gate
  05. Hyper Space
  06. Found On Sordid Streets
  07. Peace Of The Korridor

(ウィンター&ウィンター/WINTER & WINTER 1997年発売/BOM-22005)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/松永紀代美)

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ゲイリー・トーマス / エグザイルズ・ゲイト5

EXILE'S GATE-1 ゲイリー・トーマスがリードする「M−BASE」のオルガンジャズが超カッコイイ。これぞ「新しいオルガンジャズ」の誕生である。

 『EXILE’S GATE』(以下『エグザイルズ・ゲイト』)には,タイプの異なる2つのオルガン・コンボが収められている。
 オルガニストで語ればティム・マーフィーチャールス・コヴィントンの違いであるし,ギタリストで語ればマーヴィン・スウェルエド・ハワードの違いであろうが,それ以上にベース入りか?ベースレスか?の違いの方が大きい。

 すなわち,ベース入りのオルガンを「M−BASE」の文脈で鳴らすトラックと,新しいジャズサウンドの1つの核としてベースオルガンで色付したトラックの違いである。

 その点でゲイリー・トーマスの“盟友”であるティム・マーフィーが本職であるオルガニストとして参加した意義は大きい。ティム・マーフィーのイマジネーションが,そのまんま「M−BASE」の文脈で鳴り響くオルガンジャズ
 ベースラインは,これまたエド・ハワードが最高のベースラインを弾いている。「M−BASE」のティム・マーフィーだからできた“ベースが主役を張れる”オルガンジャズが超カッコイイ。

 一方のチャールス・コヴィントンオルガンは「王道」である。こちらにはゲイリー・トーマスが加入している「スペシャル・エディション」のジャック・デジョネットとの共演である。
 ジャック・デジョネットゲイリー・トーマスが組めば,それだけで「スペシャル・エディション」の音が鳴るのだが,チャールス・コヴィントンオルガンが「スペシャル・エディション」を“オルガンジャズの深み”へと誘っていく。

EXILE'S GATE-2 ゲイリー・トーマスの狙いこそが,チャールス・コヴィントンの「舵取り」を期待してのことだったと思うが,大ベテランのチャールス・コヴィントンが「M−BASE」の音選びに興味津々であって,従来のオルガンジャズの壁を「スペシャル・エディション」のパワーによってブレイクスルーできたと思う。

 ちょうど『エグザイルズ・ゲイト』の発売と同じ時期,管理人は「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」にハマッテいた。「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」の,どこからともなく“降ってきた”ジャムに相当衝撃を受けていた。
 きっとゲイリー・トーマスもその1人だったのだろう。そして「M−BASE」のオルガンジャズに可能性を感じたことだろう。

 管理人は思う。「M−BASE」の雄であるゲイリー・トーマスが,当時のオルガン・リイバイバル・ブームから外れた「新しいオルガンジャズ」を演ったからこそ,後の「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」「ソウライヴ」がブレイクする道筋が開けたのだと…。

  01. Exile's Gate
  02. Like Someone In Love
  03. Kulture Bandits
  04. Blues On The Corner
  05. Night And Day
  06. No Mercy Rule
  07. A Brilliant Madness

(バンブー/BAMBOO 1993年発売/POCJ-1191)
(ライナーノーツ/成田正)

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OTOMO YOSHIHIDE'S NEW JAZZ ORCHESTRA / ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ4

ONJO PLAYS ERIC DOLPHY'S“OUT TO LUNCH”-1 エリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』の“痛快”全曲カヴァー集。それが大友良英ONJO」拡大路線の集大成となる『ONJO PLAYS ERIC DOLPHY’S “OUT TO LUNCH”』(以下『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』である。

 個人的にエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』はイマイチだと思っているからなのか,痛快パロディー盤とは認めつつも『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』も聴いていて楽しい演奏ではない。

 そもそも大友良英の側に『OUT TO LUNCH』完コピする気など更々なかったように思う。大友良英にとって『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』とは,大友良英流・エリック・ドルフィーへのリスペクトではなくネタの1つにしかすぎない。

 「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」脱退後,活動の中心となった「ONJO」の自慢の音。この音で菊地成孔と勝負してみたい。そして「DCPRG」を見返してみたい。
 菊地成孔が電化マイルスでいくのなら,大友良英エリック・ドルフィーでいく。エリック・ドルフィーの奇抜な音なら,電化マイルスとも十二分に戦える。あくまでもノリでありネタなのである。

 エリック・ドルフィー大友良英の『OUT TO LUNCH』の違いは,ボビー・ハッチャーソンが,いるかいないか,の違いである。
 それくらいに本家『OUT TO LUNCH』の個性の半分はボビー・ハッチャーソンの硬質で幾何学的なヴァイブが担当していた。

 大友良英が指名した『OUT TO LUNCH』のキーマンとは,SACHIKO Mの「サイン波」であろう。
 エリック・ドルフィーよりも大袈裟にアウトしてく「ONJO」の中にあって,SACHIKO Mの「サイン波」と大友良英の「ノイズ」がサウンドの核を担っている。

ONJO PLAYS ERIC DOLPHY'S“OUT TO LUNCH”-2 そう。大友良英ONJO」の個性とは「毒を以て毒を制す」音楽である。
 大友良英が意図的にチューニングを狂わせれば,バンドが一斉に補正をかけてくる。そこに複雑なアンサンブルが完成する。緊張感のあるインプロが続くが,そこにはいつでも知性を感じる。
 結果,本家『OUT TO LUNCH』で描かれていた音世界のスケール感が増している。なるほどね〜。

 菊地成孔にしても大友良英にしても,マイルス・デイビスにしてもエリック・ドルフィーにしても,適当に即興演奏しているわけではない。言わば「計算ずくめの即興演奏」なのである。

  01. Hat And Beard
  02. Something Sweet, Something Tender
  03. Gazzelloni
  04. Out To Lunch
  05. Straight Up And Down 〜 Will Be Back

(ダウトミュージック/DOUBTMUSIC 2005年発売/DMF-108)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/大友良英,殿山康司,カヒミ・カリィ)

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ゲイリー・トーマス / ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ4

TILL WE HAVE FACES-1 『TILL WE HAVE FACES』(以下『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』)の真実とは『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』ではない。『ゲイリー・トーマス&テリ・リン・キャリントン・プレイ・“過激”スタンダーズ』である。

 そう。ハッキリ言って「目玉」であろうパット・メセニーは存在感なし。個人的にはあのゲイリー・トーマスとあのパット・メセニーの共演とあって超楽しみにしていたが『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズパット・メセニーに“たまにある”ハズレ盤となった。

 古くはオーネット・コールマンジョン・スコフィールド,最近でもブラッド・メルドーとの共演がそうであったように,当代随一の名前が並ぶ時に限ってパット・メセニーがコケル。これって共演者に惑わされているとしか思えない。

 パット・メセニーにとって,敵はゲイリー・トーマスだけでなかった。テリ・リン・キャリントンである。彼女のドラミングがエゲツナイ。テリ・リン・キャリントンパット・メセニーギターを切り刻んでいる。みじん切りである。

 冒頭の【ANGEL EYES】で今回の企画が終わりを迎えている。超美メロが崩壊している。これは【ANGEL EYES】ではない。【ANGEL EYES】とは認められない。
 このトラックはゲイリー・トーマステリ・リン・キャリントンの肉体派の大バトル。管理人には“拳銃の打ち合い”にしか聞こえない。

 前々作の『WHILE THE GATE IS OPEN』は素晴らしいスタンダード集であったが,その続編にあたる『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』は,非スタンダード集であり“過激”スタンダード集である。

TILL WE HAVE FACES-2 本当はそこまで悪い演奏ではないのだろう。ゲイリー・トーマステナーサックスはテクニカルでバッキバキ。いい音で鳴っている事実は認める。

 しかし「目玉」であるパット・メセニーの良さが死んでいる。「目玉」であるスタンダードの美メロが死んでいる。これではゲイリー・トーマス1人が元気であっても何ら意味がない。

 期待値が異常に高かった分,この企画はマイナスでしかない。やらない方が良かった。大物2人のキャリアに傷が付いてしまった。『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』の収穫はテリ・リン・キャリントンの大爆発だけである。

 大好きなゲイリー・トーマスと大好きなパット・メセニーの音が耳まで届いてはいるのだが,心は「上の空」状態。
 マイルス・デイビスの所のマリリン・マズールといい,女性ドラマー解放の時代到来,を感じたというのが『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』を聴いた一番の感想である。

  01. Angel Eyes
  02. The Best Thing For You
  03. Lush Life
  04. Bye Bye Baby
  05. Lament
  06. Peace
  07. It's You Or No One
  08. You Don't Know What Love Is

(バンブー/BAMBOO 1992年発売/POCJ-1130)
(ライナーノーツ/成田正)

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峰 厚介−菊地 雅章 / DUO4

DUO-1 峰厚介菊地雅章によるデュエット・アルバムが『DUO』(以下『デュオ』)である。

 このデュエットは,峰厚介主導で聴くか? 菊地雅章主導で聴くか? によって印象が随分変わるように思っている。
 管理人は『MAJOR TO MINOR』が気に入ったので,その流れで『デュオ』を聴いた口。なので,何とも口寂しい印象を受けた。

 『デュオ』の基本はメイン・テーマを拠り所として,互いに互いの胸の内を探り合いながらアドリブに興じていくアルバムである。
 ズバリ『デュオ』の聴き所とは,アドリブに到達するまでの“過程を聴く”ことにある。

 全5曲が5曲とも未完成のままで終わっている。どの曲を聴いても今一歩である。盛り上がれそうで盛り上がれていない。正直『MAJOR TO MINOR』でジャズ・サックスの王道を披露した峰厚介の「中途半端」な演奏にガッカリしたことを覚えている。

 峰厚介の不調の原因は「スロー・テンポしごき」にある。静かに始まりそのまま大して盛り上がらずに終了していく。どうにも間延びした時間帯が長すぎる。
 おいおい,こんな約束じゃなかっただろう。峰厚介ジャズ・サックスってこの程度のものだったのか? そう感じてしまったが最後。峰厚介菊地雅章というビッグネーム2人の『デュオ』が「タンスの肥やし」の1枚となった。

 しかし,これがある日突然,ヘビロテとなるのだから人生分からない。その理由は菊地雅章名演にある。
 菊地雅章は管理人のフェイバリットの1人であるが,ある時期,猛烈に菊地雅章に狂っていた時期があって,菊地雅章を追いかけていたら『デュオ』の存在を思い出し,久しぶりに手に取ったらというパターン。
 あら不思議,全然いけるじゃん。…っていうか『デュオ』でのプーさん凄くねぇ?

 ノープランで“盟友”とのデュオに臨んだプーさんピアノが実に興味深い動きを聴かせている。「自然発生的なインプロヴィゼーション」への対応力が最高に素晴らしい。

 管理人は『デュオ』を当初,峰厚介がメインで菊地雅章がサブとして聴いていた。菊地雅章ピアノは終始寡黙であって,ブツブツ言いながらもメロディアスに攻めてくるテナーサックスの受け皿として,常に着地点を探っているように感じていた。

 …がっ,しかし,そうではなかったのだ。菊地雅章ピアノ峰厚介テナーサックスを音楽の中に浮かせているし,書き譜のテーマの中に飛ばしている。
 テナーサックスの落下点に先回りしていたのではなく,テナーサックスの起点をピアノが先回りして準備している。

DUO-2 菊地雅章アドリブを受けて峰厚介がジャンプしている。ただし,どこにどのように飛ぶかは峰厚介に任されている。
 菊地雅章からのお題が絶妙すぎて,峰厚介に頭の中には選択肢が何通りも浮かぶのだろう。どう飛び上がるかに迷っている節がある。だから反応が遅れて口寂しくなる。『デュオ』の構図は,この繰り返しの図式で間違いない。

 ジャズとは本来,頭とか知識とかではなく,感性とか経験とかで反応する音楽である。しかし,共演者にここまで胸の内を読まれてしまってはどうしようもない。菊地雅章の「スロー・テンポ」なライン取りに,たじたじの峰厚介は「一介のテナーマン」。前に押し出されているだけで,頭の中は終始混乱しっぱなしのようでして…。

 峰厚介さん,10年後にまた“恩師”プーさんの胸を借りましょう。今回の『デュオ』では,相手が一枚上手でした。

  01. MR.MONSTER
  02. DJANGO
  03. LITTLE ABI
  04. I REMEMBER GOKO
  05. REMEMBER

(ヴァーヴ/VERVE 1994年発売/POCJ-1240)
(ライナーノーツ/清水俊彦)

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ゲイリー・トーマス / コールド・ケージ4

THE KOLD KAGE-1 1980〜90年代にムーブメントを巻き起こした「M−BASE」が,現時点ではジャズ史に登場した最後の「新しいジャズ」である。
 あれから随分と時間が経つというのに「M−BASE」の代表作を聴き直すと,未だに軽い衝撃を受けたりする。そんなぶっ飛んだ「M−BASE」の中でも,とりわけぶっ飛んでいたのがゲイリー・トーマスである。

 「スイングジャーナル」誌「ジャズ・ディスク大賞」。90年度は『バイ・エニー・ミーンズ・ネセサリー』で【銅賞】受賞。91年度は『ザ・ゲイト・イズ・オープン』で【金賞】受賞。92年度は「ジャック・デジョネット・スペシャル・エディション」の『アース・ウォーク』で【金賞】受賞。
 時代は確実に「M−BASE」であった。そしてゲイリー・トーマスの時代であった。

 そんなゲイリー・トーマスが新作では何と!ラップを取り入れていると聞くではないか! これは凄いことになっていると思い“身構えて聴いた”のが『THE KOLD KAGE』(以下『コールド・ケージ』)である。
 意外にも『コールド・ケージ』の第一印象は「落ち着いている」であった。何だか分からないがゲイリー・トーマスが一気に大人になっていた。ラップが全然邪魔していないし気にならない。

 「M−BASE」の場合,主役は大抵,高度で斬新なポリリズム。流れるようなリズムにぶつかり合う小難しいメロディーのハイセンスが聴き所!
 『コールド・ケージ』の主役は「M−BASE」の王道であって,デニス・チェンバースの正確無比な野獣のドラミングアンソニー・コックスの重厚織り交ぜたベースであろう。
 そこにピアノギターが出たり入ったりして,アクセントたっぷりのリズム隊が主張している。乗れそうなのに乗り切れない,バッキバキの変拍子が超COOL!

THE KOLD KAGE-2 しか〜し『コールド・ケージ』の主役は紛れもなくゲイリー・トーマス! リズム隊の裏を支えるサックスが,フルートが,そしてラップさえも『コールド・ケージ』の重厚で精悍で冷徹な音楽性を彩っている!
 ビートの捕まえ方,クロマティック・ラインの活用の新しいアイディアは,ここまでぶっ飛び続けてきたゲイリー・トーマスの「M−BASE」そのまんま!

 ゲイリー・トーマスがフロントから一歩引いて,アルバム全体の音楽監督を務めているのが『ザ・ゲイト・イズ・オープン』。
 管理人の嫌いなラップも入っているし,あんなにも好きだったゲイリー・トーマスから一歩引くきっかけとなったアルバムであるが,実はゲイリー・トーマスの全アルバムの中で「一番かっこええ」アルバムが『コールド・ケージ』なのである。かっちょええ。

  01. Threshold
  02. Gate of Faces
  03. Intellect
  04. Infernal Machine
  05. The Divide
  06. Peace of the Korridor
  07. First Strike
  08. Beyond the Fall of Night
  09. The Kold Kage
  10. Kulture Bandits (to be continued)

(バンブー/BAMBOO 1991年発売/POCJ-1070)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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デ・ガ・ショー / 続5

ZOKU-1 男の子が自分の父を指差して「ねぇ,見て。あの人が僕のお父さんなんだよ」と,誇らし気に紹介している場面を想像することができるか?
 その男の子にとって父親とは世界一のスーパースター。世界一強い,世界一カッコイイと心の底から思っている。自慢の父親なのだ。

 『ZOKU』(以下『』)を聴いていると,何とも誇らしい気分になる。何とも自慢したい気分になる。
 「聞け,全世界のジャズ・ファンたちよ! 日本にはこんなにもカッコイイ音楽を演奏するジャズメンたちが揃っている。何がアメリカだ,何がヨーロッパだ,ブラジルだ。日本のジャズこそが世界一で何が悪い!」と叫びたくなる。

 そう。管理人にとっては「デ・ガ・ショー」こそが冒頭に登場してきた父親のような存在である。
 「デ・ガ・ショー」こそが,ジャズの中のジャズであり,世界標準となるべきジャズだと心の底から信じている。
 ジャズは随分と芸術音楽の側に寄ってしまった。それはそれで楽しいのだが,本来のあるべきジャズとは,聴いていて笑顔になる音楽。聴いていてバカ騒ぎできる音楽。ジャズが流れている時間は,苦しみも悲しみも忘れて「凄いぞ! もっとイケー!」になる時間だと思っている。

 そんな,真剣なのに馬鹿馬鹿しさがつきまとっているのがジャズの素晴らしさだと思う。本気で命がけで行なう音遊びがジャズの素晴らしさだと思う。だからジャズとは即興のことなのだ。
 最初から最後までクタクタになるくらい襲いかかってくる音楽こそがジャズの本質だと断言する。

 林栄一片山広明にとって「デ・ガ・ショー」の2枚目は,正直,きつい録音だったことだろう。全部出し切った大傑作の後に再び大傑作を録音できるとはただ事ではない。

ZOKU-2 そう。『』は紛れもないフリージャズである。しかしフリージャズという言葉を発した瞬間に,何か違う,と感じてしまうのも事実。

 フリージャズと語るよりも,忌野清志郎ライナーノーツで記したように,ジャズではなく「デ・ガ・ショー」であり,フリージャズではなく,ビートであり,グルーヴであり,ブルースであり,ユーモアである。うん。この方がしっくりくる。

 『』には『DE−GA−SHOW!』の“出涸らし”のような部分も正直ある。でもそれがまたよかったりもする。イケイケの『DE−GA−SHOW!』には微塵もない,祭りの後の余韻,無となり灰となった充実感が『』にはある。

  01. De-ga-show, de-night
  02. Botto-suru
  03. OM
  04. Chinese surfer
  05. Suna-Kaze
  06. Blues de Show
  07. Reflecting Lane−Good-bye, Uzattai Yatsu
  08. Tsuru

(オーマガトキ/OMAGATOKI 1996年発売/SC-7111)
(ライナーノーツ/忌野清志郎,村上寛)

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ゲイリー・トーマス / ザ・ゲイト・イズ・オープン5

WHILE THE GATE IS OPEN-1 「M−BASE」の一派のくせして音楽理論などは全く考えていない。無の状態から過激なサウンドをぶつけてくる強心臓男。そのくせジャズの歴史を教養として身に着け,テナーサックスの扱いに関しても無敵の超絶テクニックを身に着けた男。
 「その男,凶暴につき」とはビートたけしのためではなくゲイリー・トーマスのためにある言葉である。そう。『BY ANY MEANS NECESSARY』までは…。

 何と優しいスタンダードなのだろう。何とも愛らしいスタンダード集なのだろう。『WHILE THE GATE IS OPEN』(以下『ザ・ゲイト・イズ・オープン』)からゲイリー・トーマスの“美意識”が伝わってくる。
 個人的にゲイリー・トーマスの本質は『BY ANY MEANS NECESSARY』の方にあるとは思うが,ゲイリー・トーマスと来れば『ザ・ゲイト・イズ・オープン』で見せた「優しい演奏家」のイメージが強い。

 それ位に『ザ・ゲイト・イズ・オープン』におけるスタンダードを紡ぐ演奏手法が秀逸である。
 スタンダードのお花畑から,草をむしり取るように荒々しい演奏もあれば,貴重なバラを一本一本丁寧に取り分けていくような演奏もある。全体としてパワフルな四気筒の農耕車がゆっくりと坂道を上っていくような演奏である。「M−BASE」らしからぬ,手作業で制作したスタンダード集。

 ただし『ザ・ゲイト・イズ・オープン』は落ち着いたバラード集ではない。基本はアップテンポなメインストリーム・ジャズ
 ゲイリー・トーマスの過去音源を知らない方や『BY ANY MEANS NECESSARY』を聴いたことがない人にとっては,ちょっと変わったメインストリーム・ジャズとして違和感なく受け入れることができるだろう。

 要は『ザ・ゲイト・イズ・オープン』が“あの”ゲイリー・トーマスのアルバムだから,である。この前置きが物議をかもす!
 まず「M−BASE」の派のジャズメンがスタンダードを取り上げる行為自体が初耳である。過去の演奏形式を取り入れることを否定した上でスタンダードの演奏などできるのだろうか?

WHILE THE GATE IS OPEN-2 ゲイリー・トーマスジャズスタンダード集のために用意した答えは,やはりリズムである。
 現代的でスマートな変拍子を繰り出すリズム隊の誘導により,全体的につんのめるようなスピード感に支配されたゲイリー・トーマス随一の名演集である。

 伝統に束縛されない自由な演奏が展開されている。ゲイリー・トーマスの音使いやリズム感は常識的なものから少しづつずれている。メインテーマで美メロを力業で吹き上げるゲイリー・トーマス特有のヒリヒリする緊張感にやられてしまう。
 ゲイリー・トーマスの底の知れないポテンシャルの高さとテーマを発展させるスケールの大きな歌心が実に素晴らしい。

 スイングに欠けるとされる「M−BASE」であるが,ジャズスタンダードを題材とした『ザ・ゲイト・イズ・オープン』ゆえに,ほんのりとしたスイング感が見え隠れしている。そんな「優等生のチラミセ」に毎回もんどり打って悶絶してしまう。

  01. STRODE RODE
  02. STAR EYES
  03. YOU STEPPED OUT OF A DREAM
  04. THE SONG IS YOU
  05. INVITATION
  06. CHELSEA BRIDGE
  07. ON THE TRAIL
  08. EPISTROPHY

(バンブー/BAMBOO 1990年発売/POCJ-1027)
(ライナーノーツ/成田正)

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デ・ガ・ショー / DE-GA-SHOW!5

DE-GA-SHOW!-1 近年の村上寛の大ヒットはドラムではなくペンである。特に村上寛自身が大ファンであろう,林栄一片山広明による“国宝級”双頭バンド=「デ・ガ・ショー」へ寄稿したライナーノーツである。

 「デ・ガ・ショー」の1st『DE−GA−SHOW!』(以下『デ・ガ・ショー』)へ寄稿したコピーが超名文。もはやドラマーではなくコピーライターとして生きていける。その名文がこれである。

 「さん&片山さん,おめでとう。ありがとう」。

 どうですかっ? この文章の凄さが分かりますかっ? 『デ・ガ・ショー』を聴けば聴くほど,この文章がどうにもこうにも好きになる。
 もはや「デ・ガ・ショー」と聞けば『デ・ガ・ショー』や『』の音が流れ出す前に,村上寛の「さん&片山さん,おめでとう。ありがとう」の文字の方が先に脳内に流れ出す。

 特に「おめでとう。ありがとう」の2つの言葉が『デ・ガ・ショー』の全体を言い当てている。管理人は村上寛のこのコピーに勝る文章など書けません。最初から無理です。あきらめています。お手上げ状態です。

 「おめでとう」。まずはこんな大名盤を作ることができて「おめでとう」である。林栄一片山広明をしても“人生に1枚作れるかどうかの超名盤”を作ることができて,その制作のチャンスも含めて「おめでとう」である。

 そして「ありがとう」。本当にこんなにも最高の音楽を聴かせてくれて「ありがとう」である。聴くだけで心が震える。感動する。多幸感に包まれる。「デ・ガ・ショー」の8人には感謝の言葉しかない。いいもんを聴かせてもらっております。お世話になっております。

 「デ・ガ・ショー」の『デ・ガ・ショー』と『』は,管理人の「一生の宝物」「生涯の愛聴盤」間違いなし!

DE-GA-SHOW!-2 …ということで,肝心の音楽内容『デ・ガ・ショー批評については一文字も書きませんが,この機会に“陽の当たる”渡辺貞夫のラインではない,アングラ系というか,要するに「フリージャズ界の至宝」→「日本の至宝」である林栄一片山広明が,同時進行で結成した2つのユニット「デ・ガ・ショー」と「CO2」での活動の違いについて記しておく。

 「デ・ガ・ショー」はAKBグループであり「CO2」は坂道グループである。
 「デ・ガ・ショー」の魅力は野性味ある爆発であり「CO2」は加藤崇之の爆発である。

  01. North East
  02. Aitai
  03. Go-Cart Twist
  04. Asamesimae
  05. Yoruno Hatoba
  06. Chili
  07. Funk
  08. Hana〜Frowers For Your Heart

(オーマガトキ/OMAGATOKI 1994年発売/SC-7108)
(ライナーノーツ/友部正人,村上寛)

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e.s.t. (エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン5

WHEN EVERYONE HAS GONE-1 2004年に国内盤としてリマスタリングされて再発された「e.s.t.」の公式デビュー盤『WHEN EVERYONE HAS GONE』(以下『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』)。

 『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の国内盤のリリース1つ前のアルバムは『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』。順番からいけば“あの”『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』の後なのだから『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』は落ちるはずだ。

 それがどうだろう。『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』がこれまた最高だ。デビュー当時の「純ジャズピアノ・トリオ」である。原点回帰盤として受け入れることができる。
 つまり「e.s.t.」とは『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の時点で,すでに完成されたピアノ・トリオであったということ。
 「e.s.t.」は初めから完成している状態でスタートし,完成体を中核に置きながら,全く異なる新しい音楽へと,全方向へと拡散し,変貌していったピアノ・トリオだったということ。

 ピアノエスビョルン・スヴェンソンがすでにキース・ジャレットしているし,ベースダン・ベルグルンドがすでにゲイリー・ピーコックしているし,ドラムマグヌス・オストラムがすでにジャック・デジョネット改めポール・モチアンしている。
 デビュー当時の「e.s.t.」の音楽性は,キース・ジャレットトリオのそれであった。内省的で実にいい音楽を鳴らしている。

 『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の最高を聴き終えて,ふと考えたのはエスビョルン・スヴェンソンの「迷い」である。
 まだエスビョルン・スヴェンソンも若者だったのだから,自分の将来について,あれやこれやと迷って当然。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』以降の「モデル・チェンジ」があったからこそ『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』まで辿り着くことができた。

 管理人が“引っ掛かった”のは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在である。
 『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】ってどこかで聞いたか?と考えた時【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在に気付いた。
 そう。【VIATICUM】とは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の焼き直しだったのだ。

WHEN EVERYONE HAS GONE-2 どうですか!? これに気付いた時の衝撃! 伝わりますか!? 「e.s.t.」が改名せずに「エスビョルン・スヴェンソントリオ」を名乗り続け,エスビョルン・スヴェンソンが「電化」せずにアコースティックピアノにこだわり続けていたらどうだろう?
 その「別の道」を歩み続けていたと仮定した結果が“最高傑作”『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】で提示されていたことに気付いた。

 【WHEN EVERYONE HAS GONE】を元ネタとして【VIATICUM】を再び演奏することに決めたエスビョルン・スヴェンソンの心の内とは如何ばかりだろう…。

 管理人は「e.s.t.」であろうと「エスビョルン・スヴェンソントリオ」であろうと,ジャズであろうとポップスであろうと,アコースティックであろうとエレクトリックであろうと,または他のどんな一面を見せるとしても,エスビョルン・スヴェンソンの創造する音楽に付いて行きます。もはや叶わぬ夢だけど…。

 とにかくデビュー当時の「純ジャズピアノ・トリオ」=「エスビョルン・スヴェンソントリオ」も素晴らしい。

  01. WHEN EVERYONE HAS GONE
  02. FINGERTRIP
  03. FREE FOUR
  04. STELLA BY STARLIGHT
  05. 4 am
  06. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 1
  07. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 2
  08. WALTZ FOR THE LONELY ONES
  09. SILLY WALK
  10. TOUGH TOUGH
  11. HANDS OFF

(ドラゴン/DRAGON 1993年発売/DIW-480)
(ライナーノーツ/瀧口譲司)

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加藤 崇之 / 七つの扉5

SEVEN DOORS-1 『SEVEN DOORS』(以下『七つの扉』)は“ジャズ・ギタリスト加藤崇之からの「第二の衝撃波」だった。

 「第一波」は加藤崇之を初めて聴いた「CO2」の『TOKAI』だった。「リアル・フリージャズ・オールスターズ」の「CO2」にあって,あの片山広明が,あの林栄一が,あの早川岳晴が,あの芳垣安洋が,加藤崇之1人に“喰われている”。

 あの“百戦錬磨”な名手たちを向こうに回して,あそこまで自分なりのジャズ道を貫き通せるとは…。「CO2」にパット・メセニーが入っても,ジョン・スコフィールドが入ってもあそこまで上手くはいかない…。
 そう。加藤崇之からの「第一波」を例えるならグラント・グリーン級の衝撃だった。

 そうして「第二波」となった『七つの扉』は,加藤崇之エレクトリックギターソロ・アルバム。しかも「完全即興」の触れ込み付き。
 凄い演奏が記録されている,ということはクレジットの情報から予想がつく。しかしここまで凄いとは…。

 加藤崇之エレクトリックギターが洪水のように一気に押し寄せてくる。しかし,それで終わるのではなく引き波がこれまた凄いのだ。ここまでスムーズに音を調和よく引かせるテクニシャンはそうはいない。
 当然,ギターから放たれる音は,その場その場のインプロヴィゼーション。セオリーもあれば経験もある。順当な音選びもあればリスナーを驚かせる音選びもある。

 加藤崇之クラスにもなると,きっとアウトプットは簡単な作業なのだと思う。“七色レインボー”な超絶ギター&エフェクター・ワークも寝起き直後でも完璧に出来る人なのだと思う。
 自分の中の引き出しからフィーリングで気に入った音をコーディネイトするのは割と楽。でもここまで風呂敷を広げた直後に,きれいに包みをたたむのはそう簡単なことではない。

 なぜならば『七つの扉』とは【第一の扉】が【第二の扉】へとつながり,その流れを受けて続く【第三の扉】が演奏されるという「組曲」風。スタートの一音だけは決まっているが,最終的に【第七の扉】でどこに連れられていくかは誰も知らない。当然,加藤崇之本人も知らない。
 これって,短編小説作家になった近年のキース・ジャレットと同じじゃねぇ?

SEVEN DOORS-2 そう。『七つの扉』と真実とは,1つ1つの音のがパーツとなり,音のパーツの連鎖がやがてはセクションを成し,7つのセクションが完成するとその日のテーマが浮き彫りとなるスタジオ・セッション「組曲」なのである。

 一瞬一瞬の音選びのセンスとそのわずかコンマ数秒先を読む構成力。全体の主題は最後の最後まで分からない探求の旅。頭を真っ白にして音を出し,出した音をどう懐に収めていくか,を繰り返しながら全体のモチーフを形成していく。「完全即興」の成功の秘訣は“考えないこと”ではなかろうか?

 キース・ジャレットの手法を身に着けた加藤崇之恐るべし! 管理人は加藤崇之を「アングラ界の王様」に指名する!

  01. 第一の扉
  02. 第二の扉
  03. 第三の扉
  04. 第四の扉
  05. 第五の扉
  06. 第六の扉
  07. 第七の扉

(フルデザインレコード/FULLDESIGN RECORDS 2013年発売/FDR-2016)
(スリムケース仕様)

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ゲイリー・ピーコック&ビル・フリゼール / 峠の我が家4

JUST SO HAPPENS-1 ゲイリー・ピーコックビル・フリゼールによる『JUST SO HAPPENS』(以下『峠の我が家』)を購入したのは2000年のことである。
 1994年リリースの本盤。購入が遅れたつもりはない。何度も書いているのだが管理人は(今のところは)パッケージングされた国内盤のCDしか買わない。理由は輸入盤を買い出したら最後,途方もない大海原の底なし沼の世界に身を置くことになる。国内盤だけに購入候補を絞っても死ぬまでに聴き終えることが出来ない質と量。あぁ。

 …でっ,なんで改めてこんなことを書いているのかというと,2000年に『峠の我が家』を聴いたから,このCDの良さが味わえたということ。本当にラッキーだったということ。そんな“手触りの実感”があるからだ。
 『峠の我が家批評を書くとなると,内容の良さうんぬんよりも,まずこのタイミングの良さを神に感謝する。この点を語らねば!

 …というのも“ジャズ・ギタリストビル・フリゼールは『NASHVILLE』以前で終了している。現在のビル・フリゼールは“アメリカン・ギタリスト”と表現した方がよい。
 ビル・フリゼールが本当に面白いのは「狂気から目覚めた」『NASHVILLE』以後であるが,それは『NASHVILLE』以後のビル・フリゼールの“アメリカンで牧歌的なジャズ”の素晴らしさを知ればこそ!

 仮に1994年に『峠の我が家』を聴いていたとしたら,ビル・フリゼールのことを「腑抜けで短調なギタリスト」と思い込んで嫌いになっていた気がしてならない。
 『NASHVILLE』以降の「ニュー・スタイル」と出会うことはなかったかもしれないし,恐らく受け入れることもできなかったかもしれない。

 それ位に『峠の我が家』でのビル・フリゼールが大人しい。というよりはゲイリー・ピーコックの最高のベースに絡みつくギターが軟弱で腰抜け。悪意ある書き方をすればゲイリー・ピーコックが主張したい音楽観を弱めている,という聴き方もある。
 これってデュオ・アルバムにとっては致命傷だと思う。

 しか〜し『NASHVILLE』で聴いたビル・フリゼールの「穏やかな変態」フレージングの素晴らしさが『峠の我が家』でのビル・フリゼールの柔らかさをすんなりと受け入れられさせてくれる。いいや,ビル・フリゼールの今後の変化の予兆が感じられてワクワクしてしまう。
 特にアメリカ民謡のタイトル曲,4曲目の【峠の我が家1】と5曲目の【峠の我が家2】での演奏は,もしや『NASHVILLE』の元ネタになったかも?

JUST SO HAPPENS-2 ビル・フリゼールがこんなだからか?ゲイリー・ピーコックの超攻撃的なベースがうなりまくっている。凄い骨太でベースの一音だけでゲイリー・ピーコックの指し示す音風景が見えてくる思いがする。

 それにしてもソロ名義のゲイリー・ピーコックは,いつでもとガラリと性格を変えてくる。ベースベースベースの三重奏なのかと思えるくらいの重厚さと繊細さとメロディアスの三点攻め!
 ゲイリー・ピーコックの「狂気のベース」がビル・フリゼールの“毒抜き”に一役買ったのかもしれない。

 そんな,あることないこと,を空想し妄想して楽しんでしまえる音空間が『峠の我が家』にはある。

  01. Only Now
  02. In Walked Po
  03. Wapitis Dream
  04. Home on the Range 1
  05. Home on the Range 2
  06. Trough The Sky
  07. Red River Valley
  08. Reciprocity
  09. Good Morning Heartache
  10. N.O.M.B.
  11. Just So Happens

(ポストカーズ/POSTCARDS 1994年発売/TKCB-71870)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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本田 雅人 B.B.Station / B.B.STATION LIVE AT ROPPOGI PIT INN5

B.B.STATION LIVE AT ROPPOGI PIT INN-1 T−スクェア退団後の本田雅人の初仕事は“原点回帰”なビッグ・バンド・プロジェクトとなる「本田雅人B.B.STATION」。

 『B.B.STATION LIVE AT ROPPONGI PIT INN』の出来が完璧である。初仕事でこのクオリティとは参った。本田雅人の“天才”が爆発している。

 『B.B.STATION LIVE AT ROPPONGI PIT INN』のレパートリーは,旧知の本田雅人のオリジナル=T−スクェアのヒット・ナンバーであるのだが,本田雅人は初めからT−スクェアのためにではなく「B.B.STATION」のために曲を書いていたかのようなビッグ・バンド・ドンピシャ・ナンバー。

 ビッグ・バンドT−スクェアのヒット・ナンバーが映える&映える。本当に“ゴージャス”な響きで,ここだけの話。何なら,軽快なT−スクェア・オリジナルより,多色刷りな「B.B.STATION」リアレンジの方が好きかも。一段と曲本来の良さが光り輝いている。
 本田雅人って,やっぱりサックスソロの人ではない。バンドの「総監督」の人。自らエースで4番を張れるのに6番キャッチャーあたりを好む人。
 なのに…本田雅人は「無意識でこぼれちゃってる」人。だから…お願い…,安藤さ〜ん。

 本田期の代名詞【メガリス】が「生ホーン入り」だったことから,最初から本田雅人T−スクェアでもビッグ・バンド思考だった,と考えることもできるのだが,管理人は「T−スクェア・ナンバーをビッグ・バンドで演奏するバンド」という「本田雅人B.B.STATION」のアイディアは,T−スクェア時代に量産した「企画盤」がきっかけとなったのでは?と考える。

B.B.STATION LIVE AT ROPPOGI PIT INN-2 そう。「アンド・フレンズ」と共演した『REFRESHEST』や「ウィズ・オーケストラ」と共演した『HARMONY』『TAKARAJIMA』での分厚いコンビネーションが別世界。
 お金をかけるとここまで曲が変わるものなのか,を思い知らされた。いや〜,超楽しい。

 T−スクェアが人気バンドだったからこそ経験できた超一流の大共演。そして大物との共演を経験したからこそ,自身の目標として明確に意識することになった「オールスター・ビッグ・バンド」の結成。「B.B.STATION」の結成は「元サヤ」とか「昔取った杵柄」とは違う。

 「アンド・フレンズ」にして「ウィズ・オーケストラ」にしてもハイライトは間違いなく“オレ様”本田雅人サックスソロ
 バックが豪華であればあるほど,バックが超一流であればあるほど“天才”本田雅人サックスソロが盛り上がる!

 『B.B.STATION LIVE AT ROPPONGI PIT INN』で“漏れ出している”演奏&作曲&編曲の素晴らしさ!
 ズバリ,本田雅人は日本国内で活躍する【リトル・リーグ・スター】な人ではない。本田雅人は【メジャー・リーグ・スター】だ!

  01. THEME FOR B.B.S.
  02. CIAO!!!
  03. TRELA ALEGRE
  04. CONDOLENCE
  05. FAIR AFFECTION
  06. LITTLE LEAGUE STAR
  07. FADE AWAY
  08. MEGALITH
  09. 待ちぼうけの午後
  10. PORK

(ヴィレッジ/VILLAGE 1998年発売/VRFL-0019)
(デジパック仕様)

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ゲイリー・ピーコック / ヴォイセズ5

VOICES-1 1st『イーストワード』は,ミュージシャンとしての成長や刺激のためなど関係なく,1人の人間として東洋の思想や禅の世界に興味を抱き来日していたゲイリー・ピーコックの情報を聞きつけた伊藤潔と菊地雅章がセッティングしたレコーディング。。
 ゆえに出来上がりは,純粋なジャズ・アルバムのそれであった。アメリカ方面のジャズとして通用する。

 対して,2ndとなる『VOICES』(以下『ヴォイセズ』)は『イーストワード』の延長なのに,全く雰囲気の違う音が飛び出してくる。
 『ヴォイセズ』とは,東洋ジャズであり禅ジャズである。純日本的なメロディーがジャズしている。

 『イーストワード』と『ヴォイセズ』の大きな違いは“人間”ゲイリー・ピーコックの奥深さや陰影の音楽投影にある。ヒッピー・ムーブメントのさなか,東洋思想に精神の救済を求めたゲイリー・ピーコックの「スピリチュアル・ジャズ」の完成にある。

 だからキース・ジャレットトリオの原型を見つけた気がした『イーストワード』でのオーソドックスな演奏の続編をイメージすると大怪我をしてしまう。
 ズバリ『ヴォイセズ』は,ゲイリー・ピーコックの本気のフリージャズ。本気の『イーストワードジャズの完成である。

 『ヴォイセズ』とは「ゲイリー・ピーコック WITH 日本の精鋭3名」の構図である。あの菊地雅章が,あの村上寛が,あの富樫雅彦をしても「無敵の」ゲイリー・ピーコックには敵わない。
 こんなにも色の付いたベースを弾けるベーシストってどれくらいいるのだろう。こんなにも“荒々しくて色気がある”ベースを弾けるのはゲイリー・ピーコックぐらいのものだろう。深みが凄い。

 ゲイリー・ピーコックの型式に縛られない自由なベースソロが“歌いまくる”。実にいかがわしい。弦を掻きむしるように痙攣的な激しいパッセージで,苦悶をそのまま音にしたかのようなベースソロを前にして,管理人はただ悶絶するだけである。

 メンバーも音楽性も『イーストワード』より拡大しているのだが,印象としてはより内省的になり,シンプルなコード使いを多用したミニマル。ギュッとメッセージが凝縮された,それでいてフリーならではの未完成な楽曲群。メンバーが入れ替わり立ち代わり音を重ねるスタイルが見事に昇華している。

 これぞゲイリー・ピーコックの東京〜京都生活で体感した日本の文化や食がスタティックに影響しているように思う。ゲイリー・ピーコックベースが楽曲で重要な句読点を打っている。

VOICES-2 とにもかくにも『ヴォイセズ』のハイライトはゲイリー・ピーコックベースである。隙間の多い響きながらも隙は無い。弛緩せず緊張感が漂う,本気のフリージャズを演奏しながらも,柔らかい空気感が漂よっている。

 フレージングは小節線や拍から解放され,自由で鮮やかな譜割が続く。フレーズやコード進行ではない。音の流れそのもの。掴みどころの無さは前作を軽く超え,不定形でつるつると滑らかな世界観を作り上げている。

 『ヴォイセズ』については大好きな菊地雅章富樫雅彦の演奏について語りたいとは思わない。
 「東洋のマインド」を違和感なく“崇高な”ジャズとして表現しつつ,抑制と葛藤とをストイックに語り尽くすゲイリー・ピーコックの力が「圧倒的」。

 『ヴォイセズ』を聴くと,いつでも心が大きく揺さぶられる。
 ゲイリー・ピーコックのスリリングな音楽眼がコンパクトなサウンドで描かれた大名盤である。

  01. ISHI
  02. BONSHO
  03. HOLLOWS
  04. VOICE FROM THE PAST
  05. REQUIEM
  06. AE. AY.

(CBSソニー/CBS/SONY 1971年発売/SICP-10046)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(紙ジャケット仕様)

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EQ / サード・リポート4

THIRD REPORT-1 小池修って人気者なんだなぁ。「ミュージシャンズ・ミュージシャン」なんだろうなぁ。

 だってSOURCEEQのフロントマンですよ。ドラム石川雅春大坂昌彦が,ベース青木智仁納浩一が,キーボード小野塚晃青柳誠が,ギター梶原順トランペット佐々木史郎が,バンドのフロントマンとして小池修と一緒に演奏することを選んだのだから…。

 フュージョン界のファースト・コールが集まったSOURCEジャズ界のファースト・コールが集まったEQ
 その2つのバンドを唯一掛け持ちした人物がテナーサックス小池修。管理人なんかは小池修と来ればスタジオ・ミュージシャンとして3000以上のレコーディングに参加したという逸話がすぐに頭に浮かぶ。
 だから小池修SOURCEのフロントマンなのだろう。だから小池修EQのフロントマンなのだろう。

 今夜の小池修批評のお題はEQの3枚目『THIRD REPORT』(以下『サード・リポート』)である。
 『サード・リポート』での小池修の響きが実にいい。バンドの音を背負った感じの重厚で説得力のあるフレージングである。自然体で大物然が感じられるのが凄い。

 小池修は基本的にはジャズの人である。しかしジャズフュージョンのインスト専業ではなく,氏の3000のレコーディングの中にはポップスや歌ものも多く含まれている。
 ストレート・アヘッドなジャズでありながら,アルバム1枚聴き通しても疲れない。そんな小池修の語り口がEQの主戦場であるコンテンポラリー・ジャズにハマリまくる。フュージョン的なアプローチが,今までにないポップ性を発揮したように思う。

 そんな小池修の個性は,そっくりそのまま青柳誠の個性にも当てはまるし,納浩一渡辺貞夫グループのベーシスト時代が甦る出来だと思う。クリエイト!

THIRD REPORT-2 そうしてEQとは4人が対等の双頭バンドを名乗っているが,個人的には大坂昌彦がバンド・サウンドを主導しているように聴こえる。
 大坂昌彦の一番の特長とは“間口の広さ”にあるが『サード・リポート』は,バンドとしての決めごととバンドだから挑戦できる自由度がバランス良く両立できている。

 大坂昌彦がベーシックなサウンドを作り小池修が突っ走る。青柳誠が塔を建てれば納浩一が空間を埋めていく。
 『サード・リポート』とは,そんなEQのコンテンポラリーの法則が“見つかれば見つかるほど”楽しめるアルバムである。

  01. At the Entrance...
  02. Chromaticism
  03. The Polestar
  04. 雨下の砂漠
  05. Silence
  06. Hoppin' Steppin'
  07. 春夏〜Four Seasons Suite #1
  08. Emotional Quality
  09. ...a way...

(ビクター/AOSIS RECORDS 2005年発売/VICJ-69002)
(ライナーノーツ/児山紀芳,小池修,青柳誠,納浩一,大坂昌彦)

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ゲイリー・ピーコック / イーストワード4

EASTWARD-1 ジャズベース界のレジェンド=ゲイリー・ピーコックの記念すべき初リーダー作はアメリカではなく日本のCBSソニーからのリリースであった。
 あのビル・エヴァンストリオベーシストを務め,フリージャズ・シーンでも大活躍してきたゲイリー・ピーコックとしては,ちょっと淋しい感じがする。

 でもこの時点ではそんなもん。『EASTWARD』(以下『イーストワード』)発売前のゲイリー・ピーコックフリージャズ・シーン以外では「知る人ぞ知る」存在にすぎなかった。
 ゲイリー・ピーコックが世界的に名を挙げたのが,この『イーストワード』以降であって,ピアノ菊地雅章にしても,ドラム村上寛にしても,この『イーストワード』が一つの転機になっている。

 真に『イーストワード』が重要なのは,菊地雅章ではなくゲイリー・ピーコックがリーダーとしてピアノ・トリオを操っている点に尽きる。
 そう。『イーストワード』での成功があっての『テイルズ・オブ・アナザー』なのであろうし,だからキース・ジャレットの「スタンダーズトリオ」へとつながったのだろう。そしてキース・ジャレットを経由したからこそ菊地雅章との「テザード・ムーン」へとつながったのだろう。

 とにもかくにも『イーストワード』でのゲイリー・ピーコックが凄いのは「説得力」であろう。管理人なんかはゲイリー・ピーコックの強靭なベース・ワークに“ねじ伏せられてしまう”思いがする。
 ゲイリー・ピーコックの力強いベース・ランニングが正確なビートを刻みながら,ピアノドラムを引っ張っていく。
 『イーストワード』の音世界は「100%ゲイリー・ピーコック」していて,菊地雅章は完全にサイドメン扱いである。超強力なリーダー・シップである。

 好むと好まざるに関わらず,スコット・ラファロの衣鉢を継ぐ演奏スタイルが出発点だったゲイリー・ピーコックがオフ・ビートを発展させようとすれば,先鋭的なフリー・フォームの領域に足を踏み入れるのも必然の結果。
 フリージャズの荒波を経験してきたからこそ,新進気鋭のフロント・ランナーとして,こちらも当代気鋭のJ−ジャズの若手であるピアノ菊地雅章ドラム村上寛と対峙している。

 ゲイリー・ピーコックの提示するアトーナルなオフ・ビート空間に手探り風のアンサンブルにトライしていく。恐らくはゲイリー・ピーコックのイメージを上回る音を発するピアノドラムの刺激を聴き分けては,ゲイリー・ピーコックベースがあたかも「道案内」でもするかのように先回りしてピアノドラムの突進を止めている。

EASTWARD-2 例えば1曲目の【LESSONING】。定型ビートで演奏の骨格を伝え終わったゲイリー・ピーコックは次第に小節内でビートのアクセントをずらし,小節と小節の境界を曖昧にぼかし始めてフリー・フォームの展開に誘い込もうとするが,菊地雅章村上寛は頑なにコードと規則的なリズム・パターンを固守し続ける。
 不規則なベースに合わせるようにドラムがくっついてみたり離れてみたり…。菊地雅章村上寛の当惑とためらいが,いつもより多弁な音数に現れている。

 同様な展開は全編にわたって随所に散見されるのだが,このような局面では殆どの場合,ゲイリー・ピーコックがオン・ビートの定型リズムに軌道修正することでバンドの整合性が収束していく。
 用いるイディオムが三者三様なのでトリオとしての一体感にはやや欠けるが音楽を生み出す情動の高まりには波長の一致が聴こえる。

 音楽の土台を何層も異なる色で重ねていくベースの詩人。それがゲイリー・ピーコックの音楽の本質である。

  01. LESSONING
  02. NANSHI
  03. CHANGING
  04. ONE UP
  05. EASTWARD
  06. LITTLE ABI
  07. MOOR

(CBSソニー/CBS/SONY 1970年発売/SRCS 9333)
(ライナーノーツ/ゲイリー・ピーコック,小川隆夫)

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ブライアン・ブロンバーグ / ベース・アクワーズ4

BASS ACKWARDS-1 ブライアン・ブロンバーグの『BASS ACKWARDS』(以下『ベース・アクワーズ』)を聴いて,これがベーシストソロ・アルバムだと思う人は世界に1人もいないことだろう。
 『ベース・アクワーズ』とは「100%ギタリスト」のソロ・アルバムに聴こえる。それもハード・ロック系のギンギンなエレキギターを弾きまくったアルバムに聴こえる。初めの数回は…。

 しかし,ブライアン・ブロンバーグ好きが繰り返し聴けば,ベース好きが繰り返し聴けば,これぞ史上最高の“百花繚乱のベース・アルバム”であることを実感せずにはいられない。
 ブライアン・ブロンバーグが『ベース・アクワーズ』で,再びエレクトリックベースに「革命」を起こしたことが伝わってくる…。

 そう。ベースを究めればギターなんて要らない。ギターという楽器の中身は実はベースだったのだ。
 ベースとは地味な性格の人に似合う楽器。ギターとは派手な性格の人に似合う楽器。弦が4本ならベースと呼ぶし弦が6本ならギターと呼ぶ。ただ見かけだけの違い。バンドに上手なベーシストが1人いればギタリストはエアーでOK&お飾りでOK。

 『ベース・アクワーズ批評であれば,そんな暴言さえも許されるくらい,ベースギターを超えている! ベースギターに勝っている!
 ブライアン・ブロンバーグの「ベース愛」が爆発して,ブライアン・ブロンバーグがついにベーシスト稼業を「廃業」した趣きさえあるのだが,真実はその逆であり,ブライアン・ブロンバーグがまたまたベースという楽器の可能性を拡げているのだ。

 ベース,お・そ・ろ・し・や〜。ベース,お・く・ぶ・か・し〜。

BASS ACKWARDS-2 『ベース・アクワーズ』を繰り返し聴き込むと,ギターのように聴こえていたはずのベースが,真に骨太ベース・サウンドとしてハッキリと聴こえ出すようになる。
 ギターと(高音域担当の)ピッコロベースの違いは音の長さと太さ。ピックではなく指弾きの醍醐味である「深い音色」がベースの“らしさ”である。

 ブライアン・ブロンバーグは絶対にギターなど弾かない。ブライアン・ブロンバーグベース以外の楽器を手に取ることもない。

 ここまでギタリスト然としたアルバムを作ったくせに,ここまでベースを感じさせてくれるとは…。
 ブライアン・ブロンバーグベーシストとしてのプライドは揺るぎない。

  01. Through The Window
  02. The Dungeon
  03. Good Morning
  04. Trade Show
  05. Carlos
  06. Top Down
  07. Fooled Ya!
  08. The Message Within
  09. Flight Of The Phoenix

(キングレコード/KING RECORD 2004年発売/KICJ 467)
(ライナーノーツ/森川進,坂本信)

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石若 駿 / CLEANUP4

CLEANUP-1 日本が誇る若手ドラマーの2TOP。その1人がフュージョン方面の坂東慧であれば,もう1人はジャズ方面の石若駿であろう。

 T−スクェアのメイン・コンポーザーである坂東慧の作曲センスの高さは有名であるが,石若駿ソロデビュー作『CLEANUP』を聴いて,石若駿もまた“稀代のサウンド・クリエイター”を実感した。

 どうにもドラマーという人種は,バリバリと叩く人だと思わせておいて,どいつもこいつもソロ・アルバムを作るとなると叩かない。音楽全体のまとめ役として,共演者を前に出して,自分自身は黒子役に徹している。それでいてタム一発で客観的に意見している。そこはこう吹けよ,とアイディアを伝えている感じ?
 ライブではあんなに叩きまくって,全部を持って行こうとするくせにぃ。このGAP萌えが計算なのだろうか?

 石若駿とは元来ジャズドラマーではない。藝大時代はクラシックだし,歌ものも演るはメタルやファンクも演る“オールラウンダー”であることを承知している。
 でもそれでも,個人的に石若駿と来れば,日野皓正グループで見た,あのドラムソロが凄すぎて忘れられない。

 あの夜の石若駿の残像を求めて『CLEANUP』を聴いてみた。そして見事に裏切られてしまった。
 ズバリ『CLEANUP』の第一印象はウェイン・ショーターであった。つまりはモードである。

 洗練されたアンサンブルが耳に残る。ソウルフルなサックスや,コンテンポラリーなギター,ハード・バピッシュなピアノ,コク味こってりの肉太ベースの後ろで,小回りの利いた鋭敏なドラムが確かにいい仕事をしている。時折織り交ぜてくる“変拍子の味わい”が絶妙で効いている。

 聞けば『CLEANUP』はスタジオでの“一発録り”だそうだ。1分ちょっとの短い即興演奏も3曲収録されている。
 しかし,印象としては「大事に大事に」な感じ。アドリブも全部「書き譜」のように聴こえてしまうから「こじんまりとまとまった感じ」で,質は高いが面白いアルバムではない。

 そう。『CLEANUP』を聴き終えた時の感覚は桑原あいの「トリオ・プロジェクト」に近いと思った。凄いんだけど高揚感が伴わない。
 恐らく『CLEANUP』とは,ジャズのベーシックな部分を深堀したアルバムなのだろう。最新の手法でモードジャズを演奏している。

 だから音圧に圧倒されるとかではない。難易度の高さが耳について疲れてしまう。成熟とか円熟という形容詞が石若駿ドラミングから匂ってくる。
 いいや,ドラム石若駿だけではない。アルトサックス中島朱葉テナーサックス吉本章紘ギター井上銘ピアノアーロン・チューライピアノ高橋佑成ベース須川崇志ベース金澤英明という,若手なのに全員が全員,成熟とか円熟という表現がぴったりな大人なモードジャズ・プレイヤーの音・音・音!

CLEANUP-2 管理人の結論。『CLEANUP批評

 『CLEANUP』は石若駿を聴くアルバムではない。「石若世代」を聴くためのアルバムである。

 かつてTKYAQUAPITなど,小沼ようすけJINOTOKU秋田慎治金子雄太大儀見元など,J−ジャズのニューウェーブが一堂に登場した時代があった。

 『CLEANUP』を聴いて,あの時代に感じていたと同じ息吹を感じてしまった。本物を演奏する若手ジャズメンの新世代「石若世代」の台頭がすぐそこにまで来ている…。

  01. The Way to "Nikolaschka"
  02. Dejavu #1
  03. Darkness Burger
  04. A View From Dan Dan
  05. Cleanup
  06. Professor F
  07. Ano Ba
  08. Dejavu #2
  09. Into The Sea Urchin
  10. Big Saaac.
  11. Siren
  12. Wake Mo Wakarazu Aruku Toki
  13. Tanabata #1

(サムシンクール/SOMETHIN' COOL 2015年発売/SCOL-1011)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/石若駿)

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チャーリー・ラウズ / ボサ・ノヴァ・バッカナル4

BOSSA NOVA BACCHANAL-1 チャーリー・ラウズの『BOSSA NOVA BACCHANAL』(以下『ボサ・ノヴァ・バッカナル』)は,世界的なボサノヴァ・ブームが巻き起こる中でリリースされたボサノヴァ集であるが,ただ流行を追っただけのボサノヴァ・アルバムとは一線を画している。
 そう。『ボサ・ノヴァ・バッカナル』とは,ボサノヴァ・アルバムではなく純粋なジャズ・アルバムなのである。

 チャーリー・ラウズがボサノヴァを題材として選んだのは,メロディー・ラインやベース・ライン,そしてコード進行がアドリブで崩してみるのに面白いと感じていたからである。

 ピアノレスで例のツインギターの「乾いた」バチーダが鳴っているので,フォーマットとしては完全なるボサノヴァ集の形であるが,コマーシャルに走った部分もなく,逆にアーティスティックで実験作の印象が残るし,アルバム全編でリズミカルなフレーズが次々に飛び出してくるので,こんなジャズ・アルバムをBGMとして聞き流すことなどできやしない。完全に「拝聴」姿勢のアルバムである。

 チャーリー・ラウズと来れば,長らくセロニアス・モンクのバンドのフロントマンとして活躍したテナーサックス・プレイヤー。
 あの超個性的なセロニアス・モンクピアノを邪魔せず,それでいて「モンクス・ミュージック」の世界の成立に欠かすことのできないテナーサックス・プレイヤー。

BOSSA NOVA BACCHANAL-2 『ボサ・ノヴァ・バッカナル』について書けば,セロニアス・モンクアルフレット・ライオンである。
 アルフレット・ライオンの意向を汲んだチャーリー・ラウズブルーノートらしいテナーサックスを吹いている。

 そう。『ボサ・ノヴァ・バッカナル』は,やっぱりブルーノートジャズ・アルバムなのである。アルフレット・ライオンジャズ・アルバムなのである。

  01. BACK TO THE TROPICS
  02. ACONTECEU
  03. VELHOS TEMPOS
  04. SAMBA DE ORFEU
  05. UN DIA
  06. MECI BON DIEU
  07. IN MARTINIQUE

(ブルーノート/BLUE NOTE 1963年発売/TOCJ-4119)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,藤田邦一)

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東風 / ウィッシズ5

WISHES-1 菊地雅章の“電化マイルス”大接近と来れば1981年の『SUSUTO』と1982年の『ONE WAY TRAVELLER』と思われているが,実はその5年前に,それこそ正規“電化マイルス”のサイドメンたちと,トランペッターマイルス・デイビスから日野皓正に変えただけの「擬似・電化マイルス」を実験していた。
 それが「日野皓正=菊地雅章オクテット」改め「東風」名義での『WISHES』(以下『ウィッシズ』)である。

 「東風」とは,キーボード琵琶菊地雅章トランペットパーカッション日野皓正ソプラノサックスフルートデイヴ・リーブマンテナーサックスソプラノサックススティーヴ・グロスマンギターレジー・ルーカスベースアンソニー・ジャクソンドラムアル・フォスターパーカッションエムトゥーメの面々。

 『アガパン』の数年前の布陣である。1976年のマイルス・デイビスは6年にも渡る引退生活の真っ只中。『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチェズ・ブリュー』『アット・フィルモア』『ライヴ・イヴィル』『オン・ザ・コーナー』『ゲット・アップ・ウイズ・イット』『アガルタ』『パンゲア』ETC
 マイルス・デイビスの新作がでなくても,上記のどれか1枚があれば「一生事足りる」級の名盤がザックザク。誰も菊地雅章に,引退中のマイルス・デイビスの代わりを務めろ,なんて言っていない。

 そのことを菊地雅章は誰よりも分かっている。後の『SUSUTO』にしても『ONE WAY TRAVELLER』にしてもプーさんなりの“電化マイルス”を演ったわけではなかったのだ。

 そう。菊地雅章が手掛けた「擬似・電化マイルス」作『ウィッシズ』は,マイルス・デイビスが追い求めていたのと同じゴールを,マイルス・デイビスとは全く別のアプローチで追い求めてみせた実験作。
 マイルス・デイビスのロック&ファンク的なアイディアにはまだまだ手の付けられていない領域がある。可能性が広がっている。

WISHES-2 その肝となるのがベース・ラインでありアンソニー・ジャクソンの起用である。これが『ウィッシズ』で菊地雅章が提示した答えである。
 アンソニー・ジャクソンベース・ラインが最高である。どうしてマイルス・デイビスアンソニー・ジャクソンを自分のバンドで起用しなかったのだろう。

 『ウィッシズ』と来れば,アルバム冒頭の菊地雅章が演奏する“雅楽そのまんま”が有名なのだけれど,個人的にはその続く部分である。
 【オーロラル・フレアー:パート2】でのインプロヴィゼーションジャズファンク! アンソニー・ジャクソンの柔軟なベース・ラインが脳裏の「奥の奥まで」突き刺さる!

 管理人は『ウィッシズ』が大好き。そして恐らくはマイルス・デイビスも『ウィッシズ』が大好き。
 『ウィッシズ』での大名演があったから1978年のプーさんマイルス・デイビスとのレコーディングセッションが実現したのかな?

  01. AURORAL FLARE; PART 1 (BASED ON GAGAKU−"HYOJO:
     KANSHU")

    AURORAL FLARE; PART 2
  02. CARIBBEAN BLUE
  03. LA MOCA ESTA DORMINDO
  04. PACIFIC HUSHES
  05. ELECTRIC EPHEMERON
  06. ALONE

(イースト・ウィンド/EAST WIND 1976年発売/PHCE-2039)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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ゲイリー・マクファーランド / ソフト・サンバ4

SOFT SAMBA-1 ゲイリー・マクファーランドと来れば,ナベサダ・フリークとしてはやっぱり「ナベサダにブラジル&ボサノヴァの影響を与えた人物」となるだろう。純粋にヴィブラフォン奏者としての評価は抜きにである。

 バークレー音楽院を卒業した渡辺貞夫が最初にツアーに参加したのが,ゲイリー・マクファーランドのバンドだったのは有名なお話。ハード・バップかフリージャズで腕試しをするしかない,ゴリゴリのジャズメンだったナベサダが,ブラジル音楽,ボサノヴァ,ポップなソフト・ジャズに開眼したのは,ゲイリー・マクファーランドのミュージシャンシップに惚れてしまったからだそうで,渡辺貞夫が日本にジャズメンとして初めてボサノヴァを持ち帰るきっかけとなった。

 こんなエピソードを聞いてしまえば,ナベサダ・フリーク足る者,渡辺貞夫が最初にツアーに参加した元ネタを聞いてみたいと思うもの。渡辺貞夫を魅了したゲイリー・マクファーランドのミュージシャンシップに触れてみたいと思うもの。

 渡辺貞夫が参加したのは『SOFT SAMBA』(以下『ソフト・サンバ』)のフォロー・ツアー。『ソフト・サンバ』の一体どこに渡辺貞夫は魅了されたのか?

 ブラジル音楽と来れば,やはり独特のリズムと考えがちだが『ソフト・サンバ』はビートルズでありポップスであり映画音楽集。
 当時の渡辺貞夫は,やれ,ビ・バップだ,やれ,アドリブだ,といきがっていたはず。そんな渡辺貞夫を『ソフト・サンバ』の有名美メロとゲイリー・マクファーランドの涼しいヴィブラフォンが癒してくれたのだろう。

 そう。『ソフト・サンバ』の真の魅力は「脱力ジャズ」!
 個人的には腑抜けだし,ぬるいし,だるいしのラウンジ系だから『ソフト・サンバ』はアルバムの最後までは聴き通せない。いつも途中で飽きてくるのだが,そんな時に【AND I LOVE HER】と【EMILY】がちょうどいい曲順に配置されている。この2曲でテンションが上がっての完走である。

SOFT SAMBA-2 パパヤパヤと口笛が流れて来ると,そこは一気にノスタルジー&夢心地。
 普段はゲイリー・マクファーランドなんてほとんど聴かないのだが,年に一度ぐらいはどうしても聴きたくなる夜がある。表面上はソフトサンバだが,どうしてどうして…。

 ゲイリー・マクファーランドのハートは,ゴリゴリのジャズメンと同じなのである…。
 ゲイリー・マクファーランドは,同じくボサノヴァでヒットを飛ばしたスタン・ゲッツと同じ人種なのである…。

  01. RINGO
  02. FROM RUSSIA WITH LOVE
  03. SHE LOVES YOU
  04. A HARD DAY'S NIGHT
  05. THE GOOD LIFE
  06. MORE
  07. AND I LOVE HER
  08. THE LOVE GODDNESS
  09. I WANT TO HOLD YOUR HAND
  10. EMILY
  11. CALIFORNIA, HERE I COME
  12. LA VIE EN ROSE

(ヴァーヴ/VERVE 1965年発売/UCCU-5249)
(ライナーノーツ/都並清史,植木文明)

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CO2 / TOKAI5

TOKAI-1 テナーサックス片山広明アルトサックス林栄一の「変態系2トップ」がフロントを務める「CO2」であるが「CO2」の真の主役はスーパー・ヒーロー・ツインサックスではなく加藤崇之の“七色ギター”である。

 尤も加藤崇之が前面に出ているわけではない。きちんと片山広明林栄一のフォロー役へと回っている。
 それでいて,片山広明林栄一の2本のサックスを拝聴しているつもりが,いつしか加藤崇之ギターばかりを耳で追いかけている自分に気付く…。こういう演奏が大好物なのです!

 こんなにも素晴らしいジャズ・ギタリストが世間に知られずに眠っているのだから,J−ジャズの未来はまだまだ安泰である。
 そのためにも「J−ジャズ史上最高のフリージャズ・バンド」として讃えられる「CO2」はもっと売れないといけない。すでに解散した今であっても,片山広明が亡くなった今でも売れ続けなければならない。
 CO2ライブ盤『TOKAI』を聴いていると,もっと大勢の人に「CO2」を聴いてほしい,という衝動に駆られてしまう…。

 『TOKAI』とは東海村のことだそうだ。JOCの核燃料加工施設で臨界事故が発生したあの東海村。福島第一原発事故はまだだったから,高沸点のジャズとして“臨界事故”をもじったのだろう。
 まだ東海村がジョークとして通用した時代に,意図せずに臨界を迎えた5人の沸点のライブ盤に『TOKAI』というタイトルはふさわしいと思っていたものだ。今となっては反省の毎日。新型コロナウイルス。大流行にならないことを願っているが,隙の甘い生活を送る毎日。

 どんなメロディーであっても,跡形もなく崩しながら実に見事に歌い上げるツインサックス。この演奏は美しいのではなくパワー勝負のサックスであって,超高速なのに一音一音をビジビジと,あたかもドラムのように叩きつけて来る。物凄いド迫力。そして「NO」だと思っていても「YES」と強引に言わされそうな説得力。
 読者の皆さん,これが片山広明なのである。これが林栄一なのである。

 ベース早川岳晴ドラム芳垣安洋によるリズム隊がこれまたイカレテいる。爆音で暴れまくる2人のリズム・チェンジが最高のCOOLなので,1つの棒状の固まりがぐいぐいと押し出され,やがて渦のうねりの如く,強制的に開かされた喉の奥までズシズシと打ち込まれる感じ?

 そんな最高のフロントと最高のリズムをつなぐのが,縦横無尽に形を変えては顔を出す,加藤崇之の“七色ギター”である。
 “七色ギター”=レインボーなわけだが「CO2」はピアノレスという編成上,加藤崇之ギターシンセサイザーキーボード3台分の大立ち回り!

TOKAI-2 エフェクターを組み合わせた加藤崇之フリージャズ・ギターが,バンドの内と外を出たり入ったりしながら曲の輪郭を形成していく。完全にスケッチ・チックなギター・ワークであって,加藤崇之“画伯”の繊細な変態ぶりが最高に面白い。
 楽器だけではなく「犬の遠吠え」を加工した七色の音色だけも十分い個性的であるが,特に合いの手の入れ方が絶妙で「加藤節」あっての「CO2」のオリジナリティーを強く感じてしまう。

 とにもかくにも『TOKAI』とは,バンド内では5番手であろう加藤崇之の下剋上ライブ
 フリージャズの名手4人が揃いにそろって加藤崇之に喰われている。ジャズの醍醐味とは,特にライブの醍醐味とは「やった者勝ち」なのである。

  01. monday night
  02. unite
  03. blade runner
  04. tattata
  05. tejinshi no rumba
  06. hallelujah

(スタジオ・ウィー/STUDIO WEE 2000年発売/SW-203)
(紙ジャケット仕様)

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チャック・マンジョーネ / フィール・ソー・グッド5

FEELS SO GOOD-1 『FEELS SO GOOD』(以下『フィール・ソー・グッド』)は“永遠の名盤”である。
 何てったって抜群にメロディーが良い。いつまでもメロディーが心に残る。CDを聴く。ただそれだけなのに本当に気分が良くなってくる。徐々にテンポが上がってきて次の展開が分かっていても,その瞬間に「キター!」と萌えてしまう。
 音色やリズムといった音楽的要素のバランスが最高で,特にアルバムのワン・ツーである【FEELS SO GOOD】〜【MAUI−WAUI】の流れは神! この2曲ばかりを何百回聴いたことだろう。

 『フィール・ソー・グッド』は“時代の名盤”である。
 管理人の青春時代=暗黒時代。こう書いてもそんなに悪い思い出ばかりではないのだが,根が真面目なものだから悪いことをしていてもちっとも楽しくなかった学生時代。嫌なことがあると【FEELS SO GOOD】と【MAUI−WAUI】を聴いて「気分を上げていた」青春時代がよみがえる。
 いつもみんなに羨ましがられて言われていたが「音楽聞いてストレスが解消するなんて,そんなにストレスないってことでしょう〜」。

 『フィール・ソー・グッド』はチャック・マンジョーネの“永遠の名盤”である。
 全てのオリジナルを書き上げたのがチャック・マンジョーネであるし,やっぱりフリューゲル・ホーンという,優しいまるやかな金管楽器の音色が極上のメロディー・ラインにぴったりハマる。
 高音のフリューゲル・ホーンが,突き抜けずに優しげに響くフュージョン・サウンドは,大人になった今でも,いつ聴いても何度聴いても気分が和らぐ&心が温かくなる。こりゃあ,死ぬまで聴き続けるだろうなぁ。

 加えて『フィール・ソー・グッド』は,ギタリストグラント・ガイスマンにとっての“永遠の名盤”であり,サックスフルートクリス・バダラにとっての“永遠の名盤”でもある。
 ジャズフュージョンにハマッテ来ると,徐々にサイドメンの演奏に耳が行ってライナーノーツで名前を確認するようになるのだが,グラント・ガイスマンクリス・バダラの名前は『フィール・ソー・グッド』以外に見かけた記憶がない。そんなことあるの? 超名演ギターフルートなのだから,てっきり引っ張りだこのスタジオ・ミュージシャン集団かと思ってしまったものでして〜。

FEELS SO GOOD-2 管理人の結論。『フィール・ソー・グッド批評

 ズバリ,チャック・マンジョーネの『フィール・ソー・グッド』はフュージョンを代表する超名盤の1枚!
 フュージョンに疎い読者の皆さんでも,恐らくはAOR系やPOPS系の音楽番組で絶対耳にしたことがある2大名曲【FEELS SO GOOD】【MAUI−WAUI】を大収録!

 管理人もジャケット写真のチャック・マンジョーネのように『フィール・ソー・グッド』を抱きしめたまま楽園に持って行きたい超名盤

 最後に注意事項。『フィール・ソー・グッド』を10回聴くと1回は聴き終わるとなぜか涙がこぼれてしまいます。そして外出先でも無意識にメロディーを口ずさんでしまっています。自分の世界に入り込む時間と場所にはくれぐれもご注意くださ〜い。

  01. FEELS SO GOOD
  02. MAUI-WAUI
  03. THEME FROM “SIDE STREET”
  04. HIDE & SEEK (READY OR NOT HERE I COME)
  05. LAST DANCE
  06. THE XITH COMMANDMENT

(A&M/A&M 1977年発売/D18Y4104)
(ライナーノーツ/チャック・マンジョーネ,岩浪洋三)

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山下 洋輔 トリオ / FROZEN DAYS4

FROZEN DAYS-1 カシオペアザ・スクェアで幕開けした管理人のジャズフュージョン人生。そこからまずは主要なフュージョン・グループ,ナニワ・エクスプレスMALTA松岡直也辺りを聴きまくりトドメはやっぱりウェザー・リポート。この流れは今でも続いている。

 どちらにしても当時の主要な情報源はFMラジオとFM雑誌であった。ジャズフュージョンのFMラジオと来れば,平日夜に毎日放送されるNHK−FM「クロスオーバー・イレブン」とFM東京系「ソニー・デジタル・サウンド」。週末にはNHK−FMの「セッション○○」とFM東京系の「渡辺貞夫・マイ・ディア・ライフ」である。「サントリー・サウンドマーケット」とか「ローディ・ライブ・コンサート」とか「ゴールデン・ライブ・ステージ」とか「渡辺香津美・ドガタナ・ワールド」辺りもよく聴いていた。

 …でっ,何が書きたいのかというと「渡辺貞夫・マイ・ディア・ライフ」である。この番組を毎週エアチェックしていたので,管理人は「もうフュージョンには戻れない」というくらいにジャズに影響されていた。尤もジャズなんて,チンプンカンプン,だったし大人な雰囲気に魅了されていただけである。

 その流れでジャズ雑誌を買うようになった。途中からコマーシャリズムに嫌気がさして買わなくなったが「スイング・ジャーナル」にジャズのイロハを教えてもらった。そして書籍も「拾い読み」するようになり,初めて自分のおこずかいで買ったのが山下洋輔の「ピアニストに手を出すな!」であった。

 「ピアニストに手を出すな!」の中にはフリージャズの大物の名前がわんさか出てくる。その全員の名前など初めて知ったし,何よりどんな楽器の人かも分からないし,つまりは音を聴いたこともない。妄想に次ぐ妄想の毎日だったが,そんな状態でも「若さは力」。この書籍を繰り返し読んでいた記憶がある。

 …でっ,山下洋輔の『FROZEN DAYS』である。管理人にとって山下洋輔の『FROZEN DAYS』とは「ピアニストに手を出すな!」とイコールであった。
 つまり,何回聴いても意味が理解できない。良さが理解できない。面白くもなんともない。それでこの記事の冒頭に戻ることになる。「もうフュージョンには戻れない」と感じていたはずのに,フリージャズに敗れて「尻尾を蒔いて」逃げてしまった。

FROZEN DAYS-2 あれから30年。管理人も立派なオジサンになった。いろいろと趣味をかじってきたが,一番長続きしているのが音楽でありジャズフュージョンである。すでに大抵の名盤と呼ばれるものは聴いてきたという自負はある。

 そろそろだと思った。今なら『FROZEN DAYS』を攻略できそうな気がしていた。
 でもダメだった。『FROZEN DAYS』の良さがやっぱり&さっぱり分からない。もはや感性の問題なのだろう。
 オーネット・コールマンは大好きなのに山下洋輔は基本的には苦手で敬遠している。しかし森山威男は大好きなのだから,どういうこと?

 キャリアを積み重ねてきたとしても,自分でも好き嫌いの基準が良く分からない。要は聴いてみること,1枚でも多くアルバムを聴くことなのである。

  01. PROPHASE
  02. DOUBLE HELIX
  03. CHIASMA
  04. INTERPHASE
  05. MITOCHONDRIA

(日本クラウン/CROWN 1975年発売/DICR-2008)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/河野典生)

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ゲイリー・バートン&パット・メセニー / クァルテット・ライヴ4

QUARTET LIVE-1 全員がレジェンドでマスターの集まりである“実力派だからここまでできる”軽いセッション・アルバム『LIKE MINDS』とは全く違う,ゲイリー・バートンパット・メセニーの続編が『QUARTET LIVE』(以下『クァルテット・ライヴ』)。

 『LIKE MINDS』とは何が違うかって? それこそパット・メセニーの立ち位置である。『LIKE MINDS』では前へ前へと,俺が俺がと,周りの大人たちに認められて?主役を務めたパット・メセニーが見事に「一介のバンドマン」を務めている。

 そう。『クァルテット・ライヴ』の主役はあくまでもゲイリー・バートンであり,パット・メセニーはサイドメンとして,得意とするライブ演奏にも関わらず「抑え目のギター」を弾いている。
 その意味でも100%“パット・メセニー印”であった『REUNION』とも違っている。うん。渋いぞ,メセニー〜!

 選曲を見渡す限り『クァルテット・ライヴ』の趣旨としては,何か新しいメロディーを産み出そう,ということではなく,昔の名曲を現代風にアレンジして「ねっ,いい音楽でしょ?」と再評価を促す感じ?
 それくらいにパット・メセニーギター・プレイはゲイリー・バートンの独特の世界観に今以って尊敬の念を抱いている感じ?

 長らく「芸術指向」に走っていたパット・メセニーとしては,一番演奏しているのが楽しかったあの頃のゲイリー・バートンの胸を借りて「原点回帰」でリフレッシュする意味合いもあったと思う。
 ゲイリー・バートンの名曲を演奏することで,過去の失われた自分を取り戻す作業だったように思う。

 それくらいに『クァルテット・ライヴ』前のパット・メセニーは疲れていたと思う。休むのではなく走りながらの“癒し”が必要な時期だったと,長年のメセニー・ファンとしては感じていた。

 そ・こ・で・ゲイリー・バートン師匠のお出ましである。ゲイリー・バートンヴィブラフォンは本当にCOOLでHOT! 表面的には静かなのに内面では熱く燃え上がっている!
 そう。高度な楽曲とアンサンブルで演者をも魅了する,ゲイリー・バートン・グループで演奏する行為こそが『THE WAY UP』後,燃え尽きて迷走しかけていたパット・メセニーにとって“最良の特効薬”となったと思う。

QUARTET LIVE-2 『クァルテット・ライヴ』で,ゲイリー・バートンの繊細なヴィブラフォンに,エモーショナルかつ表情豊かな「抑え目のギター」で絡み続けるパット・メセニーに“完全復活”を感じた自分が今となっては懐かしい。

 1974〜1976年でのゲイリー・バートン・グループでの3枚のレコーディング。独立から14年後,1990年の『REUNION』〜1998年の『LIKE MINDS』と来て,2009年の『クァルテット・ライヴ』で3度目のリユニオンを果たしたゲイリー・バートンパット・メセニーの名コンビ。

 『クァルテット・ライヴ』から約10年。そろそろ4度目のリユニオンの時期でしょうか?

  01. Sea Journey
  02. Olhos de Gato
  03. Falling Grace
  04. Coral
  05. Walter L
  06. B and G (Midwestern Night's Dream)
  07. Missouri Uncompromised
  08. Fleurette Africaine (Little African Flower)
  09. Hullo, Bolinas
  10. Syndrome
  11. Question and Answer

(コンコード/CONCORD 2009年発売/UCCO-1075)
(ライナーノーツ/ゲイリー・バートン,パット・メセニー,スティーヴ・スワロウ,アントニオ・サンチェス,成田正)

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片山 広明 / キャトル5

QUATRE-1 片山広明テナーサックスは,深読みとか安易な決めつけを許さない奥の深さがあって「片山広明ってこんな感じだよね」と思っていると,あっさり裏切られたりする。
 ピアノレス・バンドを率いてきた片山広明が,初めてピアニストを擁した「キャトル・バンド」がそうであった。

 「キャトル・バンド」とは『QUATRE』(以下『キャトル』)の録音のために結成されたツアー・バンドだったが『キャトル』で片山広明が指名した板橋文夫のためのバンドである。
 「キャトル・バンド」での片山広明は,情念のテナー,豪快なテナーというカテゴライズを,ひょいと身軽に踏み越えている。板橋文夫さまさまである。

 板橋文夫ジャズ・ピアノ片山広明の圧倒的なパワーを受け止め,対応し,ひとつのものとして作り上げていく。
 メロディアスな部分は板橋文夫が受け持ち,片山広明アドリブに専念している。メロディーを前半,中盤,後半と繰り返す場面では,繰り返しの中でも表情を全部変えてしまうという,ジャズの素晴らしさを感じさせる名演集だと思う。

 そう。『キャトル』こそが,管理人の愛聴するフリージャズの決定盤である。力のあるメロディーと自由な即興の素晴らしいバランス。決してアンサンブルを壊すことのない「一癖も二癖もある個性あふれるアドリブ・ショー」の決定盤なのである。

 『キャトル』のハイライトは,何と!1曲目に持ってきた名バラードの【FOR YOU】である。
 板橋文夫の美しいピアノのイントロだけで全身が持って行かれるが,そこに太く暖かく鋭いテナーサックスピアノのメロディーを上書きしていくと,ため息が漏れてしまう。
 静かに盛り上がる片山広明テナーサックスが次第に熱を帯びて絶叫し始める。井野信義ベースは殆どラインを刻まない。アルコ弾きで縦横無尽にフリーキーで美しい低音を響かせている。咆哮するテナーの周りを星雲のように取り囲むベースの向こうで,ピアノがキラキラと銀河のように鳴っている。

 いや〜,美しい。聴いているだけなのに,無意識のうちに片山広明テナーサックスに合わせて絶唱している管理人に気付くのが常!
 片山広明は【FOR YOU】の美メロを捉え直して歌い上げている。情感に満ち満ちた究極のバラード演奏にアッパレ!

QUATRE-2 続くシャンソンの名曲【パリの空の下】。お洒落の雰囲気などカケラもない。片山広明が“軽くひっかけたかのような”場末の小汚く薄暗キャバレー・テナーが大絶叫!
 こんな片山広明が大好きだ。ジャンルに拘泥しないフリージャズ・サウンドでドラマを表現している。片山広明のブルース魂に一人酔いしれてしまう。板橋文夫効果が効きまくっている。

 3曲目の【MARCH】が大好き。4曲目の【QUATRE】も大好き…。解説するスペースがないので5−8曲はまとめて記すが,豪放で男臭くて人懐こく哀愁を併せ持つ,で根本はラジカル…。

 なんだかんだで『キャトル』は結構な回数聴いているのだが,聴く度に,ああ片山さんはいいなあ,と思う。美しいということは形式ではないんだ,ということが良く分かる。
 『キャトル』とはそんなアルバムである。

  01. for you
  02. sous le ciel de paris
  03. march
  04. quatre
  05. hallelujah
  06. por una cabeza
  07. improvisation
  08. nairobi star (dedicated to ishikawa akira)

(スタジオ・ウィー/STUDIO WEE 2002年発売/SW-207)
(紙ジャケット仕様)

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ゲイリー・バートン / ジェネレーションズ5

GENERATIONS-1 ゲイリー・バートン小曽根真,そうして「新星」ジュリアン・レジ
 『GENERATIONS』(以下『ジェネレーションズ』)とは,そんな三世代のスター揃い踏みの意味なのであろう。仮にそうでないとしても『ジェネレーションズ』の音造りは3者が均等にリーダーとして機能している。だから『ジェネレーションズ』で良い。

 一般的にヴィヴラフォンピアノギターって,音がぶつかり合って一緒に演奏するのは難しいと思われている。でも『ジェネレーションズ』の名手3人にとっては“おちゃのこさいさい”。すぐにハーモニー&いつでもアンサンブル!
 その意味でジュリアン・レジは凄い。というか個人的には,その意味でだけ,凄い。ジュリアン・レジは過大評価されている。本意人がかわいそうである。

 …で『ジェネレーションズ批評となると,どうしても「ヴィヴラフォンピアノギター」の超一流品「ゲイリー・バートンチック・コリアパット・メセニー」の『ライク・マインズ』と比較してしまうのだが『ライク・マインズ』が“原色キラキラ”ならば『ジェネレーションズ』は“淡いセピア色”である。

 そう。『ジェネレーションズ』を聴いていると,あの良い時代の音がよみがえってくる感じで胸がいっぱいになってしまう。特にゲイリー・バートンヴィヴラフォンが夢見るように美しい。

 「誰とでも最良の音で合わせられる」ことがゲイリー・バートンの凄さなのだが,こと『ジェネレーションズ』では,意識して音を合わせにいかなくてもよい小曽根真ジュリアン・レジとの共演で大いにリラックスして「自分のヴィヴラフォンの世界」に没入している。
 こんなにも“オレオレな”ゲイリー・バートンは久々だし,ここまで前に出るのは珍しい。

GENERATIONS-2 そんなゲイリー・バートンの“オレオレ”の理由こそ「小曽根真 THE TRIO」の存在である。
 いや〜,気持ち良い。伴奏役に回った「小曽根真 THE TRIO」が最強である。とにかく「軽いのに重い」のだ。存在感が薄いような全体のサポート役ながら,絶対になくてはならない重要なポジションを占めている。

 これはゲイリー・バートンさん。ジュリアン・レジの方は「高額な移籍金」でビッグ・クラブへ手放すことがあるとしても,小曽根真だけは「契約の延長に次ぐ延長」で生涯手放すことはしないでしょうねっ。

 ゲイリー・バートンにとっては,レギュラーが小曽根真であり,スペシャルがチック・コリアなのである。

  01. FIRST IMPRESSION
  02. EARLY
  03. GORGEOUS
  04. WHEATLAND
  05. TAKE ANOTHER LOOK
  06. SYNDROME
  07. TEST OF TIME
  08. THE TITLE WILL FELLOW
  09. LADIES IN MERCEDES
  10. HEROES SIN NOMBRE

(コンコード/CONCORD 2004年発売/VICJ-61174)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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小曽根 真 FEATURING NO NAME HORSES / ROAD5

ROAD-1 J−ジャズ界のサラブレットばかりが集まった,スーパー・ビッグ・バンドノー・ネーム・ホーセズは1stの録音時からすでに完璧に出来上がっていた。

 あの『NO NAME HORSES』から10年。2枚目『』以降は曲の良さとアレンジの良さで勝負するビッグ・バンドへとモデル・チェンジし,小曽根真の個性がノー・ネーム・ホーセズの個性に反映されるようになったと思う。

 そんなノー・ネーム・ホーセズが10周年記念として“ビッグ・バンド交響詩”なる新スタイルで演奏したのが『ROAD』である。

ROAD-2 『ROAD』の制作には,知らぬ間にクラシック界でも有名になってしまった小曽根真の音楽観が顕著に表現されている。メンバーのソロもふんだんにフィーチャーされて進行する「組曲」にはクラシックの響きが存分に感じられる。

 しかし,どこをどう切り取っても『ROAD』からは「クラシック風」しか飛び出して来ない。『ROAD』から飛び出してくるのは紛れもなくジャズビッグ・バンド

 ゆったりしたリズムで朗々としたメロディーが紡がれるかと思ったら,一転してスピーディーでスイング感あふれる展開にチェンジしたり,またその逆も。スリリングで先が読めないところは,その構成力の鋭さとツワモノたちの隙のない演奏力の成せる技なのだろう。

ROAD-1 【ROAD】も【RHAPSODY IN BLUE】も30分に及ぶ大曲ながら,創造豊かなアレンジと多彩なサウンドが聴く者の耳を惹き付けて離さない。何度聴いてもグッと来る。『ROAD』の評価が定まるには5年くらいは聴き込みに時間がかかる。

 そう。『ROAD』は小曽根真の全アルバムの中でも“屈指の名演”として指名されることであろう。
 『ROAD』にはビッグ・バンドの,そしてノー・ネーム・ホーセズの「無限の可能性」が宿っている。

  01. Big Band Symphonic Poem "ROAD"
    . Birth of a Band
    . A Miracle Fades Away
    . Embracement
    . Doubts
    . Endlwss Battle
    . "Road" to Freedom
  02. Rhapsody in Blue

(ヴァーヴ/VERVE 2014年発売/UCCJ-2118)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/小曽根真,クインシー・ジョーンズ)

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ゲイリー・バートン・ウィズ・チック・コリア/パット・メセニー/ロイ・ヘインズ/デイヴ・ホランド / ライク・マインズ5

LIKE MINDS-1 管理人がパット・メセニー・フリークだからなのだろう。オールスター・セッションの『LIKE MINDS』(以下『ライク・マインズ』)をして,これぞ,パット・メセニーを聴くためのアルバムだと感じてしまう。

 勿論,リーダーであるゲイリー・バートンヴィヴラフォンが目立っている。いいや,このレジェンド5人組の中でも最高位はチック・コリアである。チック・コリアのあの個性的なピアノが鳴り響いている。
 フロントの黄金のトライアングルを向こうに回して,老練なデイヴ・ホランドベースがいい仕事をしているし,ロイ・ヘインズドラミングがただただ素晴らしい。『ライク・マインズ』がここまでエキサイティングしているのは多分にロイ・ヘインズのおかげである。

 でもそれでも『ライク・マインズ』を聴いているとパット・メセニーギターだけが突出して聴こえてしまう。
 ヴィヴラフォンピアノベースドラムが息の合ったインタープレイを繰り広げている音場にギターが加わった瞬間,他の4つの楽器のボリュームが下がる感覚がある。

 管理人は考えた。パット・メセニーギターばかりが目立ってしまう『ライク・マインズ』の音造りの失敗は,全員が主役を張れる「ビッグネームあるある」にある。

 ゲイリー・バートンチック・コリアは「伝統芸能」デュオパット・メセニーゲイリー・バートン・バンド出身者。チック・コリアデイヴ・ホランドマイルス・デイビスのバンドの同僚にして「サークル」の結成メンバー。ロイ・ヘインズチック・コリアピアノ・トリオのメンバー。デイヴ・ホランドロイ・ヘインズパット・メセニーギター・トリオのメンバー。

 聴けば『ライク・マインズ』の10トラック中6トラックがファースト・テイクで残りの4トラックもセカンド・テイクで録り終えたそうだ。これだけ共演を重ねた相手ばかりなのだから「阿吽の呼吸」で分かり合えるのだろう。和気あいあいと楽しい雰囲気でレコーディングが進行していった様子が想像できる。

 しかし,そんな中でも“世界一の音楽バカ”パット・メセニーだけはいつも通りの真剣勝負。共演者を知り尽くし,楽曲を知り尽くして,自分自身が今できる最高のパフォーマンスを披露する。
 それでこそ管理人が愛するパット・メセニーであり,そんなメセニーゲイリー・バートンデイヴ・ホランドロイ・ヘインズも愛している。

 チック・コリアはどうなのだろう? 過去においても『ライク・マインズ』に至るまでチック・コリアパット・メセニーの共演歴はない。そして『ライク・マインズ』以降においても2人の共演歴はない。チック・コリアは相変わらずフランク・ギャンバレばかりを重用している。
 『ライク・マインズ』を聴く限りチック・コリアパット・メセニーの相性は悪くないと思うのですが,そこは大人の事情なのでしょうか?

LIKE MINDS-2 さて,パット・メセニーギターが際立つ『ライク・マインズ』。ではパット・メセニー以外の4人の演奏が凡庸なのかというとそんなことはない。
 ヴィヴラフォンは他の誰でもなくゲイリー・バートンヴィヴラフォンだし,ピアノは他の誰でもなくチック・コリアピアノだし,ベースは他の誰でもなくデイヴ・ホランドベースだし,ドラムは他の誰でもなくロイ・ヘインズドラム

 『ライク・マインズ』を聴いて思うこと。パット・メセニーの後ろで鳴っている4人の音が超一流であるということ。超一流のジャズメンとは自分の音を持っているということ。『ライク・マインズ』はとってもいいジャズ・アルバムです。

  01. QUESTION AND ANSWER
  02. ELUCIDATION
  03. WINDOWS
  04. FUTURES
  05. LIKE MINDS
  06. COUNTRY ROADS
  07. TEARS OF RAIN
  08. SOON
  09. FOR A THOUSAND YEARS
  10. STRAIGHT UP AND DOWN

(コンコード/CONCORD 1998年発売/MVCL-24011)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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SOURCE / SOURCE5

SOURCE-1 SOURCEとは,ドラム石川雅春ベース青木智仁ギター梶原順サックス小池修トランペット佐々木史郎の5人組に,キーボード小野塚晃がスーパー・サポートとして加わるJ−フュージョンの超強力バンド。

 このメンツを眺めるとバンド結成〜即アルバム・リリースかと思いきや,何と!SOURCEは1stの『SOURCE』の発売まで7年。『SOURCE』とは,もはや円熟のベテラン・フュージョン・バンドのベスト盤の趣きである。

 結成から7年ということはSOURCEの結成は1990年前後。まだDIMENSIONDIMENSIONになる前のお話。
 青木智仁石川雅春DIMENSIONの準メンバーにとどまった理由の1つとしてSOURCEの存在があったことは間違いない。
 “超絶技巧”でリズム隊抜きのDIMENSIONと“アンサンブル”でリズム隊が主役のSOURCEとでは,増崎孝司に勝ち目はない。

 『SOURCE』の完璧な演奏を聴いていると,どうしてもブレッカー・ブラザーズウェザー・リポートを意識してしまう。特に青木智仁ベースからはジャコ・パストリアスの演奏が,梶原順ギターからはマイク・スターンの演奏が想起される。

 そう。SOURCEとはJ−フュージョンのど真ん中にしてJ−フュージョンから最も遠く離れたバンドであった。J−フュージョンの中心人物が自ら,従来の手法でのJ−フュージョンの発展を否定してみせた初めてのバンドであった。
 CD帯にある通り『SOURCE』とは「これぞ,リアル・フュージョン!!」なのである。

SOURCE-2 『SOURCE』までの7年間。SOURCEの6人はJ−フュージョンをアメリカン・フュージョンの手法で再現するためにJ−フュージョンとアメリカン・フュージョンを何度行き来し何週したことであろう。

 そうして発売された青木智仁石川雅春の自慢の1枚『SOURCE』が最高にカッコイイ! もろJ−フュージョンしているのに外タレ特有の「日本人では絶対に手に届かない」雰囲気にまで到達している! ついに日本人の限界の壁を突き破っている!

 しか〜し『SOURCE』の発売は「時すでに遅し」だったか…。アメリカ本土のフュージョン・シーンはすでにスムーズジャズへと移り変わった後であった…。

  01. N.Y.C.
  02. Speed
  03. Visiones
  04. 0-GA
  05. 723 7th Heaven
  06. Float
  07. Funky Me Funky You
  08. Flags
  09. Sponge Cakes

(Pヴァイン/P-VINE 1997年発売/PVCP-9401)

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ゲイリー・バートン & 小曽根 真 / フェイス・トゥ・フェイス4

FACE TO FACE-1 ゲイリー・バートンの凄さとは誰とだって合わせられることだと思う。同じピアノヴィヴラフォンデュエットなのに,チック・コリア小曽根真はまるで違う。
 ゲイリー・バートンヴィヴラフォンとは「リトマス試験紙」!(← ぴったりの例えが浮かびません)

 ゲイリー・バートン小曽根真デュオFACE TO FACE』(以下『フェイス・トゥ・フェイス』)を聴くまでは,てっきりチック・コリア小曽根真は同じタイプのピアニストだと思っていた。
 だが『フェイス・トゥ・フェイス』には,チック・コリア小曽根真の「似て非なる個性」が記録されている。全てはチック・コリア小曽根真の個性を“炙り出す”ゲイリー・バートンの凄さである。

 チック・コリアとの『クリスタル・サイレンス』では,チック・コリアのクリティカルな才能と共演し,小曽根真との『フェイス・トゥ・フェイス』では,小曽根真の切れ味とバランス感覚と共演したゲイリー・バートン

FACE TO FACE-2 『フェイス・トゥ・フェイス』の時点では,まだまだビッグ相手に遠慮してしまう小曽根真小曽根真の類まれな才能を誰よりも知っているゲイリー・バートンが,手加減しないで自分に向かってくるよう導いていた。

 ゲイリー・バートンデビュー前から手塩にかけて育ててきた小曽根真を“世界に売り出した”のが『フェイス・トゥ・フェイス』。
 「世界のOZONE」の快進撃は,ゲイリー・バートンと“がっぷり四つに組み合った”『フェイス・トゥ・フェイス』から始まった!

  01. KATO'S REVENGE
  02. MONK'S DREAM
  03. FOR HEAVEN'S SAKE
  04. BENTO BOX
  05. BLUE MONK
  06. O GRANDE AMOR
  07. LAURA'S DREAM
  08. OPUS HALF
  09. MY ROMANCE
  10. TIMES LIKE THESE
  11. EIDERDOWN

(GRP/GRP 1995年発売/UCCU-6195)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/藤本史昭)

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富樫 雅彦+菊地 雅章 / コンチェルト4

CONCERTO-1 研ぎ澄まされ,考え抜かれた音を即興で配置するパーカッション富樫雅彦ピアノ菊地雅章
 発せられる直前まで悩み抜き,磨かれ選び抜かれた音を精妙に配置し合う。音を奏でることは音と音の間を浮き立たせることである。そう言わんとする演奏が多い。

 「J−ジャズ界の雄」にして,日本文化に魅了され日本文化に愛された富樫雅彦ジャズの本場アメリカに魅了されアメリカに愛された菊地雅章
 そんな2人が15年ぶりの再会を果たした『CONCERTO』(以下『コンチェルト』)。15年という微妙な年月が,より一層互いの音に耳を澄まさせ,昂まるテンションを単刀直入に音化させずに,考え抜いた最適な音を最適なタイミングに配置させたのだろう。

 管理人は富樫雅彦菊地雅章の“天才”を,本当は何がどう凄いのか良く分かっていないのだが,分からないなりに唸ってしまう,と言うか唸らされてしまった,という感想である。
 まっ,富樫雅彦菊地雅章デュエットだし『コンチェルト』を聴く前からマニアックなジャズを想像していた。まっ,想像の範囲内の難解ジャズなので,正直,ちょっと安心して聴き通すことができた。

 でも2枚組を聴き通すのは,正直,しんどい。『コンチェルト』は本来は富樫雅彦菊地雅章のプライベート録音で良かったと思う。2人だけの思い出として世に出す必要はなかったと思う。
 それくらいに2人だけの音世界どっぷり。外界のことなど眼中にない内向指向のデュエットである。難解でも聴いていて楽しくなる演奏もあるが『コンチェルト』の厳しすぎるデュエットは聴いていて楽しくなる種類の高度なジャズではない。

 だから『コンチェルト』のコンセプトとしては,2人が納得いくまで上手くいくまでテイクを重ねている感じ。実験の全てが本テイクという感じ。ストイックな演奏が続いているので,途中で意識が飛ぶ感じ。フリージャズの悪弊が記録された感じ。

CONCERTO-2 管理人の結論。『コンチェルト批評

 『コンチェルト』における富樫雅彦パーカッションは,リズムではなくリーダー楽器として音を出している。
 『コンチェルト』を聴いてみて,中和させるベーシスト,リズム・キープのベーシストの有難みをシミジミと感じる…。

  DISC-1
  01. Two In Silence
  02. Walking Step
  03. Pause
  04. Memories
  05. Kid's Nap
  06. All The Things You Are
  07. Misterioso

  DISC-2
  01. Riding Love's Echoes
  02. Relighting
  03. Mezame
  04. Little Eyes
  05. Passing Breeze
  06. Utviklingssang
  07. Unbalance

(日本クラウン/NIPPON CROWN 1991年発売/CRCJ-2005〜2006)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/内田修,清水俊彦)

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ゲイリー・バートン&フレンズ / リユニオン5

REUNION-1 『REUNION』(以下『リユニオン』)は100%パット・メセニーのためのアルバムである。
 でもこれってパット・メセニーの意志ではない。全ては“大将”ゲイリー・バートンが仕組んだ「フィーチャリングパット・メセニー」な名企画。
 ズバリ『リユニオン』の真実とは,ゲイリー・バートンパット・メセニーを“神輿に担いだ”アルバムなのである。

 ゲイリー・バートンが『リユニオン』で「フィーチャリングパット・メセニー」を制作できた理由は,ゲイリー・バートン・グループから独立した後もパット・メセニーのことを気にかけチェックしていたからに他ならない。
 …というよりもパット・メセニーの音楽を,いつしかファンの立場で追いかけてきたからに他ならない。

 元来が「ジャズ・ロック」出身のゲイリー・バートンである。『STILL LIFE(TALKING)』『LETTER FROM HOME』『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』で“天下を獲った”パット・メセニーのPOPな音楽性に魅了されて「オファー・レター」に至ったように想像する。

 かつては共同で音楽を創造してきたゲイリー・バートンパット・メセニーであるが,今となっては2人の立ち位置に相当な開きが生じている。この結果は両者の音楽性の違いでもなければ,パット・メセニーの音楽の嗜好の変化が原因でもない。
 単純に方法論の違いによるものである。同じ対象物に違うベクトルでアプローチをかけている。ヴィブラフォンギターという楽器特性の違いもあることだろう。

 ただし,そんなことは重要ではない。違っているのが当然のこと。根幹にある共通イメージを擦り合わせる作業を通して,1人では到達することはできなくても2人でなら到達できる新たな音風景を見つけたい。そんな意欲が創造力を駆り立てている。実に素晴らしいパートナーシップ。実に素晴らしい師弟関係。

 『リユニオン』の「新しいのに懐かしい響き」は,あのままパット・メセニーゲイリー・バートンと活動を共にしていたのでは完成することはなかった。一旦,離れて「やっぱり好き」を再確認できたからこそ,最愛の音を奏でる歓びが爆発したのだろう。ユニゾン,ハーモニー,チェイス,どれもが良い響きで惚れ惚れする。

REUNION-2 『リユニオン』でゲイリー・バートンが選んだ「フレンズ」とは,ピアノキーボードミッチェル・フォアマンベースウィル・リードラムピーター・アースキンの面々。
 いずれもパット・メセニー・ファンなら聴いてみたいGRPだから実現できた組み合わせ。もはや公私混同レベルで“最良のパット・メセニー”をゲイリー・バートンが引き出している。

 パット・メセニーとしてもゲイリー・バートンの隣りで演奏するのが大好きなのだろう。ゲイリー・バートンとぶつからない和音を探し出すのが楽しくてたまらない感じのギターであって,パット・メセニーが「若手」に戻ったイメージがある。事実,楽曲のサビの部分で「前へ前へ」と突進してくる。美味しい部分は全てパット・メセニーが持って行っている。実に楽し気で雄弁なギターが鳴っている。

 ゲイリー・バートンパット・メセニーは「歌の恋人」。お口の恋人はロッテである。

  01. Autumn
  02. Reunion
  03. Origin
  04. Will You Say You Will
  05. House On The Hill
  06. Panama
  07. Chairs And Children
  08. Wasn't Always Easy
  09. The Chief
  10. Tiempos Felice (Happy Times)
  11. Quick And Running

(GRP/GRP 1990年発売/UCCR-9009)
(ライナーノーツ/ニール・テッサー,前田圭一,成田正,悠雅彦)

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ゲイリー・バートン / アローン・アット・ラスト5

ALONE AT LAST-1 ゲイリー・バートンの“最高傑作”が『ALONE AT LAST』(以下『アローン・アット・ラスト』)である。

 『アローン・アット・ラスト』とは,LPのA面がモントルー・ジャズ・フェスティバルにおける圧巻のソロ・パーフォーマンス。B面がこちらも“マルチ鍵盤奏者”ゲイリー・バートンとしての圧巻の一人多重録音によるカップリング盤。

 最初は完全にモントルー・ジャズ・フェスティバルライブ録音にKOされた口。A面はライブ盤だと知らずに聴き始めて「いい演奏だな」と余韻に浸っていると,直後の割れんばかりの大喝采! 大袈裟でも何でもなく「えっ,ええ〜!」と,脳天はかち割られるは,腰を抜かしそうになるはの大衝撃! 何この音楽&何こんなジャズ

 B面も一人多重録音盤だと知らずに聴き始めて,ピアノオルガンの音色が聴こえてきて「あぁ,誰かとのデュエットなのか」と思ってしまうくらい,本職顔負けのゲイリー・バートンの「一人“鍵盤群”多重録音」に魅了されてしまった。そうして聴けば聴く程好きになってしまった。

 『アローン・アット・ラスト』は曲順が進む程に“アガル”1枚である。当初はキース・ジャレットの【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】が大好きで1曲目ばかり聴き,1曲目だけを聴くためのアルバムであったのだが,次第にライブ録音の3曲を続けて聴きたくなった。そうして4曲目以降も聴くようになり,オオラスの【CHENGA DE SAUDADE(NO MORE BLUES)】にシビレルようになっていった。

 ゲイリー・バートンのハイテクニックがアクロバティックだけど最高にクールなヴィブラフォン。今にもくずれそうな氷細工のごとき繊細な表現がおとぎの国の耽美的なヴィブラフォン
 どうしても室内楽的なヴィブラフォンの音色に引っ張られてしまうが,よく聴くと音数も多いしスイングしている。
 HOTな熱量で叩かれるCOOLなヴィブラフォンが最高だ! これぞジャズの醍醐味インプロヴィゼーション

 『アローン・アット・ラスト』には,当時のゲイリー・バートンの「ジャズ・ロック」志向も見え隠れしている。
 『アローン・アット・ラスト』におけるゲイリー・バートンの「温故知新」的なニュアンスの妙に「感動が次から次へと押し寄せて来る」秘訣が隠されていると思う。

ALONE AT LAST-2 とにかく『アローン・アット・ラスト』におけるゲイリー・バートンの面持ちは,チャーリー・パーカーマイルス・デイビスソニー・ロリンズジョン・コルトレーンなど一握りのジャズ・ジャイアンツしか放つことのなかったオーラを身にまとっている。

 ゲイリー・バートンは,そんじょそこらのジャズ・ジャイアンツとは格が違う。『アローン・アット・ラスト』での「決定的な名演」に酔わないジャズ・ファンなど一人もいない。

  01. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
  02. GREEN MOUNTAINS/ARISE, HER EYES
  03. THE SUNSET BELL
  04. HAND BAGS AND GLAD RAGS
  05. HULLO, BOLINAS
  06. GENERAL MOJO'S WELL LAID PLAN
  07. CHENGA DE SAUDADE (NO MORE BLUES)

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/WPCR-27085)
(ライナーノーツ/後藤誠)

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ネイティブ・サン / アクア・マリン5

AQUA-MARINE-1 ジャズフュージョン・ファンにとって「ネイティブ・サン」とは「ジャズフュージョン」期の『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』の2枚であろう。
 管理人もその意見に全面的に同意する。学生時代には毎日のように『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』を聴いたものだった。

 ただし個人的には「ネイティブ・サン」と来れば,初期の「ジャズフュージョン」のイメージではなく,中期「トロピカル・フュージョン」をイメージする。
 全ては「ネイティブ・サン」のベスト盤『AQUA−MARINE』(以下『アクア・マリン』)の影響である。

 こうなったのには理由がある。過去にも書いたが上京のせいである。上京するにあたってレコードは持参できない。カセット・テープは持参して行ったが,次第にCDだけを聴く習慣が身に付いてしまった。
 そのCDもお金がないので,どれか1枚買うとしたらベスト盤を買う。

 渡辺香津美の『PERFECT RELEASE』しかり。高中正義の『TAKANAKA’S COCKTAIL』しかり。そして「ネイティブ・サン」の『AQUA−MARINE』しかり…。

 ただし「ネイティブ・サン」の『AQUA−MARINE』の欠点は『RESORT』『CARNIVAL(LIVE AT MONTREUX)』『GUMBO』『DAYBREAK』の4枚からのセレクションであって,肝心の『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』からは1曲も入っていないところ。

 中期「トロピカル・フュージョン」の「ネイティブ・サン」を知らなかった管理人。『アクア・マリン』は全曲が新曲。聴いて「あぁ懐かしい」の感情はなく,峰厚介サックスからはジャズのイメージが消えている。

 でもその代わりにグレッグ・リーベース・ラインに魅了されたし,本田竹曠キーボードが“楽園”していて,今までとはまるで違う“軟派な”「ネイティブ・サン」が,これはこれで大好きになっていった。

AQUA-MARINE-2 その後,お金に余裕が出来て,って言うか,お金があればジャズフュージョンにつぎ込んでいくようになったので,渡辺香津美高中正義のアルバムはCDで買い直してきた。
 ただし「ネイティブ・サン」については,ここ最近まで買い直すことはしなかった。もはや管理人にとっての「ネイティブ・サン」とは『アクア・マリン』の「ネイティブ・サン」になったから!

 ズバリ『アクア・マリン』とは,ザ・スクェアの『R・E・S・O・R・T』以前の『リゾート』ミュージック!
 初期「ネイティブ・サン」が成し得なかった,よりソフトケイテッドされたリラックス・ムードでの黄金サウンド!

 ジャズのプライドを捨てフュージョンという実を得た,本田竹曠峰厚介の“真のジャズメン・スピリッツ”が最高に「トロピカル」なのである。

  01. Bay Street Talkin'
  02. Caribbean Manatee
  03. Fantasia Carioca
  04. Freeport To Nassau
  05. Calipso Street
  06. Evolution Of The Nights
  07. Longing
  08. Toward Summer

(ポリドール/POLYDOR 1986年発売/H32P-20071)

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ゲイリー・バートン / ゲイリー・バートン&キース・ジャレット4

GARY BURTON & KEITH JARRETT-1 ゲイリー・バートンキース・ジャレット名義の『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』)が1971年。
 チック・コリアゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。

 1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみるとチック・コリア優位は明白である。

 そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のレコーディングは,実はゲイリー・バートンキース・ジャレットデュオではなく,ヴィブラフォンゲイリー・バートンギターサム・ブラウンベーススティーヴ・スワロードラムビル・グッドウィンから成るゲイリー・バートン・グループにゲスト・プレイヤーとしてキース・ジャレットが一人参加した「ジャズ・ロック」である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの電化マイルスのバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデンポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。
 そう。目指す方向性はゲイリー・バートンキース・ジャレットは“同士”であった。

 つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。気軽で興味本位が共演の理由。

 …が,しかし…。ここがゲイリー・バートンの凄さなのだと思うが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
 特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。

 そう。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。ゲイリー・バートンキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。

GARY BURTON & KEITH JARRETT-2 ゲイリー・バートンが託したキース・ジャレットへの「裁量権」は,音楽的に大きな成功を収めている。
 その1つは,キース・ジャレットギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のみであるが,案外相性は悪くはないという証明してくれている。サム・ブラウンパット・メセニーであったなら,もっとギタリストとの共演アルバムが増えたであろうに…。

 もう1つは【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしに【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミーは受賞できなかった。

 ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニーチック・コリア小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
 そうなれば,その話の結論はこうであろう。ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい! 

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者であった。
 代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットスタンダーズ・トリオも当然手付かず。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットとは,ゲイリー・バートンよりもチック・コリアよりも格下な若手有望株の1人にすぎなかったという事実。

 管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい…。

  01. GROW YOUR OWN
  02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
  03. COMO EN VIETNAM
  04. FORTUNE SMILES
  05. THE RAVEN SPEAKS

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ゲイリー・バートン / 鼓動5

THROB-1 キース・ジャレット命の管理人。全キース・ジャレット・ファンにとって「完全コレクション」への鬼門の1枚は長らく『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』であった。
 世界最高のジャズメン,と言うより,世界最高のミュージシャン=キース・ジャレットのアルバムだと言うのに『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』がなぜCD化されないのか?

 (途中経過は省略)『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』が1994年についにCD化された。しかしキース・ジャレットのラインではなくゲイリー・バートン・サイドとしてのCD化である。
 何と!『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』単体ではなく,ゲイリー・バートンの『THROB』(以下『鼓動』)との「2in1」でのリリース。

 まぁ,不満はあるっちゃあるが,まずは待望の『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のCD化が実現しただけでも大喜び! そしてこれが重要なのだが,オマケ程度に考えていたカップリングの『鼓動』の出来が素晴らしい。
 ここだけの話『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』が星4つであるならば『鼓動』は星6つ〜。

 『鼓動』が話題になっていないとはけしからん。ゲイリー・バートンの一番美味しい音楽はラリー・コリエルとではなくアトランティック移籍後に吹き込んだ「ジャズ・ロック」にあると思っている。

 ジャズってアメリカの黒人の音楽とはアフリカの音楽だと思われているが,最近優勢なジャズとは実は白人のジャズである。その始まりがちょうどゲイリー・バートンアトランティックに吹き込んだ,ポップス,ロック,クラシック,カントリー&ウェスタン,フォークとの融合の時代。ここにエレクトリックが入ってきた時代。それなのにミニマルっぽい。超面白いジャズからフュージョンへの橋渡しの時代。

 ジャズの中で細分化される全てのジャンルにマイルス・デイビスが関わっており,フュージョンにおいても『ビッチェズ・ブリュー』の評価が高いが,実はゲイリー・バートンの『鼓動』もフュージョンへ移行していくジャズ・シーンを語る上では欠かせない。
 もはやジャズとはブルースをやらないのが定番となり始めた,その走りの1枚が『鼓動』であって,聴いていてメチャメチャ面白い。

THROB-2 まっ,今聴くと「時代の名盤」の匂いが漂っているので評価は低いが,若きゲイリー・バートンのナイーブな感性と大胆な冒険スピリットが混然一体となって陶酔の世界へと誘ってくれる。

 ゲイリー・バートンのルーツとしてのカントリー・ロックとかフォークとか電化ジャズとかが『鼓動』で完璧に融合している。
 ポップでスピリチュアルな「ジャズ・ロック」のハイブリット化が『鼓動』で完成されている。

 ジャズとして,ロックとして,フュージョンとして聴いても実に面白い。『鼓動』の「ジャズ・ロック」がレトロっぽいのに五感をフルに刺激してくる。
 ゲイリー・バートンの全ディスコグラフィー中,一番エキサイティングなアルバムが『鼓動』だと思っている。あのキース・ジャレット以上に先進的なゲイリー・バートンの「ジャズ・ロック」が聴けば聴くほど面白い!

  01. HENNIGER FLATS
  02. TURN OF THE CENTURY
  03. CHICKENS
  04. ARISE, HER EYES
  05. PRIME TIME
  06. THROB
  07. DOIN THE PIG
  08. TRIPLE PORTRAIT
  09. SOME ECHOES

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1969年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ネイティブ・サン / サヴァンナ・ホット・ライン5

SAVANNA HOT-LINE-1 アコースティックジャズからエレクトリックジャズへの変化を体験してきた本田竹曠峰厚介村上寛の面々が,フュージョンという新しいジャズにアプローチすると『SAVANNA HOT−LINE』(以下『サヴァンナ・ホット・ライン』)のように仕上がるのだと思う。

 『サヴァンナ・ホット・ライン』のテンションは相変わらずジャズ・ベースである。ただし『サヴァンナ・ホット・ライン』がジャズではなくフュージョンとして聴こえるのは,フュージョン・チックなPOPなテーマをアドリブのネタとしてではなく“本田竹曠のHAPPYな世界観”としてバンド・メンバー全員が寄せてきている。

 そう。『サヴァンナ・ホット・ライン』はジャズ・ベースなのに幸福感で満ちている。本田竹曠キーボードが構図を作り,峰厚介サックスが色彩を付ける。
 両者ともにすでに名の売れたジャズメンとしての名声を得てはいたが「ネイティブ・サン」での活動を通して,表現の幅を広げ奥行きを深めているように思う。

 「ネイティブ・サン」で本田竹曠が追い求めていた世界観が,渡辺貞夫ナベサダフュージョンとクロスする。
 事実「ネイティブ・サン」は本田竹曠渡辺貞夫グループからの独立後,時間を置かずに結成されたフュージョン・バンド。
 渡辺貞夫がブラジルやアフリカ方面であれば,本田竹曠はもっと広範囲をカバーしておりトロピカルなワールド・ミュージック方面へと音楽を推進していく。 

SAVANNA HOT-LINE-2 峰厚介渡辺貞夫ではなくウェイン・ショーターに近い部分の表現が「ネイティブ・サン」がナベサダフュージョンと大きく区別される特徴だと思う。
 それ以外は兄弟バンドのように思える。楽器は異なれど渡辺貞夫本田竹曠エレクトリックジャズで共に感じ,共に考え,共に経験してきた音楽が「8ビートや16ビートの新しいジャズ」という同じフィルターを通ってアウトプットされている。

 『サヴァンナ・ホット・ライン』の全6曲は名曲ばかりである。1曲1曲にドラマティックなストーリー性がある。『サヴァンナ・ホット・ライン』を聴く度に「ネイティブ・サン」に訴求されてしまう。

  01. ANIMAL MARKET
  02. SEXY LADY
  03. SAVANNA HOT-LINE
  04. IN SEARCH OF BEAUTY
  05. AFRICAN FANTASY
  06. FAREWELL, MY LOVE

(ビクター/JVC 1979年発売/VICJ-77017)
(☆UHQCD仕様)
(ライナーノーツ/松下佳男,金澤寿和)

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ゲイリー・バートン / 葬送4

A GENUINE TONE FUNERAL-1 『A GENUINE TONE FUNERAL』(以下『葬送』)は,作・演出ともにカーラ・ブレイのアルバムである。
 『葬送』におけるゲイリー・バートンの役割とは,ただカーラ・ブレイを「世に売り出す」お手伝いをした。ただそれだけのことである。

 よって『葬送』は「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」ゲイリー・バートンの音楽性とは切り離して評価されるべきでアルバムである。『葬送』の中に「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンの音楽世界は1mmも展開されていないと思う。

 事実『葬送』の中で聴き取れる,ヴィブラフォンゲイリー・バートンギターラリー・コリエルベーススティーヴ・スワロードラムロンサム・ドラゴンによるレギュラー・カルテットの存在感は極めて薄い。

 ゲイリー・バートンヴィブラフォンソロも,ラリー・コリエルギターソロも「ジャズ・ロック」寄りではあるのだが『ダスター』の時のように跳ねていないし破綻していない。明らかに前衛などではない。
 その理由こそがカーラ・ブレイの書き上げた「構築美」の“縛り”にある。例えば,新宿にある「モード学園コクーンタワー」のような,今までにない斬新なデザインの建築物を立てている雰囲気がある。

 そう。ドラマチックでカラフルで美メロが続く「組曲」『葬送』のアルバム名を耳にして,まず思い浮かべるのは,カーラ・ブレイピアノであり,マイク・マントラートランペットであり,スティーヴ・レイシーソプラノサックスであり,ガトー・バルビエリテナーサックスであり,ジミー・ネッパートロンボーンであり,ハワード・ジョンソンチューバである。
 こちらのゲスト陣の演奏の方が,ゲイリー・バートンラリー・コリエルソロ以上に,よっぽど跳びはね破綻を聴かせてくれている。

 完全に「裏方稼業」なゲイリー・バートン・カルテットであるが,こんな異様な叙事詩的な音世界は,若者たちに支持されているゲイリー・バートン・カルテットだからこそ,そしてジャズの変革を目指していたゲイリー・バートン・カルテットでなければ発表できなかったはず。
 ゲイリー・バートンの方もカーラ・ブレイの斬新な「持ち込み企画」は「渡りに船」。WIN−WINの関係性が産んだ“時代の名盤”の誕生であった。

A GENUINE TONE FUNERAL-2 管理人は『葬送』の「死者との会話」的なイメージが嫌いだ。金管の混沌としたハーモニーがおどろおどろしい。それで『葬送』はジャズとしてではなくサウンドトラックとして楽しんでいる。『葬送』=エンターテインメント・コメディとして捉えている。

 『葬送』のメイン楽器は,実際には鳴っているはずのない“ドラ”であり“爆竹”である。そう。『葬送』のアルバム・ジャケットがイメージを指し示す,中国とかインドとか香港とかが舞台の東洋映画のアレなのである。そう言えば伊丹十三の「お葬式」という映画もあったよなぁ。

 それにしても『葬送』を初めて聴いたのは25歳ぐらいの時でして,その時は「お葬式」とは悲しいものであるはずなのに,明るく開けっぴろげな音楽性に疑問を抱いていたはずなのに,51歳になって「お葬式」に何回も実際に出席した経験を通して『葬送』のような,最初は泣いても最後は笑い合える「お葬式」が理想だよなぁ,と思ってしまった自分に成長と老いを感じてしまいました。

  01. The Opening〜Interlude:Shovels〜The Survivors〜Grave Train
  02. Death Rolls
  03. Morning (Part 1)
  04. Interlude:Lament〜Intermission Music
  05. Silent Spring
  06. Fanfare〜Mother of the Dead Man
  07. Some Dirge
  08. Morning (Part 2)
  09. The New Funeral March
  10. The New National Anthem〜The Survivors

(RCA/RCA 1968年発売/BVCJ-7330)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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