GROOVE GLOBE-1 F1と聞くと読者の皆さんは何を連想するだろうか? 恐らく多くの人は「HONDA」であり「TOYOTA」であり,セナ,シューマッハ,佐藤琢磨かもしれない。
 しかしフュージョン・ファンであるならば,間違いなく“T−スクェア&『TRUTH』”であろう。あのテーマ・ソングは,紛れもなくJ−フュージョン最大のヒット曲である。

 さて,当時のことを思い返すと,複雑な心境にあったことを思い出す。ずっと応援してきたバンドが,やっと売れて良かった,と思う反面,周囲がこぞってT−スクェア(『TRUTH』当時はザ・スクェア)を称賛している。まるで手のひらを返したかのように…。

 「T−スクェアは『TRUTH』だけのバンドじゃないぞ〜。おまえら真のスクェアの姿を見てやってくれ〜」。そう叫びたかった! インディーズ時代からメジャーになるまで,あるバンドを追いかけた経験がある人なら共感いただけることと思う。

 そして今,管理人はまたもこう叫びたい! 「T−スクェアは『TRUTH』だけのバンドじゃないぞ〜。おまえら真のスクェアの姿を見てやってくれ〜」。
 そう。T−スクェアは一発屋などではない。『TRUTH』以前も,ずっとJ−フュージョンの人気バンドだったし『TRUTH』以後も,ずっとJ−フュージョンの人気バンドなのだ。

 そこで『GROOVE GLOBE』(以下『グルーヴ・グローブ』)! 『グルーヴ・グローブ』には正直,管理人も驚かされた。
 デビュー当時からT−スクェアザ・スクェア)にはポップな印象を持っている。キャッチーなメロディーが良質な演奏で楽しめる。そんなイメージを持っている。
 しかし『グルーヴ・グローブ』では,以前のスクェア“らしさ”が消えている。最初に違和感を感じたのである。

 『グルーヴ・グローブ』で感じた,違和感の理由の1つはバンド形態ではなくユニット期の最終アルバム,それも“半分バンド:半分ユニット”状態のT−スクェアにある。

 よくよく聴き返してみる。安藤まさひろの地蔵ギター,復帰した伊東たけしのくすんだサックスの味は以前と何も変わっていない。
 そこへドラム則竹裕之という元メンバーが参加している。「伝説の5人」の「5分の3」が揃ったザ・スクェアの安定がある。

 そしてそこへサポート・メンバーの立場にして,すでに楽曲を提供した「準メンバー」の河野啓三と『グルーヴ・グローブ』から参加した森岡克司の新しいスタイルのベースが“半分バンド:半分ユニット”状態のT−スクェアに変化をもたらしている。

 でもそれだけではない。バンドかユニットか,ではなく,曲調が違うのだ。この手のサウンドは『TRUTH』の以前にも以後にもなかった。
 もしかしたら今後,T−スクェアは『TRUTH』の以前以後ではなく『グルーヴ・グローブ』の以前以後で語られるようになるのかもしれない。

GROOVE GLOBE-2 いえいえ。T−スクェアのファンの間では,アルバム単位で語られるというよりもサックス奏者の在籍時の音楽性について語られるのが「未来永劫」一般的。
 伊東たけしの退団前,本田期,宮崎期,伊東たけしの復帰後の4パターン。本当はユニット期があるし,田中豊雪和泉宏隆松本圭史河野啓三坂東慧といった個性派の面々在籍時で話されることもある。

 その意味で『グルーヴ・グローブ』は森岡克司について語られるべきアルバムである。『グルーヴ・グローブ』で感じた変化の本質は安藤まさひろの“新たなチャレンジ”であろう。バンドとして森岡克司の超絶すぎるベース・プレイを売り出したいのではなかろうか?

 確かに森岡克司は斬新なベーシストであって,安藤まさひろが目を付けた気持ちも良く分かる。
 しかし,森岡克司のカラーが今までのスクェア・サウンドにマッチするかどうかは,かなり疑問である。管理人には今後のスクェアの存続をも左右する“大博打”に思えてならない。

 『グルーヴ・グローブ』で舵を切った「フィーチャリング森岡克司」のハンドルを次回作でも継続するのか? それとも以前の曲調に戻すのか?
 『グルーヴ・グローブ』は“現在の”T−スクェアを知る上での問題作。個人的にはまだ耳が慣れずに好きではない。

 
01. DREAM WEAVER
02. I'M IN YOU
03. FUTURE MAZE
04. JUNGLE FEVER
05. PEACEMAKER
06. CAPE VERDE
07. MOON
08. DON'T TELL ME A TRUTH
09. MIRACLE CITY
10. IN A SWEET TRAP

 
T-SQUARE
MASAHIRO ANDOH : Acoustic Guitar, Electric Guitar
TAKESHI ITOH : Alto Saxophone, Soprano Saxophone, EWI, Flute

Support Musicians
HIROYUKI NORITAKE : Drums
KEIZOH KAWANO : Keyboards, Acoustic Piano
KATSUJI MORIOKA : Bass

Additional Musician
MICHAEL S. KAWAI : Percussion

(ヴィレッジ/VILLAGE 2004年発売/VRCL-10002)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】「ホログラム・シート」封入

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出エジプト記31章 神の指によって2枚の石板が書かれる
ホレス・シルヴァー 『フィンガー・ポッピン