アナログレコード

 ソロ・ピアノに始まって,デュオ,トリオ…。ジャズは小編成ものの人気が高い。それはプレイヤー各人の自由度が高く,より個性を発揮しやすいからなのだろう。
 しかし真に味あるジャズメンであれば,たとえ大編成の中でプレイしたとしても,その“魂の叫び”は埋没することなく,きっちりと光り輝くものである。逆に言えば,ジャズメンの個性を発揮しやすいのは小編成よりも大編成の方であると言える。
 大編成の中で,アンサンブルを崩すことなく“自分の音”を表現できないのであれば,ソロイストとして大成するのは難しい。言わば大編成というフォーマットはジャズメンの個性を計る“試金石”なのである。

 『THE LITTLE GIANT』(以下『ザ・リトル・ジャイアント』)は,ジョニー・グリフィンのセクステット編成が楽しめる。
 今回はフロントにテナー・サックストランペットトロンボーンの3管が並んでいる。普段,小編成のジャズばかり聴いている人には新鮮に聴こえるのではないだろうか? 3ホーンは正に圧巻&ド迫力! ジャズの楽しい聴き方の一つとしてお奨めできる。
 さて,ここでなぜセクステットについて触れたのか? それこそ,ジョニー・グリフィンの個性を“味わう”のに最適と思えるからである。

 『ザ・リトル・ジャイアント』というCDタイトルは,ジョニー・グリフィンのニック・ネームでもある。そう。ジョニー・グリフィンと言えば「ハード・ブローイング・テナー」が代名詞!
 ジョニー・グリフィンの個性は相当抜きん出ていて,ハード・ブローだけを取り上げれば,あのソニー・ロリンズも,ジョン・コルトレーンさえも寄せ付けない,超強烈の圧勝だ!
 しかし,管理人が思うジョニー・グリフィンの個性,本質とはジョニー・グリフィン自身のテンションの高さではない。“周囲をハイ・テンションへ取り込むテナー”。これである。

 『ザ・リトル・ジャイアント』でも「ハード・ブローイング・テナー」の熱演が,セクステットのテンションを上げている。全員ノリにノッテいる。この“確信犯”の働きを聴き分けることさえできるなら,セクステットの豪華な共演,豪華なジャズを心から楽しむことができるだろう。

(1959年録音/VICJ-2206)

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