
デューク・ピアソンの名盤群の中にあって,管理人の一番の愛聴盤が『スイート・ハニー・ビー』である。
どうですか! 『スイート・ハニー・ビー』のジャケットの雰囲気は? 豊かなアメリカン・ミュージックの象徴,まるでモータウンみたいでしょ?
『スイート・ハニー・ビー』とは「甘いミツバチ」のことである。明るくサンサンと,しかし少し色褪せたオレンジとイエローの「ミツバチ」カラーのジャケット写真同様,レトロでお洒落なミツバチのダンス・ミュージックの完成である。
これぞデューク・ピアソンによる“ピアソン・ハーモニー”そのものである。一度聴いたら忘れられない,歌って踊れるアンサンブル。スマートな演奏がお洒落でハッピーだと思う。
だから『スイート・ハニー・ビー』でのデューク・ピアソンが,心底ジャズしている,と思うのである。管理人はデューク・ピアソンを聴く時,大抵,一人で悦に入っている。だって最高なんだもんっ。
【SWEET HONEY BEE】における心躍るジャズ・ロック・タッチ系の軽快なビート。フルートが奏でる“浮き立つようなメロディー”とこれに応える豪華なホーン・アンサンブル。
これがあのブルーノートのサウンドなのか?と驚かされてしまう。デューク・ピアソンがCTIを先取りしていた記録である。
フレディ・ハバードのトランペット,ジェームス・スポールディングのアルト・サックス&フルート,ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスという3管フロントからは,60年代ブルーノートのクールでハードな新主流派路線の演奏が聴こえてきそうなものなのだが,デューク・ピアソンのメロディー・ラインが打ち勝っている! 美メロが3管フロントのアドリブに打ち勝っている!
『スイート・ハニー・ビー』は,ベタなジャズ・ロックでありモータウンにも影響されてアレンジされた「踊れるジャズ・ダンス」の大傑作なのであるが,これがどこからどう聴こうともからは“ピアソン・ハーモニー”ばかりが聴こえてくるから・た・ま・ら・な・い!

踊れるジャズにして「メロディー推し」! 軽やかなビートに乗っかったポップ・ナンバーの「乱れ打ち」がとにかく聴きやすい! その最大の理由こそが,演者の個性さえをも譜面に落とし込める“ピアソン・ハーモニー”の「支配力」にある。
この延長線上にフルートというアイディアが浮かんだのだろうが,ジャズ・フルートの大家であるハービー・マンがデューク・ピアソンとは対称的にビート方面を追及していった姿勢が個人的には非常に興味深い。
個人でプレイヤーとしてヒットを連発したハービー・マンとブルーノートのプロデューサー兼ディレクターとして裏方でヒットを連発したデューク・ピアソン…。
確かにデューク・ピアソンは大物に成り損なったかもしれないが,個人的にはベニー・ゴルソンの“ゴルソン・ハーモニー”に対抗できるのは,デューク・ピアソンの“ピアソン・ハーモニー”だけだと思う。アルフレッド・ライオンが自分の後釜としてデューク・ピアソンを重用した気持ちが理解できる。
ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』をプロデュースしたデューク・ピアソンのハイセンスなんかは,今で言うフィリップ・セスのようなものである。
01. SWEET HONEY BEE
02. SUDEL
03. AFTER THE RAIN
04. GASLIGHT
05. BIG BERTHA
06. EMPATHY
07. READY RUDY?
FREDDIE HUBBARD : Trumpet
JAMES SPAULDING : Alto Sax, Flute
JOE HENDERSON : Tenor Sax
DUKE PEARSON : Piano
RON CARTER : Bass
MICKY ROKER : Drums
(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-6591)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)
創世記30章 ヤコブとラバンとの契約
THE HEAVY CATS 『JAM JAM』