『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.1』の2曲目は【BEE VAMP】(以下【ビー・バンプ】)。


 【ビー・バンプ】で,エリック・ドルフィーバス・クラリネットを吹いているが,アルト・サックスと何ら遜色なく吹きこなしている。ゆえに楽器の違いではなく,エリック・ドルフィー特有のフレーズを際立たせる結果となっている点が興味深い。

 が,ここではせっかくなので,バス・クラリネットの特長を生かした“バスクラ吹き”としてのエリック・ドルフィーの“味”を楽しんでほしい。
 特に4分7秒から4分49秒までの“音の高低差”は,エリック・ドルフィーの狙い通り,アルト・サックスでは出せないシロモノ。バス・クラリネットでの連続大ブローは“圧巻”である。

 さて紹介が遅くなってしまったが,このクインテットはエリック・ドルフィーの初めての自己名義,エリック・ドルフィー=ブッカー・リトル・クインテットによるものである。

 見方を変えれば『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT』は,もう一人のリーダー,ブッカー・リトルを聴くためにある,と言い切っても何ら差し支えない。
 それで【ビー・バンプ】は,ブッカー・リトルの作曲でもあり,彼のアドリブに注目することで,この夜の演奏全体への理解も深まると言うものだ。

 ブッカー・リトルは,ブロー炸裂タイプのトランペッターではなく,マイナー調の“表現力”が持ち味のトランペッターである。
 そんなブッカー・リトルの魅力が“溢れ出る”前半のトランペットソロが【ビー・バンプ】のハイライトだ!

ERIC DOLPHY : Bass Clarinet
BOOKER LITTLE : Trumpet
MAL WALDRON : Piano
RICHARD DAVIS : Bass
ED BLACKWELL : Drums