WYNTON MARSALIS-1 現代のジャズ・ファン全ては,良くも悪くもウイントン・マルサリスに感謝すべきである。
 ウイントン・マルサリスの登場はジャズ史におけるエポック・メイキング,時代の流れを変える衝撃だった。ウイントン・マルサリスの登場なくして,この2005年に熱い4ビートを聴くことなどできなかったかもしれないからだ。

 時は1982年。フュージョン・ブームの真っ只中。(管理人は当時中学生でしたので,リアルタイムに体験したわけではありません。ここでは勉強の発表会ということにさせてください)。
 マイルス・デイビスウェザー・リポートを筆頭に,それまでジャズの王道を歩み,ジャズという音楽を率先して確立してきたビックネームですら,フュージョンの大波に飲み込まれていた。
 そんな時代に“待ったをかけた”のが『WYNTON MARSALIS』(以下『ウイントン・マルサリスの肖像』)の発表だったのである。

 別にウイントン・マルサリス自身はジャズの革命とか,時代の風雲児を狙ったわけではないことだろう。
 しかし結果として『ウイントン・マルサリスの肖像』の発表によってフュージョン・ブームは駆逐され,時代は再びメイン・ストリーム・ジャズを求めていった。
 だ・か・ら・現代の全てのジャズ・ファンはウイントン・マルサリスに感謝すべきなのである。

 以上,簡単なうんちくを土台として早速本題に入ろう,と思ったが,その前に管理人から一言,読者の皆さまに宣言したいことがある。
 「私,セラビーは“ウイントン派”です!!」。

 つっ,ついに宣言しちゃいました。このように書くと“反ウイントン派”からの猛反発を受けることは覚悟の上です。躊躇しましたが,やっぱりウイントン・マルサリスが大好きなんです。

 理由ですか? 理由はいっぱいあって簡単には説明できませんが,反主流の“ウイントン派”を宣言した以上,ここで逃げるわけにもいきません。それで管理人なりに『ウイントン・マルサリスの肖像』を例に説明を加えてみることにします。

 なぜウイントン・マルサリスを,そして『ウイントン・マルサリスの肖像』を推すのだろう…。
 それは『ウイントン・マルサリスの肖像』から,ウイントン・マルサリスジャズ全般に対する造詣の深さが伝わってくるからに他ならない。

 管理人には『ウイントン・マルサリスの肖像』から流れ出す音が,ウイントン一人の音と言うよりも,過去の偉大なトランペッターたちの集大成に聴こえてならない。
 もちろん,各トランペッターはその人にしか出せない色合いを持っている。にもかかわらず,そう聴こえるのは“質”の問題なのだと思う。そう。トランペッターとしての“質”である。

WYNTON MARSALIS-2 ウイントン・マルサリスはクラシック界からも絶賛されている。テクニックに関しては折紙付きだ。ここがポイント!

 トランペットを完璧にコントロールできるから,ウイントン・マルサリスは自分の出したい音を出す。だからこそ,そこに“ジャズトランペット”が鳴り響く!
 端的に言えば,ウイントン・マルサリスが“ジャズトランペット”を聴かせることができるのは,ジャズそのものを良く知っているからであり,ウイントン・マルサリスならトランペットに限らず,他の楽器を演奏したとしても素晴らしいジャズを聴かせることができるだろう。

 『ウイントン・マルサリスの肖像』の随所で,ジャズ特有のフレージング,ハーモニー,とりわけアドリブの冴えがほとばしっている!
 凄すぎるぞ,ウイントン! たまらないぞ,ウイントン

 最後に『ウイントン・マルサリスの肖像』を通じたウイントン・マルサリス最大の功績は“ウイントン・キッズ”なる次世代の若手をメインストリ−ム・ジャズに向かわせたことにある。
 だ・か・ら・こ・そ,ウイントン・マルサリスジャズが好きであろうとなかろうと,現代のジャズ・ファン全てはウイントン・マルサリスに感謝すべきなのである。
 もし『ウイントン・マルサリスの肖像』が世に出ていなければ,今夜も過去の遺産ばかりに注目していたのかもしれないのだから…。

 
01. FATHER TIME
02. I'LL BE THERE WHEN THE TIME IS RIGHT
03. RJ
04. HESITATION
05. SISTER CHERYL
06. WHO CAN I TURN TO (WHEN NOBODY NEEDS ME)
07. TWILIGHT

 
WYNTON MARSALIS : Trumpet
BRANFORD MARSALIS : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
HERBIE HANCOCK : Piano
KENNY KIRKLAND : Piano
RON CARTER : Bass
CLARENCE SEAY : Bass
CHARLES FAMBROUGH : Bass
TONY WILLIAMS : Drums
JEFF WATTS : Drums

(ソニー/SONY 1982年発売/SRCS 7482)
(ゴールド・ディスク・スーパー・ピクチャー・レーベル仕様)
(ライナーノーツ/小川隆夫,スタンリー・クロウチ,野口久光,油井正一)

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