HEAD HUNTERS-1 『HEAD HUNTERS』(以下『ヘッド・ハンターズ』)ほど,ジャズ・ファンから“ダメ出し”されてきたアルバムもないであろう。

 『ヘッド・ハンターズ』発売時のハービー・ハンコックは,すでにジャズ・ピアニストとしての高い名声を博していた。ジャズ界の将来を嘱望されていた,と言ってもいいだろう。
 そのハービー・ハンコックが『ヘッド・ハンターズ』で“ジャズを裏切った”のだから当然の反応である。
 これは“インテリ気取りの辛口批評家”管理人の言葉である。

 一方,エレクトリック・ファンクのバンド・サウンド『ヘッド・ハンターズ』は,新しもの好きの音楽ファンに熱烈に支持されたしマーケットではバカ売れした。世間ではハービー・ハンコックと来れば『ヘッド・ハンターズ』が代名詞になった。

 管理人は『ヘッド・ハンターズ』を『フューチャー・ショック』の発売後に耳にしたのだが『フューチャー・ショック』の“斬新な音”の直後に聴いても,十分“新鮮味”を感じるものだった。
 カッコつけて述べると「あっ,ジャズが変わっちゃったかな?」と思わせる“衝撃”が走ったのだ。今まで誰も演奏したことのない新しいジャズファンクにこそ,ジャズの未来を形にしたハービー・ハンコックからの答えだと思う。
 これは“現場たたき上げ”の管理人の言葉である。

 一方ではけなし,もう一方では誉める,二心…。『ヘッド・ハンターズ』は,どの角度から評価するのかによって結果の変わる,評価すのが難しいアルバムである。
 なぜならアルバムとしての『ヘッド・ハンターズ』は大好きなのだが,管理人が本当に好きなハービー・ハンコックの音楽とは,ジャズファンクで踊り狂うハービー・ハンコックではなく,アコースティックジャズと相対しているハービー・ハンコックだからである。

HEAD HUNTERS-2 管理人が日常的に聴いているハービー・ハンコックのアルバムは「ムワンディシ・バンド」〜「ヘッド・ハンターズ」のエレクトリック・ファンク路線のハービー・ハンコックである。
 一般にはハービー・ハンコックの「暗黒期」として括られがちな「ヘッド・ハンターズ」は音楽としては最高に楽しい!!

 ただし,ここぞという時に真剣に聴いているのは決まって“新主流派”路線のハービー・ハンコックである。
 そう。『ヘッド・ハンターズ』は,並のジャズファンクのアルバム,並のフュージョンのアルバムと比べれば高評価であるが,ハービー・ハンコック名盤群の中では,そこそこの2番手グループと位置付けが現実的な評価であろう。

 シンプルなのに長尺の1曲の中でシンセを重ねて構成を変化させる『ヘッド・ハンターズ』は『処女航海』『スピーク・ライク・ア・チャイルド』の素晴らしさを理解した後で聴いてほしい1枚である。エンタメのベクトルが違いすぎる。

 
01. CHAMELEON
02. WATERMELON MAN
03. SLY
04. VEIN MELTER

 
HERBIE HANCOCK : Fender Rhodes Electric Piano, Clavinet, Arp Odyssey Synthesizer, Arp Soloist Synthesizer, Pipes
BENNIE MAUPIN : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Saxello, Bass Clarinet, Alto Flute
PAUL JACKSON : Electric Bass, Marimbula
HARVEY MASON : Drums
BILL SUMMERS : Congas, Shekere, Balafon, Agogo, Cabasa, Hindewho, Tambourine, Log Drum, Surdo, Gankoqui, Beer Bottle

(CBSソニー/CBS/SONY 1973年発売/SICP 705)
(ライナーノーツ/村上太一)

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