アナログレコード

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(映画)の中で,主人公がエレキ・ギターをライトハンドかなんかで弾き鳴らし,きょとんとした聴衆の反応に「まだ早かったか」みたいなヒトコマがある(あるはずでは? 映画は詳しくないので間違っていたら読み流してくださいね)。
 管理人はそのシーンを見た時に,ウェス・モンゴメリーを思い浮かべた。ジャズギタリストにとって,ウェス・モンゴメリーは避けては通れない存在であろう。今となっては“普通”にプレイされている,コード奏法やオクターブ奏法はウェスの専売特許だった。当時としてはかなり“画期的”なことだったに違いない!
 そこで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』! ウェス・モンゴメリーの紹介時には,いつもこの論法を使っているのだが,ジャズギターに詳しくない人にとっては分かりやすいのではなかろうか?(自画自賛)。

 しかし管理人はこの論法にはまだ満足していない。それはウェス・モンゴメリーの良さは,テクニック的なものを抜きにして語るのが最善だと思っているからだ。
 尤もウェス・モンゴメリーの場合,テクニック=音楽表現そのものとも言えるわけで,そこにジレンマを感じてもいる。
 では管理人の推す“ウェス・モンゴメリーアドリブの冴え”である!

 恐らくフュージョンを聴き込んでいる人にとって,ウェス・モンゴメリーのテクニックに新鮮味を感じることはあまりないと思う。そう。ウェスのテクは今ではごく普通のこと,耳馴染みなもの…。超辛口に言えば,もはや時代に追い越されてしまった“古くささ”さえ時として感じてしまう。
 しかしウェスのフレーズは違う。ウェス・モンゴメリーアドリブには,未だに時代が追いつけないJAZZYさがある。実に雄弁でダイナミックなフレーズ。

 『SMOKIN’ AT THE HALF NOTE』(以下『ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウイントン・ケリー』)はウェス・モンゴメリーウイントン・ケリーのトリオと組んだ“ライブ盤”だ(正確には前半の2曲)。 クラブでのライブであるがゆえに,ウェス・モンゴメリーアドリブは更に加速している。ノッテいる。バンド全体が“スイング”しているのである。

 さて,ここまでウェス・モンゴメリーばかりを取り上げてみたが『ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウイントン・ケリー』は本来,ウイントン・ケリーCDである。
 CDのクレジットもジャケットも『WYNTON KELLY TRIO−WES MONTGOMERY』となっており,構図としてはウイントン・ケリー・トリオの共演者としてウェス・モンゴメリーが参加した,と捉えるべきであって,主役はウイントン・ケリーのはずである。
 にもかかわらず,日本盤ではウェス・モンゴメリーの名前が先にクレジットされているし,どこのCD屋に行っても,このCDはウェス・モンゴメリーの欄に陳列されている。
 ウェス・モンゴメリーの充実ぶりからして,彼がフューチャーされるのも致し方ないとは思うが,ではウイントン・ケリーが脇役に甘んじているかと言うと,決してそうではない。ウイントン・ケリーピアノがこれまた素晴らしい! 管理人としてはウイントン・ケリーの代表作と紹介しても差し支えない出来だと思っているのですが…。

 これが日本のジャズ・ジャーナリズムの七不思議の一つ! 凡人には理解不能ですが,一応それなりの理由があると思いますので,当ブログでも過去の先人たちに敬意を払い,ウェス・モンゴメリーの欄に分類させていただきました。でも,どなたか理由をお知りの方がいらっしゃいましたら,是非わたくしめにもご教授いただければ幸いに存じます。

(1965年録音/POCJ-1816)
 
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