
「ベースボール」が「野球」に変貌したのと同じように,中身が本国のそれとは大いに異なっているのである。
さて,アメリカ生まれのジャズも,ジョン・コルトレーンの大ブレイクと共に“日本独自の文化”として定着した。
当時はレコード1枚の価格がサラリーマンの初任給ほどとあって,一般庶民にはさすがに手がでない。そこで“ジャズ喫茶”の登場である。
この“ジャズ喫茶”なるもの,どうやらアメリカやヨーロッパには存在しないらしい。そう。“ジャズ喫茶”の存在こそが“日本独自のジャズ文化”の証しなのである。
韓流でもジャズ喫茶でも,それが日本独自のものであるとすれば,当然盛り上がり方も本国とは異なる。韓流四天王と言えば,日本ではペ・ヨンジュン,チャン・ドンゴン,イ・ビョンホン,ウォンビンのことだが,本国ではイ・ビョンホンの代わりにソル・ギョングを指すそうだ。
状況はジャズ喫茶でも同様で,本国ではイマイチでも,日本では熱狂的に受け入れられたスターがいた。
その人の名はソニー・クラーク。似ても似つかぬ容姿はさておき,イ・ビョンホンのポジションにいるのがソニー・クラークなのである。
なぜソニー・クラークは日本のジャズ・ファンに支持されたのだろう? その答えが『COOL STRUTTIN’』(以下『クール・ストラッティン』)の中にある。
『クール・ストラッティン』はソニー・クラークの代表作,と言うよりは,モダン・ジャズ屈指の名盤と呼ばれる超・名盤である。
ゆえに,ブルース調の曲が,マイナー・キーが,ファンキー・ジャズがどうのこうのと…。こんな解説,既に誰かが書いているに決まっている。
ソニー・クラークの“黒々とした”ピアノがどうのとか,ジャッキー・マクリーンの“ファンタスティック”なアルト・サックスがどうのとか…。これも誰かが書いている。はず?

端的に言って『クール・ストラッティン』の“売り”はジャッキー・マクリーンとアート・ファーマーによるフロントの快演にある。二人とも,生涯最高と言い切っても差し支えない“極上の”アドリブを聴かせている。
しかしそれでもアルバム全体の印象としては,ジャズ・ピアノ! ソニー・クラークが二人を喰ってしまっている。
脇役が主役を喰う面白さ。ソニー・クラークの“いぶし銀”に日本のジャズ・ファンは惹かれたのであろう。この魅力は未だ色褪せていない。
全てのジャズ好き,音楽好きから,イ・ビョンホン・ファンに至るまで,一度は聴いていただきたい“超”お奨めの一枚である。
01. COOL STRUTTIN'
02. BLUE MINOR
03. SIPPIN' AT BELLS
04. DEEP NIGHT
SONNY CLARK : Piano
ART FARMER : Trumpet
JACKIE McLEAN : Alto Sax
PAUL CHAMBERS : Bass
PHILLY JOE JONES : Drums
(ブルーノート/BLUE NOTE 1958年発売/TOCJ-6401)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,岡崎正通)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,岡崎正通)
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コメント一覧 (10)
このCDはジャケットもその名の通りcoolで有名ですよね。
私も所有しているCDです。
さすが”超”名盤だけあって何度聞いても聞き飽きませんね。
スルメCDといった感じです。
今回の批評文、韓流スターに例えた日本独自のソニークラークの扱われ方の表現が見事です!
私も昔、何回も聴きました。時代は既にCDでしたが(^^ゞ ブルーノートというか、ジャズ界にとっても貴重な財産だと思います。
そうです!日本人は皆ソニークラークが大好きなのです(^o^) これからも沢山の人達に聴き継がれていく事でしょう・・
ソニークラーク聞いてみます。
いつも
大変な表現力だと思います。
今日は食欲?まで揺り起こされました。
ジャズの歴史、なるほど(。。)
ぜひ聴いてみます(^^)b
それにしても上のコメント書いてる方もよく知ってますね(驚)
負けへんで(^^)/
なにいってるんやろ(笑)
まさにスルメCD! 聴き飽きないどころか,聴けば聴く程,味が出てきてまいってしまいます。
【uz】さんは何回しゃぶり倒しましたか?
コルトレーン世代でもジャズ喫茶世代でもない私たちまで虜にしたこのCDは,日本人の“体質”によく合うんでしょうね! 演歌調のブルースにやられてしまいます。
初めの一枚にはいいと思います。ジャズのストレートなイメージに近いですよ。
他の読者に負けないで! ん? 皆さん負けないで! ん?
JAZZ/FUSIONの名盤をお探しの際には,また当ブログにお立ち寄りくださいね。