アナログレコード

 『LEFT ALONE』の1曲目は【LEFT ALONE】(以下【レフト・アローン】)。


 【レフト・アローン】こそ“ジャズの代名詞”と言い切っても過言ではない! このトラックは大方の日本人なら,まず“嗚咽”してしまうのではなかろうか?
 ジャズ・ファンは勿論のこと,普段ジャズとは無縁な演歌ファンからヘヴィ・メタルやヒップ・ホップ・ファンに至るまで,聴けば必ず“何か”を感じることと思う。
 大袈裟に表現すれば,ついさっきまで爆笑していた人が,このトラックを聴いたとたんに泣きじゃくるくらい【レフト・アローン】には聴き手の心を“悲しみで掻きむしる”強烈なパワーが秘められていると思うのだ。

 その第一原因は,ビリー・ホリディの代わりに“歌う”ジャッキー・マクリーンの“枯れた”サックスにこそある! この“すすり泣き”にも等しい“枯れた”サックスの味わいは,他の何物にも代え難い「ジャズ界の至宝」であろう。
 加えてジャッキー・マクリーンのこの“語り口”! 決して饒舌ではない“奥歯に物が挟まった”感じの語り口がたまらない。時に切々と,時に朗々と…。
 そう。伝えようとする“その何か”は定かではないのだが,それでも“その何か”を必死に伝えようとする,ジャッキー・マクリーンの“内省的な熱情”だけは,痛いほど伝わってくるのである。
 結果論ではあるが【レフト・アローン】のサックス奏者はジャッキー・マクリーン以外には考えられない。ビリー・ホリディの“かすれ声”にジャッキー・マクリーンの“すすり泣き”を重ね合わせた,マル・ウォルドロンの“眼力”いや“聴力”に惜しみない称賛の言葉を贈りたい。

 さて,ジャッキー・マクリーンアルト・サックスについては批評したくない。正直,どこかをいじると全体のバランスが崩れそうで恐いのだ。
 それで管理人の中では,この演奏が“頭のテッペンから足の先まで”パーフェクトと信じて疑わないことに決めている。聴き所を楽しみに読んでくださっている読者の皆さんには,誠に申し訳ない。ご勘弁を。

 マル・ウォルドロンピアノについても同様ではあるが,持ち上げることなら幾らか出来る。まず,豪快なイントロでの連打が素晴らしい。マクリーンへの的確なバッキングの妙については,彼の右に出る人はいないことだろう。
 2分30秒からの“間奏”についても傑出した“哀愁”のピアノを聴かせてくれる。その全てが“超”のつく“ド・マイナー”であり【レフト・アローン】の“悲しさ倍増”に一役買っている。素晴らしい!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE MAL WALDRON TRIO
MAL WALDRON : Piano
JULIAN EUELL : Bass
AL DREARES : Drums

GUEST ARTIST
JACKIE McLEAN : Alto Sax


レフト・アローン
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