NOW'S THE TIME-1 「弟子から師に入る」。このような“ことわざ”などないのだが,管理人にとってチャーリー・パーカーは「そう呼ばざるを得ない」存在である。

 渡辺貞夫を通してパーカー・フレーズに接していたので“本物のパーカー節”を初めて耳にした時,正直「なんだ,ナベサダじゃん」と思ってしまった。
 その後も大勢の“パーカー派”のアルト・サックスと接してきた。しかし人の第一印象とはそう簡単に変わらないもので“本家”チャーリー・パーカーが,それら“後発”の弟子たちとどうも「被って」聴こえてしまう。

 「ふ〜ん。チャーリー・パーカーか。これだけ大勢のアルト奏者に影響を与えるなんて,大したもんじゃん」。
 先のことわざシリーズで表現するならば「青は藍より出でて藍より青し」とでも思っていたのだろう。完全にチャーリー・パーカーなど「過去の偉人」であり,今では「追い抜かれた偉人」だと見下していたのである。

 今,思い返すと「恐いもの知らず&若気の至り」。あ〜恐ろしや。勘違いも甚だしい。
 ここで全面的に否を認め,自分の良心のうずきを抑える意味でも,きっちり謝罪させて頂こうと思います。「全世界のチャーリー・パーカー・マニアの皆さま,ひいては全てのジャズ・ファンの皆さま,「真打ち」チャーリー・パーカーを軽く見てしまいまして,誠に申し訳ございませんでした」。

 このように(長澤まさみばりに)世界の中心で,心の底から謝罪したくなったのは,意外や意外,超名盤の『NOW’S THE TIME』(以下『ナウズ・ザ・タイム』)と出会ったおかげである。

 意外や意外と述べたのは,実は「バードはサボイ。ヴァーヴは死に体」という世評を鵜呑みにしていたからだ。
 「チャーリー・パーカーはサボイとダイアル」と信じていた管理人は,今はオークションで売り払ってしまい,もう手元にないのだが『チャーリー・パーカー・オン・サボイ』のPC版(サボイの全音源をQUICKTIME化したもの)を,パソコン使用時の作業用BGMとしていつも聴いていた(メインはFMラジオであったので,面白い番組がない時間帯限定)。

 話は逸れるが,管理人のパソコン歴は「MS−DOS3.3」からなので,ハード・ソフト合わせると,もう二百万は優に投資している。あの時代はどんなに投資しても,現在の「ジュークボックス」機能など手に入れようがなかった。今の何とも恵まれた時代のユーザーに,あの時代のジャズ・ファンにとって唯一の選択肢であった『チャーリー・パーカー・オン・サボイ』PC版の有り難みが分かるだろうか? ブツブツ…。
  
 ダイアル盤は聴かなかったので,どちらにしても言い訳としては苦しいのだが,サボイを全集全曲制覇したことで,すっかりチャーリー・パーカーの“通”気取りでいた。
 それで『ナウズ・ザ・タイム』を手にしたきっかけも,純粋な音楽への関心とは無関係である。興味は“音質”の良さにあった。

 そもそもオーディオ・マニアでもある管理人が『チャーリー・パーカー・オン・サボイ』PC版を手にしたのには訳がある。それはチャーリー・パーカーCDは全てがモノラル録音である。ぶっちゃけ,音質にこれといった「差」など存在しない。
 しかしどこかのジャズ雑誌に,チャーリー・パーカーの音質についての記事が有り「ヴァーヴが良い」と書かれていた。単純に,ただそれだけで“即買い”大決定。どうせ買うなら超名盤ということで『ナウズ・ザ・タイム』に行き着いた次第。

NOW'S THE TIME-2 当然,購入当初は『ナウズ・ザ・タイム』の高音質ばかりに注目していた。あの記事は本当であった。アルトサックスの“抜け”の良さに驚いた。これまでずっと自宅のオーディオ・セットではなくパソコンでチャーリー・パーカーを聴き込んでいたのだから,余計にチャーリー・パーカーアルトの音色に「目から鱗」であった。

 この音の良さにつられていつしか『ナウズ・ザ・タイム』がヘヴィー・ローテーション。ついには「ミイラ取りがミイラになる」。管理人もついに「パーカー中毒」が発症したのである。例のことわざシリーズで表現するならば「弟子は師の半芸に至らず」であった。

 チャーリー・パーカーアドリブの“大洪水”を初めて真正面から受け止めてしまった時の“衝撃”と来たら「ショック,ショック,ショック,パーカー・ショ〜ック!」と,シブガキ隊の替え歌を1人で歌っていた恥ずかしい記憶がある。

 やはり,どこの世界であっても,ある道を切り開き“草分け”となった人物は素晴らしい! 勿論,その道を模倣・追随し発展させた“師匠越え”の弟子たちも称賛に値するが,パイオニア,クリエーターには敵わない!
 “パーカー派”の師匠,またビ・バップの“創始者”でもあるチャーリー・パーカーが与えた影響は,アルトサックステナーサックスにとどまらず,ベースドラムにまで及んでいる。

 そう。モダン・ジャズ半世紀の歴史を語る上で,絶対に避けて通れない“ジャズ・ジャイアント”その人がチャーリー・パーカーなのである。
 「弟子から師に入る」。きっと読者の皆さんも,それと気付くことなく“弟子を通して”チャーリー・パーカーの音楽を“聴かされている”はずである。

PS 今回も高音質に釣られて『ナウズ・ザ・タイム』をSACD盤に買い直しました。もう1つ。本当の買い替え動機があります。「パーカー・ショック」→「沙織・大ショック」で【CONFIRMATION】熱が再燃しました。以前所有していた『パーカーズ・ムード』の品番は「32XD-355」です。CDジャケット写真を差し替えました。

 
01. THE SONG IS YOU
02. LAIRD BAIRD
03. KIM
04. KIM (alternate take)
05. COSMIC RAYS
06. COSMIC RAYS (alternate take)
07. CHI-CHI
08. CHI-CHI (alternate take)
09. CHI-CHI (alternate take)
10. I REMEMBER YOU
11. NOW'S THE TIME
12. CONFIRMATION

 
CHARLIE PARKER : Alto Saxophone
HANK JONES : Piano
AL HAIG : Piano
TEDDY KOTICK : Bass
PERCY HEATH : Bass
MAX ROACH : Drums

(ヴァーヴ/VERVE 1953年発売/UCGU-7034)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/ビル・サイモン,岡村融,オノ・セイゲン)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION



詩編68編 人々という贈り物
お洒落なジャズトリオ 『お洒落なジャズトリオ IN 神戸