『PARKER’S MOOD』の3曲目は【LAMENT】(以下【ラメント】)。

 【ラメント】は,渡辺貞夫の快演が先か,バックの快演が先か,互いに一気に盛り上がる! ミディアムなのに“熱すぎる”名演である。あんなに哀しかったのに,こんなに豪快にぶつかり合ってもいいのだろうか?

 イントロは完璧な“バラード”の入りである。カルテット全員でバラードをプレイする“つもり”で曲が進行していく。
 しかし2分7秒のジェフ・ワッツのハイハットを合図に,チャーネット・モフェットの“ゴリゴリ”ベースが“ズンズン”とプッシュを開始する。このリズムの変化に“呼応した”渡辺貞夫アルト・サックスが,徐々に“ビ・バップ”していく。

 このサックスのトーンの変化が導火線となり,ジェフ・ワッツの「2段ロケット=ジャズドラマー・魂」に火をつけたのか,もう止まらない! あっという間に“ハード・バップ”のノリと化す! スケールの大きな“ザ・ジャズ・ドラム”の世界へと全員が引きずり込まれてゆく!

 やっぱり渡辺貞夫は偉大だ。【ラメント】で見せる表情=音色の変化が,どれもいい。
 アンチ・ナベサダ派は,その常套句=マンネリ批判を口にするつもりなら,この【ラメント】での快演を聴いてからにしてほしい。どうせケナスにしても,バラエティに富んだ,ちょっとはマシな“批評”を展開するのに役立つはずである。
 “偉大なマンネリ”は希有である。聴けば聴く程,耳に馴染めば馴染む程,なんとも言えない“心地良さ”が増加する。

 
SADAO WATANABE : Alto Saxophone
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums

PARKER'S MOOD-1
PARKER'S MOOD
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