HERE'S LEE MORGAN-1 またしてもジャズ・ジャーナリズムへの苦言で申し訳ないが,サックス・シーンやピアノ・シーンでは,次世代のスターが“雨後の筍”のごとく登場している。
 確かに騒がれるだけあって,皆,水準以上の実力者。“箸にも棒にも掛からない偽物だ〜”とか“金返せ〜”とかの“ハズレ”はないが,こうも続々とスターが誕生してしまうと,真の“NEW”スター=矢野沙織ブラッド・メルドーが“かすんでしまう”というものだ。

 その点でトランペット・シーンは安心できる。ウイントン・マルサリスの大ブレイク直後は,やれウォレス・ルーニーだ,テレンス・ブランチャードだ,と相変わらずであったが,今では“まっとうな評価”で落ち着いている。近年ではティル・ブレナーがブレイクしたのが最後であろう。

 なぜトランペット・シーンは“タマ”が少ないのだろう? それはトランペット界のスター=ジャズ界のスターだからである。
 サッチモブラウニーマイルスウイントン! どうですか? いずれも納得のジャズ・ヒーローたちでしょ?
 サックスピアノほど“タマ”は多くなくとも,やはりジャズ界の花形はトランペット! 少数精鋭の激戦区を勝ち抜いて来た超大物でなければ,トランペットの第一位を占めることなどできやしない。

 さて,前置きが長くなってしまったが,今夜はリー・モーガンの紹介である。リー・モーガンの紹介のために,ジャズ・ヒーローの話を振ってみた。
 その心は,ズバリ,管理人にとってトランペットの“NEW”スターは何年経ってもリー・モーガンだからである。
 真面目に考えれば支離滅裂も甚だしい。第一,音がいかにも古臭い。今更“NEW”スターだなんて…。でも…。

 リー・モーガンの特徴は,トランペット=金管楽器=メタリックな輝きである。リー・モーガントランペットは,いつでも「突き抜ける」感じで,ただただカッコイイ。なぜかリー・モーガンの音に“江戸っ子”の「イキ」を感じてしまう。
 あの“タイガー・ウッズ似”の容姿は,ただの棒立ちではイケテないが,彼がラッパを手にした瞬間,なんともサマになる。
 実にいい男だ! 憧れる! 鬼に金棒ならぬ「リー・モーラッパ」なのである。

 『HERE’S LEE MORGAN』(以下『ヒアズ・リー・モーガン』)は,そんな“音イケメン”の秀作である。
 “バリバリ”のド迫力プレイもあれば“シットリ”哀愁を帯びたバラードもある。トランペットはその性質上,ただでさえ目立つ楽器であるが,名うてのサイドメンたちがリー・モーガンを盛り上げるものだから,もう大変!
 リー・モーガンアドリブは“若気の至り”の絶頂期で,きっちり決まったフォーマルな演奏ばかりなのに,印象としては「自由で快心のアドリブ合戦」として大いに楽しめる。

HERE'S LEE MORGAN-2 『ヒアズ・リー・モーガン』は,リー・モーガンの特徴的な音世界が,ストレートにユニゾンしている。
 サイドメンの音までもが“艶っぽく”聴こえてしまう程,アート・ブレイキーをしてジャズ・メッセンジャーズではなく全員で全力で「リー・モー」している。頭の一音から最後の一音に至るまで“ワクワク&ゾクゾク”してしまう。

 この感覚はウイントン・マルサリスの時にも感じたものだが,ウイントン・マルサリスの場合は,既に完成された,熊本名物“いきなり団子”状態でのデビューであった。今後の“ノビシロ”などイメージできない,史上最高・最強のトランペッターの“おでまし”であった。

 その点でリー・モーガンは得している。若くして亡くなったゆえ“伝説”と化した。いつまでたっても円熟しない“早熟の天才”のままである。(現実には有り得ない)次回作を楽しみにさせてくれる“NEW”スター!

 トランペット好きの読者の皆さんの中には,この管理人の気持ちに少なからず同意していただけるのではなかろうか?
 さあ,皆さんご一緒にコール&レスポンス! 「早く出てこい! 出でよ! リー・モーガンを越える,トランペットの“NEW”スター!」。

 
01. TERRIBLE "T"
02. MOGIE
03. I'M A FOOL TO WANT YOU
04. RUNNING BROOK
05. OFF SPRING
06. BESS
07. TERRIBLE "T" (TAKE-6)
08. MOGIE (TAKE-2)
09. I'M A FOOL TO WANT YOU (TAKE-1)
10. RUNNING BROOK (TAKE-4)
11. BESS (TAKE-3)

 
LEE MORGAN : Trumpet
CLIFFORD JORDAN : Tenor Saxophone
WYNTON KELLY : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
ART BLAKEY : Drums

(ヴィー・ジェイ/VEE JAY 1960年発売/BSCP-30050)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/バーバラ・J・ガードナー,瀧口秀之)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION



詩編137編 バビロンは壊滅させられる
ベニー・グリーン 『ザ・プレイス・トゥ・ビー