CLOSE-UP-1 管理人は楽器はできないのだが,それでもどうしても手に入れたいものがあった。アルト・サックスのマウスピースで「デヴィッド・サンボーン・モデル」。確か2万円はしたはずだ。
 無駄に2万円も使ったわけであるが,それでも今でも満足に思っている。あのデュコフ(DUKOFF)製の“銀メタ”マウスピースが,オーディオ・ラックの最上段で“誇らしげに”輝いているのだ。

 (本当どうでもいい話ですが,エピソードを補足します。正確には何度も“銀メタ”マウスピースは使用しました。管理人が千葉在住時のことですが,アマチュア社会人ブラス・バンドに在籍していた友人がおりまして,彼女の30万円のアルト・サックスを時たま借りては吹いておりました。どっちみち“飾り物”には違いありませんが…)

 …と,完全に自己満足の世界に浸ってしまったが“銀メタ”マウスピースを見ているだけで“デレデレ”してしまう程,管理人にとってデヴィッド・サンボーンこそが,真のアイドル! まさしく“憧れ”の存在なのである。
 何と言っても,あの絶対的なフレージング=“サンボーン節”! デヴィッド・サンボーンの代名詞である“泣きのサックス”が大好きなのだ。

 尤も,この辺の話題は「語り出すと止まらなくなる」と思うので,今回はここまで…。
 続きは近所のアルト吹きにお尋ねください。恐らく3人に1人の割合で,手取り足取り+饒舌に,デヴィッド・サンボーンの魅力について語ってくださるのでは?

 そう。“サンボーン・キッズ”と呼ばれる“サンボーン命”のアルト奏者は五万といる。プロのミュージシャン,ジャズメンの中にも五万といる。
 きっと,みんな最初は「エア・サンボーン」。あの“小首をかしげ腰を沈めてブローする”お得意のポーズを真似してニンマリ。「形から入ろう」の世界である。

 そんな“サンボーン・キッズ”なら誰しも持っている?“伝家の宝刀”が『CLOSE−UP』(以下『クローズ・アップ』)。
 なぜならば『クローズ・アップ』はグラミー受賞作! それも驚くなかれ。「Best Pop Instrumental Performance」部門での受賞なのである。

 デヴィッド・サンボーンは,本来,フュージョンサックス・プレーヤーであるが“サンボーン・キッズ”は,ジャズ,ポップス,ロック・ファンにも大勢いる。
 理由はデヴィッド・サンボーンの“超一流”サイドメンとしての“横顔”にある。デヴィッド・サンボーンは,各ジャンルの数多くの大物たちとも共演を重ねてきた。その結果“サンボーン節”はフュージョンの垣根を越え,広く世界の音楽ファンに浸透しているのであろう。

CLOSE-UP-2 『クローズ・アップ』は,そんなデヴィッド・サンボーンの“総決算的”なアルバムである。デヴィッド・サンボーンの“裾野の広い音楽性”こそ,真のフュージョンである。
 ジャズ,ポップス,ロックのエッセンスが注入された“万人受け”するアルバムである。やはり“ポップス部門”のグラミー受賞は伊達ではない。

 『クローズ・アップ』の完成度の高さはプロデューサー,マーカス・ミラーの“天才ぶり”に負うところが大きい。しかしどんなにマーカス・ミラーが活躍しようとも『クローズ・アップ』の「主役」はデヴィッド・サンボーン。“サンボーン節”が流れ出すや否や,この極上のバックでさえ“静まりかえってしまう”のだから不思議である。

 そう。この圧倒的な存在感は,間違いなく“オンリー・ワンのナンバー・ワン”であろう。“サンボーン・キッズ”が増殖しているにもかかわらず,誰一人“ザ・デヴィッド・サンボーン”にはなりきれない。近づけない。恐らくは永遠に…。

 管理人はやっぱり今夜も「エア・サンボーン」。きっとみんなも「エア・サンボーン」。「エア・サンボーン」こそ“ザ・デヴィッド・サンボーン”なのである。

  01. SLAM
  02. J.T.
  03. LESLIE ANN
  04. GOODBYE
  05. SAME GIRL
  06. PYRAMID
  07. TOUGH
  08. SO FAR AWAY
  09. YOU ARE EVERYTHING
  10. CAMEL ISLAND

(ワーナー・パイオニア/REPRISE RECORDS 1988年発売/25XD-1077)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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