「第三世代」という言葉がある。何かと耳にする「携帯電話」の話ではない。J−ジャズ/フュージョンの話である。
世代交代はいつでも,革新的な新規格の登場と共に幕を開ける。第三世代携帯電話とは「IMT−2000」規格に準拠した携帯電話やその方式のことを指す。要は高速パケット通信と高い周波数利用効率が特長である。世代交代は新規ユーザーにとっては“朗報”であっても,旧ユーザーには時として“痛み”を伴う。互換性問題である。
管理人は「IDO」時代からのauユーザーなので影響はなかったが,NTTドコモが「FOMA」を開始した時には,エリア外&エリア内なのにつながらない,のオンパレード! 残念ながら第二世代の「MOVA」と第三世代の「FOMA」に互換性はなかった。
90年代前半のこと,J−ジャズ/フュージョンに「第三世代」と呼ばれる若手ジャズメンたちが登場した。
渡辺貞夫,日野皓正らの第一世代,カシオペア,スクェアらの第二世代の影響は確実に受けているものの,全く違うアプローチ,全くの新発想=完全なる新規格! ある部分は旧世代との互換性もあるが,ある部分は互換性など考慮されていない。
ジャズ/フュージョンの“新規”ユーザーである第三世代のファンたちは,すぐに“おいしいところ”を聴いて楽しむことができる“機種変”ユーザーでもある。
第一,第二世代のジャズ/フュージョン・ファン,つまり管理人のような「立派なおじさんたち」が,ジャズ/フュージョンの第三世代を聴いて楽しむには少々「慣れ」が必要である。
そこでDIMENSION! 第三世代の“旗印”であるDIMENSIONについては「ビーイング系」「超絶技巧集団」と称される機会が少なくないが,管理人にはピンとこない。
一世風靡したギターの増崎孝司を筆頭に,メンバー全員「ビーイング系」との交流が深いが,それはDIMENSIONの“懐の深さ”を意味しているに過ぎない。
DIMENSIONには,意図的にポップスやロック寄りの音造りをしたトラックがあるが,その瞬間瞬間で周りの音に反応する演奏姿勢はジャズ・スピリッツで溢れている! 絶妙のアドリブに一発で心を奪われてしまう!
DIMENSIONのスーパー・テクニックは「超絶技巧」であるが,正しくは“百戦錬磨”のセッション集団と呼ぶべきだろう。
DIMENSIONの体内には“いい音の前にいい演奏がある”ジャズ/フュージョンの血が流れている。
たとえポップスやロックを演奏しようとも,常に“おいしい”アドリブを追求する「セッション集団」としての本性を隠すことなどできやしない。
特に「DIMENSIONの頭脳」と称されるキーボードの小野塚晃は渡辺貞夫グループのレギュラー・ピアニストである。小野塚晃が“ジャズ畑”の人間なのだから,DIMENSIONのアドリブがジャズをベースにしている点も尤もなことだろう。
それで“目新しさ”ではなく“基本性能”に注目して聴いてみると,機種変組のおじさんたちでも“スンナリ”と,新規格のJ−ジャズ/フュージョンを受け入れることができると思う。
DIMENSIONの最初の1枚は『11TH DIMENSION “KEY”』がいいと思っている。『11TH DIMENSION “KEY”』ならば,DIMENSIONへの拒否反応はでないと思う。「スッ」と身体に染み入る造込みで,第三世代特有の“壁”を感じない。メロディーの良さに魅了されることと思う。
その分「超絶技巧」はスパイス程度。楽器小僧なDIMENSIONファンの間では“凡作”とされているので,あらかじめご了承頂きたい。
そんな“敷居の低い”『11TH DIMENSION “KEY”』なので,旧規格のまま心地良く聴くことは可能であるが,いつまでも過去との互換性に頼っていると新規格の恩恵に浴することはできない。
ここは思い切って『11TH DIMENSION “KEY”』のニュー・サウンドへ身を委ねてみてほしい。まずは勝田一樹のアルト・サックスが耳で追いやすいと思う。この転調の多さとハイトーンの“乱れ打ち”は,過去のJ−ジャズ/フュージョンの「型」には無かったものだ。
何が新しいのか,うまく説明できていないが,以前の“しがらみ”をとっぱらった音楽理論が,作曲方法,演奏手法まで変えてしまっている。やはり世代交代は,革新的な新規格の登場と共に幕を開けるのだろう。
ちまたでは2007年問題=団塊の世代の大量退職によるノウハウの消滅に危機感が叫ばれている。
しかしJ−ジャズ/フュージョン界は安泰である。DIMENSIONに代表される「第三世代」が立派にシーンを担っている。そして今や矢野沙織,アキコ・グレース,山中千尋らの「第四世代」の台頭も著しい。“十年一昔”とは良く言ったものである。
ガンバレ第一世代,負けるな第二世代! この気持ちは当の第三世代,第四世代のジャズメンも同様だろう。ジャズメンに定年退職などないのだから“生涯現役”のベテラン勢と若手たちが“切磋琢磨”し,次世代の新規格の創造にチャレンジし続けてほしい。
2005年のJ−ジャズ/フュージョン界は,世界的に見ても稀に見る激戦区。新旧入り混じった素晴らしい環境下にある。
01. Magic One
02. Key
03. Someday
04. Alone In Love
05. Sun Dance
06. Colour Of Days
07. Moment
08. I Don't Wanna Cry
09. Shadow Of A Memory
10. What's Rare?
DIMENSION
TAKASHI MASUZAKI : Guitars
AKIRA ONOZUKA : Keyboards & Programming
KAZUKI KATSUTA : Alto Saxophone
GUEST MUSICIAN
KAICHI KUROSE : Drums
AKIHITO TOKUNAGA : Electric Bass
NOBUO EGUCHI : Drums
サムエル記第一31章 サウルと3人の息子の死
チック・コリア 『スリー・クァルテッツ』
世代交代はいつでも,革新的な新規格の登場と共に幕を開ける。第三世代携帯電話とは「IMT−2000」規格に準拠した携帯電話やその方式のことを指す。要は高速パケット通信と高い周波数利用効率が特長である。世代交代は新規ユーザーにとっては“朗報”であっても,旧ユーザーには時として“痛み”を伴う。互換性問題である。
管理人は「IDO」時代からのauユーザーなので影響はなかったが,NTTドコモが「FOMA」を開始した時には,エリア外&エリア内なのにつながらない,のオンパレード! 残念ながら第二世代の「MOVA」と第三世代の「FOMA」に互換性はなかった。
90年代前半のこと,J−ジャズ/フュージョンに「第三世代」と呼ばれる若手ジャズメンたちが登場した。
渡辺貞夫,日野皓正らの第一世代,カシオペア,スクェアらの第二世代の影響は確実に受けているものの,全く違うアプローチ,全くの新発想=完全なる新規格! ある部分は旧世代との互換性もあるが,ある部分は互換性など考慮されていない。
ジャズ/フュージョンの“新規”ユーザーである第三世代のファンたちは,すぐに“おいしいところ”を聴いて楽しむことができる“機種変”ユーザーでもある。
第一,第二世代のジャズ/フュージョン・ファン,つまり管理人のような「立派なおじさんたち」が,ジャズ/フュージョンの第三世代を聴いて楽しむには少々「慣れ」が必要である。
そこでDIMENSION! 第三世代の“旗印”であるDIMENSIONについては「ビーイング系」「超絶技巧集団」と称される機会が少なくないが,管理人にはピンとこない。
一世風靡したギターの増崎孝司を筆頭に,メンバー全員「ビーイング系」との交流が深いが,それはDIMENSIONの“懐の深さ”を意味しているに過ぎない。
DIMENSIONには,意図的にポップスやロック寄りの音造りをしたトラックがあるが,その瞬間瞬間で周りの音に反応する演奏姿勢はジャズ・スピリッツで溢れている! 絶妙のアドリブに一発で心を奪われてしまう!
DIMENSIONのスーパー・テクニックは「超絶技巧」であるが,正しくは“百戦錬磨”のセッション集団と呼ぶべきだろう。
DIMENSIONの体内には“いい音の前にいい演奏がある”ジャズ/フュージョンの血が流れている。
たとえポップスやロックを演奏しようとも,常に“おいしい”アドリブを追求する「セッション集団」としての本性を隠すことなどできやしない。
特に「DIMENSIONの頭脳」と称されるキーボードの小野塚晃は渡辺貞夫グループのレギュラー・ピアニストである。小野塚晃が“ジャズ畑”の人間なのだから,DIMENSIONのアドリブがジャズをベースにしている点も尤もなことだろう。
それで“目新しさ”ではなく“基本性能”に注目して聴いてみると,機種変組のおじさんたちでも“スンナリ”と,新規格のJ−ジャズ/フュージョンを受け入れることができると思う。
DIMENSIONの最初の1枚は『11TH DIMENSION “KEY”』がいいと思っている。『11TH DIMENSION “KEY”』ならば,DIMENSIONへの拒否反応はでないと思う。「スッ」と身体に染み入る造込みで,第三世代特有の“壁”を感じない。メロディーの良さに魅了されることと思う。
その分「超絶技巧」はスパイス程度。楽器小僧なDIMENSIONファンの間では“凡作”とされているので,あらかじめご了承頂きたい。
そんな“敷居の低い”『11TH DIMENSION “KEY”』なので,旧規格のまま心地良く聴くことは可能であるが,いつまでも過去との互換性に頼っていると新規格の恩恵に浴することはできない。
ここは思い切って『11TH DIMENSION “KEY”』のニュー・サウンドへ身を委ねてみてほしい。まずは勝田一樹のアルト・サックスが耳で追いやすいと思う。この転調の多さとハイトーンの“乱れ打ち”は,過去のJ−ジャズ/フュージョンの「型」には無かったものだ。
何が新しいのか,うまく説明できていないが,以前の“しがらみ”をとっぱらった音楽理論が,作曲方法,演奏手法まで変えてしまっている。やはり世代交代は,革新的な新規格の登場と共に幕を開けるのだろう。
ちまたでは2007年問題=団塊の世代の大量退職によるノウハウの消滅に危機感が叫ばれている。
しかしJ−ジャズ/フュージョン界は安泰である。DIMENSIONに代表される「第三世代」が立派にシーンを担っている。そして今や矢野沙織,アキコ・グレース,山中千尋らの「第四世代」の台頭も著しい。“十年一昔”とは良く言ったものである。
ガンバレ第一世代,負けるな第二世代! この気持ちは当の第三世代,第四世代のジャズメンも同様だろう。ジャズメンに定年退職などないのだから“生涯現役”のベテラン勢と若手たちが“切磋琢磨”し,次世代の新規格の創造にチャレンジし続けてほしい。
2005年のJ−ジャズ/フュージョン界は,世界的に見ても稀に見る激戦区。新旧入り混じった素晴らしい環境下にある。
01. Magic One
02. Key
03. Someday
04. Alone In Love
05. Sun Dance
06. Colour Of Days
07. Moment
08. I Don't Wanna Cry
09. Shadow Of A Memory
10. What's Rare?
DIMENSION
TAKASHI MASUZAKI : Guitars
AKIRA ONOZUKA : Keyboards & Programming
KAZUKI KATSUTA : Alto Saxophone
GUEST MUSICIAN
KAICHI KUROSE : Drums
AKIHITO TOKUNAGA : Electric Bass
NOBUO EGUCHI : Drums
(BMGルームス/BMG ROOMS 1998年発売/BMCR-7030)
サムエル記第一31章 サウルと3人の息子の死
チック・コリア 『スリー・クァルテッツ』
コメント一覧 (2)
いつの時代もJAZZの楽しみはアドリブ,インプロヴィゼーションの冴えにあると思っています。
DIMENSIONの音は表面上,最新型のFUSIONですが,根底にはJAZZの基本が流れています。年季の入ったJAZZマニアでもきっと唸りますよ。