
例えば,ニューオリンズのジャズ環境。ジャズ発祥の地=ニューオリンズは今日でも巷の隅々までジャズで溢れている。街中,近所中,大小の通りでジャム・セッション!
そしてその中心がファミリー・バンド! 家族のコミュニケーション手段の1つが共にジャズを演奏することなのである。
さて,ファミリー・バンドの特徴は,楽器がかぶらないこと → 目指すは家族単位でのビッグ・バンド! 家族内にピアニストが2人いるなど有り得ない。サックスやるならアルトとテナーで切り分ける。
マルサリス家(エリス,ブランフォード,ウイントン)しかり,アダレイ兄弟(キャノンボール,ナット),ユーバンクス兄弟(ロビン,ケビン),ジョーンズ3兄弟(ハンク,サド,エルヴィン)しかり…。
初顔合わせのセッションもいいが,気心・手の内を熟知した“バンド・サウンド”こそが名演を生む。その名演はそのままデビューへと導かれる,と思ってしまうのは素人考え?
折紙付きのファミリー・バンドがCDで聴けないものは,ジャズ/フュージョン界にとって,いいや,全世界にとっての大損失である。
しかし,こんな管理人の願い届かず,ファミリー・バンドは大抵デビュー・即解散! 家族揃ってすぐに他流試合へ出かけてしまう。
そんな中“楽しい”ファミリー・バンドを継続していた兄弟がいる。ランディ・ブレッカーとマイケル・ブレッカーの双頭コンボ「ブレッカー・ブラザーズ」である。
そんな“仲良し兄弟”「ブレッカー・ブラザーズ」の最新作が『SOME SKUNK FUNK』(以下『サム・スカンク・ファンク』)。
『サム・スカンク・ファンク』は,公式にはランディ・ブレッカーのソロ・アルバムであり「ランディ・ブレッカー・ウィズ・マイケル・ブレッカー」名義であるが,実質的には「ブレッカー・ブラザーズ」の最新作と言い切ってよい。
余談になるが,あの史上最強超有名盤,キャノンボール・アダレイの『サムシン・エルス』が“実質”マイルス・デイビスのものであることから,ジャズ/フュージョン界には,名義人はさほど重要視しないという定説がある。
ゆえに『サム・スカンク・ファンク』=「ブレッカー・ブラザーズ」の最新作は全く問題なしなのら〜!?
『サム・スカンク・ファンク』の主役であるランディ・ブレッカーについては「マイケル・ブレッカーの兄」と称されることが多いが,ランディ・ブレッカーは,ピンでもバリバリ,超一流の「ウルトラ・テクニカル・トランペッター」である。

そう。ランディ・ブレッカーこそが「ブレッカー・ブラザーズ」を牽引し“カッコイイ”フュージョン・シーンの最前線を疾走してきた,数少ない「フュージョン・エリート」であった。
「フュージョン・エリート」ランディ・ブレッカーの近年のテーマは「ジャズ回帰」!
『サム・スカンク・ファンク』は「ブレッカー・ブラザーズ」往年のヒット・パレード集であるが,ランディ・ブレッカーの「ジャズ回帰」正しく,アレンジがジャズ=ビッグ・バンド!
WDRビッグ・バンドの“分厚い音圧”が,フュージョンの名曲をジャズの名演へと昇華させる! 単なる過去の焼き直しとならないのが「フュージョン・エリート」ランディ・ブレッカーの証し! “ジャズメン魂”を手に入れた「フュージョン・エリート」の快進撃を是非聴いてほしい。
PS いやいや,やっぱり聴き所はランディ・ブレッカーよりマイケル・ブレッカーでしょ?
01. SOME SKUNK FUNK
02. SPONGE
03. SHANGHIGH
04. WAYNE OUT
05. AND THEN SHE WEPT
06. STRAP-HANGING'
07. LET IT GO
08. FREEFALL
09. LEVITATE
10. SONG FOR BARRY
RANDY BRECKER : Trumpet
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
JIM BEARD : Piano, Synthesizer
WILL LEE : Electric Bass
PETER ERSKINE : Drums
MARCIO DOCTOR : Percussion
THE WDR BIG BAND KOLN CONDUCTED BY VINCE MENDOZA
(ビクター/BHM PRODUCTIONS GMBH 2005年発売/VICJ-61289)
(ライナーノーツ/馬場雅之)
(ライナーノーツ/馬場雅之)
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コメント一覧 (4)
父親さえも尊敬できない、まして兄弟間でリスペクトしあえることが奇跡的とも想えるこの時代に、ブレッカー・ブラザーズの強みはお互いをリスペクトしあっていることにあると想います。兄弟と言う血の濃さは、何者も及ばない強烈なグルーヴを創りだすと想うのです。
「『サム・スカンク・ファンク』=『ブレッカー・ブラザーズ』は全く問題なし、「過去の未発表音源を今後発売して欲しい」との願いを込めて,敢えて「最近作」・・・」
まさに同感です!
2006年最高のアドリブ=グラミーの「BEST JAZZ INSTRUMENTAL SOLO」受賞はマイケル・ブレッカーです。
ファミリー・バンドの“通”ですね。私もブレッカー・ブラザーズの“強み”は正にそこにあると思っています。
早く「最近作」ではなく「最新作」をレヴューしたいものですよね。