『THE GENIUS OF BUD POWELL』の7曲目は【DUSK IN SANDI】(以下【ダスク・イン・サンディ】)。


 【ダスク・イン・サンディ】は,バド・パウエルの“芯の強さ”が音に表われたバラードである。
 一歩も引かない,たじろがない,凛としたタッチのバラード

 この手のバラードは感傷に浸ることを許してくれない。要するに「重い」のだ。恋愛において嫌気を覚えるのと同種の「重さ」。
 そんな「重い」バド・パウエルが鬼気迫ってくる。もう逃げられない。バド・パウエルが聴き手の反応を伺いながら弾き続ける。
 聴き手はバド・パウエルに“監視”されているかのような,変な緊張感を覚えてしまう。「ほう。こう演るとこう来るのか…」。ただただ真剣に聴き続けるしか道はない。

 だから感想は1時間遅れで“ワッと来る”! バド・パウエルの「重さ」から解放されて初めて,演奏への感動が体の中から沸き起こってくる! 時間が経っているにもかかわらず,ほんの今聴いたかのような“リアルな感触”が残っている。本当に凄い。

 聴き所は2分8秒,最後のアタック! 集中して聴いた(聴かされた)結果,いつも最後の一音しか記憶に残っていないから…。

BUD POWELL : Piano