
そうして6年後の2004年,ジャック・デジョネットとラリー・ゴールディングスと組んだ「トニー・ウィリアムス・トリビュート」のオルガン・トリオ=『TRIO BEYOND』スペシャル・セッションへ参加した。
あの極上『TRIO BEYOND』セッションから2年。2006年に結成されたのが“メデスコ”を名乗る新バンド「メデスキ,スコフィールド,マーチン&ウッド」である。
ズバリ「メデスキ,スコフィールド,マーチン&ウッド」は“ジャム・ギタリスト”ジョン・スコフィールドと“最強オルガン・トリオ”メデスキ,マーチン&ウッドの「対等合併」スーパー・バンドなのである。
「対等合併」という表現には意味がある! メデスコのデビュー・アルバム『OUT LOUDER』(以下『アウト・ラウダー』)の発売元が,メデスキ,マーチン&ウッド設立の新レーベル第1弾ということで,世評ではジョン・スコフィールドがメデスキ,マーチン&ウッドに“呑み込まれた”構図であるが実際にはそうではない。
この音&音! これぞアップデートされたジョンスコ・サウンド! ジョン・スコフィールドこそが「メデスキ,スコフィールド,マーチン&ウッド」の“イニシアティブ”を握っている。
そう。『アウト・ラウダー』は『ア・ゴー・ゴー』での力学のままに録音されている。もはや超ビッグとなったMMWの成長以上に“ジャム・ギタリスト”としてのジョン・スコフィールドが成長しているのだった。
ジョン・スコフィールドの『ア・ゴー・ゴー』に「バック・バンド」として参加した,当時のMMWの3人はまだ“若手の有望株”扱い。
メデスキ,マーチン&ウッドの名声がジャズ・マニアの間で一気に高騰したのは『ア・ゴー・ゴー』での快演であった。
『ア・ゴー・ゴー』は,ジョン・スコフィールドにとっても,メデスキ,マーチン&ウッドにとっても超自信作の出世作! 成功の要因こそ“相性を越えた相性の良さ”! 双方の輝きが明らかに増幅していた。
思うに『TRIO BEYOND』の演奏中に,ジョン・スコフィールドで眠っていた“ジャム・ギタリスト”としてのDNAが目覚めたのではなかろうか? オルガン・トリオとの“相性の良さ”を思い起こしたのではなかろうか?
『ア・ゴー・ゴー』でブレイクしたメデスキ,マーチン&ウッドは,今ではジョン・スコフィールドが声を掛けても,簡単に呼び寄せることのできない“超売れっ子”である。
そんな状況下ゆえにジョン・スコフィールドが自ら動く。“最強オルガン・トリオ”の極上の音を手に入れるために,メデスキ,マーチン&ウッドに自分を“呑み込ませる”というシナリオである。
( ジャズ/フュージョン・ファン向けに説明するなら,パット・メセニーとブラッド・メルドー・トリオとの関係と言えば早いかも… )
ジョン・スコフィールド独特の“ウネウネ”ギターが“狙い通り”メデスキ,マーチン&ウッドの“ユルユル”インプロヴィゼーションと見事にハマッテいる。
『アウト・ラウダー』でのラフな演奏スタイルは,ジャズ/フュージョン界のトップ・ギタリストとしては見せない「ジョンスコの素顔」の一面に違いない。
ジョン・スコフィールドが理想とする極上のオルガン・サウンドを得て,ここしばらくはノドの奥に詰まらせていた“ジャム・ギタリスト”としてのアドリブを解放している。
そう。表向き「対等合併」の真実とは「メデスコ・フィーチャリング・ジョン・スコフィールド」の実現のためなのである。

特にビリー・マーチンのドラムとクリス・ウッドのベースは,通常なら「第一のジョン」であるジョン・メデスキの音に耳を傾ければ良かったものの『アウト・ラウダー』では「第二のジョン」であるジョン・スコフィールドとも相交える忙しさ。
超強力ツー・トップの爆発で2倍の速さで膨らまされた“とぐろ”が一層大きく力強い。やはりジャズ系ジャムの真髄とはインタープレイ&アドリブにある。
なお日本盤『アウト・ラウダー』は,通常スタジオ盤+『実況演奏録音盤付』二枚組仕様! メデスコ,白熱の全米ツアーからのライブ音源が追加収録されている。
メデスコの真価はライブにあると想像していたが,これが意外や意外,印象としてはライブ盤もスタジオ盤の延長であった。
そうなんだ…。スタジオ盤も一発録りだったんだ…。スタジオでもライブでも“二度と同じ演奏はしない”のが「メデスキ,スコフィールド,マーチン&ウッド」なのだった。
メデスキ,マーチン&ウッドの“パターン化されたオリジナル・ジャム”が基本ゆえ,安心してアドリブの変化を楽しめる。
メデスコ4人のアドリブは「個」ではなくバンド・レベルでインプロヴィゼーションしている。メデスコのキーワード,それは9年間の「熟成」なのである。
こんなにもクリエイティブなジャズ系ジャムを若者だけに聴かせておくのはもったいない。
『アウト・ラウダー』は,遊び倒した大人が楽しむジャズ系ジャムなのである。
DISC 1
01. Little Walter Rides Again
02. Miles Behind
03. In Case The World Changes Its Mind
04. Tequilia and Chocolate
05. Tootie Ma Is A Big Fine Thing
06. Cachaca
07. Hanuman
08. Telegraph
09. What Now
10. Julia
11. Down the Tube
12. Legalize It
DISC 2
01. A Go Go - Live
02. Cachaca - Live
03. The Tube - Live
04. Amazing Grace - Live
05. Deadzy - Live
06. What Now - Live
MEDESKI SCOFIELD MARTIN & WOOD
JOHN MEDESKI : Keyboards
JOHN SCOFIELD : Guitars
BILLY MARTIN : Drums, Percussion
CHRIS WOOD : Basses
(インダイレクト/INDIRECTO 2007年発売/UCCM-1112/3)
(デジパック仕様)
(『実況演奏録音盤付』二枚組仕様)
(ライナーノーツ/櫻井隆章)
(デジパック仕様)
(『実況演奏録音盤付』二枚組仕様)
(ライナーノーツ/櫻井隆章)
ホセア書7章 エフライムの悪が語られる
エヴァレット・ハープ 『君への想い』
コメント一覧 (2)
ソロの出だしを2〜3音聴いただけで、すぐジョン・スコさんだ!と解る強烈な個性が、音にもフレーズにもありますよね。
>独特なタイム感の“ウネウネ系”!
見事な表現です!その通りです。
ギター通のayukiさんに,お墨付きいただき大変うれしく思います。ジョン・スコ奏でる,あのフレーズとか刻み方はオンロー・ワン! ものまねのプロが真似しようにも真似できないと思います。ただあのギターが流れ出すだけで幸せになりますよねっ。