『HANK MOBLEY WITH DONALD BYRD AND LEE MORGAN』の2曲目は【DOUBLE WHAMMY】(以下【ダブル・ワミー】)。

 【ダブル・ワミー】は,キャッチーなテーマを持ってはいるが,活発なリズムが底から突き上げてくる。例の「白鳥のバタ足」である,と書こうと思ったが,実はその逆なのでは?と最近思うになってきた。

 そう。【ダブル・ワミー】は,フロントの3管コンビネーションによる“自作自演”である。なぜなら3人とも自分のソロでは思いっきり吹き切っているが,3管Bフラットだからこそ成立したアンサンブルでは,実にまろやか!
 そう。アドリブとアンサンブルとの対比だけで「白鳥のバタ足」を襲名することは十分可能なのである。

 1分後半から2分台半ばにかけての,ハンク・モブレーアドリブの合間に“合いの手”を入れたドナルド・バードリー・モーガンであるが,いざ自分の出番となれば人が変わったように強烈なハイトーンで場をかき回す!

 このように書くとハンク・モブレーが,若きトランペット・スターの“前座”のように思えるかもしれないが“お人好し”ハンク・モブレーは,初めからこのシナリオの筋書きを準備し2人のバトルには加わっていない。

 上記「白鳥のバタ足の逆バージョン」を感じたのはそのためだろう。事実【ダブル・ワミー】におけるハンク・モブレーは,3管Bフラットの一員と言うより,リズム隊の一員のごとく,とりわけホレス・シルヴァーと連動している。

 そう。【ダブル・ワミー】における『ハンク・モブレー・セクステット』とは,3ホーンピアノトリオ(3:3)ではなく,ツイン・トランペットテナー・サックスピアノベースドラム(2:2:2)で構成されていると思う。

 
HANK MOBLEY : Tenor Sax
DONALD BYRD : Trumpet
LEE MORGAN : Trumpet
HORACE SILVER : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
CHARLIE PERSIP : Drums

HANK MOBLEY WITH DONALD BYRD AND LEE MORGAN-1
HANK MOBLEY WITH DONALD BYRD AND LEE MORGAN
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