『CONCIERTO』の4曲目は【CONCIERTO DE ARANJUEZ】(以下【アランフェス協奏曲】)。

 【アランフェス協奏曲】を直接知らない人であっても,時代劇ファンなら「これ知っている」と述べるはず。それが【アランフェス協奏曲】は,テレビ朝日系「必殺シリーズ」のクライマックスで流れる例のテーマ!

 【アランフェス協奏曲】より先に「必殺」を聞いたものだから,藤田まことのあのイメージを頭の中から払拭するのに苦心したものだ。
 まっ,現在でも【アランフェス協奏曲】と聞くと,ジム・ホールよりも先に村治佳織を思い出してしまいますが…。
 さて,冗談半分で【アランフェス協奏曲】=「必殺シリーズ」を紹介してみたが,実はこの選曲,案外考え抜かれているようも思える。
 そう。【アランフェス協奏曲】は,フュージョンの台頭を迎えた時代にジム・ホールが捧げた“死にゆく4ビート・ジャズ”へのレクイエムではなかろうか? ← 強引すぎです。

 3分40秒からのロン・カーターベースソロドラムピアノが絡みつきそこから一気にヒート・アップ! 内へ内へ“切々と情感を紡ぎ出す”ジム・ホールの“クールで控え目で熱情的な”ギター! そこへ更なる時間差で絡みつく,ポール・デスモンドチェット・ベイカーホーンが最高である。
 特にチェット・ベイカーの長いブレス! 時間と共に音がかすれていくのだが,これが終わりそうで終わらない。それどころか次第に“息を吹き返す”技ありのブレスが実に印象深い。

 【アランフェス協奏曲】の原曲は「クラシック・ギターとオーケストラのための協奏曲」であるが,ドン・セベスキーの上品なアレンジがいい。
 全員でテーマを織り成しつつも,テーマ区切りで各人のアドリブがフューチャーされているので,各ソロイストたちの【アランフェス協奏曲】への解釈の違いを聴き取れる。結果,アンサンブル&ソロ,全てが完璧である。19分超えの大作ではあるが「もう終わったの?」と最後まで一気に聴かせてくれるに違いない。

 ジャズ・マニアはもとよりクラシック・ファンにも一度は聴いてほしい大名演である。

 
JIM HALL : Guitar
ROLAND HANNA : Piano
RON CARTER : Bass
STEVE GADD : Drums
CHET BAKER : Trumpet
PAUL DESMOND : Alto Saxophone

CONCIERTO-1
アランフェス協奏曲
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