UNCOVERED-1 ジャズ・フレーズ禁止「ポップ・クリエイティヴ」のカシオペア。ご存知「F−1グランプリ」のT−スクェア。中森明菜で「レコ大受賞」の松岡直也。「ヒューマン・ソウル」のナニワ・エキスプレス。あの「バンマス」MALTAでさえ「ラップ&ヴォーカル」志向へと路線変更…。

 たとえJ−フュージョンのトップ・バンドであったとしても純粋にフュージョン道を追求するのは難しい。好む・好まざるに関係なく,そこには“商業主義”という高い壁がそびえ立つ。
 彼らはアマチュアではなく“プロ”のジャズメン。当然,ファンやレコード会社のリクエストに応じる必要がある。人気が出れば出るほど“コマーシャル・ベース”に乗ることが“良い音楽を創る”こと以上に期待されてしまう。

 フュージョン・ブームが過ぎ去り,同士が着々と路線変更を図る中,頑固一徹,フュージョン路線を曲げないバンドがある。プリズムである。( ← 本当のプリズムの音楽性とはフュージョンではなくプログレ・フュージョンです。以下,正確に読みたければフュージョンをプログレ・フュージョンにお読み換えください )
 そう。「日本のアラン・ホールズワース和田アキラと「日本のジャコ・パストリアス渡辺建を擁するプリズムこそ,J−フュージョンの代名詞“超絶技巧”の開祖たちである。

 実際に管理人も(カシオペアスクェアのスーパー・スゴテクは骨の髄まで認めた上で)カシオペアには“青春”を求め,スクェアには“歌”を求めてCDをかけるが,プリズムには“バカテク”を求めてCDをかける。
 特にギターの早弾き世界一としてギネス申請された(はず?)“神様”和田アキラ! ライブでは“指がつるまで弾きまくる”ド根性! 指つり防止のエアーサロンパスに“薄くなどないフュージョン道”を教えられたものである。

 そんなプリズムにとっての“バンドの岐路”が,ドラム木村万作を迎えて完成した“ギター・トリオ”!
 ギター・トリオ結成直前のプリズムは,正直,迷走していたように思う。売れ線の名曲【TAKE OFF】の大ヒットで,コマーシャル路線を歩み始めてはみたものの,何かが足りない。プリズム・ファンとしても新作のアルバムを聴き終える度にどうしても“もやもや”が残る消化不良。

 そう感じていたのは和田アキラ渡辺建も同じだった。そこでプリズムの出した結論が1990年代の「環境3部作」=売れ線とは真逆の「脱コマーシャル」!
 レコード会社の前に“演奏を求める”ファンがいる。そのファンの前には“演奏を求める”和田アキラ渡辺建の両雄がいる。“マニアックな”フュージョンかもしれない。でもこれからは“完全燃焼”できるギター・トリオでいこう。プリズムの腹と肝が据わったギター・トリオ編成である。

UNCOVERED-2 シーケンサーの導入で実現できたプリズム初のキーボードレス。『MOTHER EARTH』で感じた音造りの変化に,一抹の寂しさを覚えた。事実,セールス的には“サッパリ”だった。
 しかし『REJUVENATION』『A PERSONAL CHANGE』の制作を通じ“ついに”分厚いシーケンサーが鳴り始めた瞬間,プリズムが目指した「超重力級」ギター・トリオの全貌が現われた。
 「環境3部作」の集大成が大名盤UNCOVERED』である。

 『UNCOVERED』はライブ・アルバムである。正確にはライブ・アルバムの“はず”である。
 相当聴き込んだ耳をもってしても「これがギター・トリオ? これがライブ?」。にわかに信じられない“超絶技巧”の大連発! 管理人が“熱狂してきた”プリズムがここに帰って来た!

 プリズムが追い求めたギター・トリオは“そんじょそこらの”ギター・トリオではなかった。
 和田アキラが「レコード会社から頼みにこない限りCDは出してやらない」とまで言い切る“自慢の”ギター・トリオの完成形!

 『UNCOVERED』からは,商業的な成功を捨て“マニアな”フュージョン一本道へと歩き出した,プリズム「史上最高峰の」ギター・トリオが鳴っている!

 あとは選曲だけだよなぁ。キレイ目の曲ばかり演るようになったのもバンドの掟なのかなぁ。

 
01. BIOLOGY'S LIFELINE
02. SHADOW OF THE JUNGLE GYM
03. DEJA VU
04. IN THE AFTERNOON
05. IDEOGRAM
06. CALL OUT MR,M.K
07. THE FIRST SKY AND THE LAST SEA

 
PRISM
AKIRA WADA : Guitars, Guitar Synth
KEN WATANABE : Basses, Bass Synth, Vocal, Secuenser Programing
MANSAKU KIMURA : Drums, Percussion Programing

(イースタンゲイル/EASTERN GALE 1995年発売/EGCJ-8003)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION



列王記第二13章 エリシャは死に,骨に触れた人が生き返る
ボブ・ジェームス 『グランド・ピアノ・キャニオン