『OPEN MIND』の3曲目は【OPEN MIND − SAORI YANO VERSION】(以下【オープン・マインド(矢野沙織ヴァージョン)】)。

 “成熟した”ジャズ好きのためのニュー・スタンダード! 最新の4ビートでスイングして“魅せる”【オープン・マインド】! それが【オープン・マインド(矢野沙織ヴァージョン)】の真実である。

 【オープン・マインド(オリジナルTVヴァージョン)】と【オープン・マインド(矢野沙織ヴァージョン)】の違いはピアニストの個性の違い。正確にはピアニストの個性に適応した矢野沙織の演奏スタイルの違いである。

 松永貴志ピアノと対峙すると,普段の爽やか青年から「そこのけそこのけ」へと表情が一変してしまう。そう。松永貴志は自身が敬愛してやまないバド・パウエル・タイプの「自己主張型」である。
 一方,ハロルド・メイバーンは,ソロではバリバリでキレキレなのだが,サイドに回ると優しく美メロに表情を添えていく。トミー・フラナガン・タイプの「名脇役型」である。

 「攻め」の松永貴志にはガップリ四つに組み合ったが「受け」のハロルド・メイバーンとは共存共栄。“熟練したまろやかな味わい”とでも呼ぼうか,これが17歳の演奏とは百戦錬磨のジャズ批評家の耳を持ってしても分かるまい。艶があり翳りがある深い音色にパーカー・フレーズがブレンドされている。

 全てをその場の雰囲気だけで演っているかのような“柔軟なノリ”を見様見真似で体得した“天才少女”の出現こそ“正統派モダンJ−ジャズの歴史が産み落とした“サラブレット”であろう。矢野沙織の将来を考えると末恐ろしくなる。

 ハロルド・メイバーン・クインテットのフロントマンとして,トーンを落とした“渋めの演奏”を展開する。しかしそこに“朗々とした”アドリブを吹き上げてくるから“天性のまろやかさ”が一段と映える映える!
 ビブラートを交えた3分20秒でのアタックには,矢野沙織のクール一面が出ている。お見事!

 
SAORI YANO : Alto Saxophone
HAROLD MABERN : Piano
NAT REEVES : Bass
JOE FARNSWORTH : Drums
PETER BERNSTEIN : Guitar

OPEN MIND-1
Open Mind
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