URBAN BUSHMEN-1 先に断っておく。ECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴアート・アンサンブル・オブ・シカゴであってアート・アンサンブル・オブ・シカゴではない。ECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴは「別物」である。

 何が言いたいのか? ECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴマンフレート・アイヒャー色に染まっている,ということである。これをどう評価するかが問題となる。

 カテゴライズするとアート・アンサンブル・オブ・シカゴフリージャズに属する。つまり一定の形式美と自由が共存する音楽である。
 アート・アンサンブル・オブ・シカゴにとって,フリージャズの“縛り”とは“アート”であり“アンサンブル”である。

 “アート”とは「爆発」であり「何が起こるか分からない」ハプニングである。そして「何が起こるか分からない」ハプニングをバンド全員が瞬時に意思統一して描く“アンサンブル”である。この部分がクソ堪らない! あれだけのメチャメチャを実は計算している? そう思わせるに寸分違わない即興アンサンブルがクセになる。

 さて,ここでマンフレート・アイヒャーの登場である。ECMの主宰者であるマンフレート・アイヒャーの音楽眼は独特である。ゆえにECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴはいつもに増して“アート掛かっている”。
 ECMの1作目『NICE GUYS』は,まぁ,一発目という感じのブレたサウンド・カラーがイマイチであったが,ちょっとビ・バップがかったサウンドが好きだった。そして2作目の『FULL FORCE』と4作目の『THE THIRD DECADE』は,これぞ「ECMの専属アーティスト」を強く感じさせるカラフルな出来映えである。

 そんな中,ECMの第3作『URBAN BUSHMAN』(以下『アーバン・ブッシュメン』)だけは唯一,アート・アンサンブル・オブ・シカゴの“アート”ではなく“アンサンブル”の部分が強調された名盤である。
 走り出したら誰にも止められない。即興芸術としてのフリージャズが“アンサンブル”であり構図美なのである。

 『アーバン・ブッシュメン』はライブ盤なのだが「なーんにも決めていない」即興を生録するという行為には,演者側に並々ならぬ自信と根性が必要だと思うのだが,そこはノープランであろうと長年即興演奏を続けてきた手応えというか老練さもあるのだろう。
 だとしても「なるよーになる」“ヘタウマ即興”をやらせたらアート・アンサンブル・オブ・シカゴの右に出るバンドは存在しない。

 自然発生的で遊び心があって,躍動する打楽器祭りのフリージャズライブ。この生演奏を即興主体で行なうか,それともコンポジション主体で行なうか…。
 アート・アンサンブル・オブ・シカゴのような絶妙で自然なバランスのフリージャズは,真似ようと努力しても真似ることは無理であろう。「唯一無二の極上素材」の完成である。

 ただし,そんな「唯一無二の極上素材」であろうとも,マンフレート・アイヒャーという人が手を入れずに素材のまんま垂れ流すはずはなく『アーバン・ブッシュメン』には2日間2ステージの音源をしっかりと編集した痕跡がある。
 例えばアート・アンサンブル・オブ・シカゴのステージングは,瞑想のような時間で始まるのが常であるが,2枚組の『アーバン・ブッシュメン』では1枚目の1曲目ではなく,2枚目の2曲目に【ANCESTRAL MEDITATION】として曲順を変えて収録されている。
 そして【PROMENADE:COTE BAMAKO 】が1枚目の1曲目,【PROMENADE:COTE BAMAKO 】が2枚目の5曲目に収録されているが,同じ曲の演奏がどちらも良かったから2テイクとも収録されている。

URBAN BUSHMEN-2 その上で,決して綺麗な演奏ではないのに,そこが綺麗に聴こえる仕掛けがECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴに許された特徴である。

 『アーバン・ブッシュメン』の「百花繚乱」的な“でたらめ即興”のパッチワーク的な継ぎ接ぎを聴いていると,恐らくはあの部分の“でたらめ即興”を,レスター・ボウイは本当はこう考えていた,ジョセフ・ジャーマンは本当はこのように演奏したかった,ロスコー・ミッチェルは本当はこの音を使いたかった,マラカイ・フェイヴァースは本当はこう表現したかたった,ドン・モイエは本当はこの楽器で演奏したかった,などととマンフレート・アイヒャー特有のフィルターを通して,気付かされる瞬間と直面する。

 管理人にとって『アーバン・ブッシュメン』とは,ライブ会場の隣りの席に,偶然マンフレート・アイヒャーが座っていた日のライブの記録である。客席からステージに向かって指示するマンフレート・アイヒャーの姿が妄想できる。

 ECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴが「別物」なのは,ECMアート・アンサンブル・オブ・シカゴには,追加メンバーとしてのマンフレート・アイヒャーが加わった6人組バンドの音が鳴っているからであろう。

 
DISC 1
01. PROMENADE:COTE BAMAKO I
02. BUSH MAGIC
03. URBAN MAGIC
04. SUN PRECONDITION TWO THEME FOR SCO

DISC 2
01. NEW YORK IS FULL OF LONELY PEOPLE
02. ANCESTRAL MEDITATION
03. UNCLE
04. PETER AND JUDITH
05. PROMENADE:COTE BAMAKO II
06. ODWALLA/THEME

 
ART ENSEMBLE OF CHICAGO
LESTER BOWIE : Trumpet, Bass Drum, Long Horn, Vocals
JOSEPH JARMAN : Sopranino, Soprano Saxophone, Alto Saxophone, Tenor Saxophone, Baritone Saxophone, Vocals, Bass Clarinet, Bb Clarinet, Bassoon, Piccolo, Flutes, Alto Flutes, Conch Shell, Vibraharp, Celesta, Gongs, Congas, Tom-Tom Drums, Whistles, BElls, Siren, Bass Pan Drums
ROSCOE MITCHELL : Soprano Saxophone, Alto Saxophone, Tenor Saxophone, Baritone Saxophone, Bass Saxophone, Piccolo, Flutes, Bongoes, Conga, Bb Clarinet, Bamboo Flutes, Gongs, Glockenspiel, Whistles, Bells, Pans, Vocals
MALACHI FAVORS MAGHOSTUT : Bass, Percussion, Melodica, Bass Pan Drums, Vocals
FAMOUDOU DON MOXE : Trap Drums, Bendir, Bike Horns, Conga Drums, Whistles, Congas, Djimbe, Djun-Djun, Donno, Bongoes, Tympani, Chekere, Conch Shell, Long Horn, Elephant Horn, Gongs, Cymbals, Chimes, Wood Blocks, Belafon, Cans, Bass Pan Drums, Vocals

(ECM/ECM 1982年発売/POCJ-2247/8)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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セシル・テイラー 『ルッキング・アヘッド