PORTRAIT OF JACO-1 ジャズメンにとって,トリビュート・アルバムの製作は,そのジャズメンをオマージュとして,自分自身を見つめ直すことである。そのジャズメンからの拭い去れない影響を意識しながら,自分自身のアイデンティティを確立する作業なのである。
 その結果,出来上がったトリビュート・アルバムは「私は誰々からの影響を受けてこんなジャズメンに育ちました」という“自己紹介盤”であって,単なる誰々の楽曲集ではないはずだ。
 しかし,自己紹介にはある種の恥ずかしさがつきまとう。ストレートに,ありのままの自分を語る難しさ…。TVでのものまね芸人よろしく,単なる完コピでは?

 さて,ブライアン・ブロンバーグの『PORTRAIT OF JACO』(以下『ポートレイト・オブ・ジャコ』)である。
 『ポートレイト・オブ・ジャコ』は,現代のベース・マイスターの1人=ブライアン・ブロンバーグによる,ジャコ・パストリアスへ捧げた,正真正銘のトリビュート・アルバムである。

 『ポートレイト・オブ・ジャコ』が凄い。ジャコパスジャコパス“らしい”フレーズは出てこない。しかし,どこを聴いてもジャコ・パストリアス“らしさ”を感じてしまう。
 そう。『ポートレイト・オブ・ジャコ』は,表面上はブライアン・ブロンバーグソロCDであるが,実質的には,ジャコ・パストリアスソロCDだと言い切ってしまおう。

 “サポート・ベーシスト”に徹したブライアン・ブロンバーグの超絶ベースソロは,全編ジャコパスへの愛で満ち満ちている。いいや,ジャコパス愛が溢れ出ている。
 『ポートレイト・オブ・ジャコ』におけるブライアン・ブロンバーグの主張はただ一つ,俺は“世界一”ジャコ・パストリアスが大好きなんだ〜,という叫び声である。

 欧米人は「他人と同じであってはならない」という文化を有している。その上で“ジャコパス丸出しの”トリビュート・アルバムを完成させたことに意味がある。

 思うに,ブライアン・ブロンバーグジャコ・パストリアスを“背負う”決意を固めたのではなかろうか?
 そう。『ポートレイト・オブ・ジャコ』は,ブライアン・ブロンバーグによる「現代のジャコパスへの化身宣言」であろう。管理人はブライアン・ブロンバーグのこの勇気にいたく感動してしまった。

PORTRAIT OF JACO-2 もし,ジャコ・パストリアスが,このメンバー(アレックス・アクーニャボブ・ミンツァー等)と共演したなら,ピッコロ・ベースを,ウッド・ベースを弾いたとしたら…。

 ジャコパス・ファンのその願いをブライアン・ブロンバーグが全て叶えてくれる。ファン最大の願いである,師匠=ジャコ・パストリアスと,弟子=ブライアン・ブロンバーグの共演を一人二役で適えてくれる。

 そう。『ポートレイト・オブ・ジャコ』最大の聴き所は,ジャコ・パストリアスブライアン・ブロンバーグのシンクロにある! ブライアン・ブロンバーグジャコ・パストリアスの“天才”ベーシストを感じてしまう。

  01. Portrait of Tracy
  02. Continuum
  03. Teen Town [bass version]
  04. A Remark You Made
  05. Three Views of a Secret
  06. Tears
  07. Slang
  08. Come On, Come Over
  09. The Chicken
  10. Teen Town [piccolo bass version]

(キングレコード/KING RECORD 2002年発売/KICJ 428)
(ライナーノーツ/ボビー・コロンビー,松下佳男)

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