SEEKING BLUE-1 ここ数年の音楽(ジャズ)業界の動きとして,レコード会社とマスコミが一体となって“和ジャズ”とか“昭和ジャズ”と呼ばれる,1950年代〜80年代のジャズ・アルバムがCD復刻盤として続々とリリースされている。

 普通に考えたら定年退職を控え,第二の人生を謳歌しようと考えるジャズ喫茶世代=団塊の世代をターゲットにしていると思うのだが,どうやら購入の中心層は意外にもジャズ・ファンではなく,現代のレア・グルーヴ世代やDJ筋らしい。
 へぇ〜。“和ジャズ”や“昭和ジャズ”が懐古趣味などではなく“最新”の音楽だったとは驚きである。

 さて,この歓迎すべき“CD復刻シリーズ”の中で,管理人の目が,手が止まったのが,ピアニスト今田勝の『SEEKING BLUE』(以下『シーキング・ブルー』)である。

 管理人にとって,今田勝と来れば「今田勝&ナウイン」である。他のフュージョン・バンドとは一線を画する「今田勝&ナウイン」は「ジャズ・ピアノの詩人」と称された今田勝の個性そのもの。「重厚なのに軽やかな音」という意味不明な表現が“一番しっくりくる”独特なサウンドは,今田勝の作曲センスの賜物にあった。

 そこで,当時の“マセガキ”管理人は“フュージョンしてない”今田勝に興味を覚えた。お小遣いは少ない。悩みに悩んで決断した“JAZZYな”今田勝の1枚が『シーキング・ブルー』だった。

 当時は試聴機などない時代。『シーキング・ブルー』の決め手は,全曲・今田勝のオリジナルであったことと“強面”のジャケット写真であった(単純)。
 井上陽水似? はたまた裏社会の人っぽいジャケット写真からは“ナウイン・サウンド”していない今田勝が漂い出ている!?

SEEKING BLUE-2 2管クインテットハード・バップ作=『シーキング・ブルー』は,実に大人であった。
 『シーキング・ブルー』には,爽やかなアンサンブルではなくアドリブで勝負する“ジャズ・ピアニスト今田勝がいた。“ナウイン・サウンド”していない今田勝を知った時の衝撃は,例えば「11PM」よろしく“覗いてはならない大人の世界”を覗いてしまった気がしたものだ。

 あぁ『シーキング・ブルー』。(『ブルー』なだけに)青春の『シーキング・ブルー』。
 正直『シーキング・ブルー』以上の名盤は数多いが,管理人にとっての“和ジャズ”や“昭和ジャズ”の代表作とは『シーキング・ブルー』なのである。

 久方ぶりに聴いた『シーキング・ブルー』が懐かしい。しかし今の耳にも新しい響く“サムシング”がある。
 『シーキング・ブルー』にレア・グルーヴは含まれていないが,本物の“和ジャズ”や“昭和ジャズ”は,懐古趣味抜きに“最新”の音楽として十分に楽しめる。

 
01. SEEKING BLUE
02. PIKO
03. WAKE UP
04. BLUE PIANO
05. MORNING SUNSHINE

 
MASARU IMADA : Piano
KUNIMITSU INABA : Bass
FUMIO WATANABE : Drums
SHIGEHARU MUKAI : Trombone
SEIICHI NAKAMURA : Sax

(ユピテル・レコード/YUPITERU RECORDS 1978年発売/ABCJ-441)

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