
しかし“安直な”ネーミングとは裏腹に“凝りに凝った”カシオペア・サウンドは,カシオペア歴代のCD群の中でも“屈指のアレンジ”がまばゆい1枚である。
秘密はアル・シュミット・マジックにある?(【タイム・リミット】【ティアーズ・オブ・ザ・スター】【ミッドナイト・ランデブー】【ブラック・ジョーク】と何度もリメイクされた“定番曲”が収録されているが,特に【スペース・ロード】は『CASIOPEA』収録テイクが史上最強の「トンガリ」で大好きである)。
『カシオペア』の聴き所は,メンバー全員の「元気ハツラツ,オロナミンC」的な快演にある。
狙いはジャケット写真やインナー・スリーヴにある,スピード&スリリング! モーター・スポーツのテーマ曲よろしく「限界まで攻めに攻めまくった」快演が実に爽快である。
カシオペアの“最大の売り”は,世界のコンポーザー=野呂一生の才能爆発にあるのだが,デビュー当時の演奏は「メロディのためのテクニック」というよりも「テクニックのためのメロディ」であって,アドリブと早弾きに命をかける,メンバー全員の“自己顕示欲”が表われている。
そう。『カシオペア』は,マイクを楽器に持ち替えた,野呂一生+向谷実+桜井哲夫+佐々木隆によるカシオペア版NHK「青年の主張」なのである。 ← ふる〜い。
キャッチーでメロディアスな野呂一生のメロディ・ラインを,超絶技巧のギター,キーボード,ベースと,ちょっと遅れ気味の?ドラム(佐々木隆さん,辛口ですみません。でも私は佐々木隆さんの“ド派手な”シンバル・ワークは神保さんより好きなんですよっ)が“一丸となって”駆け抜ける!
最初の一音から最後の一音までノン・ストップ! 演奏途中でゲスト参加する,ブレッカー・ブラザーズとデヴィット・サンボーンのために特別に用意された“大仕掛けなトラップ”が華麗に機能する! これは「音の大道芸術」作と呼んでもいい。
「音の大道芸術」=『カシオペア』は,ソロ・パートも含めて相当緻密にアレンジされてからレコーディングを迎えたのではないかと思う。練習を重ね,練りに練られた“完璧なアドリブ”が,今となっては“かわいい”汚点であろう。
よく出来た感・頑張った感アリアリの“力ずく”で“ゴリ押し”な快演。ミス・タッチなどどこ吹く風で吹き飛ばす“破天荒”な名演である。

そう。カシオペアのデビューCD『カシオペア』の真実とは,野呂一生,向谷実,桜井哲夫,佐々木隆の“若気の至り”である。「♪あの頃君は若かった〜」。
01. Time Limit
02. Tears of The Star
03. Space Road
04. Midnight Rendezvous
05. Far Away
06. Swallow
07. Dream Hill
08. Black Joke
(アルファ/ALFA 1979年発売/VRCL-2201)
(ライナーノーツ/津田明子,藤井英一)
★【初回生産限定盤】ミニLP紙ジャケット仕様
(ライナーノーツ/津田明子,藤井英一)
★【初回生産限定盤】ミニLP紙ジャケット仕様
コメント
コメント一覧 (2)
SUPER FLIGHTのタグに書き込もうとしたのですが見つからず、ここに書きます。
私が当時カシオペアを知った時は4枚目MAKE UP CITYが出ていた頃で、4枚をほぼ平行して聴いたので同じバンドなのにどっちがレギュラーのドラマーなのか何も知らずに理解に苦しんでいました。しかし私は佐々木時代のカシオペア、特にSUPER FLIGHTは好きですね。なつメロかも知れません。
4人の楽器の音も古いのですが、当時の技術で楽器や重ねを駆使してアイデアがたくさん詰まった仕上がりだと思うのですが。
2、3年毎に取り出しては部屋やクルマで聴いています。デビューアルバムから半年後にこのセカンドが出ましたが、サウンドが滑らかでツヤが出たようなのが好きですね。カシオペアは今とは違う方向性にあったのかも知れませんが、だからこそ貴重なアルバムだと思います。
管理人さんはどう思われますか?
お手数をおかけいたしました。カシオペアは全CDをコレクションしていますが『SUPER FLIGHT』はDATで所有しているものでして,いつかCDで買い直したら記事をUPする予定なのです。
私は『PHOTOGRAPHS』からのファンですのではるぼんさんは大先輩です。
佐々木隆と神保彰ですが,私にとっては神保さんが普通だったので佐々木さんのドラミングが,懐メロなどではなく新しいドラミングとして新鮮に聴こえました。当然ながら好きなのは神保さんの方ですが佐々木さんがダメだとは思いませんよ。
さて『SUPER FLIGHT』ですが,はるぼんさんの仰る通りであって,キーボードの音が古くて時代を感じるのですが,何かやってやろうとする気概が伝わってきます。