LIGHTS IN A DISTANCE-1 T-スクェア退団後,アコースティック・ピアノ・ソロを“究めてきた”和泉宏隆。そんな和泉宏隆“待望の”ピアノ・トリオ作が『LIGHTS IN A DISTANCE』である(注:正確には和泉宏隆トリオ発足前のフルートギターの変則ゲスト入りです)。

 『LIGHTS IN A DISTANCE』は,和泉宏隆自ら「満を持して」と表現した自信作。
 それもそのはず。『LIGHTS IN A DISTANCE』は,構想10年の苦節10年? 『LIGHTS IN A DISTANCE』の完成のために和泉宏隆はこの10年間,アコースティック・ピアノ・ソロとして,時には他のフォーマットで試行錯誤を繰り返し,自慢の名曲に“磨き”をかけてきた。言わば実験の10年間である。 
 しかしだからと言って,全く力みを感じない。『LIGHTS IN A DISTANCE』の真髄は“小川のせせらぎ”のような心地良さ。いつまでもずっと聞いていたくなるような…。

 この心地良さは『LIGHTS IN A DISTANCE』のテーマである“成熟”から来ている。
 10年間,手塩にかけて育て上げた“和泉バラードが,傷ついた心を優しく愛撫してくる。優しく包み込んでくれる。こんなにも“優しく語りかけてくる”ジャズ・ピアノは,いつ以来だろう…。

 CDジャケットを見て「THIS ALBUM IS DEDICATED TO YOZO IZUMI」の表記に気付いた。『LIGHTS IN A DISTANCE』は,和泉宏隆の亡き父に捧げられたレクイエムであった。
 過去の自作曲の“焼き直し”は,亡き父との思い出の“焼き直し”でもあった。独立後の苦楽を陰で支えた愛する家族。『LIGHTS IN A DISTANCE』に,和泉宏隆の“熱い思い”が封じ込められている! それをこんなに“クール”に表現するなんて…。

 さて,和泉宏隆“待望の”ピアノ・トリオ作=『LIGHTS IN A DISTANCE』の真髄とは,ピアノ・ソロの総決算にして,ピアノ・ソロの完成形。和泉宏隆ピアノ・トリオは,よく書かれる「新たなチャレンジ」などではない。
 ピアノ・ソロを追求していった結果が(必然的に!)和泉宏隆ピアノ・トリオへと導いた。より立体的というか3Dの世界を求めたというか…。

 和泉宏隆の狙い通り,ピアノ・トリオで一層“浮かび上がる”メロディ&ハーモニーのハイ・センスが素晴らしい。
 極上メロディ・ラインに余分なものは一切足さない。極上メロディ・ラインに余分なものは一切引かない。(by SUNTORY『山崎』)

LIGHTS IN A DISTANCE-2 和泉宏隆ピアノに歌を歌わせていく! ピアノを響かせていく! シンプルなのに色彩豊かなピアノが美しい。
 村上聖ベース板垣正美ドラムアドリブのためのスペースを用意しつつもここまでシンプルにまとめ上げるには(勿論和泉宏隆の才能なのであろうが)相当な時間と労力を掛けて「造り込んだ」のではなかろうか?

 『LIGHTS IN A DISTANCE』の“書き込まれた”全11トラックの“小川のせせらぎ”は,和泉宏隆の“生涯のレパートリー”として演奏され続けるにふさわしい。永遠に腰を据えて聴き続けたい。管理人スルメの一枚である。

PS アルバム・タイトルは『LIGHTS IN A DISTANCE』。トラック・タイトルは【LIGHT IN A DISTANCE】。この“S”の違いをご存知の方,是非管理人にご教授くださ~い。

  01. SKY, SO BLUE
  02. AFTER THE SHIP HAS GONE
  03. TEARS IN LEGATO
  04. COLORS ON THE STREET
  05. IN THE STREAM
  06. FALLEN INTO THE DARKNESS
  07. THREE SWALLOWS
  08. ANGELITE
  09. TIMELESS ROAD
  10. SILVER GIRL IN THE MIST
  11. A LIGHT IN A DISTANCE

(アンドフォレスト・ミュージック/&FOREST MUSIC 2007年発売/NNCJ-1012)

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