
う〜ん。『ハーティ・ノーツ』は,カシオペア・ファン泣けせな「迷盤」である。
『ハーティ・ノーツ』は,エレクトリック楽器からアコースティック楽器に持ち替えても,雰囲気=カシオペア然とした“野呂一生と向谷実の手癖を堪能するための”CDである。
つまり,カシオペア・ファンの待望する“明るく爽やかなキメキメの超絶技巧”が影を潜めた『ハーティ・ノーツ』に,いつものカシオペア・サウンドを求めてはならない。
ひたすら“野呂一生と向谷実の手癖を追いかけるための”『マイナスワン・シリーズ』のような突っ込んだ聴き方が出来なければ,本当の意味で楽しむことはできない。
そう。『ハーティ・ノーツ』は,カシオペアの覆面ユニットによる,ほのぼの系というよりは“しみじみ系”の演奏集。世間がアンプラグドに求めた「ヒーリング系ではない癒し+普通のBGMではつまらない」を見事に消化し昇華させている!
( アンプラグド流行以前に,エレクトリック・バンドにアコースティック・バンドを求めたチック・コリアは大天才である! )
“アンプラグド”の魅力全開なのが向谷実のアコースティック・ピアノ。普段感じることのできない「打楽器としてのピアノ」が前面に押し出された“強靭なタッチ”に思わずのけぞってしまう。
鳴瀬喜博のフレットレス・ベースも良い。いつものチョッパー・ベースを封印した,オーソドックスなナルチョのベース・プレイに氏の実力を目の当たりに見ることができる。
野呂一生が桜井哲夫の後釜として「三顧の礼」を尽くして迎え入れた理由がよく分かる。
しょせん一回ぽっきりの企画物なのだから,いっそのことカシオペアの覆面バンドとして「ペガサス」名義(注:ペガサスとはカシオペアがバンド名を決める際に最終候補に残っていた幻のバンド名)でリリースするとかできなかったものか…。

しかし『ハーティ・ノーツ』の“アンプラグド”があればこそ『ASIAN DREAMER』で【LOOKING UP】の“あのバージョン”が完成したのだろうから,あまり悪くは書きたくない気もする。
01. SWEET VISION
02. DAZZLING
03. JUSTICE
04. PLEASURE
05. BELIEVE AGAIN
06. DISTANCE TO PARADISE
07. SOMBRERO
08. SO LONG
09. MAGIC RAY
10. SHINNING VOYAGE
(アルファ/ALFA 1994年発売/ALCA-5007)
コメント一覧 (2)
ボクはこのアルバム、アナザー・サイド・オブ・カシオペアとして、結構楽しんで聴いてました。
それは、レギュラーアルバム「アンサーズ」をきちんとリリースしてくれたから言える事で、もし「ハーティー・ノーツ」が、レギュラーアルバムだったら、暗い一年を過ごした事でしょう(笑)
このアルバムではやはり、向谷氏のアコピが際立ってますね。
ナルチョのフレットレスベースもジャズしてるし♪
たまには、こういう変化球も悪くないな〜と思います。
まぁ〜こういうアルバムが出せるって事は、それだけバンド内に余裕があるって事なのかも?
野呂さんのJUSTICE・・何回も聴きました(^^)
「アナザー・サイド・オブ・カシオペア」。正にそうですよね。いいネーミングです。
仰る通り『ハーティ・ノーツ』を楽しめるのは『アンサーズ』のお陰であって『ハーティー・ノーツ』がレギュラー・アルバムでしたら,私もどっと暗い一年を過ごしたように思います。
やっぱりここは「ペガサス」名義でのリリースが正解だと思いませんか?
向谷さんのアコピが際立ってます。ライブでも早弾きができるようになったとMCしていたのを覚えています。
野呂さんの【JUSTICE】。これからの季節に手放せない名曲ですよねっ。